何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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最近、忙しすぎて自分の時間が取れない。
この後もすぐにアルバイトだ。

ああ、リインの癒しが欲しい……。





第三章第七話

 

 

 時は流れ、もうすぐクリスマスがやってくる時期。

 

 イヴァは最近、いや、イヴァだけではなくリインも最近、子供達の様子がおかしいと感じている。

 子供達四人は何やら寄って集ってディスプレイを見つめ、イヴァとリインを見つめ、何かをしている。

 一度イヴァは何をしているのか尋ねたが、その時は何でもないと必死に何かを隠そうとしていた。

 

 何かを隠している。

 それは確信しているのだが、あまり踏み入った事をするのは気が引けるようで、イヴァとリインは取り合えず保留と言う形で日々を過ごしていた。

 

 

「親父」

 

「ん?」

 

 

 今日も今日とてイヴァは仕事に向かう直前、蓮夜に呼び止められる。

 

 

「今日はすぐに帰ってくんのか?」

 

「ん? ん~~……晩飯には戻ってこれると思うが、何でだ?」

 

「いや、ちょっとな……」

 

「……そうか。んじゃ、行ってくるわ」

 

 

 そう言ってイヴァはエスティと共に仕事場へと転移していった。

 残された蓮夜は、イヴァが完全に転移していったのを見届けた後、携帯電話を取り出して何処かへと繋げる。

 

 

「……俺だ。リミットは夕方だ。それまでに準備を完成させる。何、今日は日曜日だ。まる半日はある」

 

 

 蓮夜は携帯を切ってまるで獲物を狙ってるかのようなギラついた眼をし、ネックレスになっている紅蓮を取り出す。

 

 

「頼むぜ、相棒」

 

『了解』

 

 

 

 

「シグナム、子供達が何処に行ったか知らないか?」

 

「いや。そう言えば朝食後から姿を見ていないな」

 

「まったく……。蓮夜達は兎も角、剣誠は少しでも勉強をしないといけないのに……」

 

「ふっ……」

 

「……何だ? 可笑しなことでも言ったか?」

 

 

 ソファーで新聞を読んでいたシグナムは、リインの顔を見て微笑んだ。

 

 

「いや、今更だが本当に母親だなと思ってな」

 

「む……私は母親のつもりだが?」

 

「ふふ、そうだな。そろそろイヴァとの間に―――」

 

「シグナム~!! ちょっと手伝ってくれないかしら~!?」

 

「―――っと、呼ばれたかな?」

 

 

 シグナムは何かを言い終える前にシャマルの呼び声で口を閉じて庭へと出て行った。

 

 

「ちょっとシグナム!? 駄目じゃない!」

 

「すまない。つい、な……」

 

「どうした? 私も手伝おうか? 洗濯物を干すのだろう?」

 

「だ、大丈夫! シグナムにちゃんと働いてもらうから!」

 

「ちょ、おい!? それでは私がまるで働いていないみたいではないか!」

 

「え? 違うの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 どうやら二人の間で色々と食い違っているようだ。

 確かに、彼女達ヴォルケンリッターは基本的に家にいることを厳守されている。

 デバイスもリンディが預かっており、滅多の事では管理局側から仕事の依頼は来ない。

 しかも家でのシグナムは基本的に世間の情報収集しかしていなかったりする。

 即ちネットサーフィンである。

 後はイヴァと練習用に作った木刀で打ち合うか一人で素振りかだ。

 もっというならば、近所の道場に顔を出す程度。

 これではニートと言われても仕方がないのかもしれない。

 

 

「と、兎に角リインフォースは今晩の運動の為に休んでおいて!」

 

「お、おい!?」

 

 

 まさかの発言にリインは顔を真っ赤にし、シャマルは手を振ってシグナムを庭へと連れて行った。

 

 

「……しゃ、シャマルがそこまで言うのなら今日は……何か精のつくものでも……」

 

 

 リインは本気で今日の夜の運動会の準備を考えたりし始めた。

 

 

 

 

「む~……」

 

「ケン~、これで良いかしら?」

 

「んあぁ、そこ置いといて」

 

 

 剣誠は今、神楽と共にミッドチルダへとやって来ている。

 しかも場所は無限書庫。

 そこで剣誠は大量のディスプレイと本と睨めっこしていた。

 

 

「どう? 出来そう?」

 

「神楽の言う通りなら不可能じゃないんだし、それに一応それらしい方法も見つけたから出来ると思うぜ」

 

「そっか。それにしてもアンタの力って便利ね~。色々な魔法を扱うんだから」

 

「何が便利だよ。右手で力が中途半端になってんだしよ」

 

「馬鹿よね~。どんな魔法でも覚えて使えるようにしてもらったのに、その手まで頼んじゃって」

 

「うっせ」

 

 

 二人が言っているのは転生時の話である。

 神から力を貰った時、剣誠は魔法を覚える事、それを扱えるだけの魔力、そして右手の力を貰ったのだ。

 だがその右手の力で魔法が扱えなかったのだが、イヴァから貰った黒い手袋によって中途半端だが魔法を使えるようになったのだ。

 

 

「……ねぇ、ケン」

 

「何だよ?」

 

「お義父さんが引退したらさ、私達で『エリス』を継ぐでしょう?」

 

「そうだけど、多分義父さんは引退なんかしないぜ? 何だかんだ言ってもう古代ベルカから生きてんだし、定年ってのは有り得ないし」

 

「それはそれで良いのよ。その時はお義父さんと二人で『エリス』をやってくから」

 

「……俺は? 後、義姉さんは?」

 

「え? お義姉ちゃんは良いけど、アンタ?」

 

「ゴメン、やっぱ聞かないでおく」

 

 

 剣誠はこれ以上聞いてはいけないと本能で察し、再びディスプレイに眼を戻す。

 

 

「蓮夜は管理局に就職するでしょ? はやても皆そうだし」

 

「蓮夜ねぇ……。そういや、アイツはちゃんとやってんのか?」

 

「アンタと違ってちゃんとやってるわよ」

 

「……俺だってやってるっつの」

 

 

 剣誠は頬を膨らませながら黙々ととある資料を集め始めた。

 

 

 

 

「でりゃああ!!」

 

 

 紅い閃光が走り、魔法生物を薙ぎ払う。

 

 

「火炎斬破!」

 

 

 炎の斬撃を飛ばし、生物を操っていた人物を斬り裂いた。

 

 

「ぎゃああ!!」

 

「はやて! これで何人目だ!?」

 

「三十人! あと十人や!」

 

「チッ、纏めて吹き飛ばしてやる!」

 

『術式解放、第四の門を開放します』

 

「煉獄翔刃!」

 

 

 蓮夜は全身から紅い魔力を噴き出し、紅蓮の刀身を砕けさせる。

 そして砕けた刃は紅い花吹雪となって蓮夜の周りを舞い散り、魔法生物とそれを操っている人物達、犯罪者達に襲い掛かった。

 

 

「うああああ!!」

 

「がああああ!!」

 

 

 犯罪者達と魔法生物を炎で包み込み、戦闘不能にする。

 デバイスに非殺傷設定を付けているので死にはしない。

 

 

「これでどうだ!?」

 

「……うん! 終わったで! 後は処理班に任せよう!」

 

 

 はやても広域殲滅魔法で犯罪者達を行動不能にしていた。

 その後、処理班達が駆け回り、犯罪者達を拘束し、魔法生物も確保する。

 

 

「あと、どんぐらいだ?」

 

「あと、三件やね。急がな間に合わへんな」

 

 

 蓮夜はバリアジャケットである紅いコートを翻して次の現場へ脚を進める。

 あの某正義の味方の格好ではなく、某デビルハンターの格好である。

 

 

「ったく、メンドくせぇ事を条件に出しやがって……」

 

「まあまあ、凶悪犯をとっちめるだけなんて、破格の条件やと思うで?」

 

「ま、そうだけどさ……」

 

 

 二人は、否、イヴァとリイン以外の八神家とエラフィクス家の子供達は何かの為に行動しているようだ。

 蓮夜とはやてはある事と引き換えに凶悪犯達の逮捕、剣誠と神楽はそのある事を完遂する為の調査を行なっている。

 シグナム達ヴォルケンリッターは家でイヴァとリインの監視、もといお留守番である。

 

 

「ちゃっちゃとやっちまうか」

 

「うん!」

 

 

 二人は次の現場へと向かった。

 

 

 

 

 ここはミッドチルダの何所か広い草原。

 そこでは一人の男性と一人の少女が並んで武術の型をしていた。

 

 

「もっと腕を伸ばす」

 

「はい」

 

「肩と平行に」

 

「はい」

 

「よし」

 

 

 その型は地球の武道の動きに良く似ていた。

 ただ違うのは両手に一丁づつ、銃が握られているところだ。

 一通り型が終わったのか、休息し、地面に座り込んだ。

 

 

「そら、ちゃんと水分を補給しておけ」

 

「はい、師匠」

 

 

 師匠、そう呼ばれた男、イヴァは少女、ティアナ・ランスターに水が入った水筒を渡した。

 イヴァの隣ではエスティが何時ものように笑みを絶やさずイヴァに水筒を渡している。

 

 

「……なぁ、ティアナ」

 

「はい?」

 

「最近さ、俺のところの子供達がさ、変なんだよ」

 

「変?」

 

「ああ。何か隠しているような、俺達に隠れて何かしてるような気がするんだよ」

 

「はあ……」

 

「聞こうにもあまり踏み入ったらアレだし、だからと言って見て見ぬ振りというのも何だか落ち着かんし……」

 

「………」

 

 

 ティアナは黙ってイヴァの悩みを聞いていたが、正直、十歳である自分に何言ってるんだろうと思っていた。

 エスティも苦笑しながら付き合ってくださいなと、ティアナに目線で伝える。

 

 

「何か、吃驚させようとしてるんじゃ……?」

 

「吃驚ねぇ……。あ、そういえば……」

 

 

 イヴァは何か心当たりがあるのか手を叩いた。

 

 

「もうすぐクリスマスだ!」

 

「くりすます?」

 

「ああっと……地球にある家族や恋人と一緒に神様の誕生日をお祝いする日、とでも言おうか」

 

「家族……」

 

 

 ティアナは家族という言葉に暗い表情になってしまった。

 ティアナは天涯孤独の身の少女である。

 両親は幼い時に事故で、そして今まで育ててくれた兄も、殉職してしまった。

 故に、ティアナにとって家族という言葉はコンプレックスになってしまっている。

 

 

「……なに落ち込んでんだ」

 

「わっ……」

 

 

 イヴァはティアナの頭を撫でくりまわして笑みを浮かべた。

 

 

「大丈夫だって。クリスマスにはお前も一緒だ」

 

「え……?」

 

「お前はもう俺の弟子で、俺の家族、娘の一人だ。もう独りじゃないんだぞ」

 

「あ……」

 

「楽しみにしてろよ。俺の自慢の嫁と自慢の子供たちを紹介してやる。他にも自慢の家族だって紹介してやる。だから、お前はもう独りじゃないんだぞ?」

 

「っ……はい!」

 

「良い娘だ」

 

 

 イヴァはティアナの頭を撫でてから立ち上がり、両手に黒い銃を持った。

 

 

「さて、続きを始めるぞ」

 

「はい、師匠!」

 

 

 ティアナも立ち上がり、イヴァと向き合い同じく銃を構える。

 死んだ兄の為、ティアナは己の魔法を極めていく。

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

「ただいま戻りましたわ」

 

「お帰りなさい。イヴァ、エスティ」

 

 

 帰宅し、リインがイヴァとエスティを迎える。

 着替えを済ませてイヴァは皆が待つ食卓へと向かう。

 

 

「……む?」

 

 

 二つのテーブルの上に置かれている食事の豪華さに首を捻る。

 

 

――はて? 今日は何かの記念日か? リインとの結婚記念日ではないし、今日はクリスマスでもない。……はっ!

 

 

 イヴァは何か分かったのか手を叩き剣誠の肩に手を置いた。

 

 

「剣誠! とうとう恋人が出来たのか!」

 

「そうそう、やっと俺にもってちげぇよ! ってか何気に酷いな!?」

 

「む、違ったか。んじゃ、一体この豪華さはどうしたんだ?」

 

 

 視線でリインに尋ねるも、リインもはやてと神楽に台所の主導権を取られたから分からないと答えた。

 

 

「まあまあ、兎に角座って」

 

「お、おう……」

 

 

 神楽に背中を押されて何時もの場所に座る。

 

 

「それじゃあ、手を合わせて!」

 

『いただきます!』

 

 

 いただきの合図をして皆で食事を食べ始める。

 食事は和、洋、中の豪華なものばかり並べられており、そのどれもが絶品だった。

 

 

「どう? お義父さんの味にもの凄く近付いたと思うんだけど?」

 

「……うん、もう殆ど変わりないな」

 

「やった!」

 

 

 神楽の料理はもの凄くイヴァの味を再現で来ている。

 はやてもはやてで幼い頃から料理が達人並だったので最高ものである。

 因みに、イヴァの味ではなくリインの味に近かったりする。

 

 それから食事も終わりに近付き、今はデザートを食べている。

 その時、はやてが咳払いをした。

 

 

「んんっ……なぁ、お義父さん、リイン」

 

「ん?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「子供作らへんか?」

 

 

 ガラガラガッシャーン!

 

 イヴァとリイン以外ズッコけた。エスティまでもコケている。

 

 

「ばっ!? おい、はやて!」

 

「冗談やないの。あいや、ある意味本気やけど」

 

「あー……はやて? 一体全体、どうした?」

 

 

 はやてはもう一度咳払いをして改めて口を開いた。

 

 

「あんな、もうすぐクリスマスやろ?」

 

「ああ。何だ? 何か欲しいものでもあるのか?」

 

「ん~、そやね。でも今はこっちが先」

 

 

 はやては一つの封筒をイヴァに差し出した。

 

 

「……これは?」

 

「これはね、少し早いけど私達からのクリスマスプレゼント!」

 

「え?」

 

「クリスマスに渡したんじゃ、ちーっとタイミングが悪いというか、下手したらお年玉になっちまうからよ」

 

「今まで俺達を育ててくれたお礼だよ」

 

「………」

 

 

 イヴァは封筒を開けてリインと一緒にその内容を読んだ。

 

 

「……これは……!?」

 

「まさか……お前達……!」

 

 

 その書類にはこう書かれていた。

 

 『夜天の書の複製許可証』

 

 本来ならばあり得ない。

 リインを始めヴォルケンリッターとはやてには闇の書事件の中心人物として厳しく監視、管理されている。

 夜天の書の複製など、もってのほかの筈である。

 

 

「お前ら、どうやってこれを……!?」

 

「親父、管理局に入ってないのに、結構顔が利いてんだな。提督に土下座したら条件付きで許可貰えたぜ」

 

「私と蓮夜君が凶悪犯の事件を百件解決。剣誠君と神楽ちゃんが新しい魔法の提供」

 

「神楽がこの世界のバランスを崩しかねない魔法を教えないように見張ってて、俺が魔法を開発したんだ」

 

「勉強は出来ないくせに、魔法に関しちゃ、アンタって天才よね。貰った能力だけど」

 

「うっせ。そんで、これも」

 

 

 剣誠はもう一つの、今度はデータメモリーを差し出した。

 

 

「これは?」

 

「まあ、開いてみてよ」

 

 

 イヴァはモニターを出してリインと中身を見た。

 その中身も驚くべきものだった。

 

 

「……おいおい」

 

「これは……!?」

 

「結構難しかったぜ。全然資料が無かったもんだから、結構ギリギリだった」

 

「これなら、二人の面影を遺せるものね」

 

 

 なんとデータの中身は『ユニゾンデバイスの製造方法』であった。

 しかも剣誠独自の方法も組み込んでアレンジを加えていた。

 

 

「お義父さんとリインも、やっぱ自分と繋がった子供が欲しいやろ? せやから、どないしよっかって考えたらこうなってん」

 

「………」

 

「はやて……」

 

「せやからお義父さんと……お、お義母さんに今までのお礼でプレゼントや! 受け取って!」

 

「っ、はやて……っ!」

 

 

 はやてがリインの事を母と呼んで。今まで照れて呼べなかったが、この時は母と呼んだ。

 それが嬉しくてリインは涙を流しだす。

 

 

「イヴァよ、我が主のお気持ち、受け取ってはくれないか?」

 

「兄ちゃんとリインフォースの子供見てみたいしな」

 

「大丈夫! きっと良い子供が出来るわ!」

 

「イヴァ殿、どうか……」

 

「お前ら……」

 

 

 シグナム達は知っていたようで、それぞれ気持ちを伝えた。

 

 

「イヴァ、受け取ってあげて下さいな」

 

「エスティ……」

 

「この子達は二人の為に動いたのですよ。二人のご自慢の家族達が。別に悪魔がプレゼントを貰ってもバチは当たりませんわ」

 

「……ったく」

 

 

 イヴァはククッと笑って二つのプレゼントを手に取った。

 

 

「誰もいらないって言ってないだろ。ああ、もう! 嬉しいぜこの野朗!」

 

 

 イヴァは両手を大きく広げて子供達を抱き寄せた。

 

 

「やっぱお前達は俺とリインの最高の子だ! 俺は嬉しいぞ!」

 

 

 ぎゅーっと四人を出来る限り抱きしめた。嫌がっても抱きしめた。

 神楽はチャンスとばかりに三人を押し退けて抱きつこうとしているが。

 

 

「皆……本当にありがとう」

 

 

 リインもイヴァと一緒に子供達を抱きしめた。

 そんな光景を、周りの皆は微笑ましい目でずっと見ていた。

 

 

 

 

 とある世界。

 そこはただ森が広がるだけの世界。

 しかし、そこには凶暴な魔法生物が数多く存在する世界。

 そしてほんの少しの人類も存在する。

 

 

『グギャアア!!』

 

 

 その世界で、一匹の魔法生物が上空に打ち上げられた。

 そしてそれは地に落ちて息絶えた。

 

 

「ぬがあああああ!!」

 

 

 その生物を打ち上げたのは一人の体格のよい大男である。

 白い髪をかき上げて岩のような筋肉の肉体を持つ。

 上半身は裸で顔から足までラインのような痕が走っている。

 

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

 

 また一匹、大男によって殴り飛ばされた。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

『キシャアアア!!』

 

「ぬっ!?」

 

 

 大男の後ろから巨大な蛇のような生物が襲い掛かる。

 大男は反応が遅れてしまった。

 

 

 バァァン!!

 

 

 一発の銃声と共に飛来した蒼い閃光が蛇の頭を貫き、蛇は息絶えた。

 

 

「『勝ったと思った時こそ油断なかれ』。アイツが言っていただろう」

 

「チッ……別に問題は無かった」

 

 

 大男は拳に纏った手袋のような金の籠手をしまった。

 先ほど蛇をしとめたのは、やや暗い茶髪の男性で紺色の長袖のジャケットと同じく紺色の長ズボンを着ている。

 手には狙撃用ライフルを持っていた。

 

 

「もう終わったのか?」

 

「ああ。お前が暴れて気を引きつけてくれてるおかげで狙撃に集中できた」

 

「そうか……」

 

「戻ろう。報告書を書かないとな」

 

「アレは嫌いだ」

 

 

 二人には共通のモノがある。

 大男の腰に、茶髪の男性の胸に、剣を模した銀色のバッジをつけている。

 

 

「ちゃんと書かないと、騎士カリムとイヴァに怒られるぞ」

 

「ぬ……カリムは兎も角、おっさんはな……」

 

「それ、イヴァが聞いたら笑って殴ってくるぞ。それに、仮にも師匠だろ」

 

「ぬぅ……」

 

 

 二人は転送でこの世界を去っていった。

 

 徐々に物語は動き始めている。

 それが幸か不幸か、どんな物語になるかは分からない。

 

 

 

 

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