スゴく開いた……
ホンっトーに申し訳ない
慌てて部屋の外に出てみれば、今にも岩の鎧を身に付けた猛犬に噛みつかれようとしているガッシュに飛び付き
すんでのところで助け出すことに成功する。
「…もう一人、来ていたのね。」
「あぁ…オレも途中で気付いた…追わないのか?」
「そうね、私達は数が減ればそれで良いわ。
それに彼の覚悟がどれ程のものか、見極めるのにも丁度良い。
今は様子を見ましょう。」
部屋の前の廊下から、半ば転げ落ちるように一階に降りる。
本の持ち主は玄関に居る。
身体強化系の術ならば、パートナーが側に居た方が戦いやすい。
自由に動ける分、パートナーを守らなくてはならないから牽制になる。
程なくして魔物の方も二階から降りてきた。
『 ! 連次…あった、奴の本だ…あれを燃やすぞ…』
「ふん…まぁ待て…まだ一度も向こうは反撃して来ねぇじゃねぇか。」
そう言って、男は被っていたレインコートのフードを取る。
その顔には普段からケンカをしているのか、二つの傷があった。
「俺はただ、お前に誘われたバトルが面白そうだったから
この話に乗ったんだぜ…
やっと手応えありそうな奴と戦えるんだぜ!!
もう少し俺を楽しませろよ!!!
本を奪うのは、それからでも良いだろ!!?」
「っち…あんま家壊したくないんだがな…」
興奮した様子で叫ぶ男に対し、清麿は悪態をつく。
ガッシュは……
(本を…奪う……では、お前はその為に)
ガッシュの様子に気付いたのか気付いてないのか、犬の魔物はニィっと嗤う。
(そうか、おまえも)
強く閉じた目から、涙が溢れる。
(私の友達では…)
「違うぞ、ガッシュ」
思考に被せて、清麿が言う。
目の前の魔本を持った男から目を離さずに。
「あいつ
「《ドルク》!!!」
後方から、術のブーストを受けた魔物が猛スピードで突進してくる。
常人ならば反応できない速さだが…
「あいつ
清麿は一瞥もせずにかわしてみせる。
その瞳には、強い光が宿っていた。
「さっき言ったろ、俺はお前の 友達 だ。」
「清麿っ」
「お前は道具でも化け物でもない、お前は俺の友達で…それはお前が消えても無くならない。」
「…」
「何より、俺がお前を消させない!」
「《ドルセン》!」
突進を避けられた
「俺を信じるか?」
「…ウヌ!信じる!!」
「《ラシルド》!!!」
床から迫り出した稲妻を纏う壁が、石の礫を跳ね返す。
反転したそれは雷を帯びて、真っ直ぐと自身の主の元へと飛んでいった。
『ギャウン!!!!』
無数の礫が岩の鎧を砕いていく。
「ガッシュ、闘うぞ!」
「ウヌッ!!!」
意思の強さに比例して、赤い魔本が光を放つ。
その光は、僅かに金色を含んでいた。
本を開き、構える。
ガッシュは正面の敵を睨み付ける。
「《ザケル》!!!!」
ガッシュの意識が消え、大きく開いた口の前に雷光が溜まっていく。
術は、本に込めたイメージによって、その形を変える。
使う術をイメージすれば、待機状態で現出するし、放出系ならば軌道をも変えることが出来る。
ガッシュの使う《ザケル》は、汎用性が高い。
放射状に放って広範囲に攻撃したり、相手の足下に落として牽制することも出来る。
コォォォォォォ……
溜めて、留めて、圧縮すれば、第一の術とは思えないほどの威力にだってなる。
「っちぃ!!《ドルセン》!!!」
放った岩礫は
バシュッ ーーーーチチチチチチチチチチ
超高密度の雷球に触れて砕ける。
「そ…そんな、バカな…」
雷はそのまま敵を呑み込み、轟音と共に弾けた。
「さて、次はアンタ等だ」
そう言って振り返った先には、シェリーとブラゴが居た。
ガッシュと清麿の二人は、静かに相手を見据える。
「覚悟は本物のようね…」
「当然だ」
互いににらみ合う
自分達は、一歩も引かない、引いてやらない。
ふと、シェリーが目を逸らした。
「良いわ、今回はこちらが引きましょう」
「シェリー?」
「厄介な目をしているのよ、覚悟の…いえ、決意のこもった目
私はこの目を知ってるわ」
(私と似た目、でも何処か決定的に違う…)
「帰るわよブラゴ」
「チッ、分かった…」
「高嶺君?あなたの覚悟見させて貰いました。
それに免じて、今日のところは帰るけど、次は無いわよ。」
「臨むところだ、何度来たって返り討ちにしてやる。」
その言葉に、シェリーは薄く微笑み、清麿達の横を通って出ていく。
どしゃ降りの雨はいつの間にか止み、空には虹が架かっていた。
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後日、ポストにはしっかりと慰謝料諸々が入っていた。