何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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今回で旅行回はお終い!




第三章第六話

 

 

 

 海水浴は終わり、イヴァ達は旅館に戻って温泉に入ることにした。

 と、ここでまた騒ぎ出すのがお約束である。

 

 

「良いか剣誠。覗きってのはな、ばれるかばれないかの瀬戸際で、夢を見るって事だ」

 

「へっ、分かってんじゃねぇか。流石は義兄弟」

 

「だろう。ってなわけで……」

 

「ああ……」

 

 

 蓮夜と剣誠は二人してコソコソと動き出し、湯船に浸かっているイヴァとザフィーラから遠ざかっていく。

 

 

「何処へ行く?」

 

「「ビックゥ!?」」

 

 

 しかしイヴァには眼を閉じた状態でも二人の動きが見えているようだ。

 頭にタオルを載せて眼を閉じ、素直に温泉を堪能しているイヴァの姿は、男が見てもカッコいいと思える。

 何より、濡れた黒髪が何気に男の色気を醸し出している。

 

 

「二人して何処に行こうとしている?」

 

「ど、何処ってサウナだよ! な!」

 

「ああ! ちーっと、コイツと耐久勝負してくるわ!」

 

「……そうか」

 

 

 イヴァは再び温泉に気を集中し、湯に浮いているお盆からお猪口を取りグビっと酒を飲む。

ザフィーラもお猪口を取って酒を飲む。ってか酒なんてこんな所で飲んでええんかい。

 

 

「チックショオ! 何が悲しくてサウナに入らないけねぇんだよ!?」

 

「待て! こういう手はどうだ?」

 

「あん?」

 

 

 剣誠はこう考えた。

 サウナに入り続け、熱いから露天風呂にでも行って風に当たってくると伝え、堂々と露天風呂に侵入。

 そしてそこから気配を遮断して露天風呂の柵の上えと登り、理想郷をこの眼に焼き付ける。

 

 

「……いいじゃねぇか」

 

「だろ? ってなわけで……」

 

 

 剣誠と蓮夜はサウナからまるで熱さにやられたと演技しながら出た。

 

 

「あ~、やっべ……。我慢しすぎた……」

 

「だな……。親父、ちょいと外行ってくるわ……」

 

「まだ入って二分だぞ。俺の修行を受けてるのだったら十分は悠々と入ってろ」

 

 

 と、イヴァにサウナへと押し戻された。

 

 

「「………」」

 

 

 二人は男の意地を見せて三十分は入り続けた。

 

 

「はあ、はあ、はあ、ま、マジでやられかけた……」

 

「あんのクソ親父……! 鬼か……いや、悪魔だった……」

 

 

 どうにかこうにかしてやっとこさ二人は露天風呂に到着。

 二人は耳を澄まして露天風呂に誰かいるか確認する。

 

 

『うわー、お義姉ちゃん、ええおっぱいしてるやないの~』

 

『あんっ、もう……そうやって強く掴まないの。もっと優しくこうやって……』

 

『ひゃんっ!? え、ええええエスティ!? 何をする!?』

 

『エロい……エロいで! リイン!』

 

『は、はやあぁん!! や、やめてくだふぁっ!?』

 

『いいなー。お義母さんはいっつもお義父さんにあんな事されて……。私だってフェイトに負けないぐらい胸あるのに……』

 

『神楽? どうして私の胸を触ろうとしてくれるのかな?』

 

『知ってる? お義父さんの部屋にある写真、家族の写真の次にフェイトの写真が多いのよ』

 

『え、そうなの? う、嬉しいな……えへへ』

 

『というわけでお義父さんには妹萌えがあると見た。だから妹であるフェイトの成分をプリーズ』

 

『へ? ちょ、ちょっと何意味の分からないひゃん!?』

 

「「ぶっふぅ!!」」

 

 

 剣誠と蓮夜は鼻血を噴き出した。

 そして倒れるのを必死に耐え、もう一度耳を澄ませる。

 

 

『あらあら、これはちょっとペットの躾をしないといけないわね』

 

『そうね。フェイトの写真……アレが何時何処で撮ったのか吐いてもらわないとね』

 

『リンディ? プレシア? なーに二人で黒い笑いしてんのさ?』

 

『アルフ……少しは羞恥心というものを知りなさい。なにタオルで隠さずに歩いてるのよ』

 

『女しかいないから問題ないだろ?』

 

『フェイトに影響でも与えてみなさい? その時はその姿のままイヴァに引き渡すわよ』

 

『ちょっ!? それは無し! ただでさえ耳と尻尾を弄くられてまいってんだからさ!』

 

『と言いつつ、嬉しそうな顔をしてるのは何処の誰だったかしら? 端から見ればイチャついてる男女よ?』

 

『だ、だって……き、気持ち良いし……』

 

『『……死刑ね』』

 

「死刑だな」

 

「死刑だぜ」

 

「「なに巨乳美女使い魔とイチャついてんだゴラァ!! 嫁はどうしたぁ!?」」

 

 

 それからまた耳を澄まして更に会話を聞き取る。

 最早覗きなど後回しである。

 

 

『シグナム、最近兄ちゃんと一緒に居すぎじゃねぇか?』

 

『そうか? ただ無人世界で打ち合ってるだけだが……』

 

『はい、ダウト』

 

『な、何だシャマル!?』

 

『私知ってるんだからね? ただ打ち合ってるなんて言いつつ、実は独り占め出来て嬉しいのよね』

 

『な、何を言うか!? 私は同じく剣を使う者同士、刃を交えるのが嬉しいだけだ!』

 

『そういえば、蓮夜達が混ざってる時はシグナム、お前あいつらの事ジッと睨んでたよな?』

 

『なっ!?』

 

『そうそう。それで、自分の番になったらパァって明るくなって、まるで父親に構ってもらうような娘みたいに……』

 

『う、うぅ……!』

 

「「あのナンパ親父ィィ!! 一体何人の女を落とせば気が済むんだぁぁぁぁああ!!」」

 

 

 二人はもう色々な意味で怒りが爆発しそうだった。

 特に剣誠は怒りのあまり魔法陣を足元に展開してしまっている。

 

 

『アリサちゃん、何してるの?』

 

『うぇ!? べ、別に何もやってないわよ!?』

 

『ふ~ん……。神楽ちゃ~ん』

 

『何、すずか?』

 

『けんふぇっ』

 

『な、なななな何でもないわよ! 別にアイツがどんな髪が好きかとか思ってないから!』

 

「………」

 

「……何だよ?」

 

「いや……(アイツも大変だな)」

 

 

 蓮夜はアリサの恋にひっそりと応援した。

 だが相手この鈍感の結晶といえる剣誠である。なかなか難しいだろう。

 

 

「さて、そろそろ開始すっか」

 

「だな」

 

 

 二人は気配を消した。

 今までの鍛錬のお陰で気配を消すなど造作もない。

 それこそ、あの蛇男すら超えてしまいそうなほどに。

 蓮夜と剣誠は女湯と隔てている塀に近付き、人差し指に魔力をばれないように纏わせ塀に小さな穴を開けようとした。

 だが指が塀に触れそうになった直前、ふっと魔力が消された。

 

 

「「………」」

 

「何してるのかな、我が子たちよ」

 

 

 イヴァが、後ろで両手に黒い魔力を炎のように纏わせて笑っていた。

 まるで悪魔のように。

 

 

「な、何故……?」

 

「俺達の気配は完璧に消したはずだ……!」

 

「戯け。こんな温泉のど真中であるはずの気配が消えたら逆に怪しいだろう」

 

「「………なるほど!」」

 

 

 直後、イヴァは二人の頭を鷲づかみにし、頭と頭をぶつけ暫くの間意識を奪った。

 

 

「まったく……俺だって見たいっつの」

 

「イヴァ殿……あそこで神楽がこちらを見ているのだが……」

 

「んなっ!? こら、神楽!」

 

「ば、バーサーカー!!」

 

「何処を見て言っている!? ってか見るな!」

 

 

 その後、神楽の記憶をイヴァは『ゼロ』を使って消した。

 

 

 

 

 さて、旅館に泊まるにあたって名物になっているものがある。

 それは何か。美味しい夕食? いや違う。

 そう、それは……。

 

 

「第一回! チキチキ! 枕投げで殺戮ショー!」

 

「いや、殺さないでいきませんか!?」

 

「何、剣誠? アンタ蓮夜に負けんのが怖いの?」

 

「……ハッ、おいおい神楽さんや。この俺が蓮夜に負けるって? その幻想をぶっ殺す!」

 

 

 剣誠は左手に緑色の魔法陣を通し、身体強化を施す。

 剣誠の魔法は幅広く、治癒魔法から破壊魔法、強化魔法や超広域殲滅魔法まで使うのである。

 ただある事情により、威力は中途半端であり、広く浅く魔法を扱うと考えてよい。

 

 

「ケッ、テメェが俺に勝つだぁ? やって見ろよ!」

 

「行くぞ最強! 俺の最弱はちとキツイぞ!」

 

 

 それを合図にして枕投げが開始される。

 蓮夜、はやて、なのは、すずか、そして剣誠、フェイト、アリサ、神楽と分かれて枕を投げ始める。

 

 

「あははははは! あっはっはっはっは!」

 

「うにゃっ!? 神楽ちゃん、転移はずるいの!」

 

「勝てば良いのよ勝てば! 勝ってお義父さんと寝るの!」

 

「え、私とお兄ちゃんが寝るんじゃないの?」

 

「は? 何言って……」

 

「だ、だってお兄ちゃんと一緒に過ごすなんて久しぶりだし……」

 

 

 フェイトはちょんちょんと指と指を突いて上目使いで神楽を見上げた。

 神楽はうっと息を呑んで後ろに退く。

 いくら同じ女でもフェイトの上目使いはそれ程の威力がある。

 

 

「だ、駄目よ……。お義父さんは私と……」

 

「うぅ……神楽ぁ……!」

 

「……あ〜もうっ! 三人で寝れば良いんでしょ!」

 

「うん!」

 

 

 神楽の妥協で全ては解決した。

 だが二人は忘れているのだろうか。

 二人は中学二年生。そこそこ大人の身体に成長してきている。

 いや、へたをすれば高校生よりも抜群のスタイルである。

 そしてそんな娘が大の大人と添い寝をする。世間が黙っちゃいない。

 というかリインとエスティとリンディとプレシアが黙っちゃいない。

 

 

「まったく、あいつらは何を言ってんだか」

 

「ふふっ、好かれていますね」

 

「父として、兄として良いのか、もの凄く迷うんだが?」

 

 

 イヴァは部屋の縁側でリインとエスティに挟まれて酒を飲んでいた。

 他にも大人組達が挙って縁側に座ってお酒を飲んでいた。

 因みにヴィータも大人組に入っているが、酒ではなくお茶を飲んでいる。

 

 

「一体何処で育て方を間違えたんだろうか……?」

 

「たぶん……最初からではないでしょうか?」

 

「止めて……」

 

 

 イヴァはフェイトと共闘して枕を投げている神楽を見て頭を抱えた。

 

 神楽を拾った当初、神楽は酷く怯えて家族を殺された事に心を塞ぎこんでしまっていた。

 イヴァとエスティ、そして既に居た剣誠と三人で必死に神楽を元気付け、特にイヴァは神楽

 を無理やりにでも外に連れて行き、年相応の振舞いをさせようとした。

 そして神楽は一年の月日を得て、生きる希望を見つけ、心を開いた。

 

 剣誠もそうだ。剣誠は家族を殺された時に抱いた憎しみで周りが見えず、ただ復讐する為の力を望んだ。

 イヴァは剣誠に力を与えつつ、それとなく復讐の無意味さを教えていった。

 そして剣誠は復讐を成し遂げてしまった。僅か七歳にしてだ。

 その時の剣誠は復讐を成し遂げた達成感と、虚無感に呑まれた。

 イヴァはそんな剣誠にこれから先、生きて行く意味と目的を与えた。

 だからイヴァは二人に好かれている。特に神楽は異常なほどに。

 

 

「昔は純粋な子だったのにな……」

 

「貴方には子育ては無理だったのよ」

 

「うるせぇ。伊達に長生きしてねぇよ」

 

「あら、それじゃあもうおじさんなのね」

 

「お兄さんだ。俺は永遠の二十五歳なんだ」

 

 

 イヴァの身体は人間であった頃の二十五歳のままである。

 故におじさんおっさんと呼ばれるのを嫌ってる。

 二十五歳という年齢はお兄さんかおっさんのどちらが正しいか曖昧だが。

 

 

「そう言えば、貴方私に聞いてきた事がったわよね。子供を育てるにはどうしたらいいか」

 

「仕方が無いだろ。もう数え切れないほど昔に娘を育てた事しか無いんだ。どうすれば良いか忘れてしまった」

 

「……ファン、ですか」

 

「ああ。……そう言えば、ファンとはやては雰囲気が似てるな。あんな馬鹿はしないが」

 

「……そうですね」

 

 

 イヴァとリインは大昔の風景を思い浮かべた。

 あのボロ小屋に七人で短い時間だったが幸せに暮らした日々を。

 

 

「大昔ですか……懐かしいですね」

 

「……大昔……所で、イヴァとエスティはどういう風に出会ったのですか?」

 

 

 シグナムが唐突に尋ねてきた。

 イヴァとエスティの関係は契約関係だというのは周囲に知られている。

 だがどういった出会い、今までどういう風に過ごして来たのかは知られていない。

 

 

「出会い? んなもん―――」

 

「それはもう、運命的な出会いでしたわ」

 

 

 と、言いながらエスティはイヴァの腕に抱き付いた。

 それにより浴衣が乱れていき、そのたわわに実った美しい乳が露わになってくる。

 

 

「何せ、出会いがしらに私の唇を奪ってきたんですから」

 

「………イヴァ?」

 

「イ~~ヴァ~~?」

 

「貴女……最低」

 

「ちょっ!? 待て! 俺が奪ったんじゃない! 俺が奪われたんだ!」

 

「でもしたんですね?」

 

「ま、待てリイン。先ずはその拳を治めなさい」

 

「その後も凄かったんですよ。もう三日は腰が痛くて痛くて……」

 

「それは俺だ! なに俺が痛めつけたみたいに……!」

 

「イヴァ……でしたら!」

 

 

 リインは勇気を振り絞った表情で頬を紅く染めてイヴァに詰め寄った。

 

 

「でしたら私もそうしてください!」

 

「ぶぅっ!?」

 

「今までよりももっと! もっと愛して下さい! それでエスティより!」

 

「お、おおおおお落ち着け!! こ、こんな所で!?」

 

「……プレシア? 今ここでコレをぷちっとしていいかしら?」

 

「良いんじゃないかしら? ぷちっとどころかブチッ!で良いじゃないかしら?」

 

「お、おおおおお前らもなに魔法陣を展開ぃぃぃいいい!?」

 

 

 リンディとプレシアはイヴァの頭上に魔法陣を展開して何かをしでかそうとしていた。

 それはもう、ヤヴァイものを。

 

 

「ああ、もう! 何でさぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

 イヴァはこの場にいては危険だと理解し、『ゼロ』を全力で使用して場を脱出した。

 が、その場凌ぎにしかならず、結局イヴァは旅館から離れたところで撃墜されました。

 

 こうして楽しい楽しい海水浴は幕を閉じました。めでたしめでたし。

 

 

「めでたくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!! ごはぁっ!?」

 

 

 

 

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