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ある日の、学園の校門前。
良介が1人で歩いていると、後ろから誰か呼んできた。
「ダーリーン!」
「ん?」
振り向くと、香ノ葉が駆け寄ってきた。
「ついに!
やっと!
ようやくやよ!
艱難辛苦を乗り越え、耐えがたきを耐え、やっと・・・」
「やっと?」
「やっとウチに順番がまわってきたんよ!
最近な、ほら、ダーリンにアプローチする子が増えてきてるやん?」
その言葉を聞いて良介は頭を掻きながらため息をついた。
実際、告白されたわけではないが妙に距離が近い女子が増えたのは事実だった。
そのせいか、ここ最近誠の視線が冷たくなっている。
「ウチかてダーリンへの想いは負けてないんよ?
でもな・・・ホラ、ダーリン、優しいから。
フラフラ~って、女の子を寄せ付けてしまうんよ!
誰とは言わんけどな。
もうべった惚れなんよ、もう。」
「(どうせ、お前だろ?)」
良介はため息をついた。
「それで、順番ってなんの順番なんだ?」
「あっ・・・なんの話やったっけ?」
「おい・・・」
「あ、ああ!
そうそう!
クエスト!
ダーリンとウチの共同作業なんよ♪
2人の!!
共同作業なんよ!!!!」」
「(なんでその部分を強調するんだ・・・)」
「やから邪魔が入らんうちに出発やよ!」
香ノ葉そのままクエスト場所に向かおうとしたがいきなり立ち止まった。
「どうした?」
「手、繋がへん?」
良介は呆れた顔をしていた。
その頃、誠は図書館で図書委員の手伝いをしていた。
「この本、ここでいいか?」
「あ、はい。
そこでお願いします。」
2人は本の整理をしていた。
「せんぱーい!」
すると、向こうからちひろがやってきた。
「誠先輩!
この本なんですけどぉ、背表紙が汚れちゃってて・・・」
「んー?
ああ、これか。
それは消しゴム使えばいいんだよ。
ちょっと貸してくれ。」
誠はちひろから本を受け取った。
「こうすれば・・・ほら。」
誠は背表紙の汚れを消しゴムで消した。
「うわぁ~。
ホントに綺麗になりました。
すごいですぅ!」
「どういたしまして。
そういえば、聞こうと思ってたんだが、なんで図書委員になったんだ?
茶道部に誘われてたんじゃなかったのか?」
誠は本を渡しながら聞いた。
「とっても迷ったんですよぉ!
お茶もとってもおいしかったし・・・でも、大変な問題があって・・・」
「大変な問題?」
萌木は首を傾げた。
「わたし・・・正座が耐えられなくて・・・」
誠は呆れた顔をしていた。
「正座ぐらい、許してくれると思うけどな。
たしかソフィアも苦手だったはずだが・・・」
「そんなぁ・・・茶道って、とっても厳しいじゃないですかぁ。」
「うーん・・・白藤さんに伝えた方がいいかな・・・攻めすぎたのかもって心配してたもんなぁ・・・」
「まぁ、俺も正座は苦手だけどな。」
「ですよねぇ。
わたし、気絶しちゃうんですよぉ。」
「き、気絶!?」
「どういう足してんだお前・・・」
誠と萌木は驚いていた。
***
良介と香ノ葉はクエスト場所である地下鉄工事現場に来ていた。
良介は1人でさっさと先に進むと、香ノ葉が名前を呼びながら追いかけてきた。
「ダーリンダーリンダーリ~ン!
置いてったらいややわぁ!
せっかくな、せっかくダーリンとのクエストが設けられたんよ。
そんなに急がんでも、ゆっくり時間かけて愛を深めるんよ。」
「え?」
良介は嫌そうな顔で香ノ葉を見た。
「あ、違った。
ゆっくり確実に魔物を倒すんよ。
ほら、ウチが守ってあげるからもっと近づいてえな。
こうやって・・・」
香ノ葉は良介の腕に抱きつこうとしたが、良介は腕を引っ込めて避けた。
「あぁん、腕くらい組んだってバチあたらんのに・・・」
「なんでそんなことしなきゃならねぇんだよ。」
「ええやんええやん、一緒にお泊りで温泉に行った仲やんか~。」
「みんなで、な。」
良介はため息をついた。
「みんなで行ったのは確かにそうなんやけどね、大事なのはそこやないんよ。
ウチと、ダーリンが、お泊りで、温泉!
もう既成事実ができてるんよ!
やからなぁ・・・ええんよ?」
香ノ葉は目を瞑った。
良介は目を瞑っている香ノ葉を見て、ため息を一つつくと、黙って先に歩き始めた。
「ダーリン?」
香ノ葉が目を開けると、良介の背中は遠くなっていた。
「あ~ん、冗談やって!
待ってぇな~!」
香ノ葉は良介の後を追いかけた。
***
学園の廊下。
智花が歩いているとそこにアイラがやってきた。
「おい、南。」
「アイラちゃん?」
アイラは智花に話しかけた。
「お主、ここ1年の不可思議な現象には気づいておるか?」
「え?
え?
なんのこと?」
「去年の記憶が曖昧だとか、自分、成長してないなって思ったりしないか?」
「せ、成長はしてるよ!
お料理、作ってあげます!」
「え?
あ、いや、それはさすがの妾も死ぬ・・・」
「去年、成長、あれのことか。」
アイラが振り向くと、いつの間にか誠が立っていた。
「なんじゃ、誠。
お主は知っとるのか?」
「ああ、知ってる。
1年を繰り返していることだろ?」
「え?
う、裏世界のことじゃなくて?」
「ああ、知らないのか?」
「し、知らない。
聞いてないよ?」
「ふーむ。
まぁ、それはよい。
それでな、我らが調べたところ・・・時間停止の魔法に近いものがかけられておる、とわかった。
これについては、お主にも話したことがあろう?」
「ええっと・・・うん、確か、斬られても元通りになるって。」
「それがこの世界にかかっておる。」
「斬られても、元通りに?」
「時間が過ぎても、元に戻る・・・つまり、1年を繰り返す。
去年、良介が来た時、お主は何年目じゃった?」
「えっと・・・5年目、かな。」
「では、今年は?」
「えっと・・・あれ?
ご、5年目・・・?」
「な?」
「え?
え?
ど、どういうこと?」
智花は困惑していた。
「お主が気づいておるか、そうでないか、は別問題じゃ。
じゃが、この閉じた時間の輪を作り出したのはお主じゃろ。」
「智花が?」
誠は智花の方を見た。
「なにも糾弾しようというわけではなくての。
ククク・・・今のままでいいんじゃ。
絶対に解除するなよ。
おそらく時間停止を解除したら、第8次侵攻が来る。
今の戦力では、それを乗り切れんからのう・・・」
アイラはそう言うと、立ち去った。
***
地下鉄工事現場。
良介と香ノ葉は歩いて魔物のところに向かっていた。
「転校してきてからずっと忙しいってすごいことなんよ?
まぁ、ウチかてみんなの気持ち、わからんでもないけどなぁ。
恥ずかしがって体質が体質がーて言ってるけどな、ホントは違うんよ。
ダーリンが魅力的すぎるから頼りたくなってしまうんやえ。」
良介は疑惑の目で香ノ葉を見た。
「あー、なにその顔。
ホントやよ!
ウソなんかつかんの!
でも謙遜するダーリンもおくゆかしいんよ。」
「おい、出たぞ。」
良介は親指で指差した先に、魔物がいた。
「え?
ああ、魔物な。
任せといて!
フフフ・・・ダーリンとウチがコンビを組んだら無敵なんよ!
愛の力に勝てる相手なんていないんやえ!
覚悟ー!」
香ノ葉が魔物に向かって行く前に、即に良介が攻撃していた。
「あ、ちょっとー!」
「はぁっ!」
良介の剣で魔物は一刀両断にされた。
「なんで先に攻撃するんよ!」
「さっさと攻撃しないからだ。
ほら、次行くぞ。」
良介は次の魔物の方へと歩いていった。
「ダーリン、待ってぇな!」
香ノ葉は良介の背中を再び追いかけた。
***
少し遡って数日前、茶道部部室。
ソフィアと香ノ葉と葵がいた。
「元気出してください、香ノ葉さん!」
「だってだって、ウチの紹介の仕方がダメなんやなかったかって・・・」
「そんなことありませんよ。
茶道に興味が無い方だっていますし・・・茶道部じゃなければお話できない、というわけでもありませんし。」
「まぁなぁ・・・でも、汐浜の時に出会ってるからなぁ。
ちょっと思い入れが違うやん?
はぁ・・・ぐちぐち言うても仕方ないか。」
すると、部室のドアを誰かがノックしてきた。
「おや?」
「ちひろちゃん!?」
「入ってきませんね?」
すると、再びノックしてきた。
「はーい!
どうぞー!」
「失礼するよ。」
ドアが開くと、樹と誠が入ってきた。
3人は無言で樹の方を見た。
「お、男の人やーっ!
しかもイケメンのーっ!」
「俺には無反応かよ・・・」
「あ、誠はんもおったんや。」
「俺に対しての反応薄っ・・・」
「あっ!
神宮寺の・・・」
「おーっ!
樹サン!
お久しぶりです!
はうあーゆー!」
「2人とも知り合いなのか。」
「おっと、ソフィアちゃんに・・・あなたは冷泉のお嬢さん。
グリモアにいるとは聞いていたが、まさかこんなところで会うとは。」
「おいおい、樹さんよ。
まさか女子高生に手を出してたとは・・・」
誠は少し引いていた。
「誠くん、変な勘違いしないでくれるかな?」
樹は苦笑していた。
「以前、父が失礼を。」
「なぁに、こちらもみんなに秘密にしていたからね。
すれ違いとはいえ、悪いことをしてしまった。」
「どういうことだ?」
葵と樹以外の3人は何のことかわかっていなかった。
「あ、申し訳ありません。
説明した方がいいですね。
以前、樹様とお見合いになりかけたことがありまして。」
「え・・・ええええっ!?」
「樹さん、あんた二股してたのかよ。
しかも、お見合いってことは・・・重婚・・・」
「誠くん、違うから!
変な勘違いしないでくれ!」
「そそそ、そんな・・・さすが社交界・・・」
「でも結局、お会いはしてないんですよ?」
「なんだ、つまんね。」
「誠くん、君というやつは・・・話を戻そう。
そのときはもう、俺が入籍していたんだ。
今の妻と。
ただ結構反対されていたからね。
秘密裏に進めた結果・・・入籍を知らなかった親父が、お嬢さんと見合いを組んでしまったってわけだ。」
「ほぁー・・・大人のわーるどですねぇ・・・」
「父が激怒してしまって、危うく大問題になるところでした・・・」
「まぁ、結果的に丸く収まったことだし、笑い話だな。」
「部外者としては大問題になってくれてた方が笑えるんだけどなぁ。」
「誠くん・・・」
樹はため息をついた。
「父も今は冗談を言ってますよ。
いつか腹を切らせてやると。」
樹は顔が青ざめていた。
誠は苦笑していた。
「じょ、冗談、でいいのかな、それは。」
「それ冗談じゃなくて根に持ってるんじゃ・・・」
今度はソフィアが樹に話しかけた。
「樹サン、お風呂はどーですか?」
「え?」
ソフィアの発言に誠と香ノ葉が反応した。
「ああ、いいね。」
「お、おいおい。
まさか・・・」
「とりあえずテストを作って前線に送ってみてる。
兵士たちに使ってもらって、フィールドバックをもらってる段階だ。」
「おー、もうそこまで進んでるんですね!
ぐっどです!」
「グッドだな。
ま、量産にかかるのはまだまだだな。」
「なんだビジネスの話か。
本格的に手出すのかと思ったんだがなぁ。」
「誠くん、何回も言うけど俺は既婚者だからな。」
「樹さんの性格なら2人か3人くらいは浮気しててもおかしくない気がするんだけどなぁ。」
「もしそんなことしたら、俺は今ごろ離婚どころか、神宮寺家から追い出されてるよ。」
誠と樹の会話を聞いていた3人は向かい合って話をしていた。
「なぁ、あの2人を見て思ったんやけど・・・」
「ワタシも思いました。」
「わたくしもです。」
「あ、やっぱり?
あの2人・・・」
「べりー似てますね。」
「はい、そっくりです。」
「そっくりやんなぁ・・・」
樹はソフィアの方を向いた。
「と、また話がそれてしまったな。
ソフィアちゃん、今日は直接言いたいことがあって、来た。」
「お、告白か?」
「誠くん、これは真剣な話だ。
黙っててくれないか?」
「へいへい、わかりました。」
「近いうち、俺はちょっと遠くに行くかもしれないんだ。」
「はぁ、お仕事ですか?」
「いや、わからないが・・・いろいろキナくさくてね。
今のように、フューチャーの社長を務められるか怪しくなってきた。」
「え?
やめちゃうんですか?
ど、どうしてですか?」
「俺も具体的には・・・だから、一応伝えておこうと思って。
俺が続けられなくなったら、弟の光男が引き継ぐはずだ。」
残りの3人はなんの話かよくわかっていなかった。
「なんの話、しとるん?」
「さぁ・・・光男様のお名前は聞いたことありますが・・・」
「光男って・・・確か・・・」
「光男サン・・・確か、お母様似の?」
「ああ。
軍事産業が嫌いな、光男だ。
だからフューチャーにいる。
アイツはまだ若いし、経験も少ない。
だから最初はいろいろあるはず。
風呂事業に関しては、君のアドバイスに従うように言っている。
助けてやってくれ。」
「あ・・・あの・・・先ほどからお話がちょっと・・・やめてしまうのは決まっちゃってるんでしょうか?」
「決まってないが・・・決まったときには、もう遅い。
そのとき、俺は死んでいる可能性があるからな。」
その時の樹は、かなり真剣な顔をしていた。