――――某所 ヴィラン連合のアジトの一つにて
「おかえり、骸無。その様子なら僕の出した“課題”を達成してきたようだね」
「はい、ただいま戻りました〝先生”」
複数のモニターが並び、多種多様な医療機器が存在感を主張する部屋で“先生”は骸無を迎えていた。
顔のほとんどを失ったその顔では、口元には愉悦の笑みがことさら際立って見える。
『完成に一歩近づいた。最高の、いや、最凶の悪の器に』
善良であった緑谷出久が大事にしていたものを、この哀れな改人は言いつけどおり壊してきたのだろう。
それが自分にとってどんなことになるのか考えもしないで。
かつての善良な“緑谷出久”など、兵器たる改人・骸無には必要ないのだ。
緑谷出久という少年を、
壊して、
壊して、
壊して、
壊しつくして。
その先に目的は達成されるのだ。
そして状況は“先生”の想定を超えていない。
むしろ順調に進みすぎて怖いほどだ。狡猾な悪の魔王は油断なく、そしてひそやかに物事を進めていく。
すべては掌の上なのだ……
自分の思惑通りにコトが進むのはいつだって気分がよい。
“先生”は愉しげに骸無へと問いかける。
「どうだい? かつての自分への未練を断ち切った感想は?」
「これで迷いはもうありません。ボクはもう“正義”なんていうものになんて惑わされません」
はっきりと答えるに骸無に“先生”は嗤う。
順調に骸無は壊れてきている。本人にその自覚もないままに。
願わくばこのまま壊れつくしてほしい。
そのときこそ、この“先生”の計画は完成するのだ。
哀れな哀れな少年は、邪悪な魔王に目をつけられて化物へと変えられていく。
いつか、緑谷少年の涙が枯れ果てて、化物に成り果てるまで。
もう、時間は残っていないのかもしれない。
――――爆豪家
「勝己、留守番頼んだわよ!」
「うっせーよ。言われんでも分っとるわ!」
外出する黒い服の母親を見送り、リビングに戻る爆豪。
テーブルに置いてあった新聞を開き、ある個所に目をとめる。
新聞の片隅の「おくやみ欄」
そこには爆豪の知った名前があった。
“緑谷インコ”
幼馴染の母親の名前だ。
「あのバカデク……どこで何してやがんだ」
母親が大変な時に何をしてやがる、と、ぐしゃりと新聞を怒りと共に握りつぶす。
まだ、爆豪勝己は何も分かっていない。
自分の幼馴染がすでに取り返しのつかないところまで来ていることも。
かつての自分の罪の重さも。
まだ、何も知らないのだ。
???「ライトサイドからの誘惑が……」
骸無「なんか、宇宙のかなたで僕と同じことを言ってる人がいるような?」
冗談は置いておくとして、なかなか筆が進まなくて困りました。
書きたい終わりのシーンは決まっているのに、それに至るまでの過程がなかなかという感じです。
次の章もプロットがまだ定まりきっていないので、時間はかかりそうです。
もうしばしお待ちを。