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それでもOKという方は、よろしくお願いします。
ゲネシスタワーの地下。
良介たちはひたすら歩き続けていた。
結希の顔には明らかに疲れが出ていた。
「もうかなり歩き続けてるから、そろそろ疲れてると思うんだけど・・・」
ゆかりが心配そうに結希に聞いた。
「戦闘は良介くんや誠くん、副会長や卯衣に任せている。
楽をしている私が止まるわけには・・・」
「だめよ!
保健委員として、許しません。
どこまで続くかわからないんだから、余力があるうちに休んでおかないと!」
「どうしたんだ。
大声なんか出して。」
良介が2人のところにやってきた。
「なんでもないわ。
行きましょう。」
良介は結希の顔に疲れが出ているのに気づくと、他のメンバーに呼びかけた。
「よし、ここで休憩にしよう。」
「みんな疲労しているようには見えないけど。」
「俺が疲れたんだよ。」
話を聞いていた薫子は笑みを浮かべた。
「では、小休止です。」
「障壁は俺と誠で張ろう。」
「わかった。
魔力頼むぞ良介。」
良介と誠が障壁を張り、その中で良介たちは小休止をとることにした。
誠はヤヨイに質問していた。
「なあ、足跡から、何歳くらいかってわかるか?」
「大人だよ。
ちょっと足は小さ目だったし、女性かもね。
それ以上はわからないかな。
でもこの魔物がいる中、あそこまで来てる・・・」
「それにしては、戦った跡がないな。」
誠は周辺を見渡した。
すると、薫子も話に混ざってきた。
「これで、生存者だとわかるのはJGJの社員と、少なくとも1人の魔法使い。
JGJは霧の護り手の支配下にありますから・・・魔法使いは、敵対しているはず。」
「そうとも言えないんじゃないか?」
良介も話に混ざってきた。
「霧の護り手は、思想の違いで魔法使いと敵対しているんだろ?
魔法使いは魔物と共生するための進化した姿という考え方だったはずだ。
共生派思想の魔法使いもいたはずだ。
そこがノーマルマンズとの違いだな。」
「ええ、ですがそれなら、1人で様子を見に来るはずがありません。
報告の義務があるのであれば、必ず複数人で来るはず。
私たちのように。
そうでしょう?」
薫子の話を聞いて良介は頷いた。
「そうかもな。」
「待て、さっきも言ったが魔物と戦った跡がない。
JGJと霧の護り手が魔物をコントロールできるなら・・・1人でも問題ないってことにならないか?」
誠の話を聞いて薫子は顎に手をやった。
「それでも複数で来ない理由にはなりませんが・・・可能性はありますね。
なんにせよ、こちらを調べて余力があれば・・・もしくは次回以降です。
この地下は、私たちが思っていたよりずっと広い。
正直、どこまで広がっているか・・・まったく想像できません。
次回以降、何度も探索に訪れるでしょう。
焦らないよう。
生存者には必ず会えます。」
誠はどこか不服そうにしていた。
「ま、大丈夫大丈夫。
人間って意外としぶといからね。
南だって、逃げ遅れた人たちの子孫が細々と生きてる集落があるし。
こっちは霧が世界中に分散してると考えられるから、一か所の濃度は低い。
それで充分充分。」
「まぁ、そう言うなら・・・」
誠は少し納得したようだ。
すると、結希が立ち上がった。
「私の体力は回復したわ。」
「ん?」
「もし私が歩けなくなったら、方法を考える。
あなたたちには迷惑をかけないわ。
これ以上の休憩は無用よ。」
「て、言ってるけど?」
良介は薫子に聞くと、薫子は微笑んだ。
「結構です。
では、行きましょうか。」
良介たちは小休止を終わらせ、再び進み始めた。
***
良介たちは歩き続けていると、目の前に分かれ道があった。
「また分かれ道・・・もしかして、風飛一帯に広がっているの?」
結希は顎に手をやった。
「そんな馬鹿な。
歴史の異なる表と裏なので正確にはわかりませんが・・・朱鷺坂さんの言葉によれば、表の方が技術は発達しているはず。
そうなると、表の地下にもこういった施設が広がっていなければいけな・・・地下?」
すると、良介は何かを思い出したかのように卯衣に聞いた。
「卯衣、この前俺と香ノ葉がクエストに行った、地下鉄の延長工事。
あれの深さはわかるか?」
「多少誤差はありますが、現在の深度とほぼ一致しています。」
「まさか、だって本当なら、もう第8次侵攻が起きているんですよ?」
「地下鉄の全部が全部、そうだというわけじゃない。
あの工事も、こちらでは行われていないだろう。
だが・・・風飛には、たしかもともと軍事施設を運ぶための大深度地下ステーションがあったはずだ。
あそこにはその連絡通路として、一般利用不可の地下鉄も張り巡らされてる。
それを再利用したのなら、この広大な地下通路は実現不可能じゃないはずだ。」
「どこで知ったんだよ、そんなこと・・・」
良介の話を聞いて、誠はため息をついた。
「すると・・・・・」
「表の風飛の地下通路の地図を手に入れれば、この迷宮の全貌が、ある程度、判明するはずだ。」
「その程度、生徒会から国軍に働きかければ手に入ります。
もっと早く気づいていれば・・・今回の探索に利用できたというのに・・・!」
「落ち着いてくれ、薫子さん。
そもそも地下がここまで広大だったという情報がなかった。
それで準備できていたら、逆に怪しい。」
すると、結希は卯衣に聞いた。
「卯衣。
念のため確認するけど、あなたにはそのデータは無いわね?」
「はい。
地下では通信も行えないので、現在、入手方法はありません。」
「戻っている暇はないな。
進もう。
ここまで来たら、この先を確認しないとな。」
その頃、ヤヨイは誠とゆかりにペンダントを見せていた。
「ほら、これ。」
「ん?
これ、MAGIC☆STARじゃないのか?
絢香のグループのペンダントだな。」
「そうそう。
この前、歌祭りの時に、アタシと交換したんだ。
魔法の星って響きが気に入ってね。
こっちのは牛かなんかの骨を削ったヤツ。
ちょっとあげるの間違えたかな、はは・・・」
「もはや骨董品じゃねえか。」
「へぇ・・・私も見てみたいな、その骨を削ったもの。
あ、そうだ!
アスクレピオスの鉛筆削りと交換しない?」
「あすくれ・・・?
なんか変な形してそうだね。
一度見せて・・・」
「ん?」
突然、誠が何かに反応した。
「しっ。」
ヤヨイが指で静かにするように指示を出した。
「え?」
ゆかりはいきなりのことに困惑していた。
誠は少し目を瞑った後、雰囲気が変わった。
「チッ、面倒なことになりそうだ。」
3人は良介たちのほうに行った。
「ペースを上げた方がいいかも。」
ヤヨイの言葉を聞く前に、良介も状況を察知したのか、表情が険しくなっていた。
「後ろから魔物が来てるな。
しかもこの感じ、POTIじゃないな。」
「はい。
未確認です。」
卯衣も気配を察知した。
「凄い不気味な気配だ。
相手しない方がいいよ、絶対。」
「賛成します。
推定全長、およそ250メートル。」
ゆかりと薫子は激しく動揺していた。
「250メートル?
そんな魔物・・・ムサシ級ではないですか」
「待て、距離はまだあるのか?」
良介は卯衣に尋ねた。
「はい。
足跡の続いていた分かれ道・・・そちらからきたようです。」
「狭い通路で250メートルか。
まるでムカデだな。」
良介は軽く息を吐いた。
「進もう。
もう戻ることはできない。」
良介たちは先へと進み始めた。
***
良介たちは小走りしながら進んでいた。
「はっ、はっ・・・どうですか、まだついてきていますか?」
薫子は良介に聞いた。
「気配は消えてないな。
代わりにPOTIの気配が少なくなった。
ヤツが怖いのか、戻るよう命令されたか・・・とにかく、分かれ道には気を付けよう。」
「陰から飛びかかられたら、危険だからね。」
ヤヨイの言葉に良介は頷いた。
すると、突然卯衣が立ち止まった。
「卯衣、なにを立ち止まっているの!」
結希の呼びかけを無視すると、卯衣は上を向いた。
「ここは・・・」
「卯衣!」
「申し訳ありません、マ・・・!?」
結希は卯衣のところに駆け寄った。
「来なさい!
あなたの疑問は、この先で晴れるから!
迷路の先に答えがあるわ!」
「はい・・・」
卯衣は再び走り始めた。
ゆかりは身震いしながら走っていた。
「おっきいムカデなんて、やめて、ホントに・・・寒気がするわ・・・誠君、平気?
暗所恐怖症や閉所恐怖症は・・・無いわよね。
虫も平気?
苦手なものってある?」
ゆかりは誠に質問攻めしていた。
「ゆかりさん、今の状況を考えてくれ。
そんなこと聞いてる場合じゃないだろ。」
「ごめんね・・・話してないと、ちょっと怖くて。」
走っていると、突然ヤヨイが立ち止まった。
「待った!
ストップストップ!」
「大声出すな!
なんだ?」
「ここだ!
この近くに、誰か人がいる!」
ヤヨイの言葉に良介たちは困惑した。
「なにを根拠にそんなこと・・・」
すると、地面が大きく揺れた。
「うおっ!?
なにがあるんだ!?」
誠が尋ねた。
ヤヨイは少し屈んだ。
「ある、ものすごく薄く積もった塵の上に・・・通路を車輪が横切ってる?
なんで・・・?」
結希は卯衣の方を向いた。
「卯衣、スキャンして。」
「はい。」
卯衣は少し目を瞑ると、ゆっくり目を開けた。
「隠し扉です。」
「隠し扉だと?
開けられるのか?」
良介の問いに卯衣は頷いた。
「はい。
指紋認証センサーが隠されています。」
「指紋認証センサーだと?
ということは、ここが?」
良介は壁を見上げた。
すると、結希は壁に近づき、手を壁にやった。
すると、壁から音が鳴り、扉が開いた。
「開いた・・・ということは、こっちは?」
誠の言葉にヤヨイは反対側の壁に手をやると、反対の扉も開いた。
すると、良介たちがやってきた方向から咆哮が聞こえてきた。
「まずいな・・・近い方の部屋に入れ!」
良介たちは隠し扉の中の部屋に入り込んだ。
良介たちが入り込んだ部屋は研究室になっていた。
「よし、過ぎたみたいだな。」
良介は大きく息を吐いた。
良介たちは周りを見渡した。
「ここは・・・研究室?」
薫子はゆっくり歩き始めた。
「それにしては乱雑だな。
住んでたのは科学者じゃなさそうだ。
見てくれ。
これ、ゲーム機だな。」
良介は落ちていたゲーム機を拾った。
「ゲーム機?
なんで崩壊後の施設に、そんなものを・・・」
ゆかりは首を傾げた。
***
結希はかなり息が上がっていた。
「はぁ・・・はぁ・・・しばらく・・・休ませて・・・」
「ふぃー、危機一髪だったな。
ん?
卯衣、どうした?」
誠は部屋を見ていた卯衣の方を見た。
「マスター・・・」
「あなたたちは、誰?
どうやってここを開いたの?」
部屋の奥から声が聞こえてきた。
「私よ。」
「マスター・・・」
卯衣はゆっくりと部屋の奥の方へと進み始めた。
「情報が修復されていく・・・欠けていたものが・・・マスター・・・マスター・・・私です・・・あなたに生み出された・・・卯衣です・・・」
部屋の奥のベッドに結希にそっくりな女性が寝ていた。
「あなたは・・・私に作られたというのは、どういう意味?」
卯衣は不思議そうな顔で女性を見た。
「あなたの姿は初めて見るわ。
独身で子供もいないし・・・こんな体だから。」
「なにを・・・?」
結希は卯衣のところに駆け寄った。
「卯衣。
言ったでしょう。
あなたが生まれたのは、今よりも未来。
それは、この部屋を見ればわかる。
あなたが確かに生まれたことも。
約束通り、来たわ。
覚えているでしょう?
宍戸 結希博士。
あなたが5歳の時に会った、そのままの姿で来たわ。」
「ということは、この人が未来の結希なのか。」
誠は驚いていた。
「ええ、覚えているわ。
結希ちゃん。」
「ところで、いきなりだが一つ聞きたい。
その体、どうしたんだ?」
誠はベッドから体を起こさない宍戸博士に質問した。
「ごめんね。
今はもう、四肢が自由に動かせない。」
「まさか・・・ALSか。」
誠の言葉に宍戸博士は頷いた。
「数年前に発病した。」
ヤヨイは一つのカプセルに近づいた。
「この壁にある・・・カプセル?
まさか、これ、立華さん?」
すると、そこに良介たちがやってきた。
「いないな・・・」
「わっ!
あ、あれって大人の宍戸さん?」
ゆかりは宍戸博士を見て驚いた。
「なら、いるはずだ。
探すぞ、薫子さん、ゆかりさん。」
「どしたの?
誰のこと?」
ヤヨイは良介に聞いた。
「望だ。
ここにゲームを持ちこむのは望しかいない。
隣の部屋には大量のゲームがあった。
だが、望はいなかった。
だから、こっちにいると思うんだが・・・」
「いないわ。」
宍戸博士は良介たちに答えた。
「何?」
良介は宍戸博士の方を見た。
宍戸博士はベッドから起き上がり、良介たちの方を見た。
「楯野さんは随分前に死んだ・・・もともと、長く生きられない体だった。」
「霧過敏症のことか。」
良介の言葉に宍戸博士は頷いた。
「科研は彼女を実験体に霧を感知する人間を作ろうとした。
けれど、楯野 望はもともと体が強い方ではない。
実験に耐えられなかった。
科研の崩壊の時、水島博士に協力してもらって、ここまで連れてきたの。
それからは私の世話をしてもらっていたのだけど・・・半年、だったかしら。
この施設内の霧が濃くなってゆくにしたがって、私よりも酷くなった。
すでに霧を排除する方法はない・・・彼女の望みは、苦しみを取り去ること。」
「安楽死・・・か。」
良介は辛そうな顔をしていた。
誠は目を背けた。
宍戸博士は頷くと、続けた。
「右腕はまだある程度動く。」
「そんな・・・」
良介たちは全員ショックを受けていた。
「あなたたちが知っているということは、そちらでは学園に入学しているのね。」
「ああ、クエストに出ることで体力がついてきてる。
以前よりも、改善してる。」
良介が答えた。
「不治の病とはいえ、改善するのだから・・・そうしたほうがよかった・・・でも・・・あなたたちがここに来たのは、それを聞くためではないでしょう?
結希ちゃん。
これを。」
宍戸博士は結希に何かを手渡した。
「ボイス・・・レコーダー・・・まだ壊れてなかったのね。」
「大それた野望は人に言わず・・・自分に言う。
考えることは同じね。
あなたのくれたデータのおかげで、私はある程度事態を把握できた。
遊佐 鳴子の収集したデータ、興味深かったわ・・・それで、なにか変わった?
子供の私にデータを預けることで、こちらわマシになっていた?」
「いえ・・・残念だけど、なにも変わっていないわ。」
「そう・・・では、あれは歴史を変えることではなかったということね。」
結希は少し目を瞑った後、話題を変えた。
「話題を移したい。
この子のことを。」
「ドクター・・・」
「この子は立華 卯衣・・・あなたが今、作っている人造生命体。」
「ベッドに戻っていいかしら。」
宍戸博士はベッドに戻った。
「ええ。
なんとなくわかったわ。
あなたがそうだとは。
でも、カプセルを見ればわかるでしょう。
まだ完成には程遠い。
あなたに会うのは、まだ先ね。」
「マスター・・・あなたは、私が生まれてすぐに死んでしまう。
いくつかの事柄と、命令を下しただけで、いなくなってしまう。
私は、その命令を忘れてしまったのです。
生きろと言う命令以外を、記録を、失ってしまいました。」
宍戸博士は卯衣の話を黙って聞いていた。
「うっかりさんね。
じゃあ・・・まだあなたの生みの親ではないけど、答えるわ。
あなたを作ったのは、一つは政府の要請。
魔物に対抗する生物兵器として。」
卯衣は黙って聞いていた。
「そしてもう一つは、私の長年の目標・・・魔物の脅威にさらされない、人間。
見たところ、いくつか人間として不自然な点がある・・・詰めが甘かったわね。
でも、考えていたことはただ一つよ。
あなたは人造生命体。
だけど、人間として誕生したの。
だから・・・あなたは、人間として生きるのよ。」
「マスター!!」
卯衣は大声を上げた。
「卯衣があんな大声を出すとはな・・・」
良介は卯衣の方を見ていた。
結希は何か考えていた。
「宇宙の写真・・・そうか・・・卯衣のマスターが星を好きだったのは・・・惑星間移住・・・その可能性を探っていたから・・・メロンパン・・・どこかで好きになる・・・?
私が?」
すると、結希は宍戸博士の方を見た。
「宍戸博士!
あなたに要請します!」
「いえ、断るわ。」
「おいおい、まだ内容も言ってないのに・・・」
誠は呆れていた。
結希は黙って宍戸博士を見ていた。
「ごめんなさい・・・けれど、このゲネシスタワーには、私が必要。
JGJが共生派に乗っ取られ、科研が壊滅した今・・・ここにはその残党がいる。
彼らのために、私は兵器を開発しなければならない。
それに、私は卯衣を作らなければならないでしょう?
もし私がそちら側に行った瞬間に卯衣が消えてしまったら・・・取り返しがつかないわ。」
「確かに・・・そうだな。」
良介は納得していた。
結希は黙っていた。
「そして、裏切り者に・・・必ず、報復しなければならないから。」
「裏切り者?
誰のことだ?」
良介は質問した。
宍戸博士は結希の方を見た。
「あなたも覚えているでしょう?
あのとき、私と一緒にいたじゃない。
双美 心。
彼女は、霧の護り手に送り込まれた、スパイ。」
その場にいた全員が驚愕していたが、良介は冷静だった。
「詳細を教えてくれ。
心はこっちでは学園に入学している。」
「双美 心は、第8次侵攻の直後に科研に来たわ・・・私も学園から移送されていた。
イギリスの研究施設にいて、そこが破壊されて科研へと転属したみたい。
ちゃんと名簿もあった。
けれど・・・彼女は共生派だった。
どうやったかは知らないけれど・・・科研のセキュリティを全て突破して・・・情報を全て、外部に流出させた・・・!」
「心の得意魔法で、全ての情報をセキュリティを痕跡なくスルーすることは可能だ。」
「どうやら・・・あのときの努力は、無駄だったみたいね。」
「あの後、心は霧の護り手に・・・なぜだ?
あの時の心には、なにも特殊性はなかった。
もう1つの人格も・・・」
「魔法使いでもなかった・・・もしかしたら、ただ覚醒しやすかったというだけで・・・女児を集めていただけかも。」
「心が敵に回ったことで、人類敗北の一端を担ったわけか。」
「双美 心はまだ生きているはず。
私は彼女を許さない。
絶対に・・・私にはやることが多いわ。
だから、ごめんなさい。
そちらの世界に行くことはできない。」
すると、結希が口を開いた。
「それなら、私はゲートを見つける。
今より未来につながるゲートから、全て終えたあなたのところを訪れる。
そしてその時こそ、連れて行くわ。」
宍戸博士は微笑んだ。
「指しか動かせないかもよ?」
「私たちは数字を見るだけの体力さえあればいい・・・でしょう?」
「ああ、懐かしいわね。
天がよく言ってたわ。
あの子も・・・そうだ・・・その引き出し。
あなたに託す。
渡してもらっていいかしら。」
結希は宍戸博士が指差した引き出しを開けた。
「天の・・・エナジーシェル・・・」
「彼女もずっと前に死んでしまった・・・だけど、ゲーム機と同じように・・・体が動く限りはメンテナンスしてる。
確か一個しかないのでしょう?
万が一のために、スペアとして使って。」
「わかった。」
結希はエナジーシェルを受け取った。
宍戸博士は卯衣の方を見た。
「卯衣。」
「はい。」
「命令はわかったわね?」
「はい。
魔物の殲滅。
これは生物兵器としての命令。
そして・・・人間として生きる・・・了解しました。」
「あなたの組成データを渡しておくわ。
これで、メンテナンスも楽になる。」
宍戸博士は結希の方を向いた。
「結希ちゃん。
ALSは私を車いすに縛り付けたけれど・・・言葉と、右腕はまだ自由。
これだけあれば、私は平気。
コミューンから、たまに世話してくれる人が来るしね。
あなたもALSに罹患するかもしれない・・・でも、私たちは平気、でしょ?
世界を、救ってね。
それが私が、あなたたちに遺す、意志。」
良介たちは宍戸博士からの願いを聞いた後、その場を後にした。