行こうか。
イヴァの死亡より三日後。リイン達に笑顔は無かった。リインはイヴァの死が自分にあると思っており、ずっと部屋で泣いている。蓮夜は管理局に怒り狂い、剣誠はずっと黙って何かを考えており、神楽は襲われた時の恐怖でずっと怯えている。はやては何も出来なかった事に悔しく思っており、フェイトもずっとプレシアの胸で泣いており、なのはも泣いていた。
そしてミリィは子供だからかイヴァの死を理解出来ておらず、イヴァに言われたとおりずっと良い子にしていれば帰ってくると思っている。シグナム達は大切な家族を犠牲にして罪を消した事に後悔しており、しかしその分家族を守り通すと誓った。プレシアはイヴァとの最期の会話があんな喧嘩別れのようになったことを少なからず後悔していた。
そして管理局側、リンディ・ハラオウンはイヴァシリアという友人を殺してしまった要因である自分を許せなかった。だから、その罪を一生背負う事を決め、これからこの先、イヴァの家族をずっと命に代えても守り通すと誓った。それが唯一の罪滅ぼしなのだから。
そのリンディの息子、クロノも同じく悲しんだ。そして実の母がイヴァの死の要因だと知り、リンディを責めたが、自分は何も出来なかった事もあり、それ以上何も言わなかった。
十三騎士団にいたっては二つに分かれてしまった。レオン、アスラ、その他多数の人間はイヴァ側に付き、聖王教会と管理局に反対の意を表している。オーガス、ヤシャ、ミュリオン、他数名はそのまま教会側に付き、命令に従っている。もっとも、ミュリオンにいたっては私利私欲の為に動いているようなものであるが。
そしてイヴァの契約者であるエスティは姿を消した。
★
「……蓮夜君」
「……何だ?」
はやては自室で蓮夜の背中に背を預けながら重苦しそうに言葉を発した。
「……私、決めたで」
「………」
「私、お義父さんの様な強い人になる。管理局でのし上がって、全員を守れる強い人になる。絶対や」
「……そうか」
「せやから、蓮夜君。力を貸してくれへん?」
「………」
「……蓮夜君?」
「……俺は、他にやらなくちゃならねぇ事がある」
「え……?」
蓮夜は父が遺したコートを手に取る。ぎゅっと握り締め、怒りに染まった赤い瞳で天井を睨みつけた。
「だから、お前とは別の道になっちまう」
「そんな……!」
「……けど、同じ道になったら、力になってやる」
「……うん」
二人は背中合わせのまま手を握り締めた。
★
「………」
剣誠は神楽の部屋の前に立っていた。父が遺した刀と、ユフィに返して欲しいと言われた黒猫のぬいぐるみを手にして。
「……神楽」
扉の向こうで怯えている神楽に語りかける。
「俺……この家を出るよ」
神楽の部屋からは何も反応は無い。それでも剣誠は語り続けた。
「皆を守るって言ったのに……何も出来なかった。それどころか俺は力に呑まれて義父さんを傷つけた」
剣誠は悔いている。己の力をコントロール出来ず、父に牙を向けてしまった事を。
「だから……もっと強くなって………」
剣誠は言おうとした言葉を飲み込む。
「………元気でな」
「ケン!」
勢い良く扉を開けて出てきた神楽だが、そこに剣誠の姿は無かった。
「ケン……」
神楽はその場に座り込み、膝を抱える。
「ヒッグ……また……独り……嫌だよぉ……」
神楽は涙を流す。家族を失い、また家族が出来たのに、また父親を失い、剣誠までいなくなった。それは神楽にとってはとても辛い事だ。
★
悪魔は死んだ。いや、存在を消した。その事実は変わらない、消えない。
悪魔は多くの人間を救った。喜びを与えた。笑顔を与えた。温もりを与えた。
悪魔は守った。己の家族を。己の友を。己の全てを懸けて。
悪魔は守りきれなかった。家族という絆を。愛する者達の本当の笑顔を。
だが忘れるな。悪魔には悪魔の意志を継いでくれる子供達が居る事を。家族が居る事を。
その意志は次の世代に受け継がれ、そして――――。
「やっと手に入れたわ……貴方の魂」
次なる争いの種へと変わる。
これで完結です。第二部はすぴばる小説部で投稿し続けてます。こっちでも投稿しようかなとは思っておりますが、なにぶん、ちょっとカオスになってきたかもで、こちらに投稿する場合は、だいぶ修正したものになるかもです。設定とかキャラとか。
その時はまたよろしくお願いします。では、また会える日を。