ヤンデレな彼女達   作:ネム男

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※これは、1話目の『春がやってきたと思ったら……』の続編です。


脱出とクリスマス

 今日は12月25日。世間ではクリスマス、聖夜である。リア充達がイチャラブしているであろう実に素晴らしいイベントだ。しかし今日の俺は……

 

 「聖夜でも関係なくバイトだぜひゃっはー!」(白目)

 

 やぁ皆さんお久しぶり!え、お前誰だよって?そう俺の名前は佐藤 拓也!実に5話ぶりの登場だぜ!

 え?お前彼女に監禁エンドだっただろうって?ふっふっふ……実はな……脱出したのじゃよ。そう!俺は彼女だったサリー(サリア・ローザ)の魔の手から逃げることに成功したのだ!

 

 え?何もったいないことしてんだよ、って?うーん……確かに、サリーは元はフランス人ですげぇ美人だし、スタイルも抜群に良いし、サリーの作る料理はめちゃくちゃ美味い。なにもかも完璧な彼女であったが、1つ悪いところがあったんだ。

 それは独占欲があまりにも強いこと。他の女子と喋っただけでも目のハイライト消えるし、男友達と仲良くしていても不機嫌になるし、家での通話時間は最低でも5時間以上、朝起きた時のメールの数は200通以上。

 

 うん、ぶっちゃけ超怖かった。正直彼女にここまで愛されていたのは悪い気はしなかったけど、さすがに愛が重すぎる。サリーの一方的な愛だったし、俺自身何かに縛られるのは好きではない。

 そんなこんなで俺はあの監禁部屋から脱出を決意したのであった……!

 

 「おい、何ブツブツ言ってんだよ?お客さん来たぞ?」

 

 「あ、すいません。いらっしゃいませー!」

 

 ------

 

 6ヵ月前……

 6月24日

 

 「ん……」

 

 再び目が覚めて起き上がる。今自分がいるのはどこかの暗い部屋、手錠と足枷はガッチリついている。たしか俺は、不良達に襲われて意識が飛んで、気づいたらサリーに監禁されてて、さらにサリーとのディープキスで睡眠薬飲まされてまた意識が消えたんだった……。

 今は何時何分だ?日付は何日だ?あれから俺はどれくらい眠っていた?

 

 「あ、おはようございます。拓也君♪」

 

 色々考えていると電気の灯りがつき、そこに彼女はいた。長い金髪を三つ編みでまとめており、可愛らしいピンクのエプロンを着て、朝食が乗っているおぼんを持ったサリーが部屋に入ってきていた。

 

 「……おう、おはよう、サリー」

 

 「ええ。よく眠れましたか?」

 

 「あぁ……薬のおかげでぐっすり爆睡したよ。ところで今日は何日だ?」

 

 俺は今どんな状況になっているのかをサリーに問う。

 

 「今日は6月24日、土曜日の午前8時10分です。あなたがここに来てから2日が経過しました」

 

 2日間俺は眠っていたのか……それじゃあ学校は無断欠席ということになっているだろう。完全皆勤狙ってたのになぁ……

 

 「あ、学校のことなら心配しないでください。拓也君はこの学校を退学すると伝えましたから。もちろん、私もあと1週間後には退学届けを出しますよ」

 

 

 「……は?」

 

 こいつ、今なんて言った?退学……?

 

 

 「おまっ、ふざけんなよ!勝手に退学してんじゃねぇよ!」

 

 「何言ってるんですか?あなたはもう何もしなくていいんですよ?ずっと私と一緒に居てくれればいいんです。ご飯も私が作りますし、ちゃんと私が働いてお金も稼ぎます。あなたはずっとここにいるだけでいいんです」

 

 「それってヒモじゃん!馬鹿な事言ってないでさっさとこの手錠と足枷外してくれよ!」

 

 「……拓也君」

 

 「ひゃい!?」

 

 サリーの声のトーンが急に低くなり、目のハイライトが消えて雰囲気がガラッと変わる。思わず恐怖でゾッとして、声が裏返ってしまった。

 

 「もうあなたが傷つくのは見たくありません。あなたが他の女と仲良くしているのも見たくありません。これ以上、私から離れて行くのは嫌なのです。だから、ここでずっと私と一緒に暮らしましょう?ずっと……一緒に……ね?」

 

 首をかくっと曲げて、低いトーンでそう言った。

 

 「ひっ……わ、わかった……すまなかった……」

 

 ここで否定したら殺される。そう思ってしまい、俺はサリーの言葉に従った。

 

 「ふふふっ、いいんですよ。はい、朝ご飯です」

 

 するといつもの雰囲気と笑顔が戻り、俺がいるベッドのすぐ隣にあった椅子にサリーは座った。朝食です言われても、手錠かけられてちゃあ箸やフォークが持てない。

 

 「あの、この手錠外してくれないと飯食えないよ?」

 

 「大丈夫です。私が食べさせてあげますよ」

 

 デスヨネー。早々簡単にこれは外してくれそうにないな……。

 

 「はい、あーん……」

 

 サリーは箸で卵焼きをつかんで、こちらへ向けてくる。俺はそれをパクッと口に入れた。

 

 「……うん、おいしい」

 

 甘みが効いているいつもの味だ。

 

 「ふふふっ♪あ、次はこれを……」

 

 それからは俺の監禁生活が始まった。

 部屋には勉強机、小説がぎっしり詰まった本棚、ラジカセ、テーブルの上には昼食のカップ麺やインスタント食品が置いてある。さらには冷蔵庫も置いてあり中にはお茶とジュースが入っている。トイレもちゃんと設備されていて、まさに完備された部屋だ。確かにこの部屋であれば1日中過ごせることも可能である。風呂の時にはお互いの手首に手錠をはめて繋ぎ、サリーと一緒に入っている。寝るときも同じベッドでサリーに抱きつかれながら寝る形だ。

 

 サリーが働いている間は手錠を外してもらっていて、ラジオを流しながら、小説を読んでいた。朝昼晩のご飯はサリーが全て作ってくれるし、寝る場所も環境の良い部屋で、正に完璧なヒモ状態である。

 

 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。付き合い始めた頃のサリーはちゃんと常識があって、勉強や色々な雑務を真面目にこなし、誰にでも優しく対応していて、まさに聖女だった。デートの時には手をつなぐにも彼女が恥ずかしがって苦労したし、恥ずかしがり屋で真面目な彼女にキスを求められた時があって、した後には必ず顔をトマトのように真っ赤にして可愛らしい反応も見せてくれたものだった。

 

 しかし今のサリーは前の恥ずかしがり屋なサリーではない。俺が彼女から離れていくのと俺が傷つけられるのを極端に嫌がり、遂には監禁して俺の生活を独占している。何週間か前のサリーではとても考えづらい出来事だった。

 

 何が彼女を暴走させてしまったのだろうか、俺にはそれが一切わからなかった。

 

 そして、俺が監禁されてから1週間が経過した。

 

 a.m.8:30

 

 「ふぅ……ごちそうさま」

 

 「はい、お粗末さまでした♪」

 

 それにしてもサリーは俺が長い間ここにいるからだろうか。あれから毎日とても機嫌が良さそうだ。俺はこんな状態にされて精神が壊れないように必死なんだがな。

 

 「……なぁ、サリー」

 

 「ん?なんですか?」

 

 「いい加減に外に出してくれないか?」

 

 無駄な事だとわかっていても、俺はなんとかこれらを外してもらおうと説得する。もうそろそろ俺の精神が危うい。

 

 「……どうして、ですか?」

 

 サリーは光を宿していない黒く濁った目でこちらを見つめる。

 

 「愛し合っている男女が一緒に暮らせるんですよ?何が不満なんですか?どこか悪いところでもあるんですか?」

 

 「いや、手錠と足枷がついてる時点でめっちゃ嫌なんやけど……」

 

 「大丈夫ですよ。もうあなたは何もしなくていいんです。ご飯ならもっとあなたの口に合うように頑張りますし、部屋の環境も徐々に良くします……なんなら……下の処理も、ちゃんと私がやりますから……///」

 

 だめだ。全然話が通じない。

 

 「じゃあ私は皿を片付けた後に、仕事に行ってきます。私が帰ってくるまで大人しくしててくださいね?……愛してますよ、拓也君♪」

 

 サリーはそう言って部屋から出ていった。

 

 「……はぁ~」

 

 

 

 

 

 ……もう……

 

 

 

 

 

 「こんな縛られた生活嫌だぁぁぁぁ!!」

 

 

 ここまでやる必要があるのか!?俺の意志は完全無視ですか!?確かにサリーのことは好きだよ!?最初に告られた時とか俺その日1日中はしゃいだよ!?でもなぁ!愛が重すぎるよちくしょう!俺に人権はないのか!?普通の恋がしたい!テレビが見たい!ゲームがしたい!おうち帰りたい!俺に自由をくれよこんちくしょう!

 

 

 「……はぁ……はぁ……」

 

 心の中でたまっていた愚痴を思いっきり吐き出す。

 

 「……よし、脱出しよう」

 

 俺はこの部屋から脱出する事に決心した。

 

 ------

 

 a.m.9:00

 

 「さて……」

 

 この部屋の中では自由に動き回れる。俺の私物は一切この部屋に無い。もちろん自分のスマートフォンも彼女に取り上げられているだろう。俺は手始めに本棚を調べた。

 本棚は色んな種類の小説本があるだけで、これといって気になるものはなかった。

 次に勉強机を調べた。3つの引き出しのうち、1番上の引き出しを引く。中には数枚の写真が入っていた。写真の内容は子供が2人仲良く写っている写真ばかりだった。

 

(これ……俺が子供の時のだ……なら隣に写っている金髪の女の子は、サリーか……懐かしいな……)

 

 遊園地に行った時の写真や、動物園の時の写真など懐かしいものばかりだった。

 

 真ん中の引き出しを引くと、特に何も入っていなかった。

 最後に残った1番下の引き出しを引くと、そこにはノートや、鉛筆や消しゴムなどの勉強道具が入っていて、そして隅っこに髪留めと針金が置いてあった。

 

(これは……いけるかも……!)

 

 運良く金具を発見した。これらなら足枷の鍵穴を開けれるかもしれない。ピッキングはやったことないけど……やるしかない!

 俺は針金を持って、足枷の鍵穴をいじりはじめる。

 

(くそっ……なかなか難しい……)

 

 鍵穴との格闘で徐々に時間が過ぎていく。そして2時間が経過した時、そろそろ集中力が切れそうであった。ピッキングを諦めかけた次の瞬間--

 

 カチャッ……

 

 「!!」

 

 鍵が開いた音がして、片方の足枷が外れる。

 

(やった……!よし、この調子でもう片方も……!!)

 

 開いた時の感覚を忘れないうちにすぐにもう片方の解除に取り掛かった。長い間苦戦していたからなのか、やっているうちにだんだんとコツを掴み始め、1時間でもう片方の解除に成功する。

 

 「やっ……た……」

 

 足首にかけられていたものが外れ、遂に体の自由を取り戻した。

 

 「やった!やったぞ!!よっしゃああああ!」

 

 俺は慌てて監禁部屋を飛び出した。廊下を通って、階段を軽い足取りで駆け下りる。降りた後にすぐに玄関が目に見えた。

 

(ついに……!ついに……!)

 

 

 扉の鍵を開けてドアノブに手をかけた。そしてついにこの家から外に出ることに成功した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なにしてるんですか?」

 

 

 

 はずであった。

 

 

 

 

 「まったく……まさか、ピッキングしてこの部屋を脱出するなんておもってませんでした……少し甘かったみたいです……」

 

 家の外には出ることには成功した。ただ何故か、家のすぐ前には仕事であるはずのサリーがいた。どうやら仕事場に持っていく弁当を家に忘れ、外食しようにもたまたま家に財布忘れてしまい、仕方なく家に取りに帰ったところで外に出た俺とバッタリ会ってしまったのだ。あまりにも運が悪すぎる。

 

 「サリー……俺……」

 

 「これでよしっと……」

 

 脱出失敗。見事に振り出しに戻された。いや、最初の頃よりもひどくなった。前よりも厳重である手錠と足枷をかけられ、昼間での手錠の解除はなし、昼食はなくなり、小説本、ラジカセまでもが撤去されてしまう。

 

 「じゃあ行ってきますね。仕事が終わったら……たっぷりお話しましょうね?拓也君♪」

 

 そう言ってサリーは部屋から出ていった。

 何も無いポツンとした部屋。カチカチと時計の針が進む音だけが聞こえる。

 

(あ〜あ……やらかした……)

 

 運は俺に味方するどころか裏切られてしまった。まさかこの時間帯に帰ってくるなんて予想できない。しかも今回は手錠はガッチリ繋がれたままで身動きが一切とれない。もうほとんど詰んだ状態。ゲームオーバーだ。

 

(俺、このまま廃人になるのかなぁ……)

 

 もうほとんど諦めていて、思考がだんだん停止していく。もう考えたくもない。もうなにもしたくない。そう思っていた。

 

(……寝よ)

 

 何もすることがない俺はそのまま眠りについた。

 

 ------

 

 p.m.19:15

 

 「ん……」

 

 「あ、やっと起きましたね」

 

 眠りから目が覚める。体を伸ばそうと背伸びしようとするが、手錠で手首が固定されているため身動きがとれず、ガチャガチャと金属音だけがなる。

 

 「あぁ……おはよう……サリー」

 

 「ええ。おはようございます」

 

 サリーは笑顔であったが、目のハイライトが消えたままであった。首になにか紐のようなものがかかっている。なんだろう……。

 

 「……ごめんな、サリー。お前を裏切るようなことしてしまって……ほんとに悪いと思っている……」

 

 「そうですよ。まさかピッキングできるなんて思っていませんでした……どうしてそこまで外に出たがるんですか?外にはあなたを傷つけるものがいっぱいあります。そんな危険な場所よりもここにいた方が安全なのに……」

 

 「あぁ……そうだな……ごめん……」

 

 しかしもう、なにもかもが面倒に思えてきた。

 

 「もう2度とあんなことしないでくださいね?」

 

 「あぁ……わかった……」

 

 それを聞いたサリーはホッとひと安心した。

 

 「じゃあ、ご飯にしましょうか。今日はあなたの大好きなカレーですよ」

 

 そして俺はサリーに夕食は食べさせてもらい、夕食が終わると次は風呂場に移動した。手錠と足枷は解除されたが俺に逃げる気力は無かった。更衣室で俺が服を脱いでいるとある物を目が捉える。

 

 「……!」

 

 それは2つの鍵を紐を通して首にぶら下げていたのだ。先程部屋で外し時の鍵の形はどんなものなのかよく見てなかったが、紐の色や特徴はさっきから首にかかっているものが気になっていたものと同じだ。

 

(もしかして……)

 

 そこで思考が働いて、あるひとつの方法を思いついた。だがこの方法は個人的にはあまりやりたくない。でもどうせこのまま廃人になるのであれば、最後くらい少し足掻いてもいいだろうと、そう思った。

 

 風呂の時間が終わり、俺は再び手足を拘束され、サリーは別の部屋で残った家事をしていた。

 そして、夜の22時。サリーは監禁部屋へと入ってきた。そしてサリーの首にあの紐がかけられているのを確認する。

 それを見た俺は最後の足掻きを実行することに決めた。

 

 「さて、もうそろそろ寝ましょうか」

 

 「……なぁ、サリー」

 

 「ん?なんですか?」

 

 「手錠だけ、外してくれないか?」

 

 「……また、そんなことを言ってるんですか?ダメに決まって--

 

 「お前を、抱きしめたい」

 

 「!?」

 

 サリーはえっ、と少し驚いた表情をする。

 

 「お前をさ……この手でぎゅっと抱きしめたい。今度は俺からしたいんだ……頼む」

 

 そう、俺の最後の足掻きは無理矢理夜の営みに持っていく作戦だ。もうこれしかない、許してくれ。あまりこんな真似はしたくないが、これしか思い浮かばなかった。

 でもまぁ……多分こんなんで許してくれるはずが……

 

 「わ、わかりました……///」

 

 ……あれ?

 

 サリーは首にかかっていた紐を引っ張りあげて鍵を出す。その鍵で前よりも厳重な手錠があっさり外される。

 

 「ありがとう……それじゃあ……」

 

 俺はベッドに向かい合って座っているサリーを、ぎゅっと抱きしめた。

 

 「拓也君……///」

 

 サリーも優しく抱き返してくる。

 

 「サリー……大好きだよ……愛してる」

 

 さらに俺はサリーの耳元でそう囁く。

 

 「ッ!///」

 

 密着していた体を離すとサリーの顔は真っ赤になっていた。こんな照れた顔したサリーは久しぶりに見たな……。

 

 「サリー……」

 

 そして俺はサリーに口付けをする。

 

 「……ん……ちゅっ……んっ……」

 

 「あっ……ん……んむっ……ちゅっ……ん」

 

 彼女の口の中に舌を入れて掻き回す。サリーも下を動かして、お互いに求め合った。

 

 「んっ……ぷはぁっ……」

 

 「……はぁっ……はぁっ……たくやくぅん……」

 

 サリーは既に表情が蕩けていた。これを待っていたかのように、今の彼女はとても可愛いくて、とてもエロい表情であった。

 

 「嬉しい……嬉しいです……拓也君……」

 

 「サリー……このまま……」

 

 「……はい、きてください……拓也君♡」

 

 そして俺は、童貞を卒業した。

 彼女は夢中で俺を求めてきた。

 俺も応えるように彼女を求めた。

 お互いに激しく求め合って、快楽に溺れていった。

 

 そして、1時間が経過してお互いヘトヘトになった。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 「えへへへ〜……たくやくぅん……」

 

 サリーは子供のように甘えてくる。俺は彼女の頭を優しく撫でた。

 

 「………」

 

 しばらくするとサリーの寝息が聞こえてきた。慣れない仕事をしているということもあって、疲れがたまっていたのだろう。俺の腕を絶対離さないようにガッチリ掴まれていた。

 

(ごめんな、サリー……)

 

 俺はサリーが起きないようにそーっと離れ、なるべく音を立てないように鍵を取り出して、足枷を解除する。

 

 そして俺は、再びこの家から脱出する事に成功した。

 

 

 ------

 

 6ヶ月後……

 12月25日

 p.m.19:50

 

(まぁ、そんな訳で俺はとんだクズ野郎になってでもあの監禁部屋から脱出したってわけだ。許してくれ、ヤンデレに勝つにはクズにでもならないと勝てないんだ……)

 

 俺はあの後自宅に帰って一通り着替えを済ませ、最低限の持ち物を準備してホテルへ向かった。

 早朝には電車に乗って、3時間かけて単身赴任であった父親の元へ行き、1人暮らしをするための部屋を探すのを手伝ってもらって、前に住んでいた県からかなり離れた県に住んでいる。

 両親の許しを得るのに事情を説明して何度も何度も頭を下げた。最終的に両親は俺の考えを受け止めてくれて、色々な手続き等をしてくれた。

 今住んでいる地方も親が探してくれて、そこは都会とも言えなければ田舎でもない中間的な地方であり、とても住みやすい環境である。両親には本当に感謝してもしきれないくらいだった。

 

 「お疲れ様でした〜」

 

 「はい、お疲れ〜」

 

 今日の分の仕事が終わり、帰宅しようと仕事場を出た。

 

 「うわっ、寒っ……結構雪降ってるなぁ……」

 

 街を歩いているとこの時間帯はどこを見てもカップルが手を繋いでイチャイチャとしている。あんな普通の恋がしたかったなぁ……としみじみ思うのであった。

 

 「はーい皆さん!もうすぐイルミネーションの点灯時間ですよー!」

 

 街の中心に辿り着くと、何かのイベントがあっていて人が多く集まっていた。

 この街の中心には大木が何本かあって、その大木にたくさんの豆電球や、発光ダイオードなどの電灯が装飾されていた。

 腕時計を見ると時間は19時59分。どうやら20時に一斉点灯するみたいだ。

 

 「じゃあカウントダウンいきますよー!皆さんもご一緒に!さーん!……にー!……いーち!……ぜろー!!」

 

 そして大木に装飾された電灯が一斉に輝く。ちょうど今降っている雪とマッチングしてこの場は神秘的な輝きを放っていた。

 

 

 「……綺麗だ……」

 

 

 あまりにも綺麗で思わず声が出てしまう。こんなに綺麗なイルミネーションは見たことなかった。そんな感動に浸っていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ええ……そうですね」

 

 

 

 俺の背後から、さっきの呟きに便乗するような声がした。

 

 

 その声は女性の声だった。前に聞いたことのある声であった。

 

 

 「こんなに美しいものが見られるなんて……ここに来て良かったです……」

 

 

 女性は独り言を俺に聞こえるような声の大きさで喋っている。

 

 

 俺は何故か後ろを振り向くことができなかった。

 

 

(……うそ……だろ……?)

 

 

 「今日はクリスマス。私もあの人と一緒に、この光景を見たかったですね……」

 

 

 足がガクガク震え、手も細かく震えていた。寒さのせいで震えているのではない。

 

 

(……まさ……か……)

 

 

 「私の彼氏はとても優しい人でした。あの人と一緒にいるだけで、胸が暖かくなって、とても心地の良いものでした」

 

 

 彼女は止めることなく次々と口を開く。

 

 

 「子供の頃に、いじめられていた私をあの人が助けてくれた……孤独で寂しかった私をあの人は隣にいてくれた……ついには家の事情で離れ離れになってしまったけど、私はあの人の事を一生忘れる事はありませんでした」

 

 

 

 「むしろ会いたい気持ちがどんどん強くなって、気がつけば私自身もコントロールするのが難しくなってしまうほど、あの人に夢中になっていました」

 

 

 

 「そして再開した時には私は凄く嬉しかったです……あの人と恋人同士になって、日々がとても幸せなものになっていきました」

 

 

 

 後ろから足音がだんだんとこちらへ近づいてくる。声も徐々に大きくになっていった。

 

 

 

 「ですが、そんな幸せな時間を邪魔するものが現れ始め、あの人に危害を加えようとする人までも出てきて、私はとても嫌になりました」

 

 

 

 「だからこれ以上私の幸せな時間を邪魔させたくないと思い、彼を監禁しました。だけど彼は逃げようとしました。でも最終的には私を激しく求めてくれて……あぁ……今思い出すだけでも照れちゃいます……」

 

 

 

 さらに女性が近づいてくる。

 

 俺は身動き一つとることができなかった。

 

 

 

 「しかしその次の日の朝、彼はいませんでした。どこを探しても見つけることができず、多分人生であれほど焦ったことはなかったと思います……」

 

 

 

(……やめろ……)

 

 

 

 「私はあらゆる手段を使って彼を探索しました。私には彼しか考えられない。彼以外の男なんてどうでもいい。私を愛してくれた彼じゃないとだめなんです……彼じゃなきゃ嫌なんです……!」

 

 

 

 そして足音がピタリと止む。

 

 すでに女性は俺のすぐ後ろにまで近づいていた。

 

 

 

 「……そして、私は遂に彼を見つけることができました……見つけた時にはもうそれは嬉しくて……嬉しくて……」

 

 

 

(そん……な……)

 

 

 

 「……ね?だから……振り向いてください?」

 

 

 

 俺は恐る恐る後ろを振り向く。

 

 

 俺の後ろにいたその女性は……よく知っている人だった。

 

 

 彼女長い金髪は少し痛んでいて、目にはクマができていたが、俺はその女性が誰なのかはよくわかっていた。

 

 

 

 いや……分かりたくなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お久しぶりです。拓也君♪」

 

 

 

 

 

 

 

 ここに居るはずのない、彼女はそこにいた。

 

 

 

 

 

 「!!!」

 

 「あっ……」

 

 俺は全力で走った。無我夢中で走った。歩道が雪で滑りやすくなっていたが構わずに走った。歩いてくる仕事帰りの人やカップルを次々と避けながら、走り続ける。

 

 

(なんで!?なんでだよ!?なんでサリーがここに居るんだよ!?)

 

 

 訳がわからなかった。手がかりは何も残していないはずだ。どうして俺が住んでいる場所までもバレたんだ!?俺は頭が混乱していた。

 

 「はあっ……はあっ……」

 

 中心街から遠く離れた所まで走った後に後ろを振り向くと、サリーの姿は見えなかった。

 

 「いない……ゔっ……」

 

 息切れが激しい。運動不足であったため、急激な体力の減りに吐き気がこみ上げてくる。なんとか喉のところでギリギリおさめた。

 

 俺の家は街の中心街の東側であったが、西側の方に逃げてきてしまった。家に帰るとなると来た道を戻らなければならない。

 しかしあそこにまだサリーがいる可能性だってある。俺は歩きながらどうしようかと考えていると、バス停が見えた。

 

 時刻表を見ると家の近くのバス停まで直行するバスがあり、これに乗れば家まで安心して逃げられる。それが最後に来る時間は20時30分。現在の時刻は20時08分だから、ここで待機していれば、バスは来るだろう。でももしかしたらサリーがここまで追ってくる可能性だってある。俺はバスが来る間は近くのコンビニに入り、外の様子を伺いながら漫画を立ち読みしていた。

 

 20時30分。直行バスが到着し、俺はそれに乗り込んだ。バスの中にサリーの姿はなく、心の中でガッツポーズをした。バスは発進して、家の近くのバス停まで直行した。窓から外の様子を眺めていたが、サリーの姿はどこにも見当たらなかった。

 

 無事に目的地に到着した。俺が住んでいるのは街から少し離れた住宅地にあるアパートだ。周りを見渡すがサリーの姿はない。警戒しながら俺の家の玄関前まで辿り着く。

 

 

(いない……やっぱり、たまたまだったのかな……)

 

 

 俺はホッと一息ついて、バッグから家の鍵を取り出して、玄関の鍵を解除した。

 

 

 

 

 「ただいま〜って……誰もいないけどな、ははっ」

 

 

 

 

 「あ!お帰りなさい♪」

 

 

 

 

 

 

 ……………え?

 

 

 

 

 

 「もう……いきなり走ってどこかに行っちゃうんですから……先に帰ってきちゃいました♪今日はクリスマスなので、ご馳走も用意しましたし、ケーキも準備しましたよ」

 

 

 

 ……なんで、サリーが、ここにいる……?

 

 

 

 「なん……で?」

 

 

 

 「うふふっ、私、これからの新生活が楽しみです。今度こそ、2人で幸せになりましょうね?拓也君♪」

 

 

 

 ……逃げなきゃ……!

 

 

 俺はこの家を出ようとドアノブに手をかけるが、いつの間にか間合いを詰められていて、バチバチっと音がして首に電流が走る。

 

 

 

 

 「が……っ……あ……」

 

 

 

 

 そして俺はその場で倒れてしまい、意識を失ってしまった。

 

 

 

 「ふふふっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、絶対離しません……♡

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか間に合った……(✽´ཫ`✽)
あせって投稿したので色々と誤字があるかもしれません。後々編集してちゃんとしたものにします。ごめんなさい┏○┓
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