何でも屋エリスでございます   作:魔帝

5 / 37
三話目ですよ~!
もう既にお気に入り登録がッ!?





第一章第三話

 

 

 

 ファンがアースラにやって来て数日。今日もまたファンは蓮夜を調教ならぬ教育していた。

 

 

「オラァ!」

 

「てい」

 

「ぐあっ!」

 

 

 殴りかかってきた蓮夜の拳をかわし、デコピンを喰らわせて後ろに吹き飛ばした。

 

 

「ち…くしょう……! 何で俺がこうも……!」

 

「はい、もう一度。お兄さんと言いなさい」

 

「けっ、おっさん!」

 

「………リンディ、抜いて良いかな?」

 

 

 ファンはモニターで見ているであろうリンディに笑顔を向けて刀の柄に手をかけた。

 

 

『駄目よ♪』

 

「チッ……」

 

 

 リンディの楽しそうな拒否に舌打ちをして蓮夜を見た。

 

 

「なーんでこんなに性格が悪いのかね。よっぽど親の教育が悪かったのか?」

 

「っ……アンタには関係ないだろ!」

 

 

 ベクトル操作で地を駆け、ファンに紅蓮を振り下ろす。

 ファンはそれをひらりとかわすが、蓮夜はそのまま何度も振り回す。

 

 

「どうした? パパとママの悪口言われて怒ったか?」

 

「うっせぇんだよ! 親なんてクソくらえだ!」

 

 

 紅い魔力が蓮夜の身体に纏わり、紅蓮から魔力の斬撃を放つ。

 

 

「ほっほー、強引な攻撃だな」

 

 

 しかしその斬撃はファンに触れる前に消える。

 

 

「何でだよ! 何で全部消えちまうんだよ!」

 

「だーかーらー、おっさんを撤回したら教えてやるっつの」

 

「ざっけんな! 誰がテメェに従うか!」

 

 

 蓮夜は牙を剥き出しにしてファンに迫る。

 ファンはそんな蓮夜の様子を見て、少しばかり驚いた。

 

 

―――何だこの怒り……今までのような傲慢じゃない……これは……。

 

 

「消えろぉぉぉぉぉ!!」

 

「っ! 馬鹿が!」

 

 

 蓮夜は床に己の魔力をありったけ込めた拳を叩きつけた。

 その瞬間、アースラに激しい振動が起こりだし、床一面にミッド式の魔法陣が展開された。

 しかし、込められた魔力が大き過ぎたのか、蓮夜には制御仕切れなかった。

 

 

「え―――?」

 

 

 本来ならば術者を中心に己以外の者を攻撃する広域殲滅魔法なのだが、蓮夜が出したソレは制御仕切れず、自分も含めアースラそのものを破壊しようとした。

 

 

「―――引っ込んでろ!」

 

 

 ダンッと、ファンの手が魔法陣に叩きつけられる。やがて振動が収まっていき、魔法陣も消えていった。

 

 

「ふぅー……あぶねーな、ったく……」

 

「え……な……」

 

「おいコラ、訓練も何もしていないお前が、こんな滅茶苦茶な魔法を使ってんじゃない」

 

 

 叩き付けた右手をプラプラと振りながら蓮夜を睨んだ。

 

 

「な、何でだ……? 俺は……オリ主のはず……。だから暴走なんて起こすはずが……」

 

「もしもーし、何をぶつぶつ言ってんだ? 聞いてんのか?」

 

「なのに何で……? まさか、いやそうだ。そうに違いない」

 

「おーい?」

 

 

 蓮夜はファンの言葉が耳に入っていないのか、驚愕に満ちた表情で一人呟いていた。

 

 

「さっきから何を―――」

 

「お前が! お前が俺を嵌めたんだろ!」

 

「あ?」

 

 

 いきなり何を言い出すのか理解できなかったファンは、蓮夜の行動に首を捻った。

 

 

「お前が何か訳の分からない力を使って俺の力を暴走させた! そこでお前が解決してかっこつける! そして俺に恥をかかす! そうなんだろ!」

 

「何言ってんだ? そんな事して何になるってんだよ?」

 

「しらばっくれるな! この卑怯者め!」

 

 

 蓮夜はファンに向かって紅蓮を振り下ろす。

 すると紅い斬撃がファンに向かって襲い掛かった。

 

 

「……何を言っているのか分からんが、お前には先ずじっくりと話し合いをする必要があるな」

 

 

 そう口にした瞬間、ファンは消えた。いや、蓮夜の目の前にいた。

 両者との距離は十メートルほど離れていたはずなのだが、ファンは瞬きが終えるか否やの速度で移動した。

 

 

「なっ―――!」

 

「少し、眠ってろ」

 

「っ―――」

 

 

 ファンが蓮夜の額を小突くと、蓮夜はふっと意識を手放した。

 ファンは倒れこむ蓮夜を抱きかかえ、訓練場を後にする。

 

 

 

 

 アースラの医務室に、蓮夜は寝かされていた。

 傍にはファンが座っている。

 ファンはなのはに頼み、蓮夜の事を聞いた。

 

 曰く、既に両親はいない。事故で亡くなっており、幼い時に高町家に引き取られたらしい。

 

 

―――こりゃあ……傷を抉っちまったかな?

 

 

 知らない事だったとしても死んだ両親を侮辱してしまった事に後悔をし、反省した。

 自分も同じ事を言われれば、深く傷つくのだから。

 

 

「う……」

 

「お? 起きたか?」

 

「……ここは……?」

 

「医務室。……悪かったな、両親を侮辱して」

 

「……はぁ? うっせんだよ……」

 

 

 蓮夜は心底鬱陶しそうにして、顔を背けた。

 ファンはどうしたものかと頭をかく。

 これから色々と話し合いをするのにこんな状況では満足に話ができる訳がない。

 

 

「すまん、この通り」

 

 

 ファンは頭を下げた。

 それを見た連夜は舌打ちをして起き上がった。

 

 

「どうでも良いっつうの。碌な親じゃなかったからな」

 

「……そうか」

 

「誰に聞いたんだよ?」

 

「なのはからだ。事故で亡くなったそうだな」

 

「事故ね……。そういや、なのははそう聞かされていたな」

 

「ん? どういう事だ?」

 

「死んだ原因は事故なんかじゃねぇ。俺が殺した」

 

「……理由を聞いても?」

 

「……ちっ、普通はそんな反応はしないだろうが」

 

 

 蓮夜は頭をかきながら自分の過去話を始めた。

 蓮夜の両親は最初は至って普通の親だった。

 父はサラリーマンで母は専業主婦。

 なのはの両親とも仲が良く、近所からはもの凄く評判の良い仲だ。

 蓮夜が生まれてからも、初めての息子にこれ以上ないくらいに愛情を与えた。

 

 だが、蓮夜が四歳の時に、その幸せの時間は終わりを迎える。

 

 父親の両親が死んでしまった。

 それだけなら悲しいだけで済むのだが、祖父がしていた多額の借金を蓮夜の父親が払う事になってしまったのだ。

 身に覚えの無いことに怒りを覚えたが、どうすることも出来なかった。

 更に不幸な事に、父親が勤めていた会社が倒産した。

 働き口を失った父親は、最初こそは前向きに考えていたが、新しい働き口が見つからず、次第に荒れていった。

 なのはの両親も、喫茶店を経営しているから働かないかと話を持ちかけたが、喫茶店で働いただけで返済できる借金ではなかった。

 父親は酒を浴びるように飲みだして、母親にあたるようになってしまった。

 母親は、必死にパートで働き、蓮夜を育てた。

 父親からの暴力にも耐え抜き、蓮夜を必死に守った。

 だが、それも限界だった。

 母親は衰弱していき、食事も喉を通らない。

 その様子を知ったなのはの両親は母親だけでも守ろうとしたが、すでに遅かった。

 蓮夜の感情が爆発したのだ。父親だからと我慢し、母親の頑張りを無駄にしたくないからと我慢し、前のような家庭に戻って欲しいからと我慢し、遂に崩壊した。

 父親を能力で殴り殺し、死体を弾けさせ、感情任せに暴れまわった。

 その時に、蓮夜を止めに入った母親までも巻き込んでしまったのだ。

 気が付けば両親は弾けとび、自分は血溜まりの中に呆然と座り込んでいた。

 後に異変に気が付いたなのはの両親が駆けつけて蓮夜を保護し、蓮夜を匿った。

 それからは高町家で過ごし、なのはには事故と伝えた。

 

 

「……というのが俺の過去。どうだ? 中々濃い過去だったろ?」

 

「ああ、濃いな。ティッシュの箱、十箱も使い切っちまったぜ」

 

「きったねえな! これ布団じゃなくて使用済みのティッシュかよ!」

 

「鼻水入りだ」

 

「ざっけんなチクショウ!」

 

 

 ファンは眼と鼻から流れ出る水を拭き取り、ティッシュに埋もれた床に投げ捨てる。

 

 

「何なんだよテメェは! 気持ち悪い転生者だな!」

 

「ズズッ……転生者? 何だそれは?」

 

「惚けんな。お前も神に力貰って転生してきたんだろうが!」

 

「………じゃあ、お前はその転生者だとでも言うのか?」

 

「ったりめーだ! 俺こそが真の主人公だ! 誰にも邪魔はさせねぇ!」

 

「………リンディ! 俺やっちまった! 子供に脳の障害を植え付けちまった!」

 

 

 ファンはリンディにもの凄い形相で通信を開き、冷や汗をダラダラと流しながら叫び出した。

 

 

「ちょ、おいテメェ! 何行ってやがる!」

 

「ああどうしよ! こんなことしたら今まで築き上げてきた信用が崩れ去り、依頼が来ない! 即ち仕事無い、金無い、命無い!」

 

 

 うがーっと頭を掻き毟り、これから先の暗い人生を予見した。

 それはもうどえらい絶望的な顔で。

 

 

「このっ、いい加減にしやがれ!」

 

 

 絶望するファンの頭を掴んでベクトル操作で吹き飛ばそうとするが、何も起こらなかった。

 

 

「くそ! だから何で効かねぇんだよ!」

 

「……………ある、一人の男がいました」

 

「あん?」

 

 

 先ほどまで絶望していたファンの様子がガラリと変わった。

 蓮夜の手を離し、静かに語りだした。

 

 

「その男は孤独で、だがそれなりに人生を謳歌していました。ある時、六人の家族が出来ました。それはそれは楽しい時でした。しかし数年後、男は家族を殺しました。何故なら殺さなければ皆には死より残酷な人生が待ち受けているからです。そう、勝手に解釈したのです。そして男も一緒に死にました。けれど、一つの存在に魂を拾われました。その存在は言いました。生きたいかと。男はこう答えました。生きたい。家族と一緒にもっと生きたかったと。だからその存在は男にチャンスを与えました。そして男はそのチャンスに挑みました。それは果てしなく永く、辛い道でした」

 

「………で?」

 

「その男の名は、イヴァシリア・ムトス・エラフィクス。無と孤独を司る、古代ベルカの悪魔。俺は……その力を宿している」

 

「……はあぁ?」

 

 

 蓮夜は可愛そうな人を見るような眼でファンを見た。自分の事は棚に上げて。

 

 

「……何てな。俺はただそれに似たような|稀少技能(レアスキル)を持ってるだけだ。名づけて『ゼロ』。万物を無にする力。だからお前の能力は、全て消してたの」

 

「……|幻想殺し(イマジンブレイカー)かよ」

 

「お? それなんかカッコいいな! 今からでも改名しようかな……」

 

「ちっ……あくまでもシラをきるつもりかよ」

 

「何の事だよ?」

 

「あーあーうっせーな! 寝るからこのティッシュを片付けろ! お前の言うゼロでな!」

 

 

 蓮夜はそういうと布団に包み、眠りについた。ファンは苦笑をしてティッシュを片付けた。 そして医務室から出て行った。

 

 

「……紅蓮」

 

『はい、マスター』

 

「今の話……古代ベルカの悪魔っての、本当か?」

 

 

 蓮夜は紅蓮に聞いた。紅蓮は神に貰ったデバイスであり、この世界の事を全て知っている。 未来の事は分からないが。

 

 

『はい。ミッドチルダでは聖王オリヴィエと同じく崇められている伝説級の悪魔です。彼女と共に乱世を駆け巡ったと、または彼女を導いていたと言われています』

 

「けど悪魔なんだろ?」

 

『はい。自らをそう名乗ったとされています。それと、イヴァシリアに付き従う存在がいたとか』

 

「……それって、魂を拾ったとかいった?」

 

『はい。その存在を人々は魔、死、無、闇と言葉で表していたとされています』

 

「………そんなの、原作じゃあ無かった設定だよな……。何だよ、イレギュラーがあんのかよ、チクショウ」

 

 

 蓮夜はこれから先、原作通りに進むのか不安になった。もしイレギュラーな事ばかり起これば、自分の力でどうにかなるのだろうかと。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。