~タブレットが死んだ! ①~
『ほら、これを渡しておくから、何かあったらすぐにそれで連絡するよ。それでいいだろ』
『これは?』
そう言って投げ渡されたのは7インチのタブレット。
画面はボロボロと崩れており、使い物にならない。
もはやスクラップだ。
『死柄木クン、五指で触ったね?』
『買った……ばかりだったのに……』
ガックリと膝をつく死柄木。
ちなみにこのタブレット、既に8代目である。
~タブレットが死んだ! ②~
『ほら、これを渡しておくから、何かあったらすぐにそれで連絡するよ。それでいいだろ』
そう言って投げ渡されたのは7インチのタブレット。
放物線を描いて宙を舞うそれは、骸無の手をすり抜けて重力に従い地面に落下した。
「…………」
「………………」
恐る恐る骸無が拾い上げたそれには、見事な蜘蛛の巣が画面に出来上がっていた。
電源ボタンを押す。
反応無し。
「『大事な物を投げるのが悪いよね。ボクは悪くない』」
「いや、悪いだろ。謝れよ。カッコつけて言ってもなかったことにはならないからな!」
~タブレットが死んだ! ③~
『ほら、これを渡しておくから、何かあったらすぐにそれで連絡するよ。それでいいだろ』
そう言って投げ渡された7インチのタブレット。
宙でキャッチした骸無は落とさないよう手に力を込めた。
改造人間である骸無の握力は鉄さえもねじ曲げる力を持っている。
そんな力で握られたタブレットは……あわれ、骸無の手の中でコナゴナに砕け散る。
「ボクは……もう、普通の身体じゃないんだな……」
「シリアスぶってるとこ悪いが、ごまかされないぞ?」
~洗脳失敗?~
時間をつぶす方法を探して歩きはじめた骸無。
自然と足が向かった先は……
『オールマイト新作パーカー発売中! ヒーローピンバッヂにトレーディングカード、ヒーローコラボ商品など、ヒーローグッズはなんでもそろう!
ヒーローグッズ専門店“オールマイティ”、キャンペーン実施中です!』
「うわあああ、オールマイトの新作パーカー! し、しかもシルバーエイジ版の復刻まで!!
…………ハッ! ボクは何を?」
気がつけばオールマイトグッズを手にしていた骸無。
洗脳されたくらいでオタクの購買意欲が消えるものか!!
~ヒロイン力MAXだったら~
「でも、『デク』って……『頑張れ!!』って感じでなんか響きが好きだな、私」
「デクです!!」
敗因:相手が麗らかすぎた。
~悪党に著作権も肖像権も無え!~
ショッピングモールを歩く死柄木。
自分がその気になれば一面惨劇の舞台に変えられるというのな誰もがヒーローが平和を守ってくれると疑っていない。
そんな風景にイライラする。
「おいおい、これヤバくね?」
「なになに、って、マジやべえ!」
なにやらグッズを手にしてはしゃぐガキども。
よくもまあこんなくだらないことで騒げるとは、と、呆れていた死柄木だが、手にしていた物を見て驚きに目を見開いた。
「じゃーん! おれ、ヴィラン!」
「ヤバい、似合う!」
ガキがつけて遊んでいるのは骸無の仮面をモチーフにしたマスクだ。
なんでそんなものが売られているのか!?
よく見れば骸無だけでなく、身無や脳無のマスクまであった。
シリーズ化までしてあるとは、制作会社は馬鹿なのか!?
てか、シリーズ化するほど売れてるのか!?
ヴィラン、社会の嫌われ者とは一体……。
「あっ、これヴィラン連合のボスのじゃね?」
「ホントだ、ヤベエ!」
待て待て、俺のマスクだと!?
誰の許可を得て作ってやがる!
お父さんを量産すんな!
「じゃーん、たくさんつけてみた。腕とか」
「ヤベエ、センス悪ッ!」
「だよな! やっぱ、ないわー」
お前らに俺のセンスが分かってたまるか!
てか、もう一人さっきから『ヤベエ』ばっかりじゃねえか! もっと語彙力増やせ!!
こうして死柄木の社会への憎しみは積もっていくのであった。
本編はもう少しお待ちください。