何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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 ライトニングリターンズが欲しいなぁ……。





第二章第五話

 

 

 

ここで、ある転生者の少年の話をしよう。

 少年はこの世界の知識は全く無く、面白半分で神様から力を貰って楽しく来世を過ごそうと考えていた。

 そしてその少年は極一般の家庭に生を受け、望み通り平穏に暮らしていた。

 

 だがその平穏も長くは続かなかった。

 

 ある他の転生者が少年の前に現れ、少年を転生者と見破った。

 その転生者は欲望に塗れた権化であり、少年を自分の邪魔をする対象として考え、少年を殺しに掛かった。

 少年も生きる為に、今まで遊び程度に使用していた力を行使し対抗した。

 だが少年はその転生者に歯が立たなかったうえに、助けに駆けつけた両親を殺されてしまった。

 

 少年は必死に願った。

 生きたい、死にたくないと。

 そして、その願いは神様ではなく、『悪魔』に聞き入れられた。

 『悪魔』は少年を自分の領域に連れ込み、転生者から逃がした。

 

 少年は生き残れた事に喜び、両親が殺された事に悲しみ、怒りを覚えた。

 少年は『悪魔』に力が欲しいと願った。復讐の為、自分を守る為に。

 

 

★

 

 

 ある少女の転生者がいた。少女はこの世界の知識を持っており、物語の中心に関わろうと考えた。

 力も貰い、どうやって関わろうかとワクワクしていた。

 だがそんな矢先、少女の前に一人の転生者が現れた。

 その転生者は自分の欲の邪魔になる者と少女を認識し、少女を消し去ろうとした。

 少女は必死に抵抗し、だがその転生者には敵わなかった。

 だから少女は逃げた。自身の力を最大限に活用し、この転生者から逃れた。

 しかし逃げ込んだ場所が悪かった。

 否、普通はそこに逃げるのだろうが、相手が最悪だった。

 転生者は少女が逃げ込んだ先――家を見つけ出し、少女の家族を皆殺しにした。

 少女は悲しみと憎しみに染まり、転生者に襲い掛かった。

 だがやはり敵わず、少女は逃げる事しか出来なかった。

 逃げて、逃げて、逃げて生き延びる他ならなかった。

 

 生きて、生きて、生き延びたい。

 ただそれだけを胸に、逃げ続けた。

 そして少女は『悪魔』と出会い、ようやくやっと安心を覚えた。

 

 

 忘れないで欲しい。

 この世界には蓮夜、ルシファル、少年、少女の他に数多く転生者が存在する。

 蓮夜、ルシファルは物語の中心近くにいるが、それは決して自然とそうなったのではない。

 彼らに蔑ろにされてきた他の転生者達が存在し、その転生者達が離れ、消えていったからこそ、蓮夜とルシファルはそこに存在する事が出来ているのだ。

 

 それを、忘れてはいけない……。

 

 

★

 

 

 蓮夜がファンに教えを乞うてから数週間。

 蓮夜はファンと殺傷設定にしたデバイスと、『ゼロ』の能力を消した刀で打ち合っていた。

 ただし、蓮夜の能力はファンの攻撃が当たる瞬間に『ゼロ』で消されている。

 

 

「はぁ…はぁ…!」

 

「痛いか? 怖いか? 震えるか?」

 

「はぁ…はぁ…こぇよ……!」

 

「それで良いんだ。戦いにおいて、怖さを感じないのはいただけない。怖いからこそ、それに立ち向かえる」

 

「……けどよ、怖さを知らなかいからこそ相手に突っ込めるんじゃねぇのかよ?」

 

「突っ込むだけならな。何も警戒しないで突っ込むなんて、自殺志願者しかいないな。そのまま突っ込んでスパッ、死ぬだけだ」

 

「怖いもの知らずは勇者じゃなくてただの愚者って訳か」

 

「そうだ。だから先ずは戦いの怖さを知る。それはこの数週間で大分知る事が出来ただろう」

 

「……ああ。こんなに怖かったのは正直、産まれて初めてだ」

 

「ふっ、随分とまあ、素直になったな」

 

「喧しい! もう余り時間がねぇんだ! 少しでも強くならねぇといかねぇんだ!」

 

「時間か……。そういや、お前自分の事を転生者とかほざいてたな。まさか……」

 

「………」

 

「……知ってるのか? この世界を、いや、これから起こることを」

 

 

 ファンは鋭い目付きで蓮夜に尋ねた。

 

 蓮夜は知っている。

 この先何が起こるのかを。

 誰が現れ誰が消えるのかを。

 だがそれも自分自身、信憑性に欠けていると思わざるを得なかった。

 ファンやエスティナルといったイレギュラー、ルシファルの行動。

 この世界に本来はいない存在がこうも動き回っていれば、何か変わっているかもしれない、変わるかもしれない。

 

 

「……正確には知っていただな。今はもう俺の知る通り進むのかわからねぇ」

 

「……そうか」

 

「……信じるのかよ?」

 

「自分の弟子を信じなくて何が師匠か」

 

「……けっ、やっぱりいけ好かねぇ」

 

 

 蓮夜は『紅蓮』を構えてファンを見据える。

 ファンも刀を構えて蓮夜を見据える。

 そして二人は同時に地を蹴り、そして―――。

 

 

「はい、そこまでですわ」

 

「ぬがっ!?」

 

「あがっ!?」

 

 

 エスティナルが二人の足をバインドで拘束して転がした。

 

 

「もう終了時間ですよ。子供の内から無理をさせては駄目ですわ」

 

「俺は子供じゃねえ!」

 

「どう見たって小学生ですわ。それに、ファンにお仕事が入りましたわ」

 

「何? 仕事?」

 

 

 ファンは刀を鞘にしまい、何処かへと消した。

 

 

「はい。“八神はやて”という少女からのお願いですわ」

 

「……おいおっさん! なに小学生に手ぇ出してんだ!? やっぱりテメェそれが目的か!」

 

「ちげぇよ! 俺は大人な女性が大好きだ!」

 

 

 ファンはロリコンという疑いを取り除きたいが為に、真剣な表情で好みを叫んだ。

 

 

「将来性に期待してんだろ!」

 

「……そういえば将来期待できそうな―――」

 

「あらあら、うふふ……。そのような考えをお持ちで? でしたら、まだ払ってもらってない代償を上乗せしましょうか」

 

「………さあ! 仕事に向かおうぜ!」

 

「そうだな! 行って来いおっさん!」

 

 

 ファンと蓮夜はエスティナルの黒い笑みに恐怖を感じ、見なかったことにした。

 

 

「何言ってんだ。お前も来い!」

 

「はあ!?」

 

「いいからいいから! レッツゴー!」

 

「では、参りましょうか」

 

 

 エスティナルが空間を切り開き、三人は空間の中へと消えていった。

 

 

★

 

 

「……何で病院なんだ?」

 

 

 ファンは驚いた表情で病院を見上げていた。

 蓮夜は何故病院に着たのか理由を知っているようで、一人頷いていた。

 

 

「なんでも、入院する事になったようでして、その事でお願いを―――あら」

 

「お、おい! おっさん!?」

 

 

 ファンは血相を変えて病院に駆け込んだ。

 蓮夜はファンの変わりように疑問を抱き、エスティナルに尋ねた。

 

 

「おっさん、何慌ててんだ?」

 

「……思うところがあるのでしょう。色々ありましたからね、彼は」

 

「……?」

 

 

 エスティナルはどこか遠い目をして空を見上げた。

 蓮夜は訳が分からず、ファンの後を追った。

 

 

「八神はやて…八神はやて……あった! ここだ!」

 

 

 ファンはノックするのを忘れ、ドアを勢い良く開けた。

 

 

「はやて!」

 

「わあっ!? ファンさん……?」

 

「大丈夫か!? どうして入院なんか!?」

 

「お、落ち着いてください! 大丈夫ですから!」

 

「あ、ああ……すまない」

 

 

 ファンは落ち着きを取り戻し、息を整えた。

 

 

「それで、何で入院なんか……」

 

「今朝、ちょお腕と胸が攣っちゃって、眩暈がしただけなんです。そやのに皆が大袈裟に捉えてもて……。それでついでに検査とかするから入院を……」

 

「……はぁ~…! そうか、そりゃ良かった……」

 

 

 ファンはほっと胸を撫で下ろし、ベッドの横に備えられているパイプ椅子に腰を下ろした。

 

 

「もう、心配しすぎですよ」

 

「何を言う。子供を心配しない大人は大人じゃない」

 

「やっぱファンさんってええ人やな」

 

「おいおっさん! 勝手に先々行ってんじゃねぇよ!」

 

「病院では走ってはいけないんですよ」

 

「あ、悪いな。忘れてた」

 

 

 蓮夜とエスティナルがやってきた。

 蓮夜はファンの胸倉を掴んでグラグラと揺らした。

 

 

「はいはい、病人がいるんだから騒がない」

 

「あ……」

 

 

 蓮夜はやっちまったという顔をしてギギギと首を後ろに向けた。

 そこには驚いた顔をしたはやてがいた。

 

 

――やっちまったーー!! 三大ヒロインの一人に恥ずかしい様を見せちまったああ!! いや待て! 初見でインパクトを与えれたからそれで良しとしよう! うん!

 

 

 という考えを一秒も掛からず瞬時に行い、咳払いをしたからファンから離れた。

 

 

「えっと…どちらさんですか?」

 

「ああ、紹介しよう。黒島蓮夜にエスティナル・ヴァティ。俺の教え子と俺の相棒」

 

「蓮夜だ。宜しく」

 

「エスティナルと申します。以後、お見知りおきを」

 

「八神はやてって言います」

 

 

 二人はファンの傍に立ち、エスティナルはお見舞いの品であるフルーツを差し出した。

 

 

「……何時の間に?」

 

「何時の間にかですわ」

 

「どうもありがとうございます」

 

「そうだ、何かお願いがあるそうだが?」

 

「あ、そうなんです」

 

 

 はやてからのお願いはこうだった。

 自分が入院している間、家に居る親戚達の食事を作ってほしい。

 ただそれだけ。

 

 

「なるほど。はやて以外は料理が出来ないと。よし分かった! お兄さんが人肌脱いでしんぜよう」

 

「おっさん、料理できんのかよ?」

 

「二十五歳嘗めんな。言っておくが、俺の料理の腕はこのエスティが保障する。あまりの美味さに頬っぺた落とすなよ?」

 

「……まあ、それなら良いか」

 

「あれ? 俺とエスティの扱い違くね?」

 

 

 というわけでファンははやてのお願い通り今晩から料理を振るいに向かう事となった。

 事前に連絡はしているという事であり、ファンと蓮夜とエスティナルは食材を買い、八神家へと向かった。

 

 

★

 

 

「はい、ここで問題です! 現在、俺ことファン・フィクスは何をしているでしょう?」

 

「剣と鉄槌を背中に料理をしている」

 

「正解! 蓮夜君に一点!」

 

「黙れ! 変なもん入れんなよな!」

 

「ちょ、痛い! ガンガン頭を叩くなヴィータちゃんよ」

 

「馴れ馴れしく呼ぶな!」

 

 

 ファンの頭をヴィータがデバイスで何度も殴り、ファンはそれに耐えながら料理をしていた。

 ファン達がはやての家に到着し、出迎えたシャマルはファンの姿に驚き、続いてシグナムとザフィーラが警戒気味で出てきた。

 そこまでは良かったのだが、なんとヴィータが屋根の上から現れ、ファンの脳天に鉄槌を叩き落したのだ。

 それからファンは頭から血を流しながら笑顔で家に入り、なんでもなかったように料理をし始めたのであった。

 そして蓮夜は彼女らと戦闘で出くわしている為、当初は警戒されまくっていたのだが、蓮夜は彼女達を管理局に突き出すつもりは無いとデバイスを預けてまで説得したので、一応保留という事になった。

 

 

「こらヴィータちゃん。いけません」

 

「いいって、子供は元気が一番だ」

 

「元気すぎてアンタ殺されかけてんぞ……」

 

「お前と比べたらこんなもの可愛らしいもんだ」

 

「子供扱いすんな!」

 

 

 ガスガスと、更にデバイスをファンの頭に叩き込んでいくが、そんなのは関係無しに料理を進めていく。

 

 

「そら、出来たぞ。運んだ運んだ」

 

「む……」

 

 

 ファンはヴィータに出来たサラダを渡し、ファンはテーブルに鯛の姿造りをドーンと置いた。

 

 

「凄い……!」

 

「これは……」

 

「ほう……」

 

「けっ、どうせ見た目だけだ。シャマルみたいに」

 

「あ、ヴィータちゃんひどーい!」

 

 

 どうやらシャマルは料理が下手のようだ。

 ファンは笑顔を浮かべたまま料理を並べていき、もう一つのテーブルに自分達の分を並べた。

 

 

「さ、いただこうか!」

 

「いただきます」

 

「ホントに食えんのか……?」

 

『………』

 

 

ファンの自慢の料理を疑いなく食べだしたのは自身とエスティナルだけだった。

 蓮夜は箸で突き何か仕掛けられていないか調べ、ヴォルケンズはジッと料理を見つめて警戒していた。

 

 

「なんでい、なんでい! 人が折角心を込めて作った料理を無碍にする気か? そんなんじゃはやてに怒られるぞ?」

 

『いただきます』

 

 

 どうやらはやてに怒られるのは相当嫌なようだ。

 はやての名が出た瞬間、蓮夜達は箸を持った。

 因みにザフィーラは狼形態である。

 

 

「どうだ? 美味いだろう?」

 

『………』

 

「相変わらず美味しいですわ」

 

「そうだろう、そうだろう! 一昔前は料理店の依頼も来てたしな!」

 

 

 ファンも自分が作った料理を食べ始め、ガツガツと口に放り込んだ。

 一方、蓮夜達はというと……。

 

 

「(んなアホな!? 何でこんなに美味いんだよ!? おっさんのくせに!)」

 

「(美味い……主はやてと同等かそれ以上……)」

 

「(けっ、はやての方がギガウマだ)」

 

「(美味しい! 女として悔しい!)」

 

「(中々美味いではないか。食が進む)」

 

 

 ファンの料理の美味さに戦慄を覚えていたり、素直に褒めていたり、貶していたり、悔しがっていた。

 

 

「どんどん食えよ! デザートもあるからな!」

 

「うおっしゃあぁぁぁ!」

 

「ヴィータ、お前……」

 

 

 デザートという言葉に魅せられたヴィータはそれにありつきたいが為にガツガツと飯を食らう。

 

 

「そうそう、子供は沢山食べないとな」

 

「アタシは子供じゃねえ!」

 

「こらこら、箸で人を指しちゃいけません」

 

 

 その日の晩御飯は多少ぎこちなかったが、賑やかな食事となった。

 

 

★

 

 

 海鳴市のとある家。そこでは赤髪の少年と、銀髪の男性がいた。

 

 

「おい貴様、何を勝手に我の所有物を触っておる」

 

「良いじゃないか、触るぐらい。それぐらいの度量がないと小物の王にしかなれんぞ」

 

「戯け。王の物に勝手に触るなど、万死に値する」

 

 

 赤髪の少年、ルシファルは銀髪の男性に向けて拳を放つが、銀髪の男性は見向きもせずかわした。

 

 

「チッ……」

 

「そう苛立つな。常に冷静さを保たんと負けるぞ」

 

「ふん、貴様に言われずとも分かっておる」

 

「それは良かった。ところで、もうすぐだな。私の妻が目覚めるのは」

 

「それがどうした? 言っておくが他の女は全て我のものだ。手は出させんぞ」

 

「心得ているさ。ああ、早く逢いたいものだ—————リインフォース」

 

 

 まるで愛おしい人を想うような表情で、男性は笑った。

 

 

 

 

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