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ある日の学園の校門前。
焔が1人で立っていた。
「クソッ。
なんなんだよ、いったい・・・」
そこに学校から出てきた良介がやってきた。
「焔、何してるんだ?」
良介が話しかけると、焔はため息をついた。
「良介・・・執行部のご指名だとよ。
以前にやったあんたと相性のいい生徒の続きだ。
アタシとパーティ組んでクエスト行くんだってよ。」
「なんでよりによって今日なんだ?」
「執行部の言ってたこと、聞いたか?」
「ん・・・たとえグリモアが第8次侵攻を想定し厳戒態勢だったとしても、全世界がそうでない以上、クエスト発令は通常通り行われる・・・だったな。」
焔はため息を再びついた。
「さっさと・・・行って、帰ってくりゃいいだけだ。
侵攻に間に合えばなにも問題ない。
そうだろ?」
「まぁ、確かにな。」
そう言うと良介は戦闘服に変身した。
「それにこの時期に焔にクエストを振るってことは、何か意味があるんだろうな。」
「なんでも知った風な口ききやがって、アタシを弄んでやがる。
執行部の連中、いつか燃やしてやるよ。」
良介は焔から視線を外しながらため息をついた。
「ま、今のはオフレコにしといてやるよ。」
「別に聞かなかったことになんてしなくていい。」
「そうかい。
それじゃ行くか。」
良介と焔はクエスト発令場所に向かった。
その頃、誠は訓練所近くを歩いていた。
「やれやれ、このタイミングで良介が焔とクエストねぇ。
執行部は何を考えているのやら。」
「オメーも気になるか?」
誠の目の前に戦闘服姿のエレンとメアリーが立っていた。
「エレンとメアリーか。
あいつ執行部に反抗でもしたのか?
それとも、執行部の嫌がらせか?」
「反抗するようなことはしていない。
精鋭部隊に対して嫌がらせするような理由も・・・」
「なら・・・嫌がらせじゃねーんだろ。
心当たりがある。
あとで確認しとくさ。」
メアリーは笑みを見せた。
「心当たり?」
「まさか、来栖の仇か?」
「仇?」
「たぶんな。
だが仇だったらアイツ1人で行かせるはずがねぇ。
たぶん傷がある、似た魔物だろう。」
「傷って・・・傷の魔物のことか?」
「なんだ誠。
オメー知ってたのか。」
「名前だけだがな。」
「傷の魔物を倒すために1人で戦おうとするかぎり・・・今がテッペンだな。」
「だが、傷の魔物を倒してしまえば・・・来栖に戦う理由がなくなる。
もともと、戦場に身を投じるのに向かない性格だ。
目的を遂げたら、精鋭部隊を抜けるかもな。」
エレンの言葉を聞いて、メアリーは再び笑みを見せた。
「アイツにゃそれなりに手間と時間をかけてんだ。
そんなナメたことさせるかっつーの。」
誠は2人の会話を聞いて頭を掻いた。
「傷の魔物ねぇ・・・自分なりに少し調べてみるかな。」
誠はその場を後にした。
***
良介と焔はクエスト発令場所の洞窟にやってきた。
「いよいよあんたとクエストかよ。」
「やたらと嫌そうだな。
希望したんじゃないのか?」
「希望なんかしてねぇ。
勝手に組まれたんだ。
相性がいいのになんでクエストでてねーんだだとよ。」
「そんなこと言われてもなぁ・・・」
「さっさと終わらそう。
人の予定を無視してねじ込みやがって。
精鋭部隊が下部組織だからって好き勝手命令してきやがるんだよ。
強制だからな。
クソメンドクセェ・・・」
焔の言葉を聞いて、良介はため息をついた。
「そこまで言うなら精鋭部隊辞めたらどうだ?」
「精鋭部隊をやめる気はねぇよ。」
「理由は?」
「レベルが高い魔物と戦うには精鋭部隊がいいんだ。
めんどくさくてもな。
一般生徒に回るのは本当に弱い奴らだ。
一般生徒じゃ対処できない魔物は精鋭部隊に。
それでもダメだったら・・・」
「生徒会か。」
「だけど生徒会は入らねぇよ。
クエストに出る頻度が少ねぇ。
事務仕事が多すぎるし、なにより・・・」
「なにより?」
すると、焔はハッとした。
「なんでもねぇ!
なんであんたにこんな話しなきゃなんねえんだ!
黙ってついてこい!」
「へいへい、わかったよ。」
良介は焔の後をついて行った。
***
同時刻、生徒会室。
虎千代とチトセの2人が椅子に座り話していた。
「今日はよっぽどの用がない限り、学園内か寮に待機だ。
窮屈だろうが、侵攻が起きるとなれば、耐えてもらわなければ。
お前を呼んだ理由はわかっているか?」
「今日、裏世界で第8次侵攻が起きた日だから。
そして、私が第8次侵攻は起きないと言っているから・・・でしょう?」
「そうだ。
念のため、根拠を聞いておこうと思ってな。」
「現状ではループ、もしくは時間が経っていないという根拠・・・それは風槍さんだけに委ねられている。
彼女の目だけが頼りでは心もとない。
私の想像は、あくまで想像。
戦う準備はしているわ。
それは心配しないで。」
「お前と東雲を、服部に探らせた。」
チトセは虎千代を睨んだ。
「悪いな。
同じ生徒会といえど・・・やることはやる。」
「ただ驚くだけの会長ではなかったのね・・・いえ、ごめんなさい。
私と、なぜ東雲さんを?」
「2人とも、今起きている現象に共通の見解を持っているようだからな。
時間停止の魔法が、東雲にはかけられている。
東雲の時間は進まず、霧に侵食されていながら症状が進行しない。
300年生きているというのもあながちデマカセではないということか。」
「彼女は実際に300年生きてるわ。
アイラ・ブリードの魔導書・・・あれは彼女が書いたもの。」
虎千代は少し沈黙した。
「単刀直入に聞く。
お前たちが予想しているのはこの世界に・・・時間停止の魔法がかけられている。
そうだな?」
「ええ。
おそらく・・・東雲さんも、同じ見解だと思うわ。
時間停止はとても都合の良い魔法・・・といより・・・魔法はあらゆることが可能。
命令式さえ見つけてしまえばね。
もともとは、霧が東雲さんの体を侵食する・・・それを止めるための魔法だった。
彼女が死ななくなったのは、副作用みたいなものよ。
アイザック・ニュートンが見つけた時間停止の魔法。
その効果はかけた時の状態を維持すること。
それにより、東雲さんはどれだけ体が破壊されたとしても・・・数分後には元通り。
魔力がなくなったとしても、数分後には元通り。」
虎千代は少しの間黙って聞いていた。
「無敵、か。
確かに都合のいい魔法だ。」
「外から見ればね。
本人にとっては生き地獄よ。
でも・・・この魔法の都合のいい所は、もっと別にあるわ。」
チトセはそのまま続けた。
「霧の侵食を止めるのが目的だったと言ったわね。
つまり、東雲さんが霧に侵食されて魔物になってしまわないようにする・・・この魔法の基本概念は来たるべき未来に到達しないことなの。」
「ふむ。
わかってきたぞ。
それが世界全体にかかっているのであれば、術者の目的は・・・第8次侵攻で、人類が全滅するという未来に到達させないことか。」
「それ以外に、このタイミングで時間停止の魔法をかける意味がない。
けれど、この理屈はとても危ういの。
いくつものハードルを超える必要がある。」
「聞かせてくれ。
それで、誰が魔法をかけたかが絞り込めるかもしれん。」
「時間停止の魔法はアイザック以外に使えるものがいない。」
「冗談だろう?」
虎千代は驚いたが、チトセはそのまま続けた。
「それだけ複雑な術式だもの。
時間の流れを止める・・・なんて魔法・・・使いたがる危険な人が絶対いるでしょう?
だからアイザックは、その魔法の理論を残さなかった。」
「東雲 アイラはどうだ。
その魔法をかけられた側なんだろう?」
「彼女はアイザックとある約束をしたから・・・教えてもらっていないわ。」
「誰にも伝承されていない時間停止の魔法が、去年の段階で発動した。
なら術者はニュートンで決まりじゃないか。
ニュートンも時間停止の魔法で生きながらえている。
そう考えるのが自然だ。」
「そうね。
もしかしたら・・・東雲さんに知られず、生きているのかもしれない。
彼女はアイザックの死を、確かに見届けたけれど・・・それが偽装だった可能性。
でも、まだ足りないわ。」
「言ってみろ。」
「消費魔力よ。
これだけはね・・・東雲さん1人の時間を止めるため、東雲さんの魔力をほぼ使い切った。
宇宙全ての時間を止めるためには、どのくらいの魔力が必要だと思う?」
虎千代は不思議そうな顔をしていた。
「他人の魔力を使う技術があったのか?
あ、いや、いい。
あるが、容易に使えないんだろう。
だが、この学園にはそれを解決できるかもしれない男がいる・・・だろ?」
「秘匿されていた良介君の情報をどこから手に入れたと思う?」
「東雲とは考えづらいか。
もし東雲なら、もっと確信を持っているはずだ。
ただ、手がないわけじゃない。
相手がアイザック・ニュートンならな。」
「そう・・・アイザックが生きていて、どこからか良介君の情報を得て・・・彼の魔力を使って時間停止を発動した。
それが1番現実的・・・現実的なんだけど・・・ね・・・」
「アタシはお前に聞きたいことがあるんだが。
お前は・・・アイザック・ニュートンと東雲 アイラのことをよく知っているな。
まるで見てきたかのように。」
チトセは少し黙った。
「これから私が見せるもの・・・他言無用でお願い。
きっとこれを見れば・・・あなたも理解する。」
チトセは真剣な目で虎千代を見た。
***
洞窟内。
良介と焔は魔物のところへと向かっていた。
「よくクエストに出てるんだってな。
イヤでも噂を聞く。
なんか理由でもあんのか?
魔物と戦いたい理由。」
「俺はお前が戦う理由の方が気になるけどな。」
「アタシの理由がなんだっていいだろ。
・・・戦えるくらいの力がいる。
1人でタイコンデロガを倒せるくらいの力だ。
だから精鋭部隊から離れたりしねぇ。
しがみついてでもやってやる。
入学したときはさっぱりだったんだ。
6年かかってここまで強くなった・・・だから卒業まで、まだ伸びる。
卒業までにまだ強くなれる。」
すると、2人の目の前に魔物が現れた。
「まずはコイツだ。
請けたからにはきっちり燃やしてやる。
あんたは見ときな。
クエストの雑魚くらい、どうってことねぇよ。」
「そこまで言うのなら、高みの見物と行こうか。
安心しろ、やばくなったら助けてやるよ。」
「そんな必要はねぇ!」
焔は魔物に向かって行くと、魔物の攻撃をギリギリで躱し、死角に回り込むと火の魔法を撃った。
「くらえ!」
魔物は霧散した。
「やるな。」
良介が焔のところに来たが、焔は振り向きもせずに進んでいった。
「ほら、次行くぞ。」
「やれやれ、少しくらい愛想よくしたっていいのによ。」
良介は焔の後をついて行った。
***
結希の研究室。
心と結希が何か調べていた。
「傷の魔物、とはなんでしょうか。
確かに入手したデータには、左目に傷のある魔物がいました。
しかし魔物に傷がつくこと自体は・・・不思議なことではありません。」
「そう。
ミスティックは霧の集合体だけれど・・・実体化している状態で傷を負うと、消えるまでにそれなりの時間がかかるわ。
その変わり、それが傷だろうと欠損だろうと、完全に修復されるけれど。」
「人間と戦ったことのある魔物は数多い。
傷を負って逃げ出した魔物もいる。
その傷の魔物とは、なにか特別なのですか?」
「CMLでは【スカー】と呼ばれていたわ。
この魔物の特徴は、必ず左目に傷があること。」
「必ず・・・?
あっ・・・」
心は何かに気がついた。
「そう。
これらのデータは適当に集められたわけではないわ。
実体化の時点で、最初から、左目に傷がついている・・・と思われる魔物。
それを集めているの。」
「魔物が生まれながらに傷を持つこと・・・それもやはり、珍しくない・・・魔物は失敗作・・・この世のものを真似て、失敗した不完全な形をとります。」
「不完全ゆえに、彼らは形に縛られないの。
では、なぜわざわざ左目に傷がついているのかしら。
ただの傷じゃない。
世界のいろんな場所で左目に傷がついた魔物・・・それが年間数匹、生まれている。」
「なるほど。
魔物がどのようなプロセスで生まれるかわかりませんが・・・傷の位置がランダムだとしたら、ちょうど左目につく確率は・・・相当低いですね。
しかも左目ということは、視力を持つように生まれたのに・・・わざわざ傷を作ることで、それを潰している。
意味不明です。」
「霧はもしかしたら記憶を持っているのかもしれない。
霧が払われて粒子となった状態でも、その記憶が保持され・・・次の魔物が形作られるとしたら、魔物が年々強くなる理由もわかる。」
「魔物は学習している・・・ですね?」
「そう。
同じ位置に傷がある魔物群は、その仮説を証明するかもしれない。
しかも素直に考えればありえない、自分を不利にする特徴をわざわざ選ぶ・・・だからスカーは特別なのよ。
外見にとらわれないはずの魔物に見られる、不思議な共通点。
ただ・・・それが来栖さんとも関係しているなんて皮肉ね。」
2人は傷の魔物についてさらに調べることにした。