最近、やっとこさ時間が取れるようになりました~。
「なに……!?」
「失せろ」
「―――ッ!!」
イヴァは男の顔面を殴り、後ろに吹き飛んだ所へ一瞬で近付き更に殴り飛ばして防衛プログラムから離した。
「おっさん……!」
「蓮夜……良く守ってくれた。ありがとう」
イヴァは蓮夜の隣に現れると、蓮夜の頭にそっと手を置いた。
すると蓮夜の怪我が全て一瞬にして消えた。
「良く頑張ったな。流石は俺の弟子だ」
「……ケッ」
蓮夜はそっぽを向き、頭をボリボリとかいた。
「お義父さぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
「おっと……」
神楽がイヴァの頭上から手を大きく広げながら落ちてきた。
イヴァは神楽を受け止め優しく抱きしめる。
「お義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さぁぁぁん!!」
「はいはい、俺はここに居るぞ。心配かけてすまなかったな」
「じんばいじだんだがらぁぁぁぁああ!!」
「すまんすまん」
涙で顔をグシャグシャにした神楽の頭を撫でる。
「剣誠は? あとエスティは?」
「ぐずっ……ケンは街の修復してる。お義姉ちゃんは後ろ……」
「ああ、後ろね………後ろ!?」
「はぁい」
イヴァの真後ろでエスティナルは笑顔で手を振っていた。
「まったく、今日は本当に疲れましたわ。お肌が荒れます」
「その一言で済ますお前はスゲェよ」
「あら、そんな事最初からですわ」
「あ、そう。さて、と……」
イヴァは目の前に広がる黒い闇の塊を見た。
「フェイトもはやてもヴォルケンリッターも全員帰って来たな……」
「……ああ」
闇の書に吸収されたフェイト、蒐集されて消えたヴォルケンリッター、暴走した闇の書に取り込まれたはやて、そしてリインフォース。
全員が帰って来た。
「あとは邪魔なモノのお帰りだけか。蓮夜、お前はあいつらと共に最後の仕事をして来い」
「言われなくてもわーってるよ。アンタもあのクソッタレに一発喰らわせてやれ」
「一発? いやいや、完全に沈めるさ」
蓮夜を見送り、イヴァはエスティナルと二人を睨みつけている男を睨む。
「貴様……俺の名を騙った上に俺の家族に手を出したんだ。どうなるか分かってるよな?」
「貴様の名? 何を言っている。私は―――」
「分かってやってたんだよな? なら殺そう。許しを請うても殺す」
「殺す? 私に何も出来なかった貴方が?」
男は口を歪ませ笑う。
そしてイヴァも笑った。
「……何が可笑しい?」
「いやいや、これはとんだ勘違いをしてるなってな」
「勘違い?」
「そう。俺は何も出来なかったんじゃない……何もしなかったんだよ」
直後、周りの空気がガラリと変わった。
重く、暗く、何処か恐ろしさを感じさせるような空気。
それが周りを支配する。
「貴様は確かに悪魔だ。醜い姿で醜い心を持つ最低の、な」
「何だと……?」
「はき違えるな。俺はそんな腐りきった悪魔じゃないんだよ―――!」
イヴァの頭上の空が渦巻く。
雷が起こり、まるでこれから嵐が起こるように。
「これはあまり使いたくないんだよ……何せ、力が強すぎるからな。けど……」
イヴァは少しだけ嬉しそうな顔をした。
「それが
「っ……!」
「術式完全解放、
刀を横にして前に出し、イヴァの目の前に紫色のミッド式でもベルカ式でもない、見たことも無い魔法陣が展開される。
「何をする気か知りませんが、させると思いですか!?」
「その台詞、そのままお返ししますわ」
男の目の前に赤黒いイヴァと同じ魔法陣が展開され、そこから雷の嵐が発生し、男の邪魔をする。
「貴様……!」
「……醒めよ、我に眠りし無よ!」
―――刹那、イヴァから“黒色”の魔力が爆発した。
そして魔法陣も黒へと変わった。
赤い目が更に赤く光り輝き、コートは消え、代わりに襟が立った黒いボロボロのマントと何処か機械的な黒い鎧を身に纏っていた。
そのマントからは常に影のようなモノが溢れ出しており、まるで魔王、魔神、死神のようだった。
「見せてやろう……
イヴァは刀を鞘に納め、居合いの構えを取った。
「エスティ、準備をしておけ。奴には悪魔がどんな力を持つのか身を持って知ってもらう」
「はい」
エスティナルは足元に赤黒い魔法陣を展開し、精神統一をし始めた。
「この……見掛け倒しが!」
男が大剣を構えてイヴァに襲い掛かった。
イヴァは居合いの構えのまま男が来るのを待ち、そして剣が振り下ろされた瞬間、抜刀する。
「
「何!?」
抜刀した刀は男の大剣を大きく弾き、男の身体をがら空きにした。
「―――
そして反す刃で横に振りぬく。
黒い斬撃が男の胴体を斬りつける。
「がはっ―――!」
「刃に……呑まれろ」
「―――!?」
斬撃はソレ一つだけではなかった。
黒い斬撃の痕は消えず、そのまま男の胴体に影のように存在していた。
そして更に、イヴァは刀を振ってもいない筈なのに、また一つ男に斬撃が打ち込まれた。
そして今度は二つ、今度は三つ、四つと、まるで斬撃の世界に呑まれていくようにして男は斬られていく。
最後には黒い斬撃により男の姿は見えなくなり、斬る音しか聞こえなくなった。
「散れ―――!」
イヴァが呟くと斬撃の世界は弾き飛び、中から血だらけの男が出てきた。
「がっ―――はっ―――!」
「エスティ!」
「はい!」
イヴァは後ろにいるエスティナルに手を伸ばす。
エスティナルは差し出されたイヴァの手を握り、姿を闇へと変えた。
「さあ、何が良い? 魔王か? 魔神か? 死神か? 邪神か? 選べ、それで貴様の死に方が決まる」
「ぐ―――があぁぁぁぁぁああああっ!!!」
男に最早理性など存在しなかった。
瀕死の状態でただ目の前の存在を消し去ろうとしているだけだった。
「良かろう、では王となるか」
イヴァは闇を握り締めた。
すると闇がイヴァの手に集まって行き、一つの黒い野太刀となった。
「零滅刃奥義―――」
「あああああああああああああああああっ!!!!」
「―――
向かってきた男に向かって野太刀を振り下ろした。
すると一瞬の静寂の後、男がいた場所から男の姿が消えた。
いや、消えたのは男だけではなかった。イヴァの前方が綺麗に縦に消え失せていた。
空が海が、まるで世界が両断されたように。
そして最後には遅れてやってきた巨大な黒い斬撃が発生し、爆発音が響いた。
「……エスティ」
『はい。次元震も断層も起きないようにしました。結界も張り直しました』
何処からか、否、野太刀から聞こえてきたエスティナルの声にイヴァは一安心し、野太刀を闇へと戻す。
すると闇はまた一つに集まり、エスティナルの姿へと変わった。
「すまんな。手間を掛けさせた」
「いいえ。パートナーとして当然の事です」
エスティナルは野太刀に変わる前に下準備をしていた。
イヴァの全力の攻撃は世界そのものを消してしまう威力を持っているが故に、エスティナルが威力の調整をする必要があるのだ。
即ち、先ほどの攻撃はまだ本気の半分も出していないのである。
「にしても、この状態ではどうも性格が……」
「今流行の中二病と言うものですね」
「……流行は違うと思うのだが、まあ、そうなのだろうな……」
イヴァは自分の姿を見て溜息を吐いた。
どうやらイヴァはこの状態になると今までの飄々としたお気楽な性格ではなくなってしまうようだ。
偶に怒りでこういった性格になる事はあるにはあるのだが。
「さて……どうやら向こうも動き出したようだ」
イヴァは蓮夜達のほうへと視線を移した。
蓮夜達は暴走している防衛プログラムにデバイスを構えて魔力を溜め込んでいた。
「……ん?」
「あら?」
イヴァとエスティナルは先ほど消し飛ばした方向に目を向けると、そこに紅い魔力の塊が光り輝いて存在していた。
「……ゴキブリ並みの生命力だな」
「鬱陶しいですわね……
その塊は徐々に人の姿へと変えていき、あの男の姿へと変わった。
「は……ははは! あはははははは! 戻れた! 戻れたぞ!」
「一体どんな手品を使ったのか……どうでも良いが、すぐにご退場願おう」
「そうですわね」
「………どうやらもう、何も出来ないようですね」
男ははやての姿を見て諦めた表情になる。
しかしすぐに濁った眼で防衛プログラムを見た。
「ならこんな世界はもうどうでも良い! 壊して壊して壊しつくしてやるぅ!」
「っ!」
男はイヴァに目もくれず、防衛プログラムである黒い塊へと飛んでいった。
「させん!」
イヴァはマントで全身を包み込むと、影のように高速で動き、男の隣に並ぶ。
「速度よ―――消えろ!」
イヴァの眼が光ると男の移動が止まり、イヴァは拳を突き出した。
「邪魔なんだよぉぉぉぉおおお!!」
「何!?」
男の最後の足掻きなのだろうか、男はイヴァの拳を防ぎ、イヴァの顔面を殴りつけた。
その隙を突いて男は黒い塊の中へと消えていった。
「チッ……」
「おい、おっさん……か?」
「おっさんではない。お兄さんだ」
イヴァとエスティナルは蓮夜の隣に移動し、イヴァは刀を出して抜いた。
「これから何をするつもりだ?」
「……簡単に言えば、これから出てくる防衛プログラムに向けて最大の攻撃をぶつけていく。そんでもって露出したコアをアースラの目の前に転送。アルカンシェルでドカーンだ」
「成程。簡単で分かりやすい」
「まあ、魔力と物理の複合四層式のバリアを突破させねぇといけねぇんだがな。けどよ……」
「あの屑が中に入ってしまったからな……どうなるかは分からんぞ」
イヴァは蓮夜との会話を止め、アースラへと連絡を取る。
「リンディ、アルカンシェルの出力を限界まで高めておけ。後の事とか考えるな」
『あら、偉そうな態度ね。何様のつもりかしら?』
「さあ? 悪魔ってのは確かだな」
『……この件が終わったらちゃんと説明してもらいますからね。その力について』
怒りが篭った声でイヴァにそう言うと、イヴァは苦笑して返事を返した。
「まあ、仕方ないだろう。一段落着けば好きなだけ答えよう」
『ちゃんと覚えてなさいよ、ファン』
「俺の名前はイヴァシリアだ。記憶しとけよ」
イヴァは通信を切り、眼下に移る黒い塊を見た。
「……お前絶対転生者だろ。何でその台詞知ってんだ」
「何の事だ? ……ああ、そうだ蓮夜」
「あん?」
「――――俺の子にならないか?」
「……ハァッ!?」
イヴァの突然の申し出に蓮夜は心底驚いて、思わずデバイスを落としてしまいそうだった。
「剣誠と神楽もお前と同じ立場のようだし、良い兄弟になれると思うぞ?」
「……ざっけんな」
「何だ、嬉しそうな声じゃないか」
「んな訳ねぇだろうが! 俺はなのはのとこに……!」
「ああ、訂正しよう。俺がお前を息子として欲しい」
「――――――――考えといてやる」
「ん?」
蓮夜は正直息子にならないかと聞かれたとき、嬉しさが出てきた。
なのはの両親には今まで育ててくれて感謝はしている。
だが父と母という風にはどうしても心が捉えれなかった。
なのはの両親としか捉えれなかった。
だがイヴァの場合、自分の力をぶつけてもなんら問題無く、更には力もつけてくれる。
自分より上の存在。
そして父としての温もりを思い出させた存在。
他にも同じ境遇の存在がいる。
蓮夜は己の力が強大な事に心の何処かで周りの人と一線を引いていた。
だがイヴァ達となら、その線が消えてしまっている。
「考えといてやるって言ってんだよ!」
「ふっ……そうか。ああ、言い忘れていたが、すぐに母親も付いてくるぞ」
「あ?」
「……来るぞ」
防衛プログラムの暴走が始まった。
黒い塊は掻き消され、中からはスキュラのような生物が現れる。
周りは多くの触手が存在し、とにかく醜い。
「……なあ、気づいてっか?」
「ああ。屑がいるな」
『アアアアアアアアアア!』
スキュラの身体にあの男の上半身が存在していた。
「カァ~! 本っ当ウッゼェ奴だな!」
「全くだ。さあ、本当にご退場願おうか!」
最後の戦いが始まる。
アルフ、ユーノがバインドで触手を引き千切り、ザフィーラが触手を一掃した。
「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン!」
『ギガントフォーム』
ヴィータが鉄槌を構え、鉄槌は巨大な鉄槌へと変形していく。
「轟天爆砕! ギガントシュラーーーーク!!」
鉄槌は振り下ろされ、一枚目のバリアーが砕かれた。
「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン! 行きます!」
『ロード・カートリッジ!』
四発のカートリッジが装填され、なのははデバイスを向けた。
「エクセリオンバスター!」
先ずは見えない砲撃が邪魔な触手を薙ぎ払っていく。
「ブレイク―――」
ピンクの魔力が収束されていき―――。
「シューーーーーートッ!!」
強大な砲撃が打ち込まれた。
バリアーがまた一枚砕かれる。
「剣の騎士、シグナムが魂。炎の魔剣レヴァンティン。刃と連結刃に続くもう一つの姿……」
シグナムは柄頭に鞘を当て、カートリッジを装填する。
するとレヴァンティンが姿を変えていき、弓と化した。
出現した矢を引き絞り、炎を足元の魔法陣から溢れ出さす。
「翔けよ、隼!」
『シュツルムファルケン!』
放たれた矢は高速で飛来し、バリアーに直撃した瞬間、大爆発を起こした。
バリアーがまた砕かれる。
「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュ・ザンバー、行きます!」
フェイトが黄色い大剣と変形しているバルディッシュを振り、見えない斬撃を飛ばす。
それが再生した触手を薙ぎ払う。
フェイトはバルディッシュを上に掲げ、雷が刃に落ちた。
「打ち抜け、雷刃!」
『ジェットザンバー!』
雷を纏った刀身が伸び、バリアーを砕く。
最後のバリアーを打ち破った。
かに思えた。
だがまだバリアーは存在していた。
『アハハハハハッ!』
「んの野朗……!」
あの男が防衛プログラムと一体化したことで更に強化されているようだ。
「落ち着け! やる事は変わりない! ザフィーラ!」
「おう! 盾の守護獣ザフィーラ! 砲撃なんぞ、撃たせはせん!」
触手から砲撃を放とうとしていたが、ザフィーラが発動した幾つもの光の槍が阻止した。
「黒島蓮夜、紅蓮、やってやらァ!」
『術式解放、第一から第五の門を展開』
蓮夜は二つの紅蓮を正面で連結し、紅蓮の刀身を二つに分かれさせた。
そして分かれた部分に紅い魔力が収束されていく。
「クリムゾン―――ブラストォォォォオオ!!」
紅い収束砲が放たれ、バリアーを打ち抜く。
だがまだ最後の一枚が残っている。
暴走した防衛プログラムは上空に魔法陣を展開し、雷を落としてきた。
「マジかよ!?」
「………」
あの男と一体化したことによって凶暴な力が更に凶暴化してしまっている。
イヴァは落ち着いて左手を魔法陣に向け、『ゼロ』を発動した。
黒い波動が空域を走り、魔法陣と雷が一瞬にして消えた。
「無と孤独の悪魔、イヴァシリア・ムトス・エラフィクス。我が家族に仇名す者に、永遠の無を与えん!」
イヴァは居合いの構えを取り、マントから出る闇を刀に渦巻かせた。
「零滅刃奥義―――」
眼を赤く光らせ、防衛プログラムを見据える。
そして大きく抜刀した。
「
闇の斬撃が防衛プログラムをバリアーと身体と海ごと両断する。
『アアアアアアアッ!!』
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け!」
黒い三対の翼、白いバリアジャケットを着て杖を持ち、リインフォースとユニゾンしているはやてが詠唱を唱える。
すると上空にベルカ式の白い魔法陣が展開され、周りに六つの白い魔力の塊が表れる。
「石化の槍、ミストルティン!」
計七つの白い槍が放たれ、防衛プログラムに突き刺さる。突き刺さった部分から石化していき、ボロボロと砕け散っていく。
だがそれでも再生を止めない。
すぐに再生していき、姿を変えていく。
「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ」
クロノが詠唱を初め、海と防衛プログラムが凍り付いていく。
「凍てつけ!」
『エターナルコフィン!』
防衛プログラムは凍り付いて砕かれる。
だがそれでも再生は続く。
「やばくねぇか? 何か再生速度がハンパねぇぞ……」
「恐らくあの
「………リンディ」
イヴァはリンディに通信を繋げた。
『何かしら?』
「何があってもアルカンシェルを撃て。何があってもだ」
『ファン……?』
「だから俺はイヴァシリアだ。……絶対だぞ」
イヴァは通信を切り、左手に『ゼロ』を纏わす。
「おいおっさん! 何する気だ!?」
「なに、少し帰りが遅くなるだけだ」
「イヴァ、貴方……」
エスティナルはこれからイヴァがやろうとしている事を察したのか、何も言わなかった。
「全力全開! スターライト―――」
「雷光一閃! プラズマザンバ―――」
「響け終焉の笛! ラグナロク―――」
なのは、フェイト、はやてがそれぞれの最大の魔法の準備を始める。
「ま、待て! 皆―――」
「っ――!」
「おっさん!」
イヴァはその場から消えた。
そしてあの男の目の前に現れ、男の頭を掴んだ。
「いくら貴様でも、直接触れれば完全に『ゼロ』の力が浸透する。故に!」
イヴァの手が黒く光ると、防衛プログラムの再生速度が遅くなった。
「貴様の力はこの手が触れている限り消える!」
マントを広げ、男と自身を絡めて離れないようにする。
『ブレイカーーーーーー!!!』
そして放たれる三つの収束砲。
ソレは防衛プログラムに直撃し、防衛プログラムの全身をボロボロに消し飛ばす。
「エスティィィイ!!」
「はい!」
イヴァは男の上半身を両断し、防衛プログラムから切り離す。
そしてエスティナルが印を組み、イヴァと男を二つの魔法陣で囲む。
それと同時にシャマル達が露出した防衛プログラムのコアの転送を始める。
「おいアンタ! 何やって―――!」
「長距離転送、目標座標―――軌道上」
「ッ、まさか!?」
蓮夜は気がついた。これからイヴァとあの男が何処に行こうとしているのかを。
「転送」
そしてイヴァと男は転送された。
転送されている途中、イヴァは男に言った。
「貴様を消すのは容易い。だがそれでも時間を喰らい、アレの再生が完了してしまう。だからアルカンシェルで消えてもらう。それに貴様は、俺の名を騙り俺の家族に手を出した。苦しんで死ね!」
「何故だぁ!? 私が! 私こそが真の―――」
「貴様は、偽者にも劣るただの屑だ!」
イヴァは宇宙空間でも行動できるように自身を魔法で強化し、イヴァと男は再生し続けているコアの前に姿を現した。
「さあ! 地獄への片道切符だ! 受け取れ!」
イヴァは男を前に突き出し、避けられないようにする。
『ファン!! 貴方、何を!?』
「撃て! リンディ!」
『っ―――』
イヴァは通信を強制的に切り、マントで男を更に縛る。
後ろにはコアが再生をし続けている。
「や、止めろ! 貴様だって死ぬんだぞ!?」
「今まで貴様は何を見てきた? 俺は全てを消すのだぞ? 俺だけダメージが無いようにするのは容易い事だ!」
「ひぃぃっ!!」
男はアースラを眼にした。アースラはもうアルカンシェルの発射体勢に入っていた。
「地獄に逝ったらどんな所か教えてくれ。俺は逝きそびれてしまったからな」
「や、止めろぉぉぉぉぉおおおっ!!!」
アルカンシェルは放たれた。
まっすぐコアを狙って砲撃は伸び、コアの前に居た男とイヴァを巻き込んでコアを打ち抜いた。
★
アースラの艦橋のモニターで、リンディはコアの最期を見届けた。
「ファン……!」
「効果空間内の物体……完全消滅……」
「っ……!?」
エイミィの震える声での報告に、リンディは耳を疑った。
完全消滅。
それは即ち、あそこにいたイヴァも消滅してしまったということ。
「そんな……! ファンは!? ファンは何処なの!?」
「さ、探しています! けど、何処にも反応がありません!」
「っ………コアの、再生反応は?」
「っ………ありません」
「……そう」
リンディは拳を握って、あくまでも任務を優先することにした。
通信で、現場にいる皆に指示を出す。
★
『準警戒態勢を維持。もう暫く反応空域を観測します。現場の皆はアースラで一休みして』
「か、艦長! ファンさんは!?」
『……効果空間内の物体は全て消滅したわ』
「そんな!?」
「ふざけんな!」
蓮夜がクロノを押し退け通信に怒鳴った。
「あのおっさんが死ぬ筈がねぇ! もっとよく探しやがれ! おっさんなら宇宙のそこら辺で昼寝でもしてる筈だ!」
『……観測は続けるわ。けど、望みは薄いわ』
「くっ……!」
「蓮夜」
蓮夜の肩にエスティナルが手を置いた。
「安心なさい。イヴァはちゃんと生きてますわ」
「何で分かんだよ!?」
「言っていたでしょう? 少し帰りが遅くなると」
「………あの野朗には聞かなくちゃならねぇ事が色々あんだよ……! 帰ってこなけりゃ一生恨むからな……!」
蓮夜は拳を握った。
顔も泣きそうな表情だった。
蓮夜だけではない、なのはやフェイトやはやて、そしてイヴァの大切な家族も、他の皆も、泣いている者や泣くのを我慢している者がいた。
「本当に……心配をかけさせる人ですね……」