何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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そういえば、はやての誕生日がついこの間だったみたい。

おめでとーーー!!





第二章第三話

 

 

 

 ファンは今夜行なわれる、はやての家での鍋パーティの為の買い物に、はやてとはやて曰く親戚のシャマルと来ていた。

 

 

「そやけど、最近みんなあまりお家におらんようになってしもたね」

 

 

 はやてがふと思ったことをシャマルに言った。

 

 

「ん? そうなのか?」

 

「え、ええ…まあその……何でしょうね?」

 

 

 シャマルは笑顔で誤魔化そうとしたが、どう見ても誤魔化せていない。

 

 

「あ、別に私はええよ。皆が外で何かやりたい事があるんやったら、それは別に……」

 

「はやてちゃん……」

 

「私は、元々一人やったしな」

 

 

 はやてはそんなシャマルに笑顔を見せる。

 だがシャマルは笑みを消してはやての前に出た。

 

 

「はやてちゃん、大丈夫です! 今は皆忙しいですけど……その、すぐにまたきっと……」

 

「……そっか! シャマルがそう言うんなら、そうなんやね!」

 

 

 はやては笑顔を見せて並べてあるお肉を取った。

 

 

「今夜はファンさんとすずかちゃんも来てくれるし、お肉はこんなもんかな」

 

「はい」

 

「外は寒いし、今夜はやっぱ暖かい鍋やね」

 

「はい」

 

 

 ファンはそんな家族のような光景を静かに見守っていた。

 まるで彼女達を通して何かを見ているように。

 

 そして買い物は済み、ファン達は外に出た。

 そこでシャマルが皆を迎えに行くと言いだし、ファンとはやては先に帰る事にした。

 

 

「にしても、今日会ったばかりの男にこう何で簡単に任せるかねぇ……」

 

「んー、ファンさん、ええ人そうやもん」

 

「そうか? こう見えて色々と悪いことしてんだぜ?」

 

「どんな?」

 

「んー、まあ色々?」

 

「ふふ、何ですのそれ?」

 

 

 ファンははやてと色々な会話しながらはやての家へと向かった。

 それから家に到着し、鍋の用意をはやての指揮の下、テキパキと進めていく。

 

 

「あ、すずかちゃんかな?」

 

 

 インターホンが家に鳴り響き、ファンが対応しに出た。

 

 

「はいはーい。お、いっらっしゃい……って、俺が言う台詞じゃないか」

 

「ファンさん、こんばんわ」

 

「はい、こんばんわ」

 

 

 ファンはやってきたすずかを迎え入れた。

 

 

「すずかちゃん、いらっしゃい! 」

 

「こんばんわ、はやてちゃん!」

 

「後は食材を切るだけだし、俺に任せて二人はお話してな」

 

「そんな、ファンさんお客さんやのに」

 

「いいって、いいって。その代わり、鍋奉行は任せた」

 

「ふふん、任された!」

 

 

 ファンは一人台所に立ち、食材を切っていく。

 刀を扱うゆえか、眼にも留まらない速さで食材を切っていく。

 後ろでは、はやてとすずかが楽しそうに会話を弾ませていた。

 

 

 

 

 海鳴市の夜の街。そこには結界が張られ、中では闇の書のプログラム達となのは達が対峙していた。

 

 

『Accel Shooter』

 

「シューート!!」

 

 

 幾つもの誘導弾がなのはのデバイス、『レイジングハート・エクセリオン』から放たれる。

 

 

「チィ!!」

 

 

 それを相手にするのは、紅いゴスロリの格好をしたオレンジ色の髪を後ろで二つに分けて三つ編みにしている少女だ。

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁああっ!!」

 

 

 少女、ヴィータは四つの鉄球を取り出し、持っている鉄槌型のアームドデバイス『グラーフアイゼン』で鉄球を打つ。

 鉄球は紅い魔力を纏い、なのはが放った魔力弾を相殺していく。

 

 

「ええい!」

 

 

 だがなのはの魔力弾の方が多く、空を駆け回って弾を避ける。

 

 

「はあぁぁぁぁああ!!」

 

「うおぉぉぉぉおお!!」

 

 

 変わってフェイトとシグナムが、自分のデバイス『バルディッシュ・アサルト』と『レヴァンティン』をぶつけ合う。

 

 

「くっ!」

 

「ふっ!」

 

 

 凄まじいスピードで空を駆け回り、次の瞬間にはデバイス同士をぶつけ合っていた。

 

 

「でりゃあぁぁぁぁああ!!」

 

「ごおぉぉぉぉぉぉぉおお!!」

 

 

 地上では、アルフと白い髪に狼の耳を生やした男性、ザフィーラが拳をぶつけ合っていた。

 

 

「この―――デカブツがぁぁぁぁああ!!」

 

「ぬえぇいいぃぃぃぃぃぃいい!!」

 

 

 周りに魔力波を撒き散らしながら拳をぶつけ合っていく。

 

 そして、一番激しい戦闘をしているのが、黒島蓮夜と、赤髪の少年―――『ルシファル・マディガン』。

 ルシファルはデバイスである籠手『ネメシス』を身に付け、白いコートを身に纏っていた。

 対する蓮夜は、紅い刀身を持つ『紅蓮』を両手に持ち、あの正義の味方を目指した英雄が着ていた霊装を身に纏っていた。

 

 

「火炎斬波・絞牙(こうが)!」

 

 

 紅蓮から放たれる炎の斬撃が渦巻くように収束して行き、ルシファルへ襲い掛かる。

 

 

風塵烈波(ふうじんれっぱ)!」

 

 

 ルシファルの掌から放たれる風の収束砲が、炎の斬撃をかき消していく。

 

 

「チィッ!」

 

「ハハハッ! 雑魚が! オリ主に勝てる訳ないだろ!」

 

「ほざけ! テメェ見たいなクソが主人公な訳がねぇだろうが!」

 

「じゃあ、我に傷の一つでも与えてみろ! まあ、そのベクトル操作も魔力も身体能力も意味を成さない! そんな屑のような力で勝てる訳ないだろうがな!」

 

「一々煩せぇ野朗だ……。大体、テメェの目的は何だ!?」

 

「目的? そんなもの決まっている! この最強の我が! この世の女達を愛でる事だ!」

 

 

 ルシファルは歪んだ表情を浮かべ、空を見上げて両手を広げた。

 

 

「ケッ、王様気取りかよ」

 

「いや違うさ。この我こそ最強の王だ! 最強の力を授かり、全世界を統べる覇者となる!」

 

「はっ! 随分とまぁ、死亡フラグを建てまくる王様――だな!」

 

 

 ベクトル操作と身体能力を駆使し、ルシファルに近付く。

 

 

「無駄だ」

 

 

 ルシファルは高速で近付いてくる蓮夜の腹に左拳を叩き込んだ。

 

 

「ふんっ!」

 

「がはっ!」

 

 

 通常ならば反射で弾き返されるのだが、ルシファルが行なっているのは特殊な攻撃。

 拳が当たる寸前に引き戻し、デフォルトでベクトルの向きを逆にするの能力によって引き戻す力を逆にさせているのだ。

 だからと言ってその能力をオフには出来ない。

 オフにすれば、魔法を添加した拳を叩き込まれる。

 反射を越えるのは純粋な拳だけなのである。

 

 

「フハハハハッ! そらどうした!? もっと我を楽しませて見せろ!」

 

 

 蓮夜をビルに叩き落し、全体重をかけた蹴りを蓮夜の腹に落とした。

 

 

「がああっ!?」

 

「ん? 加減はしたつもりなんだがな。骨の一本は逝ったか?」

 

「ぐっ……ケッ! こんな攻撃、おっさんに比べたらどうって事ねぇんだよ!」

 

 

 蓮夜は未だルシファルの足を掴もうとしたが、その前に顔面に拳を叩きこまれた。

 

 

「んん? 今足を掴もうとしたな? 雑魚から我に触れようとは万死に値するぞ!」

 

 

 足を持ち上げ、また腹に叩き落した。

 

 

「ごはッ!?」

 

「そらッ! 立ってみせろよ! 立って我を楽しませろ!」

 

「ぐっ―――ぁぁぁアアアああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 

 蓮夜は咆哮を上げて何度も蹴ってくるルシファルの足から退けようとした。

 それを許さず、ルシファルは蓮夜の腹を蹴りまくる。

 

 

「冥土の土産に教えてやろう。我は先ず手始めに八神家を手篭めにし、それからなのはにフェイト、アリサにすずか、そして後にキャロやヴィヴィオ、戦闘機人、更にその後の女共を全て手篭めにする!」

 

「がはっ―――そんな穴だらけのクソみたいなっ―――ぐっ! 夢物語が現実になるかってんだ!」

 

「なるさ! 貴様のような邪魔者を全て消し、あいつらから同情を引くようにし、その優しさに漬け込み、我の力を見せ付ければ簡単な事だ! 何せ、我は真の主人公だからな! 無理なら我の玩具となるだけだ!」

 

「があっ!?」

 

「安心しろ、リインフォースも救い出してやるさ。だからあの世で我の栄光を指を咥えて見ておれ!」

 

 

 ルシファルは左手を手刀の形にして蓮夜の心臓部分に向けて振り落とした。

 

 

――やべぇ……このまま死んじまうのかよ……! ンだよ……せっかくあの“地獄”から抜け出して来たってのに……せっかく“独り”じゃなくなったのに……!

 

 

 蓮夜は願った。

 まだ死にたくない。

 純粋に、オリ主がどうとか関係なく、純粋に生きたいと願った。

 

 

――ざっけんな……! 俺は……もう“独り”は嫌なんだよぉぉぉぉぉおおお!!!

 

 

「っ、何!?」

 

 

 蓮夜は力を振り絞り、ビル全体をベクトル操作で破壊した。

 それによりバランスを崩したルシファルは蓮夜から少し離れてしまい、蓮夜はその隙に崩れ行くビルの中に逃げ込んだ。

 ルシファルは空を飛んで崩壊に巻き込まれるのを避けた。

 

 

「悪足掻きを……! 雑魚は雑魚らしくさっさと死ねばいいのを……っ!」

 

 

 ルシファルを巨大な竜巻が襲い掛かる。

 その竜巻にはビルの残骸が混ざっており、それらがルシファルに襲い掛かる。

 

 

「この程度の攻撃、どうって事ないわ!」

 

 

 ルシファルは拳と蹴りで瓦礫を破壊していく。

 竜巻には呑み込まれず、ただ襲い来る瓦礫を潰していく。

 

 

「ぜらああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

「っ!」

 

 

 蓮夜が瓦礫の向こうから竜巻を纏いながらルシファルに襲い掛かってきた。

 

 

「そんな単調な拳が当たるものかぁ!」

 

 

 ルシファルは蓮夜に拳を放とうとしたが、その前にバインドで高速されてしまった。

 

 

「こんなものぉ!」

 

 

 だがそのバインドは数秒も持たず砕かれてしまった。

 だがその数秒の間は無防備になっていた。

 蓮夜はその数秒の間にルシファルの懐に完全に入っていた。

 

 

「何ィ!?」

 

「弾けろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」

 

 

 蓮夜は紅蓮ではなく自らの拳をルシファルの顔面に叩きこんだ。

 そしてベクトル操作でルシファルの血液を逆流させた。

 

 

「ゴハァッ―――!?」

 

 

 ルシファルの身体が次々と弾けていき、血が噴き出した。

 ルシファルはそのまま地上に落ちていき、蓮夜はダメージが大き過ぎたのか、フラフラと地上に降り立ち、その場に倒れこんだ。

 

 

「ぐっ……様ァねぇなぁ……。オリ主がこんなんじゃ……」

 

「そうだな。真の主人公というのは、その圧倒的な力を見せつけ、圧倒的までに敵を叩き潰すものだ」

 

「―――な―――に―――!?」

 

 

 倒れている蓮夜の前に、服だけが血だらけのルシファルが立っていた。

 

 

「馬鹿な……!? 完全に弾けとんだ筈だ!」

 

「ああ。この我最大の失態だな。雑魚といえど能力だけは一人前だった」

 

「何故……!?」

 

十二の試練(ゴットハンド)

 

「なっ……!?」

 

「Aランク級の攻撃でしか傷つかない上に、十二回も殺さなければならない。今のは能力ゆえに通用し、一回分だけ殺せた」

 

「この……クソ野朗……!」

 

 

 蓮夜はもう立てない身体でルシファルを睨みつけた。

 ルシファルは爪を立て、蓮夜の心臓に狙いを定めた。

 

 

「光栄に思え。貴様は我の力の一つを我が油断していたとは言え、引き摺り出したのだ。褒美に永遠の眠りを授けてやろう!」

 

「くそぉ……!」

 

 

 蓮夜は死を覚悟した。

 痛いのだろうか。自分は一度死んだけど、こんな死に方はしなかったし、一瞬で死んでしまったから何も覚えていないし……。

 

 

「では、死ね!」

 

 

 ルシファルは手刀を振り被り―――。

 

 

『 吹 き 飛 び な さ い 』

 

 

 何処からか聞こえてきた女性に声と共に出現した赤黒い魔力によって、ルシファルの上半身が消し飛んだ。

 

 

「え……?」

 

 

 蓮夜は何が起こったか理解できなかったが、我に返り、力を振り絞ってベクトル操作でルシファルの下半身から遠ざかった。

 ルシファルの下半身からは血が噴き出していたが、やがて瞬時に再生しだし、上半身裸で完全再生した。

 

 

「何だ? 他の転生者? それともイレギュラーか?」

 

 

 ルシファルは魔力が飛んできた方向を睨みつけたが、やがてその表情を厭らしい笑みに変えた。

 

 

「ほぅ……」

 

「……?」

 

 

 蓮夜もその方向に眼を向けて驚いた。

 姿形に驚いたのではない。

 その存在、その気配の異様さに驚いた。

 

 

「あらあら、綺麗に再生しましたわね~」

 

 

 ゆっくりと、ゆっくりと近付いてくるソレは笑みを零し、倒れている蓮夜の隣に立った。

 

 

「まだ生きてますわね?」

 

「え…あ、ああ……」

 

 

 ソレは蓮夜の顔を覗きこみ、笑みを浮かべた。

 

 

「あ、あんたは……?」

 

「私はエスティナル・ヴァティ。ファン・フィクスの相棒ですわ」

 

 

 長く艶やかな黒髪をポニーテールにし、瞳は紫色、女性ならばほとんどの人物が羨ましがるスタイル。

 更に身に纏うのは正しく闇だった。

 黒のインナー、丈の短い黒のピッチリしたスカート、黒のロングブーツ、黒のアームガードに黒の指が出るグローブ、そして黒の半袖のロングコート。

 白い素肌は顔と指と絶対領域しか晒していない。

 

 

「おっさんの……?」

 

「あらあら、駄目ですわよ。ファンにおっさんはダブーですわ」

 

 

 指を立てて唇に当てる。

 その一つ一つの仕草がどうしても色気を感じてしまう程美しく、魅力的だった。

 

 

「そこの女」

 

「はい、何でしょう?」

 

 

 ルシファルが厭らしい笑みを消さないままエスティナルに話しかけた。

 

 

「貴様は一度死んだ身か?」

 

「うふふ……さあ、どうでしょう?」

 

「まあ、よい。この世に存在している時点で我のものであることは確かだ。大人しく我の下へ来い」

 

「嫌ですわ。私に相応しい殿方はこの世でただ一人ですから」

 

「ではその男より我の方が上だと証明して見せよう」

 

「それは無理ですわ。だって、彼は存在している時点で何者にも勝りますから。まあ、私がいなければなりませんけれど」

 

 

 ルシファルの言葉にエスティナルは動じず、笑みを絶やさないで答える。

 ルシファルは近くにいないから分からないのか、すぐ隣にいる蓮夜には感じ取れていた。

 

 彼女の闇が、畏れが。

 蓮夜の身体を震えていた。

 彼女の中の闇に本能的に畏れを抱いていた。

 

 

――何だ、この怖さは……!? 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い! まるで死……そのもの……!

 

 

「良い、良いぞその眼! その強さ! その強き意志を屈服させ、我の物になる時の快感が楽しみだ!」

 

「ここまで行くと清々しますわね」

 

 

 エスティナルは両手に赤黒い魔力で出来た雷を発生させる。

 

 

「ん……?」

 

 

 ルシファルは空を見上げて眉をひそめた。

 

 

「チッ、どうやら時間のようだ」

 

「あら……」

 

 

 エスティナルと蓮夜も空を見上げた。上空には黒い雷の球体が出現していた。

 

 

「命拾いをしたな、雑魚。次に姿を見せた時が最期だ」

 

 

 そういい残し、ルシファルは空を飛んで消えていった。

 

 

「まず……! 闇の書の魔力爆撃……!」

 

「あらあら、では」

 

 

 エスティナルは笑みを浮かべたまま、右腕を掲げて赤黒い魔力の結界を自身と蓮夜の周りに展開した。

 次の瞬間、上空にある雷が落ち、街を囲んでいた結界を貫き、結果以内を爆発で飲み込んだ。

 

 やがて爆発は止み、エスティナルは結界を消した。

 

 

「もう、危ないですわー」

 

 

 ちっともそんな素振りは見せず、蓮夜の方に顔を向けた。

 

 

「では、皆さんのところへ帰りましょうか」

 

「あ…はい……」

 

 

 蓮夜は本能的に察した。

 エスティナルに逆らってはいけないと。

 逆らえば一瞬で消される。

 否、消えるよりももっと恐ろしい事になりそうだと。

 

 

 

 

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