緑谷出久は試験会場に来ました プロローグ
ヴィランとヒーローの戦いは膠着状態に陥っていた。
ヴィラン連合により組織的な活動を始めたヴィランによって、被害が拡大。
対してヒーロー側も雄英のOBを中心として協力体制を作り出し対抗している。
一進一退の状況。
ヴィランの勢力が強まり、強い次代のヒーローが求められている。
そんな期待を受けた雄英高校は、夏の強化合宿を経てヒーロー資格の仮免試験を受けていた。
ある種の慣例となっている“雄英潰し”を乗り越え、全員が二次試験に進んでいる。
先達のプロヒーローたちが力を尽くす現在、一刻も早く戦う資格を得ようと、全員が張り切っていた。
『ヴィランによる
『規模は○○市全域。建物倒壊により傷病者多数!』
『道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ!』
『到着するまでの救助活動は、その場にいるヒーローたちが指揮をとり行う』
けたたましいサイレンと共に、二次試験の開始が告げられる。
一次試験の戦闘試験とは違い、人を救う救助試験だ。
「チッ、救助か……誰もブッ殺せねえな」
「おい、爆豪。その言い方はねえだろ。救護も大事なヒーローの仕事だぜ?」
「そういう発言がまた敵を作るんだよなぁ……」
救助試験に臨む爆豪は、一次試験と違い暴れられないことに不満を漏らす。
一緒についてきた切島と上鳴が苦言を呈するも、聞く耳をもたない。
これには訳がある。
彼のもともとの性格もあるが、今の彼は戦闘能力をつけることに焦っているのだ。
悪に墜ちてしまった幼馴染に対抗するために……
『ヴィランが姿を現し、追撃を開始! 現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ、救助を続行してください』
爆発音が響き渡り、演習条件の追加のアナウンスが流れる。
ヴィランの襲来という荒事の気配に爆豪は獰猛に笑みを浮かべた。
「ハッ! 俺好みになってきたじゃねえか。全員ブッ殺す!」
アナウンスされた襲撃ポイントへ向かう爆豪。
変化する状況に、ヒーローの卵たちは今まで培ったものをぶつけていく。
「A地区にヴィランが出現。現場のヒーローは直ちに迎撃に向かってください」
マイクに向かってアナウンスをする
その足元には血まみれのプロヒーローたちが倒れていた。
「クッ、貴様は、ヴィラン連合のッ!」
「寝ていなよ、ギャングオルカ。アナタたちの仕事はボクたちが代わりにやっておいてあげるからさ」
ただし、アナタと違って命の保証はしないけれどね。
そう言ってNo.10ヒーロー“ギャングオルカ”の意識を刈り取る人物。
緑色の光のない目で倒れたギャングオルカを見下ろすのは、ヴィラン連合の改人、骸無。
ヒーローの卵たちが自分たちの力を見せる仮免試験会場の裏側で、悪意が今、うごめき始めている……
短いですが、とりあえずキリが良いところでプロローグです。
テンポ重視でサクッといきます。