何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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 これから始まるのは、完全オリジナルぅ♪




第三章第一話

 

 

 さあ、語ろう。悪魔とその家族の輝かしい世界を。

 その時が来るまで、語り続けよう。

 

 

 

 

 あの戦いから数年。

 蓮夜、剣誠、神楽はすくすくと育ち、もう中学生である。

 三人とも背は伸び、蓮夜は前のような荒れた性格ではなく、もう少し大人しく―――。

 

 

「剣誠! テメェまたはやての胸触りやがったな!! ア゛ァ!?」

 

「わ、ワザとじゃねぇって! 躓いて置いた手の先がそうであって!」

 

「ウルセェ!! 今すぐにテメェをぶっ殺す! この変態野朗!」

 

「変態じゃねぇっつってんだろ!!」

 

 

 ―――なっている訳が無かった。

 今までと同じように喧嘩ばかりし、昔は子供の殴り合いだったのだが、今では少しばかり派手な喧嘩ばかりしている。

 

 性格は兎も角、容姿はちゃんと変わっている。

 蓮夜は髪を伸ばし、目に少しだけ掛かり、後ろで一つにしている。

 身長も伸び、中学生の平均以上である。しかもイケメンの部類。

 剣誠は相変わらずツンツンヘアーであり、身長は蓮夜より一センチ小さい。

 顔はイケメンというよりも凛々しい。相変わらず不幸スキルは健在。

 

 

「死ねや!」

 

「お前がな!」

 

 

 家のリビングで殴りあう二人。

 台所でははやてが後ろの二人を無視して朝食を作っている。

 喧嘩といえば、そもそも蓮夜にはベクトル操作があるので剣誠には勝ち目が無い————訳が無かった。

 

 

『オラァ!』

 

 

 蓮夜と剣誠の拳が互いの顔面を捉える。

 だが剣誠の拳は弾かれなかった。

 

 

『ゴハァ!』

 

 

 そして同時に声を上げる。

 二人はそれぞれ後ろに下がり、拳を構える。

 

 

「テメェ……何時の間に……」

 

「馬鹿かお前? 何時も先制攻撃を譲る剣誠さんじゃないぜ!」

 

 

 剣誠は黒い手袋を取った右手を見せて不敵に笑った。

 

 

「あ……」

 

「ん?」

 

「………」

 

 

 剣誠は後ろを振り向いた。

 するとそこには腕を組んで剣誠を睨んでいる神楽がいた。

 

 

「あんた達……」

 

『………』

 

「朝っぱらから煩いのよぉぉぉぉおお!!」

 

 

 剣誠を蹴り飛ばし、蓮夜にぶつける。

 その瞬間、蓮夜と剣誠の上にソファーが落ちて二人を下敷きにした。

 

 

『ノォォォォォォオオ!!』

 

「まったく! ご近所迷惑でしょ!」

 

 

 神楽も成長し、スタイルはモデル並になった。

 胸は周りの中学生達よりはあるのだが、本人はもっと大きくなってほしいと懇願している。

 

 

「騒がしいと思ったら……また喧嘩か」

 

「あ、シグナム。ごめんね、今止めたから」

 

「いや良い。主の胸を揉んだ剣誠が悪い」

 

「だから……ワザとじゃ……ってぁ、何で知って―――バフンッ!?」

 

 

 剣誠はソファーから這いずり出ようとしたが、突如上から落ちてきた椅子によって阻止される。

 

 

「テメェ……さっさと退け! テメェが触れてたら力が使えねぇんだよ! ってか不幸がうつる!」

 

「……うつしてやる……私めの不幸をうつしてやるぅ!」

 

「だぁ! 引っ付くな!」

 

「そ、そんな! 蓮夜君が……蓮夜君がそんな趣味やったなんて……!」

 

「はやて!?」

 

「うわぁぁぁぁぁん! 私とは遊びやったんやぁぁぁああ!」

 

「ち、違う! 違うぞはやて! ま、待ってくれぇ~~~~ってアホかぁ!!」

 

「ぶべっ!!」

 

 

 剣誠を殴り、ソファーを上に蹴り飛ばして立ち上がる。

 剣誠はそれに乗じて立ち上がろうとしたが、落ちてきたソファーにより再び下敷きにされる。

 

 

「ふ、不幸だ……」

 

「ったく、嘘泣きは止めろっつの」

 

「あ、ばれた?」

 

「何年お前の彼氏やってんだと思ってんだよ」

 

「一年三ヶ月十日」

 

「何年ってほどでもないじゃん……」

 

 

 神楽は蓮夜をジト目で見てソファーを転移で戻し、テレビをつけて朝のニュースを見始めた。

 

 

「んあ~……朝からうっさいぞ、お前ら……」

 

「あ、ヴィータおはよう」

 

「おはよう、はやて」

 

「おはようございます、はやてちゃん」

 

「シャマルもおはよう」

 

「おはようございます、主」

 

「ザフィーラもおはような」

 

「あれ? 何時も早い義母さんは?」

 

「そう言えば、姉貴も居ねぇな」

 

 

 剣誠がいう義母とは勿論リインフォースである。

 蓮夜がいう姉貴とはエスティナルである。

 

 

「よーし! 私が起こしてこよっと!」

 

「お、おい! 多分二人は―――行きやがった」

 

 

 蓮夜が神楽を止めようとしたが、神楽は転移で姿を消した。

 そしてすぐに戻ってきた。

 顔を真っ赤に染めて。

 

 

「……どうしたんだよ?」

 

「………てた」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お義父さんと寝てた……裸で」

 

『よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁああ!!』

 

「待てお前ら!」

 

 

 剣誠とはやてが何処かへと走り去っていこうとしたが、蓮夜に首根っこをつかまれてその場で駆け足状態になった。

 

 

「何処行くつもりだ!?」

 

「だって裸やで!? リインの裸やで!?」

 

「義姉さんの裸だぞ!? あの女王様の裸だぞ!?」

 

『こりゃ見に行かん訳にはいかんだろ!?』

 

「アホか!!」

 

 

 蓮夜は渾身のツッコミを剣誠だけに喰らわせ、剣誠は床とキスをした。

 

 

「な、何で俺だけ……」

 

「いい加減静かにしろよな……」

 

 

 ヴィータは呆れながらテーブルに座ってホットミルクを飲んでいた。

 

 

「さっさと飯食っちまえよ。それから神楽は兄ちゃんの腹の上に何か重いものでも落とせ。そうすりゃ起きんだろ」

 

「う、うん……」

 

「待て。私は重いものって言ったよな? 何で包丁を触ろうとする?」

 

「あ、ゴメン」

 

「本かそれぐらいのにしろ。あ、テレビは駄目だぞ」

 

 

 神楽はテレビチャンネルを転移させた。

 それから皆で朝食を取っているとイヴァとリインとエスティが降りてきた。

 

 

「おはようさん……」

 

「おはようございます」

 

「皆さん、おはようございます」

 

 

 イヴァは額を押さえていた。

 どうやらそこにチャンネルが落ちたらしい。

 チャンネルを置き、空いている席に座って朝食を食べ始めた。

 因みに今日は和食である。

 

 

「お義父さん。昨晩はえらい忙しかったんやの?」

 

「んあ? ああ……ははっ、忙しかったさ……」

 

 

 イヴァは遠い眼で天井を見つめた。

 まるで燃え尽きたボクサーに見える。

 

 

「……エスティ、何したん?」

 

「何って……ただイヴァとリインを同時に可愛がって鳴かせて搾り取っただけですわ」

 

「~~~~~っ!!」

 

 

 リインは昨晩の運動を思い出したようで、両手で顔を隠し、イヴァはまるで廃人のように力を失っていた。

 

 

「つかよ、おふくろは何時になったら初心っ気が無くなんだよ?」

 

「ええやないの。それがリインクオリティなんやから」

 

「意味分かんねぇよ……」

 

「……それよりお前達」

 

「あん?」

 

 

 イヴァがすっと指を差した方向には八時を過ぎた時計が存在していた。

 

 

「今日、始業式だろ? 遅刻すんなよ」

 

『やっべぇぇぇぇぇぇぇえええっ!!!』

 

 

 四人の子供達は大急ぎで朝食を済ませ、玄関から出て行く。

 

 

『じゃあ、お先!』

 

『あ、神楽! 転移は反則だろ!? 俺も連れてけよ!』

 

『蓮夜君! ゴー!』

 

『あいよ!』

 

『て、テメッ! ベクトル操作で高速移動するなよ!? つかはやてだけじゃなくて俺も乗せろぉぉおお!!』

 

『知るか!』

 

『ふ、不幸だ! 不幸だぁぁぁぁぁぁぁああ!!』

 

「……何やっとるか、あいつらは」

 

 

 イヴァは玄関先で起こったやりとりに呆れ、頭を抱えた。

 元気に育っていくのはいいが、元気すぎやしないかと。

 というか剣誠が哀れすぎる。

 

 

「魔法、ばれなきゃいいんだがな」

 

「だな……」

 

 

 イヴァはヴィータの呟きに同意し、味噌汁を飲む。

 自慢の娘の料理は相変わらず美味しいと、イヴァは思うのであった。

 

 

 

 

 所変わってここ、聖祥大附属中学校。

 その二年の教室で、剣誠は力尽きていた。

 

 

「………」

 

「だ、大丈夫? 剣誠?」

 

「ぁぁ……もう、真っ白さ……」

 

 

 剣誠に話しかけたのはフェイト・テスタロッサ。

 イヴァの妹的な存在であり、剣誠の幼馴染の一人である。

 

 

「ダッシュで登校してたら信号が変わり始めてるのに渡りきれてないお婆さんを背負って渡り、今度は猛犬の尻尾を踏んづけて追いかけられ、空き缶を踏んで足を挫き、痛みと戦いながら走ってたらバナナを踏んでスッテンコロリン、やっとこさ到着したのはいいけど、全身ボロボロで、体力の限界って……何やってんのよ、ホント」

 

 

 アリサ・バニングスが剣誠の不幸に呆れ頭を抱える。

 本当に、剣誠はツイていない。

 良い事をしている筈なのにそれが決して報われていない。哀れ。

 

 

「まあ、何時もの事だから良いけどさ。それより、綺麗に分かれたよな、俺達」

 

「そうだね」

 

「私と剣誠とフェイトと神楽、なのはと蓮夜とはやてとすずか。一組と二組で綺麗に分かれてるわね」

 

「せめて、神楽とは離れたかった。いや、蓮夜と離れただけでも幸いか……」

 

「アンタたち、いっつも喧嘩ばかりしてるわよね。煩いったら……」

 

「うっせー」

 

 

 剣誠と蓮夜の喧嘩は、この学校では有名である。

 一組の最強の不良こと蓮夜・K・エラフィクス。

 二組の最良の不幸者こと剣誠・五条(G)・エラフィクス。

 教師達が止めに入っても止まらない大喧嘩。

 ある生徒間では剣誠派、蓮夜派と分かれ応援合戦したり、ある生徒間では賭け事の対象としたり、ある生徒間では二人を危険視したりと様々である。

 因みに派閥は剣誠の方は女子生徒が六割と男子生徒が四割、蓮夜の方は女子生徒が八割と男子生徒が二割である。

 剣誠の場合、女子は最良と言われるほどの優しさを受け、尚且つ顔も良いのでフラグを乱立させられているから。

 男子生徒は彼のラッキースケベのおこぼれに感謝感激しているだけである。

 蓮夜の場合、そのワイルドさと不良のカッコ良さが女子に受け、尚且つイケメンで強い。

 男子生徒からは兄貴ィー! と慕われている。

 

 因みに、この学校には更に六つの集団が結成されている。

 それはなのは、フェイト、はやて、アリサ、すずか、神楽の派閥である。

 それぞれが美少女であり、それぞれの魅力があり、この学校の六大美と言われている。

 

 

「あんの野朗、俺がテレビ見てんのに勝手にチャンネル変えやがったり、新聞読んでる時に奪ってきたり、俺のおやつ勝手に食ったり、俺の目の前ではやてとイチャイチャしたり! 許せねぇ! そのふざけた幻想をぶち殺す!」

 

「喧嘩の原因ちっさ。子供か」

 

「お前だって許せねぇだろ!?」

 

「だからって<プギャー>したり<ピギャー>したりするかしら?」

 

「し、しないんじゃないかな? (お兄ちゃん、毎日大変そうだね……)」

 

 

 フェイトはこんな子供を持つ兄に同情する。

 イヴァだけでなく、義理の姉に当たるリインにも同情を送るのも忘れない。

 

 

「まいっか! これからだ! 新しい日常の始まりだ!」

 

「ケン~! アンタちゃんと課題やってきたんでしょうね?」

 

「………あい?」

 

『はぁ……』

 

 

 何処からか現れた神楽の言葉に、剣誠以外の皆は溜息を吐いた。

 

 

 

 

 変わって一組。

 ここではある視線で埋め尽くされていた。

 

 嫉妬、殺気、羨望。

 それらの感情が込められた視線先では、ある二人の男女がある事をしていた。

 

 

「ほら蓮夜君、じっとしいな」

 

「してるっつの」

 

「お義父さんに似て寝癖がすっごいねんから、ちゃんと直さんと」

 

「親父はもっと凄い」

 

「まあ、そやね。そうじゃなくても蓮夜君、髪綺麗やねんから、しっかりせんと」

 

「………」

 

 

 はやてが、蓮夜の寝癖を櫛で直していた。

 しかもその前は蓮夜の制服の乱れをはやてが直していた。

 まるで朝の夫婦のような光景であったと、ある男子生徒は語る。

 

 

「はやてちゃん、相変わらず蓮夜君に世話を焼いてるよね」

 

「うん。イヴァさんと訓練してる時でもこうだよ」

 

 

 なのは達は定期的にイヴァの戦闘訓練を受けている。

 あの伝説の悪魔の訓練を受けれるとあっては、受けないという方がおかしい。

 因みに蓮夜と剣誠と神楽は毎日、しかもなのは達がいる時よりも厳しい訓練を受けていたりする。

 

 

「そういえば、イヴァさん達は元気にしてる?」

 

 

 すずかが気になり、蓮夜に尋ねた。

 

 

「あ? ああ……親父はおふくろと姉貴とよろしくしてるし、シグナムは親父とよく剣の修行に行ってるし、ヴィータとはまさに兄と妹だし、シャマルにはおふくろとエスティとで料理スキルをどうにかして叩き込もうとしてるし、ザフィーラとは毎日の苦労を愚痴りながら呑んでるよ」

 

「うん。最初の部分は事情を知ってない人が聞いたら危ないよ」

 

 

 もう遅い。

 周りの男子生徒は腰を引いたりトイレに駆け込んだり頭を抱えて叫んでいる者共がいた。

 妻と娘とよろしくやっている男なんて、端から見れば最低だ。

 

 

「はい、直ったで」

 

「ん、サンキュ」

 

 

 蓮夜は綺麗になった髪を触り、イケメンオーラを醸し出した。

 その瞬間、クラス中の女子が瞳をハートにして叫び出した。

 

 

「………うっぜぇ」

 

「……チッ」

 

『はやてちゃん、怖いよ……』

 

 

 自分の彼氏が見られていることにはやては舌打ちした。

 

 

「……あ、先生が来たの」

 

 

 一組に担任の教師がやって来た。

 その教師は外国人であり、金髪ロングである。

 因みに担当科目は数学だったりする。

 

 

「はい座りなさ~い。チャイムはもう鳴ってるわよ。それから蓮夜君とはやてさんはイヴァ様を紹介しなさい」

 

「いやしねぇよ……」

 

「したろか~?」

 

「すんな!」

 

 

 この教師、名をアイラ・メイルークと言う。

 ある日、地球で仕事をしているイヴァと出会い、一目惚れしてしまっているのだ。

 まあ、その話は又の機会に。

 

 

「もう、ケチね」

 

「あのな……親父は結婚してんだぞ?」

 

「何言ってるのよ?」

 

「あん?」

 

「略奪愛って言葉があるでしょ?」

 

「俺はぜってーテメェをおふくろとは呼ばねぇ!」

 

「蓮夜君、減点ね」

 

「はあっ!?」

 

 

 学校開始早々減点される蓮夜であった。

 

 

「さて、今日はもうホームルームで終わりだけど、連絡事項がいくつかあるわ」

 

「このアマ……!」

 

 

 蓮夜を無視して連絡をしていくこの教師は、蓮夜以外の生徒からはもの凄く慕われている。 ただ、イヴァに眼がないのが残念だ。

 

 

 

 

 同時刻、二組にも教師がやって来ていた。

 

 

「はいきりぃぃぃぃぃぃぃつぅ!!!」

 

 

 体格が逆三角形の、茶髪ロングの怖い顔のおっさんが。

 

 

「者共ぉ、久しいぃなぁ! ちゃんと忘れずに課題やって来ただろうなぁ、ああん!?」

 

『い、イエッサー!』

 

「…………」

 

 

 剣誠は一人、冷や汗をダラダラと流した。

 

 

――こ、殺される! 絶対殺される!

 

 

「忘れた者はぁ、前に出ろ。この俺が直々にぃ、気合を入れなおしてやる!」

 

 

――何処から出したその巨大斧ぉぉぉおお!? 殺す気満々だ!

 

 

「せ、先生……その斧で殴る気ですか?」

 

 

 誰かが恐る恐る尋ねた。

 

 

「ノンノン、殴りませんよぉ。叩っ斬るぅぅぅうう!!」

 

 

 言葉に合わせて振り下ろした斧から斬撃が放たれ、後ろの壁に直撃した。

 

 

『………』

 

「むん? これはちょっぴりぃ、やりすぎたようだな。フハハハ!」

 

「……武蔵先生」

 

 

 穴が空いた壁の向こうからアイラ先生がユラリユラリと現れた。

 

 

「は、はいぃぃぃいい!!」

 

「何さらしとんじゃあああああ!!」

 

「ぶらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

 

 アイラ先生は武蔵先生の髪を掴んで窓から外へ放り投げた。

 一体何処にそんな力があるのだろうか。

 

 

――た、助かった! 俺、生きてる!

 

 

 剣誠は一人、心の中で歓喜した。

 

 しかし忘れるな。

 それは死を先延ばしにしたに過ぎない。

 課題の提出期限は今日。

 どう足掻こうとも、剣誠に今日提出出来る事はないのだから。

 よって、剣誠は放課後に武蔵先生に追いかけられる羽目になるのだった。

 

 

 

 

 イヴァはソファーの上で刀の手入れをしていた。

 台所ではリインが洗物を、庭ではエスティが洗濯物を干している。

 

 

「む~……」

 

「どうしたのですか?」

 

「最近、戦闘の依頼が来ないから退屈だ」

 

 

 イヴァはこの地球でも何でも屋エリスを営業している。

 ちゃんと営業許可を取ってだ。

 勿論、ミッドでも営業している。

 地球に居てもミッドから電話が来るようある友人に専用の携帯電話を作って貰ったのだ。

 

 

「戦闘は無いにこしたことはありません。平和が一番ですよ」

 

「……生活費が稼げないのに?」

 

「子供達がちゃんと稼いでいますよ」

 

「………」

 

 

 イヴァは部屋の隅で縮こまった。

 

 それはそうだろう。

 一家の大黒柱であるはずの自分は生活費を稼げられず、自分の子供達が生活費を稼いでいるのだ。父としての顔が立たない。

 

 

「あ、で、でも! 報酬は少なくてもちゃんと仕事はしているじゃないですか!」

 

 

 工事現場の助っ人、お年寄りの介護、警備員、イベントの係員、ビルの清掃員等々。

 だがこれは端から見るとただのフリーターだ。

 

 

「くそう……! 俺は……俺は……! なんて頼りない男なんだ……!」

 

「そ、そんな事ありませんよ! イヴァはとても頼りになる人です!」

 

 

 ピリリリリリリ!

 

 

「あ、ほらお仕事の電話が来ましたよ?」

 

「………あい、此方何でも屋エリス……」

 

『はあ~い』

 

 

 ピッ!

 

 

 ピリリリリリリリ!

 

 

『電話を切るなんて、良い度胸してるじゃない』

 

「何の用だ、リンディ」

 

 

 電話の相手はリンディだった。

 イヴァは明らかに嫌そうな表情をしている。

 

 

『お仕事に決まってるじゃない』

 

「仕事?」

 

『家で執事やらないかしら?』

 

「ミッドへ帰れ」

 

 

 リンディは地球で過ごしている。

 どうやら地球が大変気に入ったらしく、アースラの艦長を辞めて本局勤めになってからずっとこっちで過ごしている。

 

 

『報酬は日給五万よ? 一週間で良いわ』

 

「………何で執事?」

 

『退屈なのよ。ほら、私今一人暮らしでしょ? 偶に人恋しくなるのよ。だからよ』

 

「……本音は?」

 

『家事メンドくさ〜い!』

 

「~~~っ!」

 

 

 イヴァは今にも爆発しそうな怒りをどうにか抑え込み、電話を握りつぶさないように慎重に返事を返した。

 

 

「いいだろう。だがちゃんと払えよ?」

 

『そ・れ・は! 貴方次第ね〜。じゃあ明日からお願いね〜!』

 

「………」

 

 

 イヴァは静かに電話を置き、トレードマークであるコートの姿に変わった。

 

 

「リイン、ちょっとアイツ斬り刻んでくるわ……。なに、アイツだってそれなりに戦える女だ……。鬱憤を晴らすのには最適だよ!」

 

「ま、待ってください! 何があったかは知りませんが落ち着いて!」

 

「離せ! 一度奴には人の扱いと言うものを教えてやらねばならんのだ!」

 

 

 これを聞いたリンディは恐らくこう言うだろう。

 

 

『あら、貴方は悪魔じゃない』

 

 

 と……。なんにせよ、イヴァの女難はこれから先もずっと続くのだろう。

 

 

 

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