グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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第116話 忍者の里へ

学園の校門前。

良介がいつも通りに登校すると、梓がいた。

 

「おっと、おやおや!

良介先輩じゃありませんか!

ちょーどいいとこでお会いしたッスね!」

 

「何がちょうどいいとこでっだ。

どうみても待ち伏せしてただろ?」

 

「やだなぁ。

そんな待ち伏せなんてしてもしょうがないッスよ。

狭い学園内ですし、登校時間ですし、自然に校門前で会うこともあります。

そして偶然にもですね・・・自分の故郷からクエストの依頼が来てまして!」

 

「故郷って・・・確か伊賀だったよな?」

 

「そッスよ、伊賀です伊賀!」

 

良介は呆れたように頭を掻いた。

 

「忍者なら大抵の魔物は自分たちで倒せるんじゃないのか?」

 

「いやぁ、確かに今回の魔物くらいラクショーなんですが・・・いろいろ重なって、里に戦えるのがほとんどいないんですよ。

それで自分に白羽の矢が立ったというアレでして。

せっかくですから、伊賀の里に興味ないかなーって思ったんですが・・・自分、案内するんで、良介先輩も観光がてらクエストに行きませんか?

よければ、待ってるんで支度してきていただけると助かるッス。」

 

「はぁ・・・わかった、少し待っててくれるか?」

 

「はい、よろしくお願いするッスよ!」

 

良介はクエストを受けるための準備をしに向かった。

 

   ***

 

伊賀の里の近くの山奥。

良介と梓は2人で歩いていた。

 

「いやぁ~、すいませんねぇ。

遠出になっちゃって。

でもま、デートってことで!

なかなか地方のクエストは無いッスからね。

それにこっちの方は地元なんで、帰りに案内してあげるッスよ。」

 

「それはありがたいな。

俺は来るのは初めてだからな。」

 

「御斎峠一帯は伊賀忍者の隠れ里があるんです。」

 

「で、梓は元々ここの担当だから指名がかかったってことか。」

 

「そッスね。

そういう感じッス。」

 

「で、ここ山道なんだけど・・・大丈夫なのか?」

 

良介は心配そうに周りを見渡した。

 

「いやね、道は大丈夫なんですけど、山の中になると罠とかいっぱいあって。」

 

「なるほどね。

他の奴なら苦労するだろうな、それは。

まぁ、俺も気をつけるけどさ。」

 

「気をつけてください。

いちお自分が確認しつつですけど・・・忍者のトラップは容赦ないッスからねぇ。」

 

「了解。

さっさと終わらせるぞ。」

 

「うぃッス。

ではちゃちゃーっと切り上げて遊びに行きましょ?」

 

「お前・・・それが本当の目的だったりしないよな?」

 

2人は魔物を探しに歩き始めた。

 

   ***

 

学園の屋上。

智花、アイラ、誠の3人がいた。

 

「で、智花がこの1年を繰り返す原因ってわけか。」

 

「一応、じゃがな。」

 

アイラは誠に一年が繰り返している理由を話していた。

アイラは次に、不安そうな顔をしている智花の方を向いた。

 

「ちょっと難しい話になるがのう。

お主の不安はとりあえず解消させちゃる。」

 

「ふ、不安って?」

 

「神凪やらなんやら、裏世界の記憶がごっちゃになっとる者が出たじゃろ。」

 

「確かに、何人かいたな。」

 

「お主の夢の詳細を聞いたが・・・あ、経路は秘密じゃぞ。」

 

「わかってます。

夏海ちゃんですよね。」

 

「おっと。」

 

「へぇ、夏海だったのか。」

 

誠とアイラは驚いていた。

 

「いいんです。

わたしのためにしてくれてるってわかってるし・・・いつまで経っても、こんな重要なことを知らないままだったかも。」

 

「ふむ。

まぁ、な。

妾は遊佐から聞いたんじゃが。」

 

「そっちは鳴子さんだったのか。」

 

誠は納得していた。

 

「良介とそこにいる誠の2人が夏頃、裏世界に行ったのは知っておるか?

ほれ、第8次直前の。」

 

「はい、それも怜ちゃんから聞きました。

わたしの夢と同じで、怜ちゃん、右目に眼帯をしてるって。

限られた人しか知らないって言ってましたけど・・・」

 

「お主に伝えるよう働きかけたのは妾じゃ。

嫌がらせではないぞ。

これから話すことを理解してもらわねばならんからな。」

 

アイラの言葉を聞いた後、智花はまた不安そうな顔になった。

 

「もしわたしが、時間を止めてしまってるなら・・・裏世界の記憶が流れ込んでくるのは、わたしのせいじゃないんですか?」

 

「いやな、妾も最初はそう思ったんじゃ。

時間停止の魔法は、1年のある時期に効力が弱まる。

妾は夏。

朱鷺坂も妾と同じじゃから、夏に効力が薄れる。

妾の場合は霧の侵食で魔物になるのを止めておるから・・・効力が薄れている間は、体が魔物に変化しようとするんじゃ。

痛いし辛いしたまらんわ・・・あ、いや、妾のことはいい。」

 

「体に痛み・・・?」

 

誠は首を捻った。

 

「ほいでな、お主のもそうかと思ったんじゃが、理屈に合わんのよ。」

 

智花は不思議そうな顔をした。

 

「まず期間。

お主の魔法が時間停止とは微妙に違うのを考慮しても・・・もし魔法が弱まっておるなら、時間が長すぎじゃわ。」

 

智花は黙って聞いていた。

 

「長くとも1週間で効力を取り戻すはずじゃし。

そんでもう1点。

お主の魔法の効果は1年を繰り返すじゃ。

これも詳細は不明じゃが。

お主の魔法、そもそも裏世界と関係がないのよ。

じゃからお主の魔法が弱まったとて、裏世界の記憶なんか出てこんのじゃ。」

 

「ちょっと待ってくれ。

どういうことだ?」

 

誠がアイラに質問した。

 

「いいか、ここははっきりしておくぞ。

表と裏と1年を繰り返すのは別の事象じゃ。

そもそも世界が分かれたのはお主らが生まれる前じゃからの。

観測しとるだけでも、朱鷺坂がこちらにきた50年前・・・少なくともそこから、裏と表は分岐しておる。」

 

「例えばなんだが、智花が願ったから1年を繰り返すようになった。

なら、裏の智花が願ったから、この世界ができたっていうのは?」

 

「なんじゃお主、意外と想像力が豊かじゃないか。」

 

アイラは誠に関心していた。

 

「そいつはどうも。

で、どうなんだ?」

 

「ないわ、それ。

いいか?

お主がこの1年を繰り返すほどのポテンシャルがあるとする。

じゃが、宇宙を丸ごと巻き込むほどの魔力はどう用意する?」

 

「えっと・・・」

 

「良介だな。」

 

「えっ?」

 

智花が返答に迷っていると、誠は代わりに答えた。

 

「そうじゃ。

我らの見解も良介じゃ。

お主らが意識的にか、無意識でかはどうでもいい。

じゃが誰がやるにしろ、良介の魔力を使わねば実現できんわけじゃ。」

 

「で、でもそれとこれとどういう関係が・・・」

 

「忘れてた。

裏には良介がいないんだったな。」

 

「えっ?」

 

誠の言葉に智花は驚いた。

 

「そうじゃ。

裏世界には、早田 良介という強大な魔力の持ち主がおらんのじゃ。

もう1つ宇宙を創造するような魔法、誰にも使えんのじゃよ。」

 

智花は黙って話を聞いていた。

 

「じゃから、世界が2つできたのは・・・少なくともお主のせいではない。

原因は今もってわからんが、とにかくお主のせいではない。

裏世界の記憶がこちらに影響しておるのも・・・お主のせいではない。

じゃから、魔法を解くなよ。

我らは来年度を迎えてはいかん。

全滅するでな。」

 

アイラは真剣な顔で智花に言葉を伝えた。

 

「どうして・・・こんなことになっちゃったんだろう。」

 

「今まで、普通に魔法使いしとったらこれじゃもんな。

気持ちはわからんでもない。

じゃがいずれ、誇れるようになる。

お主が時間停止を使ったから・・・良介がその魔力を持っていたから・・・我らの世界は救われるかもしれん。」

 

アイラは真剣な目で智花を見つめた。

 

   ***

 

山奥。

良介と梓は魔物を探していた。

 

「ほいっと。

こっち大丈夫ッスよー。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

梓は手早く罠を解除した。

 

「にしても、前に比べて随分罠の数が多くなったッスねぇ・・・」

 

「そんなに増えたのか?」

 

「ここの罠って魔物もそうなんですけど、甲賀忍者のイタズラ対策なんですよ。

昔っから仲が悪くてですねぇ。

ちょっかいかけてくるんです。」

 

「今もそんなこと続いているのかよ・・・」

 

良介は呆れていた。

 

「大抵誰か引っかかってるもんなんですが・・・今日はいないッスねぇ。」

 

「それより・・・」

 

「え?

ああ、魔物ッスね。

すぐに探します探します・・・」

 

「いや、そうじゃなくてな・・・忍者たちだけでどうにかできないのかって話だよ。」

 

「あぁ~。

確かにクエスト対象の魔物くらいなら余裕でどうにかできるッスけど・・・海外に派遣されるのとか多くなったんで、戦力が少ないんですよね。

忍者志望も少なくなったし、いろいろやりくりしてるんですけどねぇ。」

 

「なるほど、そういう感じで手が足りなくなったら、梓に依頼が来るってわけか。」

 

「外部の力は頼らないんですけど、自分ならまあ伊賀忍者なんで。

今回もそれッスね。

まぁ、自分も今回はちょっと特別でして。

念には念を入れて、良介先輩をお連れしたワケです。

もし里の秘密を知ってもナイショにしといてくださいよ?

秘密が漏れたら自分、お尻ぺんぺんされちゃうんで・・・」

 

「結構処罰がしょぼいんだな・・・と、魔物が出たな。」

 

2人の前に魔物が現れた。

 

「よし、ここは自分が・・・」

 

「いや、俺がやる。

試したいことがあるんでな。」

 

「試したいこと?」

 

梓は首を傾げた。

良介は1歩前に出た。

 

「風、極限強化。」

 

良介はそう言って魔法を発動させると、良介の髪が緑に変色した。

 

「それは・・・?」

 

「風の肉体強化を極限まで行ったんだ。」

 

魔物が向かってきたが、良介はいつの間にか魔物の懐に入っていた。

 

「ふんっ!」

 

魔物にアッパーを食らわすと魔物は空中で霧散した。

気がつくといつの間にか良介は梓と隣に戻ってきていた。

 

「うひょー、速すぎて全然見えないッス!」

 

「けどダメだな。

まだ力に振り回されてる感じだ。」

 

「え、あれで?」

 

「ああ、危うく魔物に正面からぶつかるところだったしな。

一端止まって、そこから攻撃しないとダメなんだ。

本当なら飛び込むと同時に攻撃したいんだけど・・・」

 

「あんな速度で殴ってくると思ったら・・・怖いッスね・・・」

 

「けど、今回の実戦である程度ものにしたいな。

というわけで、次の魔物を探すぞ。」

 

「了解ッス。」

 

2人は次の魔物のところへと向かった。

 

   ***

 

学園、噴水前。

つかさと浅梨が話をしていた。

 

「私はまだ、上を目指さなければならない。」

 

「はい。」

 

「貴様も裏世界にいたな。

あのガーディアンについて聞きたい。」

 

「ええと、いいですよ・・・それより、どうして生天目さん、急に・・・」

 

浅梨は動揺していた。

 

「あの連中、我妻 梅なら一掃できていたか?」

 

「え?

お姉ちゃんですか?

うーん。

難しいと思いますよ。

私も少しだけ戦いましたけど・・・ガーディアンって個体の強さはともかく、再生するじゃないですか。

生徒会長さんのあの魔法でもすぐに復活されましたし・・・いくらお姉ちゃんでも、全滅させるのは骨が折れるかと・・・」

 

「ではコズミックシューターならどうだ?」

 

「ジェイソンさんなら、倒せると思います。

秘密って言われてるんですけど、ジェイソンさん、一度南半球で・・・魔法で火山を噴火させて、一帯の魔物を退治したことがありますから。」

 

つかさは話を聞いて、何か決意した表情になった。

 

「よし。

コズミックシューターと戦いたい。」

 

「えっ?」

 

「そのうち訪ねる。

いつでも戦えるようにしておけと言っておけ。」

 

「え、あ、その、そんな急に・・・」

 

「確かに伝えた。

私がガーディアンを一掃できる力・・・それを得るには、ヤツと戦うしかない。」

 

「そ、そうでしょうか・・・でもジェイソンさん、今はエジプトにいますよ?」

 

「構わん。

行く。

貴様が心配するようなことではない。」

 

つかさは立ち去ろうとした。

 

「そ、そうだ!

先にお姉ちゃんとはどうでしょうか?」

 

「なに?」

 

つかさは足を止めた。

 

「一掃はできなくても、お姉ちゃんならガーディアンを倒しながら・・・ゲネシスタワーまでたどり着くことはできると思いますよ。」

 

つかさは話を聞いて、納得した。

 

「お姉ちゃん、たまに強い人と戦いたがりますし。

ちょっと時間がかかるかもしれませんが、来てくれると思います。」

 

数十分後、学園の訓練所。

浅梨はエレンに相談していた。

 

「って言っちゃったんですけど・・・どうしましょう。」

 

「生天目も突飛なことを考えたな。

とはいえ、ヤツは強さだけが自分の存在価値だと認識している。

強くなければ、生天目は生きている意味が無いのだ。

遅かれ早かれ、その発想にはたどり着いただろうな。」

 

「でも確か、今でもとっても強いはずです!」

 

「それはそうだろう。

グリモアがエリートといわれている理由の一端だ。

我妻 梅を排出していることもあるが、我妻は始祖十家だからな。

強くて当然という風潮はある。

しかし武田と生天目、良介と誠は違う。

連中の実力は血ではない。

しかもタイコンデロガを単独で倒せるほどだ。」

 

「そんなに強いのに、生きる価値がないだなんておかしいですよ!」

 

エレンはため息をついた。

 

「今更なにを言う。

生天目が異常なのは前からわかっているだろう。」

 

「い、異常だなんて・・・」

 

「本人も自覚しているんだ。

それに異常はネガティブな意味じゃない。

通常とは違うだけだ。

そういう人間もいるし、私は尊重するぞ。

少なくともヤツは、強さを欲し、手に入れた。

文字通り血を吐いてだ。

生天目の記録を1度、見てみるといい。

私などまだまだだな。」

 

「でも、1人で戦うなんて無謀なんですよね?

1人の力って、集団の連携にはとても叶わないんですよね。

それなら、生天目さんの目的のためには精鋭部隊に入ってもらった方が・・・」

 

「恥ずかしい話だが、私たち精鋭部隊が束でかかっても、勝てんぞ。」

 

「え?」

 

浅梨は呆然とした。

 

「生天目の強さはそれほどだ。

まぁ、ヤツが奥の手を使えば、だがな。

戦い方は無限にあるが、生天目が鯨沈を使ったらまず無理だ。」

 

「そ、そんなに強いんですか?」

 

「小細工の通用しない強さというものがある。

生天目は鯨沈が切れて倒れるまでに、私たちを全滅させられる。

ヤツより弱い私たちが、ヤツに連携を説いたところで空しいだけだ。」

 

浅梨は沈黙していた。

 

「そもそも言葉で動くような女ではない。

我妻 梅との戦いを止めるには・・・お前がヤツに勝つしかないな。

お前に勝つまでは、姉への挑戦はしないだろう。」

 

「ええっ!?

そ、そんなこと・・・無理です!」

 

「そういうわけだ。

諦めて、姉に頼んだらいい。

私も噂は聞いている。

喜んで飛んで来るだろう。」

 

浅梨は肩を落とした。

 

「考えてみます・・・」

 

浅梨は訓練所を後にしようとした。

 

「生天目を止める、か。」

 

エレンはまたため息をついた。

 

「部下を守るのが上官の役目とはいえ・・・気が重いな。

む、そういえば・・・我妻。」

 

「はい?

なんですか?」

 

浅梨は足を止めた。

 

「お前・・・早田という名字、どこかで聞き覚えがないか?」

 

「早田?

良介先輩の名字ですよね?

どうかしたんですか?」

 

「昔、幼い頃に父から何度か聞いた覚えがあってな。

父に聞いてみたが、忘れたと言ってはぐらかされてな。

そこで始祖十家であるお前なら何か知っているのではないか、と思ってな。

それで、どうだ?

何か知っていることはあるか?」

 

「いや、何も知りません。

早田という名字自体、良介先輩の名前で初めて知りましたし・・・」

 

「ふむ、そうか・・・呼び止めて悪かったな。」

 

「はい、それでは・・・」

 

浅梨は重い表情のまま訓練所を後にした。

 

「ただの聞き間違いか思い違いなのだろうか・・・」

 

エレンは顎に手をやり、考え始めた。

 

   ***

 

学園のとある教室。

 

「あーっ!

うそっ!

やばっ!」

 

突然千佳が大声を出した。

ゆえ子と律は驚いた。

 

「な、なんだよ急に、びっくりさせんなよ。

今度は誰にフラれたんだ?」

 

「ばっ!

バカ言わないでよ!

そんなに年中フラれてないし!」

 

「おそらく、忘れていたんでしょう。」

 

ゆえ子は何かを察した。

 

「忘れてたって、何を?」

 

「さすがゆえっち!

今思い出したんだけどさ・・・来月、バレンタインじゃん!」

 

律は呆れていた。

 

「そんなにビックリすることじゃねーじゃん。」

 

「だって!

バレンタインっていったら女の子の一大イベントっしょ!?

そんなの今の今まで忘れてたなんて・・・もー、死にたい・・・うち、もう女子高生じゃないかも・・・」

 

「なに言ってんのか全然わかんねぇ。」

 

「間宮さんは、どなたにお渡しするんですか?」

 

「うーん・・・そうだなー、とりあえず・・・」

 

「とりあえずっていうか。良介だろ。」

 

千佳は驚いた。

 

「えっ?

な、なによ急に。」

 

「だって千佳と一番仲いい男子ってアイツじゃん。」

 

「はぁ?

どこをどう見たらそうなんのよ。」

 

「え・・・・・違うの?」

 

「前から言ってんじゃん。

うちの好みじゃないって。

はー、早く渡すリスト作らなきゃ・・・あ、いちおう渡すけどね、義理。」

 

律はゆえ子の方を向いた。

 

「なぁ、アイツってホントに良介のこと興味ないの?」

 

「ゆえにはなんとも・・・間宮さんのことは、音無さんの方が詳しいですから。」

 

「アイツがそーゆーの否定するのって珍しいんだよなぁ。

ま、良介も特定の誰かってワケじゃないみたいだし、お互い様だけどさ。」

 

「そうなのですか。

ですが良介さんは人気がありますから。」

 

「うーん、たくさんの女子を手玉にとってるなんて、やっぱロックだなー。」

 

ゆえ子は律の方を見た。

 

「音無さんはどうなんでしょう?」

 

「なにが?」

 

「えっと、良介さんのことです。」

 

「いやー、いい男だと思うぜ?

あたしが男だったら惚れてるね、絶対バンド組んでデビューしてる。」

 

「それは、どう受け取ったらいいものしょうか・・・」

 

同じ頃、報道部部室。

鳴子と春乃が話をしていた。

 

「秋穂君はどうだい?

夢は見なくなった?」

 

「もう、忘れてる。

一度、見ただけだったから。」

 

「そうか。

大事無ければよかった。

だけど・・・おかしいな。

なぜ彼女だけが・・・いや、他にもいるみたいだけど・・・なぜ、裏の記憶が影響する生徒とそうでない生徒がいるんだ?」

 

春乃は軽く息を吐いた。

 

「あたしは興味ない。

秋穂がこれ以上夢を見ないように手を打ちたいの。

原因がわからないのは知ってるわ。

自分で調べるから・・・なにか情報が入ったら、教えて。」

 

「お安いご用さ。

僕もツテをたどってみよう。」

 

春乃は少し沈黙した。

 

「お願い。」

 

そう言うと春乃は部室から出て行った。

 

「妹君への愛情を考えると、無理矢理にでも調べさせたいはずなのに・・・なかなか良介君の影響、強くなってきたなぁ・・・」

 

鳴子はそう言うと、パソコンに向かった。

 

「さぁ、僕は僕の仕事をしないとな。

未来の僕が残した謎・・・まだ時間は十分にある。」

 

その頃、生徒会室。

聖奈とチトセが仕事をしていた。

 

「クソッ!

手が・・・手が足りん!」

 

「ふぅ・・・年が明けてから大変ねぇ。

良介君、呼ぶ?」

 

「バカを言うな!

ヤツは年が明けてからもクエストに出ずっぱりだ!

休ませるのではなかったのか・・・!

副会長はなにを考えているんだ!」

 

チトセは少し考えた後、聖奈に質問した。

 

「ねぇ、本当に良介君の体を心配しているだけなの?」

 

「体だけではない!

ヤツへの依存もなんとかせねばならん!」

 

「とはいうけど、あなた、もう3日も寝てないでしょう?

少しお休みなさい。

倒れたら仕事が滞るわよ?

予算の決定はともかく、雑事なら私ができるから。」

 

「貴様には割り当てられた仕事がある。

予算の策定は私の仕事だ。」

 

「とはいっても、本来年末に副会長がやる仕事を肩代わりして遅れたのよ?」

 

「副会長は裏世界の探索に行っていた。

会長は北海道の事案の合間を縫って手を貸してくれたのだ。

クエストに出る頻度が少ない私が事務を引き受けるのは当然だ。」

 

「危なそうならちゃんと言ってね?」

 

「絶対に期日には遅らせない。

心配するな。」

 

「そうじゃなくて、体のこと・・・お肌が荒れないように。」

 

チトセは呆れたように笑った。

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