では、突然のクイズ。
スコールは今何を?
1:束と暗躍
2:組織内で根回し
3:既に千冬と合流
さあ、どうかな?
何時もの夢、だけど何時もと少しだけ違う夢だ
自分が居て、マドカが居て、千冬が居て、そしてあの二人が居る。
三人家族が五人家族になって、温かな日々を過ごす夢。
あの二人は一体誰なのか。
一夏には分からない。きっと同じ夢を見ていたマドカにも分からない。
だけど、何故か分かる事がある。
今日、この夢の正体が分かる。
そんな根拠の無い確信がある。
「作戦内容を説明する。我々は京都に潜伏する亡国機業を攻撃し、連中を殲滅する。そして目下の最大戦力であるオータムは、私と織斑弟妹で撃破する」
「私達は後詰めという事ですわね?」
「そうだ。オルコット、ボーデヴィッヒは狙撃とAICで牽制しつつ全体のサポート。鳳、篠ノ之、デュノアは更識に着いて前線に立ってもらう。また、IS委員会経由で数人の増援が来る。各自連携を怠るな」
「了解しました」
「他、何もないなら準備に入れ。……いや、最後に一つ言っておく。これは今までにない程に厳しい戦いになる。だから、全員死ぬな。危険を感じたら逃げろ。以上だ」
いつになく厳しい表情で千冬はそう言うと、全員が頷いた。
そして、各々が行動を始める中、千冬は一夏とマドカを呼び止めた。
「織斑、……いや、一夏、マドカ」
「大丈夫だよ、千冬姉」
「ああ、私達は大丈夫だ」
「……そうか」
「なあ、千冬姉。俺達は何か予感がするんだ」
「予感?」
「うん、あの夢の正体が今日で分かる。そんな予感が」
「……っ、正体が分かったとして、お前達はどうする?」
「分からない。けど、正体を知らなかったら一生後悔すると思うんだ」
「あと、私達の夢には奴が、オータムが関係している。根拠も何も無いが、何故かそう感じる」
「そう、か……」
二人の言葉に、千冬は目を伏せる。
昨日のオータムは未練を断ち切る為に、二人の前に姿を現した。
だが、そんな安い行動で断ち切れるものではない。
オータムは断ち切ったつもりでも、二人はまだ本当の姿が見えぬオータムを、無意識に探している。
なら、千冬がやる事は一つだ。
「……お前達は予定通りに囮に徹しろ。奴とは私が当たる」
「でも、千冬姉」
「異論は認めん」
この子達にオータムを斬らせないし、自分もオータムを斬らない。
縛り上げて拳骨の一発を見舞って、そして全てに決着を着ける。
「作戦開始まで時間が無い。早く行け」
「分かった。けど、無理すんなよ」
「頼むぞ、姉さん」
「ああ、任せておけ」
今日この日、全てに決着を着ける。
大馬鹿者が贈る独りよがりの愛を終わらせ、家族全員で帰る。
きっと、その為に自分はこの強さを手に入れた。
──オータム、スコール。たんこぶの一つ二つで済むと思うなよ
千冬は強く拳を握り締め、特別なセッティングを済ませた機体の元へと足を進めた。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「一夏、マドカ。大丈夫なのか」
「ああ、大丈夫だ」
「お前が心配するとは、何かあるかもな」
「なっ! 私だって心配くらいする!」
軽口を叩きながら、三人は皆が待つ集合地点へ向かっていた。
軽口ではあるが、箒が二人を心配したのは本心だ。
二人から聞く夢の話は、日に日にその彩度を増して、何も知らない箒達でさえ、その夢の日々が現実だったのではないかと錯覚してしまう程に、温かさに満ち溢れていた。
「……本当に大丈夫なんだな?」
「ああ、さっきも千冬姉に言ったけど、今日でこの夢の正体が分かる気がする」
「根拠も無いのに、不思議なものだ。何故か確信がある」
「ふむ……」
二人の夢の正体、それは箒も気になるが、きっとそこは今の二人の根幹を為す場所、自分達が気軽に踏み込むべき場所ではない。
「二人共、一つ聞きたい。もし、夢の正体を知って、それが辛いものだとしたらどうする?」
「もしそうだとしたら、……うん、受け入れる」
「ああ、そうだな。私達は受け入れる。だが、それが辛いのではなく、悲しい失う事前提のものなら抗う。絶対に抗う」
「ああ、失わせない。絶対にだ」
「そうだな」
何故か、箒には嫌な予感があった。
根拠も無いが、奇怪で醜悪な怪物が自分達の見えない足下で這いずり回り、影でこちらを窺っている様な、そんな寒気を覚える感覚。
言い様の無い不快感、ひたすらに嫌な予感。
あの銀の福音の日の様な、これから最悪の事態が起こる。あの日と同じ悪寒が、箒の背を走った。
「……なら、私達を頼れ」
だが、箒は二人を止められない。
そんな嫌な予感と共に、今ここで二人を止めれば、自分達は一生後悔し、一生二人に顔を合わせられない。
そんな確信があった。
「分かった。頼む」
「ふん、仕方ないから頼ってやる」
「マドカ、お前はもう少し素直になれんのか?」
「お前よりマシだ」
「なんだと?!」
これから起こる事は、きっと今までで一番大切な事だ。
全てに決着が着き、全てが終わり、全てが始まる。
因縁の全てに終わりを告げて、二人は自分達の元へと帰ってくる。
その為には、自分達もやるべき事を成さねばならない。
「そうだ。これが終わったら、皆で京都観光に行かないか」
「またいきなりだな、兄さん」
「時間はあるのか?」
「あー、多分?」
「まったく、後で千冬さんに確認しておけ」
大丈夫、きっと全員で揃って帰れる。
箒は待機状態の紅椿をそっと握り締め、二人と並んで歩いた途中、三人を呼び止める声があった。
「どうも、どうも、織斑一夏さんとマドカさん、篠ノ之箒さんですか」
「はい、そうですが貴女は?」
「私、私、IS委員会から派遣されました赤染と申します」
初めの言葉を繰り返す変わった口調と、血の様に赤い髪の女は恭しく頭を下げ、赤染と名乗った。