何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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リインフォースのグッズが欲しい今日この頃。


第二章第一話

 

 

 P・T事件から時は流れ、地球は平和な時間を過ごしていた。

 その事件にリンディの依頼で関わってしまったファンは、今はアースラから離れ、地球の海鳴市へ来ていた。

 

 

「あ~やべぇ……」

 

 

 しかし観光をしている訳ではなく、落ち込んだ気分を晴らそうとしているようだった。

 何故、彼が落ち込んでいるのかと言うと、それはリンディから受け取った手紙の内容である。

 

 

『拝啓、お日柄も良く――は、どうでも良いですわよね。ファン、貴方は少々限度というモノを知るべきですわ。だ・か・ら、そろそろ帰らせていただきます。ちゃんと“代償”を払って頂きますよ? うふふふ……』

 

「……リンディ、助け―――」

 

「知らないわ♪」

 

「うわああああん!」

 

 

 という事があったのだ。

 一見、礼儀正しい手紙に思えてそうではない手紙に書かれている事は、『代償』という言葉から恐らく『ゼロ』に関する事なのだろうが、ファンはそれをとても恐れているようだった。

 

 

「どうしよ……アイツには何を払ったら……。また眠れない日々が続いてしまうのか……!」

 

 

 ファンは街を歩き回り、打開策を考えていたが、これと言って良い考えが浮かばなかった。

 因みに、ファンの今の格好はロングコート姿ではない。

 一度その姿で街を歩いたのだが、その時の周りの眼が痛かったらしく、今は地球に合わせた、いや普通に合わせた格好……灰色のシャツに黒の上着、黒の長ズボンといった格好である。

 

 

「……ん? 図書館か……何か良い資料が見つかるかも……」

 

 

 ファンは目の前に現れた図書館に希望を託し、中へと入っていった。

 

 

「ほっほー? 結構広いのな。ここならアイツが喜ぶような物が見つかるかも」

 

 

 ファンは中を見て回る事にした。本が大量にあり、様々な種類の本があった。

 

 

「何かあっかなー……あ?」

 

 

 ファンはある場所に視線を奪われた。そこでは一人の車椅子の少女に、金髪の少年が話かけていた。

 

 

「俺、クライシス・バーメリオン。君の名前は?」

 

「え、えっと……」

 

 

―――何だ? ここではあんな小さな子達までもがナンパすんのか? けど、嫌がってるよな、あの娘……。

 

 

 誰がどう見てもあの少女に強引に詰め寄っているにしか思えない。

 ファンは頭をかきながらその少女少年に近寄った。

 

 

「君って良くここにいるよね? 何か面白い本でもあるの?」

 

「え、えっと……その……」

 

「はい、そこまで」

 

 

 ファンは二人の間に入って詰め寄っている少年を少女から引き剥がした。

 

 

「何だよ、おっさん?」

 

「おっさんじゃねぇ、お兄さんだ。それにここは図書館だ。ナンパする所じゃない。それと、この娘が嫌がってるだろ」

 

「は? そんな訳ないだろ。な?」

 

「うっ……」

 

 

 少女は肩を震わせて眼を逸らした。少年は驚いた表情になり、変な事を言い始めた。

 

 

「馬鹿な……!? 俺にはニコポとナデポがあるのに!?」

 

「……ここにも頭のイってしまった哀れな子が……」

 

「何!? このおっさんが!」

 

「だ~か~ら~! 俺はおっさんじゃなくてお兄さんだ!」

 

「黙ってろ! 俺の邪魔すんな!」

 

 

 少年はファンに掴みかかろうとしたが、ファンに軽くあしらわれて床に尻もちをついた。

 

 

「何しているんですか?」

 

 

 と、そこに男の職員がやって来た。

 

 

「ああ、職員の方ですか? この少年がこの娘を怖がらせてましてね。しかも掴みかかってきまして、追い払ってくださいます?」

 

「え……」

 

「お願いします」

 

「は、はい。ほら君、こっちに来なさい」

 

「お、おい離せ! 俺はオリ主だぞ!」

 

 

 少年は変な事を口走りながら職員に連れて行かれた。

 ファンは連れて行かれた事を確認すると、少女に向き直った。

 

 

「さて、もう大丈夫だ。変な少年は行ったから」

 

「はい……ありがとうございます」

 

 

 少女は安心した表情を浮かべてお礼を言った。

 ファンは周りを見渡したが、この少女の連れの人は見つからない。

 

 

「見た所一人なようだが……誰かと一緒?」

 

 

 ファンは膝を曲げて、少女の視線に合わせて尋ねた。

 

 

「後から来ます」

 

「そっか。いいかい? もしまたあんな子がやって来たら、今度はところ構わず大声で助けを呼ぶんだ。そうすれば誰かが助けてくれるから」

 

「は、はい」

 

「あ、そうだ」

 

 

 ファンは財布を取り出し、名刺を取り出した。

 

 

「これも何かの縁だ。何か困った事があればここに連絡しなさい。子供なら何時でも無料でサービスだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ファンは何でも屋エリスの連絡先を渡し、手を振って少女から離れた。

 

 

「ファン・フィクス……外人さんやったんや……」

 

 

 少女は少しだけ微笑み、本を借りて図書館を後にした。

 

 

 

 

 結局、ファンが探しているものは見つからず、そのまま時は過ぎて行った。

 

 だがファンに落ち込んでいる暇は無かった。

 なのはが何者かに襲われ、本局の医療機関に運ばれたのだ。

 同時に、蓮夜も大怪我を負っていた。

 ベクトル操作で全てを弾き返す事が出来るあの蓮夜が、傷だらけで治療を受けているのだ。

 

 

「蓮夜……」

 

「けっ、笑えよ。こんな不様な姿―――」

 

「一体どんな奴と戦ったんだ!? 強かったか? 俺と渡り合えそうだったか!?」

 

「何嬉しそうな顔してんだよ!? 何? お前子供が大怪我してんのに、そんなに戦いたいのか!?」

 

「当たり前だろう!」

 

「死んどけや!」

 

 

 蓮夜はファンを弾き飛ばそうとしたが、『ゼロ』により消される。

 ファンは子供のように眼を輝かせてどんな相手なんだろうと想像していた。

 

 

「……相手は俺と同じ子供だぞ?」

 

「蓮夜、お前が何とかしろ」

 

「だと言うと思ったよ」

 

 

 ファンは落ち込み、蓮夜の肩に手を置いてそう言った。

 蓮夜は面倒くさそうに手を払い、先の戦いを思い出した。

 

 

―――あの野郎……まさか木原の戦法を完璧にこなしてくるなんて……。しかも俺より身体能力も、魔力も上……。ははっ、おもしれぇ……。主人公には強敵が必要だよな……!

 

 

「蓮夜、二ヤつくな。キモい」

 

「アンだと!? もういっぺん言ってみやがれ!」

 

 

 大怪我を負っているというのに、元気な蓮夜だった。

 

 

「んで? 今回はどんな事件に巻き込まれてんだよ?」

 

「チッ……テメェも知ってんじゃねぇのかよ? 『闇の書』って奴だよ」

 

「っ………!?」

 

「……あん? んだよ?」

 

「あ、いや……何でもない」

 

「………?」

 

 

 ファンは蓮夜から目を逸らした。

 蓮夜はそれを疑問に感じたが、ファンに対して一々反応していたら疲れることを、短い期間でだが学習している。

 よって、無視することにした。

 

 

 

 

 ファンは本局でプレシアと面会している最中である。

 

 

「どうだ? フェイトとの時間は?」

 

「ええ、それなりに有意義な時間だわ。貴方のおかげよ」

 

「……顔、元に戻ったな」

 

「え?」

 

「前までは窶れてて、皺だらけだったのに、今では元通り、美人になってるよ」

 

「………何も出ないわよ?」

 

「いらねぇよ……」

 

 

 ファンはズッコけて頭を抱えた。

 

 

「……なあ、プレシア」

 

「何かしら?」

 

「……もしさ……家族が……敵に回ったら……どう思う?」

 

「何を言って……」

 

 

 プレシアは気付いた。ファンの組んでいる手が、僅かだが震えているのを。

 だから驚いていた。あの何時も自由気ままでお気楽なファンが、まるで泣き出しそうな表情をしていることに。

 

 

「何かあったの……?」

 

「……いや、ちょっとな」

 

「……それでも私は、家族を大切にするでしょうね」

 

「………」

 

「これ、貴方が教えてくれたことよ?」

 

「……そうだったな」

 

 

 ファンは気が楽になったのか、笑みを見せた。

 

 

「もう後ちょいで出られるから、それまで辛抱しておけよ」

 

「ええ、ありがとう」

 

 

 ファンは面会を終えて、帰る場所へと帰った。

 

 

 

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「ん、フェイトにアルフか」

 

 

 本局の通路を歩いていると、フェイトとアルフと出会った。

 フェイトはファンの事をお兄ちゃんと呼んでいる。

 本当はアリシアの記憶なのだが、それがフェイトに複写されている。

 ファンはフェイトをもう一人の義妹として接していた。

 

 

「なのはの様子はどうだ?」

 

「うん。大丈夫だって。でも暫くは魔法は使えないんだって」

 

「そうか……」

 

 

 ファンは表情を少し落とした。

 

 

「どうしたんだい? あの映像を見てから元気が無いぞ?」

 

「……いや、何でも無い。にしてもアルフ……」

 

 

 ファンは手をワキワキさせて笑みを浮かべた。

 アルフは一歩後ろに引いて引き攣った笑みを浮かべた。

 

 

「その耳と尻尾……モフモフさせろや!」

 

「ああ、もうまたかい! ぜーったい嫌だ!」

 

「お兄ちゃん、セクハラになっちゃうよ」

 

「大丈夫だ! 本人の同意があれば――」

 

「強引にしてはダメよねぇ」

 

「………」

 

 

 ファンは後ろから聞こえた悪女の声に冷や汗をダラダラ流した。

 

 

「……さ、仕事仕事~」

 

「そうね。私もお仕事しようかしら」

 

 

 バインドでファンの手足を拘束し、何処かへ連行していった。

 

 

 

 

「へ? 引越し? 誰が?」

 

 

 食堂でファンの耳に、リンディから地球に引っ越すと伝えられた。

 

 

「だから、今回の事件の司令部、なのはさんの家の近所にすることにしたから」

 

「へぇ~……で?」

 

「勿論、貴方も来るのよ」

 

「何で? 俺はもうここで働く事は無くなったし、もう関係ないだろ」

 

「だ・か・ら、今回も依頼するわ」

 

「断る」

 

「あら」

 

 

 ファンは即答で断った。リンディは何時もの事だと困らずに隣の席に座った。

 

 

「またそう言って、どうせ最後は――」

 

「悪いが今回ばかりは駄目だ」

 

「ファン……?」

 

 

 ファンの眼は本気だった。絶対に以来を受けないと頑なに決心していた。

 

 

「今回は俺個人で動く。誰にも邪魔させやしない」

 

「……何か知ってるの?」

 

「………」

 

 

 ファンは沈黙を貫いた。

 リンディはこうなったファンを一度だけ見たことがある。

 過去にある事件で、“闇の書”という物の事を聞いたとき、ファンは今と同じ状況になっていた。

 こうなったらファンは絶対に首を縦に振ってくれない。

 

 

「……闇の書、貴方にとって一体なんなの?」

 

「………」

 

「どうしても依頼を受けてくれないの?」

 

「………」

 

「……内容は単に戦闘時の協力。貴方の戦いが必要なの。蓮夜くんが戦った相手は強敵。まだ他にもいるかもしれない。だから貴方のその力が必要なの。だから、お願い」

 

 

 リンディは頭を下げた。

 それほどファンの力を欲しているという事なのだろう。

 ファンは何か考えているのか、目を閉じていた。

 やがてゆっくりと開き、口も開いた。

 

 

「言っておくが、この事件だけは俺の思うように動く。それを頭に叩き込んでおけ」

 

「じゃあ……!」

 

「報酬は後で考える」

 

 

 そう良い残し、ファンは食堂を出た。その時、ファンの拳は握り締められていた。

 

 

 

 

――お父さん。誕生日、何が欲しい?

 

――ん? そうだなぁ……何でもいいや。ただお前の料理食って、お前達と笑ってたら。

 

――もう、本当に欲が無いなぁ。前はアレが欲しい、これが欲しいって言ってたのに。

 

――お前みたいな可愛い娘を持つとな、他は要らなくなるんだ。

 

――ヤミちゃんも?

 

――そいつは欲しいな。色々な意味で。

 

 

 それは、ある父親の、ある日の思い出。父親は娘を後ろから抱きしめて自身の誕生日の話をしていた。

 二人はとても明るい笑顔で溢れていた。

 とてもありきたりな時間で、とても幸せそうな二人だった。

 

 

――お父さん。

 

――んー?

 

――大好きだよ。

 

――嬉しいな……。俺も大好きだよ、“ファン”。

 

 

「はあっ―――!?」

 

 

 ファンは飛び起きた。全身は汗でびっしょりで、息も酷く乱れていた。

 

 

「はぁ―――はぁ―――!」

 

 

 身体も震え、ファンは丸くなるようにして頭を抱えた。

 

 

「くそぉ……! 俺は……俺はぁ……!」

 

 

 目から涙が滲み出てきだした。まるで何かを後悔しているかのように泣いていた。

 

 

「“ファン”……!」

 

 

 

 

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