何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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 奈々さんのライブに行きたい今日この頃。





第二章第四話

 

 

 

 ファンは屋根の上に一人、星空を眺めながら寝転んでいた。

 やがて閉じていた瞼をゆっくりと開き、出現させた四つの紫色の魔力剣を玄関前に射出した。

 

 

「っ!」

 

 

 玄関前にいた四つの影、シグナムとヴィータ、シャマルにザフィーラがその場から飛び退き、デバイスを起動させた。

 

 

「おい、お前等」

 

 

 ファンは一瞬で彼女達の前に現れ、怒気を込めた眼で睨みつけた。

 

 

「あんだテメェ!?」

 

 

 ヴィータがファンにデバイスを向けて威嚇する。

 

 

「貴様は……」

 

「貴方……」

 

 

 ファンを知っているシグナムとシャマルはファンの顔を見て反応する。

 

 

「お前等、何処で、何をしていた?」

 

「何でテメェに教えなきゃならねぇんだ! はやてに何した!?」

 

 

 ヴィータがファンの頭めがけてデバイスを振り下ろした。

 

 

「………」

 

 

 だがファンに触れる前に、ファンから一瞬だけ噴き出した魔力によってデバイスは弾かれた。

 

 

「なっ!?」

 

「何処かで結界を張っていたな。闇の書の蒐集か?」

 

「何でそれを!? テメェ管理局か!」

 

「だったら今頃はやては取り押さえられているな」

 

「この――はやてを返せぇ!!」

 

 

 ヴィータが再びデバイスを振り上げたが、振り下ろす前にヴィータの周りに紫色の魔力剣が出現し、動きを止められた。

 

 

「何で連絡を寄こさない。はやてが心配していたぞ」

 

「えと、その……」

 

「戦闘中で、そんな時間が無かった」

 

 

 シグナムがシャマルの代わりに答え、ファンは溜息を吐いた。

 

 

「……はやての身体は、やはり蝕まれているのか?」

 

「何故それを知っている?」

 

 

 ザフィーラが牙を見せて問うが、ファンは表情を一瞬だけ歪め、口を開いた。

 

 

「なあ、それははやてが本当に望んだのか?」

 

「煩せぇ! テメェに何が分かる!」

 

「……ある父と娘がいてな、あるとき娘が病気で倒れた」

 

「あん?」

 

 

 いきなり語り出したファンに、ヴィータがイラつく。

 

 

「父は娘を助ける為に世界を駆け回った。病気の娘を独りぼっちにして……。娘は父と一緒に居たいと願っていたのに、父は娘を独りにして、そして殺してしまった」

 

 

 ファンはシグナム達の眼を見詰めた。

 

 

「はやてを、その娘と同じ目に合わすな」

 

『っ……』

 

 

 ファンの警告に、シグナム達は息を呑んだ。

 ファンはシグナム達の横を通り、帰路へと付いた。

 

 

「はやてはすずかの家に泊まっている。鍋の食材と出汁は冷蔵庫に入れてある。……電話番号を書いてあるから連絡ぐらいしてやれ」

 

 

 ファンはそう言い残し、その場から消えた。

 残されたシグナム達はすぐに家に入り、はやてに電話して謝罪を入れた。

 

 

 

 

「うぃ~、ただいまああ!?」

 

 

 ファンが帰宅した瞬間、お皿が手裏剣の如く飛来してきた。

 ファンは咄嗟に避けたが、皿はドアにぶつかり砕け散る。

 

 

「あっぶー……! 何すんだよ!?」

 

「あら、戦闘が始まっていたのにも拘らず、姿も見せないで一体何をしてたのかしら~?」

 

「地球で出来た知り合いの家で鍋食ってた」

 

「滅!」

 

「うわっ!? 包丁は無いだろ! ってか何処の夫婦喧嘩だ!」

 

「………」

 

「ごめん! 謝るから無表情で魔力弾飛ばさないで!」

 

 

 玄関で土下座をするファンに向けて展開した魔力弾を掃射準備に入るリンディ。

 それを止めたのはエスティナルだった。

 

 

「はい、そこまでにしてくださいな。私の大事な大事なパートナーが死んでしまったらやーですわ」

 

 

 その瞬間、ファンは玄関を突き破って夜空の彼方へ消えていった。

 

 

「あらあら、うふふ……」

 

 

 エスティナルは笑みを浮かべて空間を切り開き、その中に腕を突っ込んだ。

 するとその空間の中からファンが引っ張り出された。

 

 

「はい、ご苦労様」

 

「―――あれぇ!? 何でぇ!?」

 

「マーキングをしてましたから、一度限りですけどここの空間と繋げて引っ張り出しましたわ」

 

「去らば!」

 

「だーめっ」

 

「べぶぅ!?」

 

 

 またもや逃げ出そうとしたファンの両手両足をバインドで拘束する。

 バランスを失ったファンは顔面から床に倒れた。

 

 

「さぁ、さっそく代償を払ってもらいますわ」

 

「い、いや待たれい! 暫し待たれい! この状況でそれ言いますか!?」

 

「言いますわ。もう今というこの瞬間をどれだけ待ちわびたか……。百六十八時間は覚悟してもらいますわよ!」

 

「一週間!? いや待て! それは無茶だ!」

 

「大丈夫です。私も頑張りますから!」

 

「リンディぃぃぃぃぃぃ! ヘルプミィィィィィィ!!」

 

「死になさい、屑男」

 

「んなっ!?」

 

 

 退路は断たれた。

 ファンはじりじりと近寄ってくるエスティナルから離れようとバインドを破壊しようとするが、あまりにも強度が凄まじく、まったくもってビクともしない。

 

 

「では……」

 

「た、たたたたた助けてぇぇぇぇぇええ!!!」

 

「す、ストーーーーーップ!!!」

 

「まあ……」

 

 

 エスティナルの手がファンに触れようとした瞬間、金色の何かがもの凄いスピードでファンを助け出した。

 

 

「お、お兄ちゃんに何するの!?」

 

「ふぇ、フェイト……! マイシスター!」

 

 

 フェイトはファンを背にしてエスティナルから庇う。

 

 

「お兄ちゃん……ファン? 何時からそういう趣味に?」

 

「違う! 断じて違う!」

 

「ですわよね~。貴方は包容力があって胸が大きくてお姉さんのような女性が好きですものね~」

 

「スケベね」

 

「お兄ちゃん……」

 

「待って!? そんなの人の勝ってじゃん!? 何でそんなに引かれなくちゃならないの!?」

 

 

 リンディは当然、フェイトも少しファンから距離をとり、若干悲しそうな表情になった。

 

 

「ええい! さっさと離せ! 代償はちゃんと払うから!」

 

「もぅ、仕方ないですわね~」

 

 

 エスティナルがバインドを消した直後、ファンは消えるようにしてリビングに逃げ込み、クロノとエイミィが座っているソファーの後ろに隠れた。

 

 

「まあまあ、逃げ足の速いこと」

 

「うっせ! 逃げ切る! 何か他の……ん?」

 

 

 ファンは視界の端に映るミイラ男に意識が向いた。

 

 

「……蓮夜か?」

 

「……ケッ」

 

 

 蓮夜が全身包帯だらけで床に座っていた。

 蓮夜は不貞腐れた表情でベランダの窓から空を眺めていた。

 

 

「……どうしたんだ?」

 

「えっと、蓮夜くん……前に戦った子にやられたの」

 

「………お前らは無事か?」

 

「はい」

 

 

 ファンは蓮夜に近付き、蓮夜の腕を掴んだ。

 

 

「何しやがる!」

 

「まあまあ、大人しくしてなって」

 

 

 一応手当てはしているのだろうが、怪我が深すぎたのか、まだ全然治っていない。

 

 

「こりゃこっ酷くやられたな」

 

「うるせぇ! あんな奴、俺が本気を出せば―――」

 

「勝てたのか?」

 

「っ……クソがっ!」

 

 

 蓮夜は自分とルシファルの力の差を認めざるを得なかった。

 完膚なきまでに叩き潰され、やっと勝てたと思ったのにまだあと十回も倒さなければならない。

 

 

「ま、自分の弱さを知らなければ強くはなれないからな」

 

 

 ファンは蓮夜の腕を持ち上げ、左手の掌を蓮夜の腕にそって動かした。

 そして動かし終わると包帯を取る。

 すると傷一つ無い蓮夜の腕が現れた。

 

 

「な、治ってやがる……」

 

「ん~面倒だな。そらっ」

 

「なっ!? 何すんだ!?」

 

 

 ファンは蓮夜の後ろに胡坐をかき、蓮夜を持ち上げて足の上に乗せた。

 

 蓮夜は中身は相応の歳を取っているのだろうが、身体は僅か十歳、小学三年生である。

 身長もそれ相応であり、大の大人と比べれば小さいほうである。

 そして転生者たちは極一部を除いて母親から生まれてくる。

 故に、精神が身体に合わせるように引っ張られていく。

 それでも元々強靭な精神な持ち主ならば引っ張られずに成長していく場合もある。

 

 だが蓮夜は違う。

 もう失ったとはいえ、父と母に甘え、無意識の内に年相応の精神に近付いている。

 両親を死なせてしまった故に、歪んだ形で元に近付いてはいるが。

 

 

「子供がこんなに無茶をするもんじゃないぞ」

 

「うるせぇよ……」

 

 

 だからだろうか。

 蓮夜はファンの『ゼロ』により怪我を消されている間、父を思い出していたのは。

 最終的に荒れてしまった父だが、とても優しくて頼もしく、いつもこうして一緒にテレビを見ていた。

 それが何だか懐かしくて、蓮夜はファンを突き飛ばせないでいた。

 

 

「……うっし、全部消したぞ」

 

 

 包帯を全て取ると、蓮夜の怪我は全て消えていた。

 

 

「凄い……。蓮夜さんって、実は凄い人なの!?」

 

「なのはちゃんよ、俺を侮っちゃいけないな。俺がその気になれば世界の一つや二つ、ちょいーっと時間は掛かるが消せてしまうんだぜ?」

 

「まあ、私が居るからこそ、ですけれどね」

 

「それを言っちゃあお終いだよ」

 

 

 ファンは蓮夜を足の上から退かし、冷蔵庫から麦茶を出してテーブルに座った。

 エスティナルもファンの隣に座り、グラスに麦茶を注いだ。

 

 

「さて、話の続きをしましょうか」

 

「アイアイサー!」

 

 

 リンディが手を叩き、エイミィに合図を出す。

 エイミは部屋にモニターを投影し、モニターには闇の書とシグナム達―――『ヴォルケンリッター』が映し出されていた。

 

 

「何の話をしてたんだ?」

 

 

 ファンがエスティナルに小声で尋ねた。

 

 

「貴方が怒りだす話ですよ」

 

「……?」

 

「守護者達は、闇の書に内蔵された“プログラム”が、“人の形”を取ったもの」

 

「っ……」

 

 

 クロノがモニターの前に立ちヴォルケンリッターの説明を始めた。

 するとファンの表情がほんの少しだけ険しくなった。

 

 

「闇の書は転生と再生を繰り返すけど、この四人はずっと闇の書と共に、様々な主の下を渡り歩いている」

 

「意思疎通の為の対話能力は過去の事件でも確認されているんだけどねー。感情を見せたって例は、 今までに無いの」

 

「闇の書と主の護衛。彼らの役目はそれだけですものね」

 

 

 クロノ、エイミィ、リンディが順に繋げて説明する。

 

 

「でも、あの帽子の子、ヴィータちゃんは怒ったり悲しんでたりしてたし……」

 

「シグナムからも、はっきり人格を感じました。為すべき事があるって。仲間と主の為だって」

 

「主の為、か……」

 

 

 フェイトの証言に、クロノが呟く。

 そしてファンも、どこか遠い目をしていた。

 

 

「まあ、それについては捜査に当たってる局員からの情報を待ちましょっか」

 

「転移頻度から見ても、主がこの付近にいるのは確実ですし、案外主が先に捕まるかもしれません」

 

「ああ~! それは分かりやすくていいねぇ!」

 

「だね! 闇の書の完成前なら、持ち主も普通の魔導師だろうし」

 

 

――普通、ね……。

 

 

 ファンはエイミィの何気ない言葉に呆れを覚えた。

 闇の書の主、八神はやての現状を見たらどんな反応するか、ファンは想像して鼻で笑った。

 

 

「それにしても、闇の書についてもう少し詳しいデータが欲しいな」

 

 

 クロノはそう言うと、なのはの肩にフェレット状態で乗っかっているユーノに視線がいった。

 

 

「ユーノ、明日から少し頼みたい事がある」

 

「ん? いいけど……」

 

「あ、そうだ!」

 

 

 リンディが何か閃いたのか、ファンに向けてとても良い笑顔を見せた。

 

 

「ファン、よこしなさい」

 

「……何をだ?」

 

「情報。闇の書の」

 

「……何故俺が持っていると思う?」

 

「持っているんでしょう? 私達が知らない何かを」

 

「………」

 

 

 ファンは頬杖を付いてグラスの縁を指でなぞった。

 エスティナルはファンの隣で事の様子を眺めている。

 

 

「……エスティから聞いたんだが」

 

 

 エスティとはエスティナルの愛称である。

 

 

「リンディとクロノ、お前等、フェイトがちゃんとした人間で、あいつ等は人間じゃないって言ったそうだな?」

 

「え、ええ…そうよ。それがどうしたの?」

 

「主の命令通りに行動する、ただそれだけのプログラムだとか」

 

「はい」

 

「だったらお前らは俺が殺したくなった相手と同じだな」

 

 

 握り締めたグラスに罅が入り、ファンはリンディとクロノを睨みつけた。

 

 

「……どういう事かしら?」

 

「あいつらだって食をする、血だって流す、感情もある、好みだってある。なのにただのプログラムだと? ―――――あまり過ぎた事を抜かしてるといくら貴様らでも容赦はせんぞ」

 

 

 沸々とファンの全身から紫色の魔力が溢れ出し、部屋の電気がバチバチと音を立てて 消えたりついたりしていた。

 

 

「ファン、少し落ち着きなさい。素が出ていますわよ」

 

「……ふん」

 

 

 エスティナルがファンを落ち着かせ、ファンは魔力を引っ込めた。

 

 

「どうして、そんな事を知っているのかしら?」

 

「教えると思うか? 兎も角、お前らがあいつらをそんな眼で見ている限り、俺はお前らに手は貸さない」

 

「それは、契約違反よ」

 

「残念。俺は俺のやり方で関わるといったはずだ。お前等を助けるかどうかは俺の勝ってだ」

 

「そんな! 闇の書は危険な物だって、貴方だって知っているじゃないですか!」

 

 

 クロノはファンに食って掛かるが、ファンに睨みつけられて勢いを失った。

 

 

「だから、闇の書を消せと?」

 

「は、はい……」

 

「だから、闇の書の主を捕らえろと?」

 

「も、勿論です……」

 

「ふん……お断りだ。俺は闇の書を消すつもりは全くないし、主だって捕らえる気は無い」

 

「なら、貴方は何をしにここへ来たの?」

 

「………」

 

 

 ファンは黙った。

 眼を閉じて沈黙を貫いた。

 リンディはそれが気に食わなかったのか、珍しく少しだけ怒りを表に出した。

 

 

「ふざけないで! 闇の書はとても危険な物なの! この世界を危険に晒すわけにはいかないのよ!」

 

「だったら止めてみせろよ。止められるものならな」

 

 

 紫色の魔力剣を出現させ、リンディに見せ付けた。

 

 ファンの眼は本気だった。

 本気で邪魔をするのならファンはこの剣を迷わずリンディに突き立てるだろう。

 

 

「っ……」

 

「……ふん。エスティ、行くぞ」

 

「はい」

 

 

 ファンは服装をシンボルであるロングコートに変え、刀を腰に携えた。

 

 

「お兄ちゃん、何処に行くの!?」

 

「蓮夜」

 

「っ、な、何だよ……」

 

 

 ファンはフェイトを無視して玄関に視線をやったまま蓮夜の名を呼んだ。

 

 

「お前は自分の弱さを知った。ならあとは強くなるだけだ。その覚悟があるのなら、俺の魔力を辿って来い。お前に戦いを教えてやる」

 

「………」

 

 

 何時もなら食ってかかる蓮夜だが、今回は黙っていた。

 

 

「お前ならば、俺を見つけれるさ」

 

 

 そう言い残し、ファンはエスティナルと共に玄関を出た。

 残された蓮夜達は気まずい雰囲気のなか解散し、この日はお開きとなった。

 

 

 

 

 蓮夜となのはとユーノは夜の街の中を歩いて帰宅していた。

 

 

「……大丈夫? 蓮夜君?」

 

「……あぁ」

 

『本当かい?』

 

「……あぁ」

 

「蓮夜君?」

 

「……あぁ」

 

『……もう僕を睨まない?』

 

「……あぁ」

 

「なのは! 今の聞いたよね!? もう睨まないって!」

 

「う、うん、そうだね」

 

 

 ユーノは嬉しさのあまり念話ではなく、素で喋ってしまった。

 

 

「……蓮夜君、本当に大丈夫なの? まだ痛いところがあるんだったらユーノ君に見てもらう?」

 

 

 なのはは蓮夜に顔を覗きこむ。

 何時もの蓮夜ならば嬉しく思うのだろうが、今の蓮夜はボーっとしていて何の反応を示さなかった。

 

 

「……なぁ、なのは、ユーノ」

 

「何?」

 

『何だい?』

 

「……俺さ、初めてあのおっさん以外に殴られて、怪我させられて、正直悔しかった」

 

「うん……」

 

「なのはとフェイトは良い勝負をしていたのかもしれない。でも俺は何も出来なかった。やっと出せたと思ったのに、それもすぐに意味がなくなって……」

 

「……らしくないなー」

 

『だね』

 

「え……?」

 

 

 なのははそっぽを向き口を尖がらせた。

 

 

「蓮夜くんは昔から『俺に敵はいない』って威張ってたじゃん。アレ、ちょっと煩かったけど、今のネチネチした蓮夜君よりずっと良かったよ」

 

『あ、昔からなんだ。でもそうだね。今の蓮夜は全然怖くないよ』

 

「………」

 

 

 蓮夜は呆気に取られてなのはとユーノをただ見ていた。

 

 

「あのルシファル? っていう子に負けちゃったからって、そんなに小さくなるなんて、蓮夜君じゃないよ」

 

『もっとシャキッとしなよ。何時もみたいに、こうギラってしてなよ』

 

「………そう、か。そうだな……。ハハハッ、何やってんだよ、俺は……!」

 

 

 蓮夜は何時ものように眼をギラつかせて笑った。

 それはもう小学三年生には思えないぐらいにギラつかせている。

 

 

「サンキュー、なのは。そうだな、俺に敵はいないだ。俺こそが……!」

 

 

 主人公だ。蓮夜は拳を握り、ルシファルに誰が主人公か思い知らせてやると胸に誓った。

 

 

『あの、僕には?』

 

『アァ? 何だ獣?』

 

『ヒィ!? もう睨まないって言ったのに!』

 

「駄目だよ、蓮夜君。ユーノ君を怖がらせちゃ」

 

 

 ユーノはなのはの頭の後ろに隠れ、なのははユーノの頭を撫でた。

 

 

「ふん……」

 

 

――まあ、今回ばかりは許してやるか。

 

 

 蓮夜は意識を回りに集中してあるモノを探った。

 

 

「……なのは」

 

「何?」

 

「士郎さんと桃子さんにさ……」

 

「うん! ファンさんと泊りがけで勉強してるって言っておくよ!」

 

「……サンキュ」

 

 

 蓮夜はなのはにお礼を言って走っていった。

 

 

 

 

 海鳴市の海が見えるとある場所に、蓮夜は来ていた。

 そこは、アリシアが眠る場所である。

 そこに、空間が引き裂かれている場所がある。

 蓮夜はその切り裂かれた場所に迷いもなく飛び込んだ。

 その先は何処かの森の中に繋がっており、開けた場所に、滝の音も聞こえてきた。

 

 

「……よう、来てやったぜ」

 

 

 蓮夜は広場の中心にある大きな岩の上に登った。

 そこには、ファンとエスティナルがいた。

 

 

「ようやく来たか。んじゃ……」

 

「俺は手に入れたいモノがあるから強くなる」

 

「ん?」

 

「俺は、欲しいものを取られたくないから強くなる」

 

「……ふん、そう素直な子は大好きだ」

 

「―――俺を、強くしてください!」

 

 

 蓮夜はこの世界に転生してきて初めて土下座をした。

 ファンはそんな蓮夜を見て笑みを零した。

 

 

「いいだろう。その契約、この『悪魔』が結ぼう……!」

 

 

 

 

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