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ある日の校門前。
良介がやってくると、エレンが待っていた。
「良介、待っていた。
突然で悪いがクエストに出るぞ。」
「今からか?」
「今日、今からだ。
ちょうど腕試しに適した魔物が現れた。
お前も入学当初に比べたらかなり腕をあげただろう。
だが・・・バスター大佐に紹介する前に、私の目でいちど、見ておきたい。
今日は精鋭部隊を数人連れて行く。
お前の立ち位置は副官だ。
私の隣で指示を出し、精鋭部隊を動かしてみろ。」
「なるほど・・・で、精鋭部隊のメンバーはどんな感じなんだ?」
「知り合いは外してある。
お前の、指揮官としての純粋な実力を見たい。
志願制とはいえ、それなりに訓練を積んできた者達だ。
動きは保証する。」
「なら、余計な心配はしなくてよさそうだな。」
「なにかあれば私がカバーする。
思うとおりに動かしてみろ。」
良介はデバイスで早速クエストを請けた。
「よし、行くか。」
「ハワイへの出発がある。
万が一にも遅れられん。
昼過ぎにはケリをつけるぞ。
ブリッツクリークだ。」
「制限時間があるってことか・・・やってやるとしますか。」
良介は笑みを浮かべながらクエストに向かった。
その頃、精鋭部隊詰所。
月詠と浅梨がいた。
「もーっ!
エレンのヤツ、ツクたちは留守番だなんて・・・」
「良介さんとよく組んでるから、逆にダメだって言ってましたね?」
すると、メアリーが2人のところにやってきた。
「今日は良介のナマの実力を見る。
関わりの薄い生徒に、どのくらい有効な指示が出せるか・・・
いわゆる軍隊的ソシツってのがあるかどうかを判断する。」
「ツクは!?
ツクの方がアイツより優秀でしょ!?」
「笑わせんな。
比べもんにならねーよ。
それにテメーは精鋭部隊だろーが。
今さらなに見るんだよ。」
「え、えっと・・・」
「寂しいんですよね、守谷先輩。」
「な、な、なっ、なにがよ!」
「エレン先輩と良介さんがいっしょにお出かけしちゃって。
私も、仲間はずれにされたみたいでちょっと寂しいです。」
「は、はぁ!?
知らないわよそんなの!
ツクは、良介を連れて行くならツクの方が100倍得だってことを・・・!」
メアリーはため息をついた。
「もういい。
黙れ・・・おい、来栖はどこにいやがるんだ?」
「ん・・・さっき、訓練所に行くって出てったわよ。
ねえ、焔、どうにかなんない?」
「なにがだよ。」
「だってあの子、この前裏世界のことを聞いてから、見てられなくて・・・」
メアリーは月詠を黙って見た。
「つ、ツクだって、今は大丈夫だけど、裏の方は・・・その・・・」
「裏は裏だ。
他人のことでゴタゴタ抜かすな。」
「だって!
表でも、みんなが死んじゃったらツク・・・えっと・・・」
「裏のアタイがどれだけお優しかったのかわからねーけどな・・・アタイはそんなヌルいしごき方はしてねーよ。」
メアリーは詰所から出て行った。
「ですって。」
月詠はメアリーが出て行ったドアを見つめていた。
「も、もしかて精神改造とかされてるのかしら・・・?」
月詠は震えながらドアを見ていた。
***
良介はエレンと精鋭部隊のメンバーを連れて森に来ていた。
「良介。
よく来たな。
今日は私とクエストだ。
すでにお前はよく戦っているが、これから更に重要な立場になるだろう。
お前はただの魔力タンクではない。
その期待に応えろ。」
「魔力タンクねえ・・・そんな風に見られてんのか・・・」
良介はため息をついた。
「クエスト目標は対象の討伐。
だが、お前が一皮むけることを期待する。
そのために今一度、私の指示で動け。
基本からやり直すぞ。」
「了解、やるか。」
良介は少し前に出た。
「大規模侵攻を乗り切ったとはいえ、やはり一時しのぎに過ぎん。
魔物を倒すには、世界で大攻勢をかけなければならないだろう。
そこで問題になるのが・・・」
「霧はなくならないってことか。」
「そうだ、魔物を倒しても霧に戻るだけ。
霧自体は燃やすことも消滅させることもできない。
これまでずっと、一番の問題はそれだった。
だが・・・そこに希望が見えたとなったら、士気は上がるだろう。」
「ま、よく聞く話ではあるな。」
良介たちは魔物の方へと向かった。
***
生徒会室、虎千代のところに結希と心がやってきていた。
「さて、情報流出の経路がつかめたと聞いたが・・・」
虎千代は心の方を見た。
「双美の様子がいつもと違うな?」
「気にしないで。
こういう子だから。」
「ふむ。
まあ、話ができるならいいが・・・それで、犯人もわかったと。」
心が話し始めた。
「はい。
良介さんの情報は、遊佐 鳴子が漏出させていました。」
「なるほど。
ならひと段落だな・・・」
虎千代は少し無言になった後、驚愕した。
「な、なんだとっ!?
遊佐が・・・!?」
「正確には遊佐 鳴子と服部 梓が2人でおこなっていました。」
「生徒会長、落ち着いて。」
「だ、だが学園の機密を勝手に漏らしたとすると・・・」
虎千代は明らかに困惑していた。
「漏らしてはいないわ。」
「はぁ?
アタシにもわかるように説明しろ!」
「彼女は流出させるにあたって、何重もの罠を張っていた。
流出した情報がこれ。」
結希は手に持っていた書類を虎千代に渡した。
「ああ、アタシも確認してる。
学園生名簿の良介のものだ。」
「これなら、全くの部外者はともかく・・・軍部程度なら閲覧は難しくはない。」
「だが、それに添付された情報が問題なんだろう?
良介の体質や能力、これまでお前がやってきた検査結果・・・交友関係すら書いている、と言っていたじゃないか。」
心は笑みを浮かべていた。
「遊佐さんには騙されました。
私が早くそこまで辿りつくのを見越していた。」
「この子の魔法は電脳上でもっとも効果を発揮するの。
どんなセキュリティでも【それが存在しないかのように】すり抜けてしまう。
電子的な暗号も、ファイアウォールでも・・・抜けられない防御はないわ。」
「知っている。
それがどれだけ危険なことかもな。」
「それで彼女の暗号を解いてもらったの。
だけど・・・」
「情報自体が罠でした。
添付ファイルを開くとこのような文字の羅列・・・」
心はデバイスを虎千代に見せた。
「さらなる暗号が出てきます。
これは電子的なものではありません。」
「つまり、お前にも解けないものということか?」
「はい。
これは電子的なセキュリティでなくロジカルな・・・ようするに発想力を問う謎かけです。
これを解くとアイラ・ブリードの名前。
続いてさらなる暗号が出てきて、それを解析するとURLが・・・」
虎千代は心を止めた。
「いい、経過はいい。
ようするにそれを解くのに今までかかったんだな?」
「ええ、そう。
その中で公開された良介君の情報は・・・女好きであること。
振り回されやすいタイプであること。
多様な趣味を持っていること・・・ばかばかしいけど、要するに・・・」
「どうでもいいことばかりか・・・」
「ええ。
でもいかにも【それらしい】仕掛けが施されてある。
良介君の情報が欲しい人たちは、必死になって暗号を解いたでしょうね。」
「遊佐と服部を呼べ。
なんでこんなことをしたのか・・・」
「目的はわかってるわ。」
虎千代は不思議そうな顔をした。
「彼女はテロリストたちを足止めしたの。」
少しして、梓が生徒会室にやってきた。
「あー、ふたみんがいるってことは・・・バレちゃいました?」
「服部っ!!」
虎千代は凄い速さで梓に迫った。
「ひっ!
ま、まぁまぁ。
黙ってやったのは謝りますが・・・あんまり表沙汰にできることじゃなかったですし。」
「余計なことに手間を取られたわ・・・」
「それが一番アレだったッスねぇ。
しばらくなんでも言うこと聞きますから。」
「今の言葉、忘れないでちょうだいね。」
「うぐ・・・で、タネ明かししますと・・・自分、結構知ってまして。」
「裏世界のことか?」
「さいです。
遊佐先輩からいろいろ聞いてました。
JGJやら霧の護り手・・・ライ魔法師団がどう関わってくるかの、ある程度は。」
「いつからだ?」
「最初に裏世界にいったあたりッスね。
遊佐先輩に話を聞くようになったのは。
あ、今回のお漏らしトラップ、これ【風の術】って言うんですが・・・【偽書の術】の方が近いかな。
これを仕掛けたのは春ごろッス。」
「そこまで仲がいいようには見えなかったが。」
「そりゃもう、自分と遊佐先輩が繋がってることがバレたら終わりッス。
臭いは完璧に消したつもりッスよ。
で、まぁ目的はテロリストの手を止めることで・・・要するに美味しそうなエサを撒いたんですね。」
「良介君の情報はどこも喉から手が出るほど欲しいもの。
解けそうな暗号が落ちてたら、手を伸ばすでしょうね。」
「こっちのもくろみでは、暗号解読にかまけてもらえれば・・・JGJ内部の共生派汚染やその他諸々、要するにテロ活動ですね。
それが鈍るはずでした。
まあ、おそらく成功したと思います。」
「だが、良介の安全はどうなる?
そのエサはヤツ本人なんだぞ。
安全だったからいいものの、もしあいつが拉致されたりしたら・・・」
「それはあり得ません。
先輩本人が強いのもありますが、守ってましたから。」
結希が梓に話しかけてきた。
「服部さん、4月からどこの仕事も請けてなかったでしょう?」
虎千代はそれを聞いて首を傾げた。
「アレは、風槍の面倒を見ていたんじゃないのか?
そんな風に言ってなかったか。」
「それもしてましたよ。
先輩を守ってたことは言ってませんでしたが・・・実際は自分だけじゃなくて、里から何人か貸してもらいまして。
たぶん4月から今まで、世界中で一番、先輩が安全でしたでしょーね。」
「それで、アタシたちや宍戸にも黙っていた理由はなんだ。」
「敵を騙すにはまず味方からというッス。
みんなが【情報が流出した】と緊張してくれたから・・・テロリストもそれが本物だと思ってくれました。」
「結果として、真剣に暗号を解いてくれたというわけか・・・水無月を呼んで来い。」
「ゲッ。」
梓は少し引いた。
「魂胆はどうあれ、校則違反なのは間違いない。
お前たちのことだ。
それも覚悟していただろう?」
虎千代はニヤリと笑った。
「にんにん。
お、おたすけ~っ。」
梓はその場から逃げようとした。
***
訓練所。
焔が一人で訓練していた。
「はぁっ!
はぁっ!
チクショウ、まだだ・・・!」
焔が次の魔法を撃とうとした時、メアリーがやってきた。
「待てよ、おい。」
「はぁ、はぁ・・・ああ?
ミーティング入ってたか?」
「ねーよ。
今日はそーゆーのはなにもねぇ・・・テメー、全然成長してねーな。」
焔は黙ってメアリーを見た。
「第8次がどーのこーのでもう時間がねぇ。
この際だ、正直言ってやる。
テメーが武田 虎千代や生天目 つかさ、早田 良介や新海 誠になるのは無理だ。
永遠にな。」
そう言われると焔はメアリーを睨んだ。
「わかってるよ、んなことは!
そこまで強くなんかならなくていい!
アタシはただ・・・」
「傷の魔物か。」
「な、なんでそれを・・・」
「調べたらすぐに出てきたぜ。
いわゆるフォークロアってヤツだ。
ネット上にまことしやかに伝わる【傷の魔物】・・・30年前から戦場にときおり現れる、左目に傷を負った魔物。
テメーはそいつに家族を殺されたんだな?」
「バカじゃねーのか。
魔物は霧の集合体だ。
傷がずっと残るなんてことがあるか。」
「その通りだ。
魔物の傷は、時間と共に【確実に消える】。
そもそも1体の魔物が10年も20年も生きるなんてことはありえねぇ。
それだけ生きてりゃタイコンデロガなんてもんじゃねぇからな。
強くなる前に、どこかで討伐されてるはずだ。
絶対にな。
だが、テメーの目的はその魔物。
おかしいじゃねーか。」
「おかしいなら、ほっとけよ。」
「おかしくなかった。」
焔は不思議そうにメアリーの方を見た。
「そんな魔物がいるんなら、科研かCMLに資料がある。
カウンターミスティックラボだ。
入り込んでみたら・・・いたぜ、傷の魔物。
時代によって姿形は違うが、必ず左目に傷がある。
戦闘中のカメラが捉えてる。」
「左目に傷があるからって、その魔物って証拠はねぇだろーが。」
「なにか特別でなきゃ、奴らは写真を撮らせねーよ。
傷の魔物はいる・・・よかったな。
テメーもあの世で家族に会えるぜ。」
「な、なにが言いてーんだ!」
「1人で戦ったら負けるって言ってんだよ。
いいか?
その傷の魔物が本当に30年前からいるとしてだ、強さはどのくらいだと思う?
今まで明確な被害がなかったのがビックリなくらい強えんだよ。
魔物は半年でタイコンデロガ級になる。
30年なら・・・ムサシ級だ。」
「頭湧いてんのか!
そうなる前に討伐されるって言ったのはテメーだろーが!」
「そんなもん知るか。
事実、傷の魔物はいる。
それが同一個体かはわからねぇ。
だがテメーがケンカを売るのはそいつだ。
そんでそいつの戦力が、ひょっとしたらムサシ級かもしれねえんだ。
どれだけ信憑性がなくとも、テメーが想定すべき強さは【そこ】なんだよ。
実際戦ったら弱かったです、ならいい。
生き残れるんだからな。
実際戦ったら強くて死にました、じゃただの負け犬だぜ、お前。」
メアリーはため息をついた。
「すっげえ昔に、テメーに優しく教えてやったはずだ。
個人の力には限界があるってな。
あの後、虎千代が死にかけたのは覚えてるか?」
焔は黙っていた。
「アイツが助かったのは良介がいたからだ。
良介のクソみたいな多い魔力が、虎千代の体を満たしたおかげで・・・アイツの体に霧が入り込まなかった。
わかるな?
もう一度言うぞ。
武田 虎千代も1人ならその程度だ。
その武田 虎千代とテメーの差はどれくらいあると思う?」
焔は黙り続けていた。
「テメーの狙ってる傷の魔物、30年でなくても・・・テメーが家族を殺された時期からせいぜい10年だとしてもだ。
その間にどれだけ強くなっていると思う?
いいか!
アタイはシャレやジョークであの話をしたんじゃねーんだ!
それを無視して、アタイ程度にも強くなれると思うなよ!
友情を築いてもいい、力で押さえつけてもいい。
ホレさせたっていい!
個人でどうにもならねぇ成果を出すには、他人を使うしかねぇ。
テメーがクサしてた野薔薇の連中な、どうして優秀成績をとったかわかるか!?」
「し、知るかよ・・・運がよかったんだろ。」
「それを本気で言ってんならブン殴るぞ。」
焔は再び黙った。
「テメーは弱ぇ。
自分でもわかってるだろうが。
だからこそ、自分のやり方が間違ってることもわかってるはずだ。
なんでやめねぇ?
どうしてチームをそんなに嫌う?」
「アンタには関係・・・っ!」
「あるんだよ。
精鋭部隊にいりゃ、テメーはアタイの部下だ。
そいつが次の侵攻で死にそうなら、先に矯正しとかねーとなぁ。」
「次の侵攻で・・・て、テメェ!
アタシが侵攻で死ぬだと!?」
「当たり前だろうが。
1人で戦って生き残れる実力なら・・・そもそもアタイがこんなこと言う必要ねーだろうが。
それもわかんねーのか。」
「ば、バカにしやがって・・・」
「そうだよ。
テメーはバカだ。
なにがしてーのかわかんねーかな。
傷の魔物を倒してぇんなら、1人で戦おうとするのはやめろ。
部隊の兵士が死ぬのは、もう飽きてんだよ。」
メアリーは去っていった。
焔はメアリーの後ろ姿を見ていた。
「わかってる・・・わかってるんだよ・・・」
焔は歯を食いしばり、拳を強く握った。
***
良介たちは森の中を歩いていた。
良介はエレンと話をしていた。
「消滅させることができなければ、追い出せばいい・・・か。」
「要するに霧を集め、地球上から放り出してしまえば・・・魔物を生む霧自体がなくなる。
魔物の数も減ってゆく。」
「で、問題はどこに放り出すか・・・か。
宇宙は非現実的だな。
打ち上げだけで膨大な費用が必要だからな。」
「ああ、それに、これまで何度も、打ち上げのタイミングで魔物が襲い掛かってきた。
我々の動きに敏感なのだ。
かといって、霧は地球のどこにでもある。
だが、宇宙ではない別の場所・・・それが見つかったな?」
「裏世界・・・未来とも言える世界か。」
「ああ、そこに霧を排出する。
愚かな考えだが、背に腹は代えられんということだな。」
そう話していると魔物が現れた。
「さて、エレン。
戦い方は・・・最初に話したとおりで?」
「当たり前だ。
やってみせろ。」
「了解。
それじゃ、行くぞ。」
良介は速さに自信がある奴を囮役に任命し、魔物の気を惹かせた。
そこに良介が魔物の足を攻撃しバランスを崩させた。
「今だ、やれ!」
そういうと、他のメンバーは魔物に攻撃すると魔物は消滅した。
「基本はこんなところか。」
「ああ、もう少し複雑な動かし方を次はしてもらうぞ。」
「了解・・・手厳しいねぇ。」
良介は愚痴を言いながら次の魔物のところに向かった。