あ、前回加筆してます
亡国機業日本支部内、当初の予定通りに亡国機業員を屋外に出さない事は成功し、オータムを本隊と分断する作戦自体は成功した。
だが、当初の予定には無い事態が発生してしまった。
「くそっ!」
無人機、学園を襲撃したあの機体の群れにより学園側は織斑弟妹と、IS委員会から派遣された工作員と分断されてしまった。
降りた隔壁を破ろうにも、数体の無機物がそれを邪魔する。
さしもの千冬も、機体のスペック差とこれからのオータムとの戦いを考えると一息に攻めきる事が出来ず、狭い室内という事も相まって、全員が本来の力を発揮出来ずにいた。
「ラウラ達との通信は?!」
「ダメだ。無人機の中に通信を妨害している奴が居る! 多分、あっちにも湧いてるよ!」
後詰めであったセシリアとラウラ達も、無人機の襲撃を受けた辺りで通信が出来なくなった。
援護は望めず、突破しようにも難しい。
──頼む。二人共、無事でいてくれ……!
最悪の状況に千冬は歯噛みし、迫り来る無人機と斬り結びながら祈るしかなかった。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「赤染さん!」
「ひっ!」
IS委員会から派遣された工作員の、赤染に迫る無人機を押し返し、一夏とマドカは学園側との合流への算段を練る。
降りた隔壁はISの出力でも突破は容易ではなく、加えて無人機の性能もこの狭い室内に適したものだ。
「マドカ!」
「分かっている!」
マドカのライフルが火を噴き、無人機の頭を弾く。
無人機である以上、容赦する必要は無く二人はゆっくりとではあるが、確実に前へ進んでいた。
「お二人、お二人! こっち、こちらです!」
赤染が名の通りの赤い髪を派手に揺らし、ハッキングで開けた隔壁の向こうで、二人を手招く。
一夏とマドカは急ぎその隔壁を潜り抜け、閉じていく隔壁に追い縋る数体を弾き返し、完全に閉じきった隔壁の中で息を吐いた。
「助かりました。赤染さん」
「いえ、いえ、こちらこそ手助けも出来ず申し訳ありません」
「しかし、何がどうなっているんだ? この組織がいくらデカイとは言え、数に限りのあるISコアをどうやって用意した?」
「私、私にもさっぱりです。ですが、先はまだ長いので、お二人は少しでも機体とご自身の回復を」
赤染の言う通り、二人は想定以上の出来事に消耗が激しい。
機体も展開し続けると、肝心の戦いでエネルギー切れを起こしかねない。
なので二人は一時機体を待機状態に戻し、少しでもエネルギーの回復に努める事にした。
「こちら、こちらをどうぞ。携帯食です」
「あ、すみません」
「済まない。助かる」
赤染からブロックタイプの携帯食を受け取り、口の端に挟みながら噛り、今の状況を整理する。
現状、学園側との合流は困難であり、撤退も現在地が不明なので難しい。
それに加えて、この無人機達を放置すれば大きな被害に繋がる事は目に見えている。
──これはオータムが仕掛けた事か? いや……
勘だが、この一連の流れはオータムの考えではない。
施設の防衛にしても、この戦力は過ぎている。
それに、無人機の動きも何か違和感があった。
こちらの分断が目的なら、無人機ではなく人を使ってもいい筈だ。言ってしまえば、こちらは戦力こそあるが、ラウラや更識、千冬を除けば戦闘の訓練を積んだ素人でしかない。
殺し、殺人に対する抵抗を利用して、こちらを分断する方がコストとしては安く、更に混乱をもたらす事も容易だった筈だ。
いや、無人機だけで済ませるつもりだったなら、この流れも頷ける。
しかし、そう考えても一夏の違和感は消えない。まだ何かある。一夏はそう考え、マドカに目配せすると、マドカも同様に何か違和感を感じていたらしく、黙って頷いた。
──まるで、何かおぞましい生き物が口を開けて待っているみたいだ。
気分は疑似餌に騙される魚か、それとも罠に呼び込まれる獣か。
何れにしても、オータムが取る策とは考え難い。
オータムなら、無人機という不確かな方法を選ばず、確実に自分で狩りに来る。
何故か、そんな信頼にも似た感覚がある。
「あの、あの、大丈夫ですか?」
「え、ああ、大丈夫ですよ」
「そうですか、そうですか。それは良かった」
だが、そんな信頼にも似た感覚の中に、一瞬だがノイズが走った。
オータムは確実に自分から来る。ならこれは誰の考えだ。
何故、自分達はこんなにも〝きれい〟に分断された。
一夏とマドカ、そして直接戦力にはならない赤染の三人だけが、この亡国機業内で孤立した。
そして、今の赤染から感じた違和感はなんだ。
一夏は無意識にマドカを庇う様にして、赤染から距離を取った。
「……あら、あら、どうしました?」
「いや、なんでも」
「兄さん……?」
この違和感の正体はなんだ。
何故、自分は目の前の赤髪の女に警戒心を抱いている。
この違和感はどこで覚えた。
昔、否、つい最近の事だ。
思い出せ。
隔壁を叩き続ける音を背後に、一夏は脂汗を流しながら、必死に思考を巡らせる。
腹が異様に熱い。頭もだ。まるで、思考しようとする意思を邪魔する何かを振り払おうと、体が必死に抵抗しているかの様だ。
「あ……?」
「マドカ!?」
巡らせる思案の中で、マドカの気の抜けた声と倒れる音が聞こえた。
「ああ、ああ、ようやく効いてきたのね」
「て、めえ……」
「割と、割と、多目に混ぜたのに、思ったより効くのが遅いから、こんな古臭い手を使う事になるなんて、やはり血筋は馬鹿に出来ないのね」
赤染のそんな言葉が聞こえた。
やはり、感じた違和感は間違っていなかった。
一夏は家族を護る為に、白式に無理矢理意識を覚醒させ、赤染にその大刀を振り下ろした。
「おお……!」
「無理は、無理はいけないわ。だって貴方達は大切な餌なんだから。ああ、そうだわ」
赤染はそんな一夏の一振りを難なく避け、どこからかあるものを取り出し、一夏に投げ付けた。
「……腕?」
「あら、あら、忘れたの? 酷いわね。あんなにも、貴方達を愛してくれた人の腕なのに」
一夏の意識を割いたのは、赤染が投げ付けた腕だった。
手入れの行き届いた爪の、細い腕。断面から見えるのは、生身の筋肉と骨ではなく、機械の断面。
見覚えも記憶も無い筈なのに、一夏の動きと思考は一瞬で止まってしまった。
「貴方達、貴方達は大切な餌だけど、そうね。無理に生かしておく必要も無いわね」
あの女の様に。
腹部に鋭い衝撃を受けながら、最後に一夏が聞いたのは、そんな邪悪な言葉だった。
スコールクイズの答えは、4の腕でした