何でも屋エリスでございます   作:魔帝

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 最近忙しくて眠れない。


第一章第五話

 

 

 

 前回の戦闘の直後、なのはと蓮夜とユーノはリンディによるオハナシを与えられた。

 それはもうニッコリとした微笑で暗黒面といい悪魔を降臨させたような恐怖を三人に植え付けた。

 蓮夜に至っては……。

 

 

「何だあの怖さは……!? あんなの知らない……! 知らないぃ!!」

 

 

 といった具合にガクガクブルブルニャーニャーな状態に陥っていた。

 しかし、蓮夜にはまだ恐怖が待ち構えていた。

それは……。

 

 

「さぁ……始めようかぁ……! お仕置きという名の調教を!」

 

「それ意味ほぼ同じぶらぁ!!」

 

「そらそらぁ! 休んでいる暇など無いぞぉ!」

 

「テメェはギルガメでぃしゅぶぅ!!」

 

 

 ファンによるお仕置きが待ち構えていたのだ。

ファンは自身の周囲に展開した黒い魔力剣を、蓮夜に向けて連続掃射をぶちかましていた。 しかも、『ゼロ』を使用してのものであるから、当然、蓮夜の反射は効かない。

 

 

「な、何で俺だけなんだよチクショウが!!」

 

「ある者が言った……可愛いは正義だと!」

 

「お前絶対転生者だろべちゃ!!!」

 

「ほらほら、無駄口叩くから当たるんだよ」

 

 

 このお仕置きは、数時間に渡り続けられた。

 因みになのはとユーノには渾身のデコピンを与え、少なからず、その痛みに恐怖を植えつけた。

 

 

 

 

「でぇ~~……かったる〜い……」

 

「ファンさん……だらしないですよ」

 

 

 アースラの食堂で、ファンとリンディ、クロノとエイミィが食事を取っていた。

 なのは達御一行は、この先大きな動きがあるかもしれないという事で、暫しの休息を与えている。

 よって地球に一時の里帰りをしている。

 

 

「だってよぉ~、俺は本来バンバン戦場に出て、暴れまわって金を貰うのが仕事だぜ? なのにこの艦に閉じ込められて、挙句の果てにはこの命名『緑の悪魔』と終始一緒に居るんでででででででっ!!?」

 

「だ~れが悪魔ですって?」

 

「アンタだよっ! その一見惚れ惚れする笑顔で男共を魅了し、奴隷のように扱う貴女様ではございましぇ~ん!! そこは男として大事な部分ンンンンッ!!」

 

 

 どうやらリンディはファンのある部分を握り潰そうとしている様だ。哀れ、ファン。

 

 

「わお……艦長、過激~」

 

「か、母さん……」

 

「お、お前ら助け―――」

 

「えい♪」

 

「パゥ―――!?!?!?」

 

 

 何かが……潰れてしまったようだ。

 

 

 

 

 ここはリンディの部屋。そこにはリンディとファンが二人でお茶を飲んでいた。

 

 

「それで? 貴方は何か知っているんじゃないの?」

 

「何を?」

 

「今回の主犯、プレシア・テスタロッサの事を」

 

 

 プレシア・テスタロッサ。リンディ達と同じミッドの出身者で、元研究員。

 彼女自身が研究開発していた次元航行エネルギー駆動炉、『ヒュードラ』の使用の際、違法な材料を持って実験を行い、失敗。

 結果的に中規模次元震を起こしたことで中央を追われて地方へ転属。

 随分揉めたようだが、プレシアの言葉を一切無視。その後行方不明。

 そして、フェイト・テスタロッサの母親でもある。

 

 

「………知らないな。知っていても教えない」

 

「あら、どうして?」

 

「仕事内容に含まれていない」

 

「そう……」

 

「ま、依頼主がピンチになったら、その時はその時で何とかしてやるさ」

 

「あら、頼もしいわ」

 

 

―――そう……何とか、な……。

 

 

 

 

 ファンとリンディがだべっている間に、動きがあった。

 フェイトの使い魔アルフが、なのはの友人のアリサという女の子の家で保護されていたのだ。

 話を聞くと、プレシアのフェイトに対する扱いに激怒し、反攻。

 返り討ちにあい、地球に転移。

 更にアルフはフェイトを助けてほしいと管理局にお願いをしてきた。

 無論、それを管理局側、否、アースラはそれを受理。

 なのはが当たる事になった。

 

 

「………」

 

「どうしたんですか、ファンさん? 難しい顔をして」

 

「ん? いや、何でも」

 

 

 そして今、ファンの目の前のモニターでははのはとフェイトの戦闘が行なわれている。

 だがこの戦闘はどっちが勝ってもいいのだ。

 なのはが戦闘で時間を稼いでいる間、フェイトの帰還先を追跡する準備をしておく。

 

 

「にしても、現代にここまでする子供が居るもんだね~」

 

「ファンさんはどうだったんですか?」

 

「俺? 確か……五歳で百は相手にしてたか? 素手で」

 

「貴方は本当に人間ですか?」

 

「さぁね~?」

 

「そこは否定してくださいよ!」

 

 

 画面の向こうでは、雷の嵐やら魔力砲の嵐やらをぶつけ合っている。

 本当に子供同士の戦いとは思えない。

 因みに、蓮夜はというと、今回ばかりは戦闘の外に居た。

 否、周りを警戒していた。

 

 

 

 

―――チッ……何で俺があのおっさんに指図されなくちゃいけねえんだよ!

 

 

 蓮夜はファンに辺りの警戒をしていろと指示を出されたのだ。

 あの時のように、プレシア以外の攻撃があるかもしれないからだ。

 

 

―――まあ確かに、アレは確実に転生者の仕業だ。今回も何らかのアクションを起こしてくるに違いねぇ。

 

 

 蓮夜は辺りを警戒しながら、紅蓮の待機状態である紅い宝石の腕輪を触った。

 

 

―――俺が主人公だ……誰にも邪魔はさせねぇ……! 邪魔する奴は消してやる!

 

 

 そして、なのはとフェイトの決着がついた。

 なのはの収束砲が、バインドで固定したフェイトを撃ち抜いた。

 

 この勝負、ジュエルシードを賭けて戦っていた為、フェイトのジュエルシードはなのはに渡される事になる。

 が、それを許すプレシアではなかった。雷がなのはとフェイトを襲い、ジュエルシードを回収した。

 

 

「なのは! フェイト!」

 

 

 蓮夜は二人の下へ賭け付けようとしたが、突然、魔力砲が蓮夜を襲った。

 

 

「んだよゴラァ!!」

 

 

 蓮夜は左手で弾き、魔力砲が向かってきた方向へ、長距離斬撃波を放った。

 しかし何も起こらず、蓮夜は舌打ちした。

 

 

―――んだよ……まさか不意打ちで俺を殺すつもりだったのか? ならこれでもう意味がないと分かったか?

 

『蓮夜』

 

「あン? 何だよおっさん!?」

 

 

 蓮夜の前に、ファンから通信映像が繋げられた。

 

 

『今すぐになのはとフェイトを連れて戻って来い』

 

「けっ……言われなくてもわーってるよ」

 

『それと、よく最後まで警戒したな。偉いぞ』

 

「んなっ……!?」

 

 

 ファンは一方的に通信を切った。

 

 

「……き、きき、きききききききき気色悪ゥゥゥゥッ!!!」

 

 

 ファンの褒め言葉に鳥肌が立った蓮夜であった。

 

 

 

 

 なのは達が帰ってきてすぐ、アースラ全局員がプレシアの居場所に転移で乗り込んだ。

 ジュエルシードが回収された時、そのジュエルシードを追ってその居場所を突き止めたのだ。

 

 

「お疲れ様」

 

 

 リンディは帰ってきたなのは達を労う。

 そこには手錠をかけられたフェイトと、付き添うようにアルフもいた。

 

 

「それから……フェイトさん、初めまして」

 

「………」

 

 

 フェイトはリンディの挨拶に答えず、待機状態になっているデバイス、バルディッシュを握り締めた。

 

 

「……?」

 

 

 ふと、フェイトはある男の人に視線がいった。

 

 

「………」

 

 

 その男、ファンはフェイトには顔を見せず、モニターを見ていた。

 だがフェイトはジッとその後姿を見つめ、目を大きく開いた。

 

 

「お、『お兄ちゃん』!?」

 

「「「お兄ちゃん!?」」」

 

「ビクッ……!!」

 

 

 フェイトの驚きの言葉に、その言葉を聞いた全員は声を揃えて驚き、ファンは肩をビクつかせて冷や汗を流した。

 

 

「……どういうことか、説明してくれるわよね?」

 

「ナンノコトデスカー? ワタシ、ソンナビショウジョシリマセーンヨ?」

 

「あンだとテメェ!? やっぱり何か企んでやがったな!?」

 

 

 リンディは、それはそれは美しい笑みを浮かべてファンの肩を掴み、蓮夜は紅蓮を突きつけた。

 

 

「ファンお兄ちゃん! 私だよ! フェイトだよ!」

 

「あ~……悪いが、俺はフェイト・テスタロッサという女の子とはこれが初対面だ。俺は君を知らない」

 

「そ、そんな……」

 

 

 フェイトはショックで表情を暗くする。

 対してファンはフェイトから目を逸らし、モニターに視線を戻す。

 モニターでは、局員がプレシアを取り囲んでいた。

 それから数人の局員がプレシアが座っている玉座の後ろにある部屋に辿り着いた。

 そこを開けると、中には一つの生体ポットが存在していた。

 その中には……。

 

 

「……やはり、アリシア」

 

「っ、おい、テメェ!」

 

 

 少しだけ幼いフェイトそっくりな女の子が入っていた。

 

 

『私のアリシアに触らないで!』

 

 

 アリシアの生体ポットに触れようとした局員が、突然現れたプレシアに弾き飛ばされた。

 プレシアは手をかざし、全領域に雷を落として局員を全滅させた。

 

 

「いけない! 局員達の送還を!」

 

「りょ、了解です!」

 

「………」

 

 

 ファンはモニターを睨んでいた。まるで怒り、悲しんでいるように。

 

 

『もう駄目ね。時間が無いわ。たった九個のロストロギアではアルハザードへ辿り付けるか分からないけど……』

 

 

 プレシアは生体ポットにすがり付きながら呟いた。

 

 

『でももういいわ。終わりにする。この子を亡くしてからの暗鬱な時間を……この子の身代りの人形を娘扱いするのも……』

 

 

 フェイトは息を呑んだ。

 プレシアが言う事を本能的に察してしまった。

 

 

『聞いていて? 貴女の事よ、フェイト。折角そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない……私のお人形』

 

「……アリシア・テスタロッサ。プレシア・テスタロッサの実の娘であり、『ヒュードラ』の事故の際に死亡」

 

 

 ファンは眼を閉じながら呟いた。まるでその場で見て来たように。

 

 

「プレシアの最後の研究は、使い魔を超える人造生命の生成、死者蘇生の秘術。恐らく……フェイトという名前はその計画の名前」

 

『……ファン、貴方……』

 

「久しぶりだな、プレシア。暫く見ない内に随分とまぁ、窶れたな」

 

『黙りなさい。自由気ままに生きる貴方とは違うのよ。アリシアを……私の娘を守ってくれなかった貴方とは違うのよ!』

 

「っ……」

 

『でももう良いわ。その役立たずの人形と一緒に二度と現れないで』

 

 

 ファンは苦虫を潰した様な表情になった。

 プレシアはモニター越しにフェイトを睨み、笑いながらこう言った。

 

 

『いいこと? 私は貴女お作り出してからずっと……大嫌いだったのよ!』

 

「っ……!」

 

 

 フェイトはその最悪な言葉に衝撃を受け、精神を崩壊させてしまう。

 倒れる寸前、なのはが身体を受け止めた。

 

 そして、局員の回収が終了した瞬間、プレシアの根城に大量の魔力反応が確認された。

 

 

『私達の旅を、邪魔されたくないの』

 

 

 次元震が引き起こされ、プレシアはアルハザードへと向かおうとする。

 

 

「……プレシア、お前の娘への想い、痛いほど分かる。だが……」

 

 

 ファンはコートを翻し、転送ポートへと向かいだす。クロノもそれに続く。

 

 

「もう一人の娘を、蔑ろにする事は、この俺が許さん……!」

 

 

 動きだす。何もしないと言った男が、母と娘の為に刃を抜く。

 

 

 

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