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第74話 動物は心を映す鏡
7月、ある日の校門前。
さらが歌いながら歩いていた。
「アルパッカパッカ~♪
馬ぱっかぱっか~♪
よっちゃばれ~、ぼくじょ~お♪」
兎ノ助はさらの歌を聞いて今回のクエストのことを思い出した。
「あぁ。
牧場の警備って、あのCMの牧場だったのか。
なんかアルパカだらけで、すげーインパクトだよな。
あのCM。」
「わたし、アルパカさんにお会いするのはじめてですぅ!」
すると、シローも嬉しそうに鳴いた。
「ふふふ。
シローもお友だちできるといいですねぇ。」
「まっ、今回はクエストっていうより、地域交流がメインだから・・・
おもいっきり楽しんでこいっ!」
「はいぃっ!
おまかせですよぉ!」
すると、さらは何かに気づいた。
「あれ?
あそこにいるのは・・・たつきさん?」
少し離れたところに龍季がいた。
兎ノ助も龍季に気づいた。
「ん?
なんだ、龍季。
見送りか?」
「い、いや・・・たまたま通りかかっただけだ。」
「とかいって・・・お前、一緒に行きたいんじゃねーの?」
「べ、別に!
動物とかきょーみねーし!
やることあるし、俺は忙しーんだよ。」
「そだった!
お前、今日訓練日だったな!」
「うぐっ・・・」
龍季は悔しそうな顔をした。
「たつきさん・・・
写真、たくさん送りますねぇ!
たのしみにしてくださいっ!」
「ああ・・・頼む。」
さらはクエストに行ってしまった。
龍季はさらの後ろ姿を黙って見ていた。
「行きたかったんじゃねーの?」
「るせっ!」
兎ノ助のからかいに龍季は顔を赤くしていた。
良介と誠は少し離れたところから見ていた。
「よっちゃばれ牧場ね・・・誠、行ったことは?」
「ねぇな。
名前なら聞いたことはいくらでもあるんだが・・・」
「牧場の警備・・・作業を手伝えばいいのか?」
「恐らくそうだろうな。
力仕事が多そうだなぁ・・・」
誠は引き気味に笑った。
「力仕事か・・・俺はむしろその方がいいな。」
良介は嬉しそうに笑った。
「動物との触れ合いも多そうだ。
アルパカには・・・気を付けねえとな。」
「安心しろ。
唾飛ばされたら笑ってやるから。」
「その時はお前に唾付けられた部分を擦り付けてやる。」
良介と誠は話をしながらクエストに向かった
***
牧場に着くと、さらは楽しそうに周りを見渡した。
「わ~!
牧場、ひろいですぅ!」
シローも楽しそうに鳴いた。
「シロー、やるきまんまんですねぇ。
えらいですよぉ。
よーし!
良介さんっ!
さっそくおしごとしましょお!」
「ああ、そうだな。」
良介は牧場を歩こうとすると、さらはすぐに立ち止まった。
「さら?
どうしたんだ?」
「けいびって、何をすればいいんでしょう?」
「ああ、主にだな・・・」
良介が説明しようとした途端、シローが吠え始めた。
「あっ・・・イヴさん!」
さらがシローが吠えている方向を見るとイヴが立っていた。
さらはイヴのところに向かい、話しかけた。
「イヴさんも、牧場けいびだったんですねぇ!」
「え、ええ・・・まさか、こんな遊び半分のクエストだとは思わなかったけれど。
単位が出るとはいえ・・・魔法に関わる勉強はできなさそうね。」
「ふふふ。」
さらは突然笑い始めた。
「なにか?」
良介は呆れながらイヴの後方を指差した。
「あ~・・・イヴ、ヤギが服噛んでるぞ。」
「え・・・?」
イヴが後ろを見ると、ヤギがイヴの服に噛み付いていた。
「あっ!
こら、離しなさい!
これは食べ物ではないわ!
ひ、ひっぱっちゃダメ・・・!
こ、こら・・・や、やめ・・・」
イヴはヤギに引っ張られていってしまった。
さらはその状況を見て笑っていた。
「ふふふ。
イヴさん、モテモテですねぇ。」
「やれやれ、助けに行ってやるか。」
2人がイヴの後を追いかけようとした途端、地響きのような音が聞こえてきた。
「ん?」
「なんでしょうこの音・・・?」
2人が音のする方を向くとアヒルの大群が迫ってきていた。
「きゃああああっ!」
「へぇああっ!?」
良介とさらはアヒルの大群をなんとか回避した。
「今の、アヒルさん?
だっそう・・・ですか?
つ、捕まえましょう!!」
「いきなりアクシデントかよ、まったく・・・!」
2人はアヒルの大群の後を追いかけていった。
***
その頃、牛がいるところに花梨がいた。
「おお~。
いい牛だな、こりゃ。
たーんと食え?
いい乳出すんだぞぉ?」
花梨が牛に餌をやっていると小蓮やってきた。
「花梨~!
たくさん搾れたヨ!
タンク、どこ置くカ?」
「おぉ、こっちさ置いてけろじゃ。」
「アイサ~!」
すると、小蓮はタンクを持ってきた。
「どっっこーいショッ!!」
「お・・・おお。
小蓮、よく一人で運べたな。」
「クニではこのくらいアタリマエだったネ!
まずしい村だったからナ・・・市場まで野菜なんか担いでたヨ。」
小蓮が話していると片手にタンクを一個ずつ担いだ誠がやってきた。
「そらよっ!」
誠はタンクを2人の前に置いた。
「誠、おめえ本当に力持ちだなぁ。」
「そうネ。
片手に一個ずつは結構キツイはずヨ。」
「魔法使いに覚醒する前はこうはいかなかったさ。
さて、まだ向こうにあるから取ってくるよ。」
そう言うと、誠は再びタンクを取りに行った。
「それにしても、珍しい食材はどこカ。
変わった動物いると思ったのにナ・・・」
すると、地響きが聞こえてきた。
「ん?
ナニか、この地響き・・・」
小蓮が地響きが聞こえる方に向かった。
「アイヤーッ!!
な、何カ!
あの白い塊・・・アヒル!?」
アヒルの大群がやってきていた。
「な、なんだ・・・ふおぉっ!?」
アヒルの大群の進路方向にいた誠は踏み潰されてしまった。
「たまげたなぁ・・・アヒルの大行進だべ。」
アヒルの大群の後ろに良介とさらが走ってきていた。
「花梨!
小蓮!
そのアヒル、捕まえてくれ!」
「良介、仲月、なしたっきゃ?」
「とり小屋から逃げちゃったんですぅ~。」
「アイ、任せるヨ!
とわちゃーっ!」
小蓮はアヒルの後を追いかけ始めた。
「一匹残らず美味しい北京ダックにしてやるヨロシー!」
「えぇっ!?」
「あっ!
待つネ!
ワタシの食材ーっ!」
「小蓮!
それは食用じゃねぇぞ!」
良介とさらも小蓮の後を追いかけていった。
花梨のところに頭や顔に羽や足跡をつけた誠がやってきた。
「一体、なんだったんだ・・・」
誠は呆然としていた。
花梨は足元にいる一匹のアヒルを見つけた。
「ん?
まだ一匹・・・おめさ、置いてかれたっきゃ?」
アヒルは花梨に甘え始めた。
「な、なんだべ。
そんなに甘えてもなんもねぇぞ?」
誠は良介たちの後を追いかけようとしていた。
「あ、誠!
ちょっと待ってけろじゃ。
このアヒルば持ってけ。
こいつも逃げたんだっきゃ?」
「たぶんそうだろうな。
それじゃ・・・」
誠は花梨からアヒルを受け取ろうとしたが、アヒルは暴れ始めた。
「お、おお?
おめ、そったに嫌がらんでも・・・わっぷ。
な、なんか気に入られっちまったみてぇだすけ・・・
とんだ【おませさん】だべ。
女がいいっきゃ?」
「どうするんだ?」
「しょうがないすけ。
こいつはもう少し、おらが預かるすけな。
他のアヒルば頼むぞ。」
「ああ、わかった。」
誠は良介たちの後を追いかけた。
***
エレンは牛の世話をしていた。
「まさか魔法使いになって、日本に来て、牛の世話をするとはな。
動物は従順でいい。」
すると、そこにヤギに服を引っ張られているイヴがやってきた。
「うっ・・・だから離しなさいって・・・!
ほら、餌はこっちに・・・なんでこの服にこだわるのよ・・・」
「冬樹?
何をしている。」
「なんでもありません。」
「随分、ヤギに気に入られたようだな。」
「っ!」
「怒鳴りつけたところで、離してはもらえんぞ。」
「私のことは放っておいてください。」
エレンはイヴのことを黙って見た。
「悪意がない相手には根気が必要だ。
短気を起こすな。
時間をかけて心を通じさせろ。
人間でも動物でも同じだ。」
「動物と心を通わせるとは、軍人らしくない夢のある言い方ですね。」
「馬鹿な。
軍隊は動物も使う。
動物を操る者は、毎日、朝から晩まで動物の世話をし、心を通わせるのだ。
私は見ていただけだが、言葉などなくても、種族が違っても・・・
親友や家族となることはできる。
現実的な話だ。」
すると、そこにさらと良介がやってきた。
「おいエレン、こっちにアヒル・・・
ん、イヴ、まだヤギと・・・」
良介とさらはイヴがまだヤギに服を引っ張られていることに気づいた。
「これは・・・その、ちょっと・・・!」
さらはヤギに近づいた。
「めっ、ですよぉ。
イヴちゃん困ってますぅ。」
「そんなの、口で言っても伝わるわけ・・・」
ヤギは簡単に服を離した。
「え・・・は、離した?」
「ふふふ。
いいこですねぇ~。」
さらはヤギの頭を撫でていた。
「ふむ。」
エレンはさらを見つめ、イヴは呆然と見ていた。
良介はイヴとエレンに話しかけた。
「なあ、こっちにアヒルの群れが来なかったか?」
「いや、見ていないが。」
「む・・・困ったな。」
「もしこのまま捕まらなかったら・・・どうしよう・・・」
困った表情の良介と泣きそうなさらをイヴは見ていた。
イヴにエレンが話しかけた。
「冬樹。
一緒に探してやれ。」
「なんですって!?」
「私も、牛を戻したら手伝いに向かおう。
さすがに、犬と家族なだけはある。」
エレンはさらを見ながら言った。
さらは不思議そうにエレンを見ていた。
「ハンドラーを目指すのもいいかもしれないな。
興味があったら紹介するぞ。」
「はんどらー・・・ですかぁ?」
エレンは牛を戻しに行った。
「か、勝手に決めて・・・」
「イヴ。」
良介はイヴに話しかけた。
イヴは無言で良介とさらの方を見た。
「頼む。」
「わ、分かったわ。」
アヒルを探すのにイヴも手伝うことになった。
***
少し経って、良介たちはアヒルの群れを見つけた。
小蓮がまだアヒルと格闘していた。
「ああっ!
また逃げられたネ!
チョコマカと・・・!」
「うう~・・・どうして逃げるんですか・・・アヒルさん~!」
「ああ・・・ダメだ、すり抜けられる。」
良介が捕まえようとしても逃げられてしまっていた。
「このっ・・・待っ・・・痛いって・・・へぶしっ!」
誠は嫌われているのかアヒルに攻撃ばかりされていた。
「これじゃ、キリがないわね。」
イヴは状況を見て、諦めかけていた。
そこに花梨がやってきた。
「おー、ずいぶんお祭り騒ぎだべ。」
「里中さん、そのアヒルは・・・?」
イヴは花梨が抱えているアヒルに気づいた。
「ん?
なんか、懐かれちまってなぁ。
アヒルは怖がりさんだすけ。
知らない人が来て怖がってるんだべなぁ。」
「怖がっている?」
すると、イヴは花梨の抱えているアヒルに近づいた。
「ア、アヒル。
こっちに・・・おいで。
大丈夫。
あなた達に危害を加えるつもりはないのよ。
(動物と話すなんて、ありえないことだけど・・・
敵意がないことを示す・・・声のトーンでなんとか・・・)」
イヴはアヒルに語りかけ続けた。
「突然知らない人が来て、怖かったのでしょう?」
すると、アヒルは大人しなった。
「大人しくなった・・・やっぱり・・・」
「あれっ?
アヒルさんがおとなしくなりましたぁ・・・」
「ふ、フユキ、どんな魔法を使ったカ・・・」
「魔法じゃないわ。
予想しただけ。
最初に逃げ出した理由はわからないけど・・・
犬と人間が走って追いかけてきたら、アヒルにとっては怖いのでしょう。
だから逃げていた、ただそれだけだったんじゃないかしら。」
さらは笑顔でイヴを見ていた。
「うっ・・・」
「フユキ・・・たまげたな!」
「イヴちゃん、カッコいいですぅ・・・」
「アヒルはパニックになってたから難しいと思っていたが・・・勘違いだったみたいだな。」
「俺・・・まだ攻撃されてんだけど・・・」
誠はまだアヒルに足を噛まれたりしていた。
「じゃあワタシが料理にするって言ってたのも聞いていたカモ・・・
大丈夫ヨー!
アナタたちを料理にしないと関帝に誓うヨー!」
「シローも、ちょっと肩の上で大人しくしててくださいねぇ。」
すると、アヒルたちは突然イヴの方へと集まり始めた。
「むっ?」
「ほぇ?
アヒルさんたちが・・・」
「きゃっ・・・な、何?
そんなに一気に集まらないで!
ふっ・・・ふふ。
くすぐったいから・・・や、やめなさいって。」
「ふっ、さっきまで逃げてたのにな・・・」
良介は笑みを浮かべながら見ていた。
「自分から寄ってきたネ・・・なんということダ・・・
おっ。
ついてくるネ。
このまま柵に誘導してしまうヨ!」
「イヴちゃん。
イヴちゃん。」
さらはイヴに話しかけた。
「あ・・・えっと・・・何かしら?」
「やっぱりイヴちゃんはノエルちゃんのおねえちゃんですねぇ。」
「あ、あの子は関係ないでしょう!」
「笑っているイヴちゃん、ノエルちゃんとそっくりでしたよぉ!」
「私と・・・ノエルが?」
「はいぃっ!
すてきなおねえさんですぅ!」
すると、イヴは黙ってどこかに向かってしまった。
「あっ!
フユキ、柵はそっちではないヨ!
アイヤー、アヒルたちがフユキについてっちゃうヨ!」
「お、追いかけましょお!」
さらと小蓮はイヴの後を追いかけていった。
良介は黙って見ていた。
「ノエルを受け入れられない・・・か。」
良介はため息をついた。
少し離れたところに花梨とエレンがいた。
「なかなか上出来だな。」
「んだ。
イヴのお手柄だべ。」
「今日は誘ってもらって悪かったな。
正直、少しまいっていたところだった。
気晴らしができてよかった。」
「そうか、ちょっと顔色、よくなってるっきゃ?
なんも大丈夫だぁ。
一件落着、だすけな。」
その頃、誠はまだアヒルに攻撃されていた。
「なんでイヴに懐いてるのに俺は・・・!
痛い痛い!
誰か助けてくれっ!」
良介はそれを見てため息をついた。
「なにしてんだお前・・・」
花梨とエレンもその状況を見ていた。
「あいつ、なにしてるんだっきゃ?」
「ふむ、理由はわからんがなにか気に入らないらしいな。」
2人とも呆れていた。