何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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 デビルメイクライは4までだった。
 少なくとも、俺はそう思う。

 銀髪ダンテ万歳。鬼ぃちゃん最高。




第二章第七話

 

 

 

 紫と紅が夜空で駆け巡る。

 紫はファンの魔力光、紅はイヴァシリアの魔力光。

 ファンは刀を振るい、イヴァシリアは大剣を振るう。

 二つの刃が交わり、衝撃と火花が散る。

 

 

「チィ……!」

 

「くっ……!」

 

 

 もうこれで刃を交えた回数は三桁を超える。

 ファンは決して手を抜いてはいない。

 今出せる全力で刃を振るっていいる。

 

 なのに差をつけられない。

 それほどまでにイヴァシリアの実力は凄まじかった。

 だが向こうも向こうで自分が勝てない事に驚きを隠せていなかった。

 

 

「やりますね、この私がここまで苦戦を強いられたのは今までで貴方が初めてですよ!」

 

「ふん……戦いの経験が少ない証拠だ!」

 

「ではこれを糧に私は更なる高みへと進みましょうか!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 ファンの刀を弾き、左足の鋼鉄の足で蹴りを喰らわせた。

 その鋼鉄の足は紅い魔力を帯びており、踝辺りには鋸が付いていた。

 

 

「遅い!」

 

 

 だがファンは紫色の魔力剣を展開し、足を受け止める。

 だが剣はあっという間に砕け散る。

 それでも少しばかりは時間は稼げた。

 ファンは瞬間移動のように後ろへ離れ、自身の周りに魔力剣を展開し、イヴァシリアに向けて射出した。

 

 

「ルーチェ&オンブラ!」

 

 

 イヴァシリアは両手に少し大きめの黒いハンドガンを展開し、剣を撃ち落としていった。

 

 

「実剣に実弾かよ……銃刀法違反の塊だな」

 

「刀を持っている君に言われたくないな!」

 

 

 イヴァシリアはそのままファンに向かって弾丸を放つ。

 だがファンは刀を手で回し、弾丸を刀身で受け止める。

 それからイヴァシリアの銃撃が止むと、ファンは横に刀を振るい、受け止めた弾丸を横一列に並べた。

 そしてその弾丸が重力に従って落ちる前に、刀身でイヴァシリアに向かって打った。

 その速度は銃から放たれた速度と同等だった。

 

 

「ふん!」

 

 

 イヴァシリアは大剣を横に薙ぎ払い、打ち返された弾丸を斬った。

 

 

「凄いですね……! まさか彼の悪魔と同じ芸当が出来るとは!」

 

「誰の事だ。だが貴様こそやる。弾丸をその大剣で弾くんじゃなくて斬るんだからな」

 

 

 ファンはイヴァシリアの外見と内面どちらも気に入らないが、戦いの実力だけは素直に褒めた。

 

 

「しかし残念です。久々に楽しみたいのですが、どうやら時間切れのようです」

 

「何―――っ!?」

 

 

 ファンはどこかのビルから爆発した紫色の魔力に驚き、息を呑み、そして見逃してしまった自身に怒りを覚えた。

 

 

「アハハハ! 覚醒した! 私の愛しい彼女が! 私が今お迎えに!」

 

「っ、待て!」

 

 

 イヴァシリアはファンの制止を無視し、その場から消えた。

 

 

「くそ! エスティ! 闇の書が! はやてが不味い! 今すぐに来い!」

 

 

 ファンは念話でエスティナルに連絡を取ろうとする。

 だが通信妨害が張られているのか、一向に繋がらなかった。

 

 

「くそ! また俺は!」

 

 

 ファンもその場から姿を消し、闇の書、はやての下へと急いだ。

 

 

 

 

――くそ……結局こうなるのかよ! ってかあのおっさんは何してんだよ!? 食い止めるんじゃなかったのかよ!

 

 

 蓮夜はなのは、フェイトと共に空で、はやて、否、闇の書の管制人格の姿をした女性を睨んでいた。

 蓮夜は仮面をつけた二人の男、その正体を知っており、ヴォルケンリッターと戦っている時に襲撃すると言う事も知っていた、

 だから蓮夜はそれを阻止しようと考えていたのだが、蓮夜にとっての強敵、ルシファルが現れてそれど頃ではなくなってしまったのだ。

 そしてその仮面の二人…クロノの師匠であり、管理局のギル・グレアム提督の双子の猫の使い魔であるリーゼアリアとリーゼロッテにより、ヴォルケンリッターのリンカーコアを蒐集され、闇の書は完成し、はやての身体を乗っ取った。

 ルシファルも蓮夜達と離れ、笑みを浮かべながら様子を伺っていた。

 

 

「デアボリックエミッション」

 

「っ!」

 

「空間攻撃……!」

 

 

 闇の書である女性が魔法の名を呟き、彼女の上空に凝縮された闇が解き放たれる。

 それは巨大な球体となり、全てを呑み込み始めた。

 

 

『ラウンドシールド』

 

 

 なのはは前方にシールドを展開し、呑み込まんとする闇を防ぐ。

 だが……。

 

 

「うっ……限界……!」

 

「なのはっ!」

 

「くそっ!」

 

 

 蓮夜はなのはの前に飛び出して反射で闇を弾き返えした。

 やがて闇は治まり、蓮夜たちはその隙に離れたビルの陰に隠れた。

 

 

「大丈夫か、なのは?」

 

「うん……ありがとう、蓮夜くん」

 

「ああ……」

 

 

――どういう事だ? なのはの盾が突破されかけた? やっぱり何か変わってやがる。しかも最悪な方向に。

 

 

 蓮夜はこの世界が変わり始めて、いや、変わっていることを確信した。

 転生者がこの世界に現れ、物語に関わった事で物語が変わっている。

 しかも良い方に変わっているのではなく、最悪な方向に変わっている可能性が高かった。

 

 

「くそっ! おっさんは何してんだ―――っ!」

 

 

 蓮夜は無意識の内に出た言葉に驚いた。

 今までなら自分だけで全て解決出来ると思っており、誰の手も借りようとしなかった。

 

 だがたった今、蓮夜はファンを頼りにしていた。

 出会った頃から気に食わなかった筈のファンに、今では戦いの術を教えてもらっている。

 

 

――……けっ、何弱気な事吐いてやがる! なのはも言ってただろ、俺は最強で最高な主人公だって!

 

 

 蓮夜はビルの屋上にいる闇の書を睨みつけ、同時にルシファルの存在を探した。

 

 

――奴は何をするつもりなんだ? シグナム達が蒐集された今、アイツが取る行動は……俺達、いや、俺以外のなのは達との共闘か? なら俺を先ず始めに誰にもばれないように消すはずだ……。

 

 

 と、蓮夜がルシファルの行動を推測していると、ユーノとアルフが駆けつけてきた。

 すると街が闇の書が展開した結界に包み込まれ、人が消えた。

 

 

「私達を狙ってるんだ……」

 

「今、クロノが解決法を探してる。援護も向かってるんだがまだ時間が……」

 

「それまで、私達が何とかするしかないか……」

 

「……悪い、俺は単独行動を取らせてもらうぜ」

 

「な、何言ってんだい!? 今がどんな状況か分かってんの!?」

 

 

 突然の蓮夜の申し出にアルフが反対した。

 だが蓮夜は今までに無い、意志を込めた眼で皆を見る。

 

 

「やらなくちゃならねぇ事があんだよ」

 

「……それはこれに関係することなのかな?」

 

「ああ」

 

 

 はっきりと答えた蓮夜に、なのはは満足したのか気持ちよく頷いた。

 

 

「じゃあ、行ってきて良いよ!」

 

「なのは!?」

 

「なのは、何で!?」

 

 

 フェイトとアルフが驚くが、なのはは笑顔で言った。

 

 

「でも! ちゃんと帰ってきてね! 皆待ってるから!」

 

「……わーってるよ。おいユーノ!」

 

「な、何!?」

 

「……ちゃんと守れよな」

 

「……へ?」

 

 

 いつもユーノに対して厳しかった蓮夜が、まるで別人のような態度で伝えた。

 それにユーノは信じられないと言いたげに驚いた。

 

 

「んじゃま、そういうこった!」

 

 

 蓮夜は顔を背けて一人空を駆けた。

 

 

「……なのは、夢じゃないよね?」

 

「うん! 夢じゃないよ!」

 

「……出来れば夢であって欲しかった。何か怖い」

 

 

 

 

「……何の真似です?」

 

「そりゃこっちの台詞だ」

 

 

 闇の書がいるビルからほんの少しだけ離れた場所で、ファンとイヴァシリアは再び対峙していた。

 

 

「どうあっても私の邪魔をするのですか?」

 

「貴様と闇の書に一体何の関係がある?」

 

 

 ファンはイヴァシリアの問いに答えず、問いを投げた。

 

 

「貴方に話す必要は無いでしょう?」

 

「いいやあるね。今の闇の書の主は俺の知り合いでね。訳の分からない男にはいそうですかって渡せる訳が無いだろう」

 

「別にあんな小娘はどうでもいいですよ」

 

「――――」

 

「私が求めているのは闇の書の意志、管制人格なのですから」

 

「―――――った」

 

「はい?」

 

「―――つった」

 

「ちゃんと喋りなさい。今こうしていること事態面倒なのですか―――」

 

「今何っつった!? ああ!?」

 

「っ……!」

 

 

 ファンは全身から紫色の魔力を溢れさせ、イヴァシリアを赤い目で睨みつけた。

 その表情はまさに怒りそのもの。

 

 

「あのような優しい娘をあんな小娘だと!? あんな家族思いで、心から優しい娘がどうなってもいいだと!? あまりこの俺を怒らすな! 殺すぞ!!」

 

 

 ファンはその場から消え、イヴァシリアの懐に現れた。

 そして顎を打ち抜き、イヴァシリアを吹き飛ばす。

 

 

「がっ……!? や、やりましたね……この私を殴りましたね!?」

 

「黙れ青二才! たかが数十年生きただけで調子に乗るな!」

 

 

 更に魔力を噴き出し、ファンを中心に闘気が発生し、回りの建物に亀裂を入れた。

 

 

「何が伝説の悪魔だ! この三下が!」

 

「さん―――……いいでしょう。この私の力、存分に味わいなさい!」

 

 

 イヴァシリアも紅い魔力を全身に纏い、大剣に魔力を纏わせた。

 

 

「来いよ、本当の“悪魔”がどう言ったモノなのか見せてやる」

 

 

 

 

 ファンがイヴァシリアと激突したちょうど同じ頃、蓮夜もルシファルと対峙していた。

 蓮夜の予想通り、ルシファルは蓮夜を消す算段だったのか、単独行動に出たらすぐに自分から現れた。

 

 

「フハハハ! また会ったな、雑魚!」

 

「会った? テメェから会いにきたんだろ? 格下」

 

「……王たる我を格下と申すか、この下衆」

 

 

 ルシファルは籠手を装着し、蓮夜を睨みつける。

 蓮夜も紅蓮を構え、ルシファルを睨みつける。

 

 

「アレほど力の差を知った上でまだそんな眼が出来るか。これはとんだ大物かただの馬鹿だな」

 

「馬鹿ね……テメェの様な中二病よりはマシだな」

 

「貴様ぁ……! その愚かさを悔いて死ね!」

 

 

 ルシファルはその場から消え、蓮夜の前に現れた。

 そしてルシファルは拳を蓮夜の顔面に向けて放つ。

 

 

「……ケケッ」

 

「何ぃ……?」

 

 

 だが蓮夜は右手の紅蓮で拳を受け止めた。

 

 

「どうした? テメェの言う下衆に受け止められて悔しいかぁ?」

 

「……調子に乗るな、下郎!」

 

「っ!」

 

 

 ルシファルは拳と蹴りを何度も放つ。

 それに対し蓮夜は冷静に紅蓮でそれを捌いていく。

 

 

――すげぇ……攻撃が見える……けっ、あのおっさんのお陰ってか!

 

 

「貴様……多少は強くなったようだな」

 

「多少? たったそれだけか?」

 

「っ!」

 

「今度はこっちの番だ!」

 

 

 ルシファルの拳を弾き、紅蓮と蹴りの攻撃を繰り出す。

 紅蓮に炎を纏わせ、蹴りにはベクトル操作を加え、凄まじい攻撃を与えた。

 

 

「くっ、このぉ!」

 

「ぜららららららららああ!!」

 

 

 今までのような無駄だらけの動きではなく、鋭い動きでルシファルを攻撃していく。

 ルシファルも拳と脚で攻撃を防いでいくが、ベクトル操作が働いている蹴りだけは触れずにかわしている。

 

 

炎絞刺衝(えんこうししょう)!」

 

「何!?」

 

 

 紅蓮に纏っていた炎が渦巻き、鋭い槍となってルシファルの頭を貫いた。

 

 

「これで三回目だ!」

 

 

 十二回の内三回、ルシファルの命を奪った。

 これであと九回殺せばルシファルは死ぬ。

 

 

「今の内に……」

 

 

 蓮夜は再生を始める身体に紅蓮で斬りかかるが、その攻撃がAランクの攻撃ではない故か傷一つつかなかった。

 

 

「チッ、なら準備だ」

 

 

 蓮夜は紅蓮の柄頭を連結させて一本の剣にした。

 それからルシファルから少し離れ、投擲に構えを取った。

 

 

――ゲイ・ボルクなら二つ三つは削れるはずだ。また再生している内に持てる全ての技を出し切ればコイツは……っ!

 

 

 蓮夜はルシファルが再生された瞬間、紅蓮を投げつけた。

 そして紅蓮は真っ直ぐルシファルの心臓に進み―――。

 

 

「調子に乗るなと言った筈だ、(ゴミ)が」

 

 

―――胸に直撃する前にルシファルは紅蓮を掴み取った。

 

 

「なっ!?」

 

「―――フン!」

 

 

 そして強く握り締め、砕き、紅蓮は落ちていく。

 

 

「馬鹿な……!?」

 

「馬鹿な? いやこれが現実だ。何が刺し穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)だ。神話の宝具を再現できるわけが無かろう。まあ、威力はそこそこある。それだけは認めよう」

 

「くっ……」

 

 

 確かに、蓮夜の先ほどの攻撃はゲイ・ボルクを真似て作ったものであり、必中の槍ではない。

 ただ命中率がとてつもなく、威力が高い攻撃というだけである。

 

 だがそれでも威力は高い。

 それをルシファルは片手で受け止め、砕いたのだ。

 

 

「我をここまでさせたのは貴様が始めてだ。褒美に我の力を冥土の土産として教えてやろう」

 

 

 ルシファルは拳を握り締め、蓮夜を睨みつけた。

 

 

「先ずはあり得ない程の高い身体能力。二つ目は王に相応しい魔力量。三つ目は十二の試練(ゴットハンド)。そして―――」

 

「っ―――!」

 

「時間氷結だ」

 

 

 ルシファルの両目が赤く光り、まるで悪魔のようだった。

 

 

「……んだよ、それ」

 

「ふん……」

 

「……? っ―――!?!?」

 

 

 ルシファルが笑った瞬間、蓮夜の全身が殴られた様に捻れた。

 

 

「がはっ―――!?」

 

「ふん、停止していても反射は生きているか……」

 

 

 ルシファルは少しばかり焦げた拳を軽く振った。

 

 

「て、停止……だぁ?」

 

「そう……時間の氷結とは停止! 故に貴様は我に勝てる見込みは無い!」

 

「がふっ―――!」

 

 

 また全身を殴りつけられ、蓮夜は血を吐いた。

 

 

「く、くそぉ……!」

 

「すぐには殺さん。じっくりと己が如何に大罪を犯したのかその身に叩き込んでやろう!」

 

「チィ……!」

 

 

 

 

 ファンはイヴァシリアを睨みつけ、刀の切っ先を向けていた。

 

―――全身切り傷で血だらけになって。

 

 

「はぁ…はぁ……ぺっ」

 

 

 ファンは口に溜まった血を吐き捨て、血を拭き取った。

 

 

「もう分かったでしょう? 貴方では私には勝てない。大人しく退きなさい」

 

「チッ、ナルシストのくせに剣技だけはなかなかどうして……」

 

「さあ! もう退きなさい!」

 

「黙れよ、ドブ男。貴様を“アイツ”に近づける訳にはいかないんだよ」

 

「……そうですか。では仕方がありません。これで終わりにしましょう」

 

 

 イヴァシリアは白い大剣を天に掲げた。

 

 

「見なさい、これが伝説の悪魔の真の力です!」

 

 

 大剣に紅い魔力が集中していき、剣の形が変わっていく。

 禍々しく、強大で、神々しい魔剣へと。

 

 

「さあ! スパーダ! 私と共に彼の者を討ち滅ぼそうぞ!」

 

 

 紅い雷が天から飛来し、イヴァシリアの身体に直撃した。

 すると、イヴァシリアの身体が人の身からまさに悪魔の姿へと変わった。

 大きな二本の角、二対の羽、強靭な黒い皮膚、赤い目。そして手には魔剣スパーダ。

 この存在だけで、如何なる敵も敵ではなくなりそうだった。

 

 

「………」

 

『さあ! 我が剣を受けてみよ!』

 

「……断る」

 

 

 ファンは臆することなく刀を構え、目の前の悪魔を睨みつけた。

 

 

 

 

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