東方白霊猫   作:メリィさん

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えぇー、皆さん。
た い へ ん 申し訳ない。

久し振りに一から書いてたら思う様に進みませんでした。
これがブランクか……っ!

ではいつに増して酷い文章ですが、気にしない方はゆっくりしていってね。


其の六裏側

@八意××

 

 

白霊猫様に救われて既に三十年。

私は今では民に慕われ、里にも重宝される重鎮の一人となっていた。

 

あの救いから私は必死に自身を磨き続けた。

あらゆるものに手を伸ばし、それらを全て修めていった。

完全に磨き上げたとは思っていない。

しかし現状で高められるだけ私は高め上げていった。

その結果私の名は広く知られるようになり、今では「賢者」などと呼ばれている。

 

これを誇るのは痴がましい事だと分かってはいるが、これで少しでも白霊猫様に報いる事が出来たと思うと誇らずにはいられない。

これが白霊猫様が与えて下さった才なのだと。

 

しかし私の働きで技術が発展する一方で嘆かわしい事も起こった。

 

誰も彼も、私の働きばかり称えるようになってしまい白霊猫様を拝む人が少なくなっている事。

昔からこの里を救ってくれていた白霊猫様の事を忘却し、やれ「賢者様のお陰だ」等と私ばかりを持て囃すようになってしまった。

その影響で各所にある祠は埃を被り、参拝客も目を疑うほど減ってきていた。

 

私が全ての祠を綺麗に手入れしても、「賢者様は立派だ」と私を持ち上げる。

 

違う。

私じゃない。

私の力は白霊猫様が示唆しなければ気付く事もなかった代物。

私ばかりを褒めるのは違う。

 

私はこうなってしまった事に警戒をしていた。

白霊猫様が、ここ最近現れないのはこの信心不足が原因なのではないかと。

そして私の前に姿を御見せにならないのも、この里に愛想を尽かしてどこかへと去ってしまったのではないのかと。

 

この里は白霊猫様に代々守られてきた。

もし、白霊猫様が本当に出て行ってしまわれたのならどうなるのだろう。

 

私は嫌な予感がしてならなかった。

里の穢れ避けをしてくれていた能力者が突然危篤になった事と重なりその予感が更に真実味を帯びてしまった。

だからこそ、現在生物が生息している事が判明している月への脱出計画を練ったのだ。

穢れが私たちを蝕む前に、良からぬ事が起こる前に。

 

既にプロトタイプが航行に成功している。

後は改良を加えて量産するだけ。

 

そんな時にとある人から依頼が来た。

私が昔世話になった恩人の一人、綿月の長だ。

子供らしい生活をしていなかった私を遊ばせてくれた張本人で結構お茶目な人だ。

 

その依頼は綿月の二人娘の教育。

 

私はその世間的評価から自身の子息を教育するように頼みに来る人も多い。

それこそ重鎮から一般人まで多肢に亘る。

だがそれらの依頼は全て断ってきた。

 

当然だ。

私は一人、里に住む人間は数多になる。

それを一人一人教えていてはキリが無いし、一人に教えれば自分もと志願者が増えるからだ。だからこそ一切の弟子入りを断ってきたのだ。

 

だが小さい頃に助けてくれた数少ない恩人だ。

私としても恩人の頼みを無碍には出来ないし、したくない。

 

私はそれを受ける事にした。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

「はっ! せい!」

 

険しい顔で拳を振るう紫髪の少女。

そしてそれとは対照的に涼しい顔でその攻撃を避け続ける淡い黄髪の少女。

 

彼女たちが私の受け持った二人の弟子。

綿月依姫と綿月豊姫。

二人ともまだまだ未熟ではあるが、その才は十二分にある様に思える。

 

現在やっているのは無手による格闘戦だが、どの戦いにおいても二人は対照的。

まるでお互いを補い合うかの様な性格をしている。

勉学においては依姫は堅実に基礎を固めてしっかりとした地盤の上で次に挑む努力型。

豊姫は隙を見て遊び呆けるが、気に入った事はどんどん吸収する天才型。

依姫は戦闘において鋭く隙の無いスタイルだが、逆に豊姫は相手を翻弄し常に己の

ペースに巻き込むタイプ。

 

こんな全く違うタイプの二人だけど、合わさればお互いが上手く噛み合って隙が無くなる。

彼女たちは二人揃って一人前とも言えるだろう。

流石に未だ発展途上である二人にをある程度道を究めた存在と比べるのは酷ではあるが、それでも半端な相手には十分過ぎるほど通用するのは確かだ。

同じ年で生まれていたならば、努力次第で私に匹敵する才の持ち主には違いない。

 

「とりゃ! ってうわわ!」

 

反撃に蹴りを加える豊姫。

しかし普段の鍛錬を逃げ回ってる影響で軸足の位置が甘く、防がれた際に転倒する。

 

「っ!!」

 

だが倒れた豊姫に追撃はせず、依姫は地面を蹴って間合いを離す。

私はそこを見計らって終了の合図に手を叩いた。

 

「えっ? 私まだやれますよ?」

 

流石に終わるのが早いと感じたのか豊姫が口を出す。

依姫もまだやり足りないのか少々不満気だ。

けれどもこのまま続けても恐らく同じ行動を繰り返すだけ。

 

「依姫、何故追撃をやめたの?」

「そ、それは……姉さんがまた何かするのかと……」

 

豊姫は確かに戦闘の最中も頭を回しており、自身の策に引っ掛けて主導権を握ろうと

常に暗躍している。

しかし今回の豊姫は狙って転んだ事では無いというのは明らかだ。

常に基礎を反復する依姫から見れば蹴りの体勢が不自然であると見抜けたはずである。

こうした模擬試合を何度か行ってる以上はそろそろ見抜いて欲しいくらいだ。

 

「相手の体勢、表情、目の向き……常に全体を見る様に心掛けなさい。貴女は少し視野が狭いわ」

「すみません……」

 

彼女は相手の手の動きや足の動きを見るのではなく、突きや蹴りといった攻撃しか見ていない。要するに攻撃にしか反応していないのだ。

それ自体は然程悪くはないが、攻撃に見せ掛けたフェイクや無意識下誘導による攻撃もある。害意にしか反応できないのは痛手だ。

 

「豊姫は基本の不足ね。有効でも自分に出来ない方法でやるものじゃないわ。それでもやろうと言うならしっかりと練習なさい、少し弛み過ぎよ?」

「うぅ、痛い所を……」

 

豊姫は完全に練習不足。

幾ら有効な作戦を組み立てても自身の肉体がそれを実行できない。

それでも無茶な行使をするからこの様に不足な事態が起こる。

……運動を余りしてないみたいだからそろそろお腹周りも少し危ないんじゃないかしら?

 

そう思いながらも違和感を感じて私は視線を上げる。

この感覚は明らかに"観察"している。

目的は分からないが、賢者とされる私だ。

何かを偶然見る事が出来たのなら弱みを握る事も可能だろう。

とは言え私がそうはさせないが。

 

だがそれが"出来ている"のは可笑しい。

 

何故ならここには私が組み上げた認識阻害の結界が張り巡らされている。

それもこれも彼女たち二人を弟子に取っている事実を今だけでも隠すためだ。

だからこそ私の全力を持って最高位の結界を張っている。

それをこの里の人間で見る事が出来るものはいない。

私が隠せば、見る事が出来る人間などいはしない。

 

でも見ている。

この視線は明らかに私に向けられている。

目の前の二人ではない第三者の視線。

それは私より高位の存在であるという証でもある。

 

(でも何故……なんの意図が……)

 

私は視線の先を探すが、中々に見付からない。

探してる間の時間がとても長く思える。

しかし、普段より遥かに長い時間を使ったものの私は視線の主を見付ける事に

成功する。

 

それこそ、私は久し振りに驚愕する。

何せ見付けた視線の主が、私が会いたくてずっと探し続けた相手だった。

最も会いたかった存在、そして最も尊敬する存在。

 

(あれは……!)

 

私は咄嗟に能力を使って時間を止める。

私の能力は"永遠と須臾を操る程度の能力"

終わりの無い時間と一瞬を操る力。

これを使えば人が認知する事も無い時間を私は移動できる。

 

空へと舞い上がり、視線の主の背後へと降り立つ。

 

白銀の体毛に四足、小さな体に頭部に生えた二つの尖った耳。

間違いない。

私は対話を試みようと能力を――

 

「時間操作か……」

 

待て。

今、誰が喋った?

この僅か一刻みにも満たない時間を永遠としたこの世界で、私以外に会話が可能な

生物はいない。

 

だが聞こえた。

何時も聞こえる私の声などではない別の誰かの声だ。

 

誰が、など言うまでもないだろう。

目の前にいる小さな獣がその存在を証明しているのだから。

 

「驚きましたわ。まさか一回で見破られるなんて……」

 

私は自身の動揺を隠す様に、平静を装って答える。

心のどこかで私の能力は絶対であると考えていた所もあった故にその動揺は実際

大きい。少し考えれば上には上がいると思えたはずなのに情けないわ。

 

「なんの御用でしょう?」

 

謙った他人行儀な態度。

いや、以前聞いた声も同じだったか……何処か遠ざけようとしてる様に感じる。

どんどんと嫌な方向へと考えが傾いていく。

 

「先刻から視線を感じまして。何か御用なのかと思いましたの」

「見ていただけですよ? 今、何をしているのかとね」

 

目を細めて泰然とした態度で答える白霊猫様。

その言葉こそ丁寧で人の良さそうな印象を与えるが、私にはとても胡散臭く見える。

何か裏がありそうな、そんな予感を感じる。

長く生きた者は何かと腹では考えているものなのだ。

 

それになんの意味も無く白霊猫様が姿を現すとは思えない。

 

「そうでしたの……今は不肖ながら、私に出来た弟子の稽古を見ていましたのよ」

「そうか、弟子か……」

 

感慨深そうに呟く。

先程の様な喋りではなく、粗野な口調。

恐らく本来はこういう口調なのだろう。

人前に出る時は私だって地は隠す。現に今も隠している。

 

しかしその直後に何処と無く表情が暗くなった。

相手が人間でない以上、表情で判別するのも難しいが雰囲気が変わったのだ。

 

白霊猫様は人に代わり里を守ってきた守護神である。

だが時が立つにすれ、人は彼の存在を忘れていった。

その原因の最もたるは近代化。

武器が強化され、防具が堅牢となり、道具が発達していく中で人は信じる事を忘れた。

 

神とは何を持ってして神とたらしめるのか。

それは、人の想いが生み出した存在なのだと私は考えている。

 

妖怪が負の想いで生まれた異形だとするのならば、神は人の望みで生まれた異形。

暗い所は不安だ、ならば光で照らしてくれる存在があれば心強い。

痛いのは嫌だ、ならばそれを直ぐ癒してくれる存在が欲しい。

 

神が人を生み出したとはよく聞く事だ。

だが神は人の持つ信仰が無ければ成り立たない。

結局の所、私の中では結論に至らない。

 

私は白霊猫様を引き留めようと語った。

私に救いを差し伸べて下さったのはあなたなのだと。

私の中に眠る無数の才に気付かせてくれたのはあなたなのだと。

私は、あなたを忘れる事は絶対に無いのだと。

 

しかし私が白霊猫様を引き留める事は叶わなかった。

 

「そうですか……立派になったのです……ね……さよ……ら……」

 

白霊猫様は別れ際にそう言い残して消えてしまった。

 

最後の瞬間、ホッとした様に見えたのは私の都合の良い解釈なのだろうか?

だがそれを知る事はもう出来ないだろう。

私たちが白霊猫様という守り神を忘れ、消してしまったのだから……

 

 




少しばかり出来に不満が(
いちお2~3度書き直したのですけどねぇ……

暇が出来たらまた修正しようか、少し悩みどころです(´・ω・`)

追記
コメントにて気付きましたが、賢者様の能力については決して書き間違えた
わけではありません。
重ね重ねすみませんでした;:



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