グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第89話 グリモアの一番長い日

ある日の学園の校門前。

焔が1人で立っていた。

 

「クソッ。

なんなんだよ、いったい・・・」

 

そこに学校から出てきた良介がやってきた。

 

「焔、何してるんだ?」

 

良介が話しかけると、焔はため息をついた。

 

「良介・・・執行部のご指名だとよ。

以前にやったあんたと相性のいい生徒の続きだ。

アタシとパーティ組んでクエスト行くんだってよ。」

 

「なんでよりによって今日なんだ?」

 

「執行部の言ってたこと、聞いたか?」

 

「ん・・・たとえグリモアが第8次侵攻を想定し厳戒態勢だったとしても、全世界がそうでない以上、クエスト発令は通常通り行われる・・・だったな。」

 

焔はため息を再びついた。

 

「さっさと・・・行って、帰ってくりゃいいだけだ。

侵攻に間に合えばなにも問題ない。

そうだろ?」

 

「まぁ、確かにな。」

 

そう言うと良介は戦闘服に変身した。

 

「それにこの時期に焔にクエストを振るってことは、何か意味があるんだろうな。」

 

「なんでも知った風な口ききやがって、アタシを弄んでやがる。

執行部の連中、いつか燃やしてやるよ。」

 

良介は焔から視線を外しながらため息をついた。

 

「ま、今のはオフレコにしといてやるよ。」

 

「別に聞かなかったことになんてしなくていい。」

 

「そうかい。

それじゃ行くか。」

 

良介と焔はクエスト発令場所に向かった。

その頃、誠は訓練所近くを歩いていた。

 

「やれやれ、このタイミングで良介が焔とクエストねぇ。

執行部は何を考えているのやら。」

 

「オメーも気になるか?」

 

誠の目の前に戦闘服姿のエレンとメアリーが立っていた。

 

「エレンとメアリーか。

あいつ執行部に反抗でもしたのか?

それとも、執行部の嫌がらせか?」

 

「反抗するようなことはしていない。

精鋭部隊に対して嫌がらせするような理由も・・・」

 

「なら・・・嫌がらせじゃねーんだろ。

心当たりがある。

あとで確認しとくさ。」

 

メアリーは笑みを見せた。

 

「心当たり?」

 

「まさか、来栖の仇か?」

 

「仇?」

 

「たぶんな。

だが仇だったらアイツ1人で行かせるはずがねぇ。

たぶん傷がある、似た魔物だろう。」

 

「傷って・・・傷の魔物のことか?」

 

「なんだ誠。

オメー知ってたのか。」

 

「名前だけだがな。」

 

「傷の魔物を倒すために1人で戦おうとするかぎり・・・今がテッペンだな。」

 

「だが、傷の魔物を倒してしまえば・・・来栖に戦う理由がなくなる。

もともと、戦場に身を投じるのに向かない性格だ。

目的を遂げたら、精鋭部隊を抜けるかもな。」

 

エレンの言葉を聞いて、メアリーは再び笑みを見せた。

 

「アイツにゃそれなりに手間と時間をかけてんだ。

そんなナメたことさせるかっつーの。」

 

誠は2人の会話を聞いて頭を掻いた。

 

「傷の魔物ねぇ・・・自分なりに少し調べてみるかな。」

 

誠はその場を後にした。

 

   ***

 

良介と焔はクエスト発令場所の洞窟にやってきた。

 

「いよいよあんたとクエストかよ。」

 

「やたらと嫌そうだな。

希望したんじゃないのか?」

 

「希望なんかしてねぇ。

勝手に組まれたんだ。

相性がいいのになんでクエストでてねーんだだとよ。」

 

「そんなこと言われてもなぁ・・・」

 

「さっさと終わらそう。

人の予定を無視してねじ込みやがって。

精鋭部隊が下部組織だからって好き勝手命令してきやがるんだよ。

強制だからな。

クソメンドクセェ・・・」

 

焔の言葉を聞いて、良介はため息をついた。

 

「そこまで言うなら精鋭部隊辞めたらどうだ?」

 

「精鋭部隊をやめる気はねぇよ。」

 

「理由は?」

 

「レベルが高い魔物と戦うには精鋭部隊がいいんだ。

めんどくさくてもな。

一般生徒に回るのは本当に弱い奴らだ。

一般生徒じゃ対処できない魔物は精鋭部隊に。

それでもダメだったら・・・」

 

「生徒会か。」

 

「だけど生徒会は入らねぇよ。

クエストに出る頻度が少ねぇ。

事務仕事が多すぎるし、なにより・・・」

 

「なにより?」

 

すると、焔はハッとした。

 

「なんでもねぇ!

なんであんたにこんな話しなきゃなんねえんだ!

黙ってついてこい!」

 

「へいへい、わかったよ。」

 

良介は焔の後をついて行った。

 

   ***

 

同時刻、生徒会室。

虎千代とチトセの2人が椅子に座り話していた。

 

「今日はよっぽどの用がない限り、学園内か寮に待機だ。

窮屈だろうが、侵攻が起きるとなれば、耐えてもらわなければ。

お前を呼んだ理由はわかっているか?」

 

「今日、裏世界で第8次侵攻が起きた日だから。

そして、私が第8次侵攻は起きないと言っているから・・・でしょう?」

 

「そうだ。

念のため、根拠を聞いておこうと思ってな。」

 

「現状ではループ、もしくは時間が経っていないという根拠・・・それは風槍さんだけに委ねられている。

彼女の目だけが頼りでは心もとない。

私の想像は、あくまで想像。

戦う準備はしているわ。

それは心配しないで。」

 

「お前と東雲を、服部に探らせた。」

 

チトセは虎千代を睨んだ。

 

「悪いな。

同じ生徒会といえど・・・やることはやる。」

 

「ただ驚くだけの会長ではなかったのね・・・いえ、ごめんなさい。

私と、なぜ東雲さんを?」

 

「2人とも、今起きている現象に共通の見解を持っているようだからな。

時間停止の魔法が、東雲にはかけられている。

東雲の時間は進まず、霧に侵食されていながら症状が進行しない。

300年生きているというのもあながちデマカセではないということか。」

 

「彼女は実際に300年生きてるわ。

アイラ・ブリードの魔導書・・・あれは彼女が書いたもの。」

 

虎千代は少し沈黙した。

 

「単刀直入に聞く。

お前たちが予想しているのはこの世界に・・・時間停止の魔法がかけられている。

そうだな?」

 

「ええ。

おそらく・・・東雲さんも、同じ見解だと思うわ。

時間停止はとても都合の良い魔法・・・といより・・・魔法はあらゆることが可能。

命令式さえ見つけてしまえばね。

もともとは、霧が東雲さんの体を侵食する・・・それを止めるための魔法だった。

彼女が死ななくなったのは、副作用みたいなものよ。

アイザック・ニュートンが見つけた時間停止の魔法。

その効果はかけた時の状態を維持すること。

それにより、東雲さんはどれだけ体が破壊されたとしても・・・数分後には元通り。

魔力がなくなったとしても、数分後には元通り。」

 

虎千代は少しの間黙って聞いていた。

 

「無敵、か。

確かに都合のいい魔法だ。」

 

「外から見ればね。

本人にとっては生き地獄よ。

でも・・・この魔法の都合のいい所は、もっと別にあるわ。」

 

チトセはそのまま続けた。

 

「霧の侵食を止めるのが目的だったと言ったわね。

つまり、東雲さんが霧に侵食されて魔物になってしまわないようにする・・・この魔法の基本概念は来たるべき未来に到達しないことなの。」

 

「ふむ。

わかってきたぞ。

それが世界全体にかかっているのであれば、術者の目的は・・・第8次侵攻で、人類が全滅するという未来に到達させないことか。」

 

「それ以外に、このタイミングで時間停止の魔法をかける意味がない。

けれど、この理屈はとても危ういの。

いくつものハードルを超える必要がある。」

 

「聞かせてくれ。

それで、誰が魔法をかけたかが絞り込めるかもしれん。」

 

「時間停止の魔法はアイザック以外に使えるものがいない。」

 

「冗談だろう?」

 

虎千代は驚いたが、チトセはそのまま続けた。

 

「それだけ複雑な術式だもの。

時間の流れを止める・・・なんて魔法・・・使いたがる危険な人が絶対いるでしょう?

だからアイザックは、その魔法の理論を残さなかった。」

 

「東雲 アイラはどうだ。

その魔法をかけられた側なんだろう?」

 

「彼女はアイザックとある約束をしたから・・・教えてもらっていないわ。」

 

「誰にも伝承されていない時間停止の魔法が、去年の段階で発動した。

なら術者はニュートンで決まりじゃないか。

ニュートンも時間停止の魔法で生きながらえている。

そう考えるのが自然だ。」

 

「そうね。

もしかしたら・・・東雲さんに知られず、生きているのかもしれない。

彼女はアイザックの死を、確かに見届けたけれど・・・それが偽装だった可能性。

でも、まだ足りないわ。」

 

「言ってみろ。」

 

「消費魔力よ。

これだけはね・・・東雲さん1人の時間を止めるため、東雲さんの魔力をほぼ使い切った。

宇宙全ての時間を止めるためには、どのくらいの魔力が必要だと思う?」

 

虎千代は不思議そうな顔をしていた。

 

「他人の魔力を使う技術があったのか?

あ、いや、いい。

あるが、容易に使えないんだろう。

だが、この学園にはそれを解決できるかもしれない男がいる・・・だろ?」

 

「秘匿されていた良介君の情報をどこから手に入れたと思う?」

 

「東雲とは考えづらいか。

もし東雲なら、もっと確信を持っているはずだ。

ただ、手がないわけじゃない。

相手がアイザック・ニュートンならな。」

 

「そう・・・アイザックが生きていて、どこからか良介君の情報を得て・・・彼の魔力を使って時間停止を発動した。

それが1番現実的・・・現実的なんだけど・・・ね・・・」

 

「アタシはお前に聞きたいことがあるんだが。

お前は・・・アイザック・ニュートンと東雲 アイラのことをよく知っているな。

まるで見てきたかのように。」

 

チトセは少し黙った。

 

「これから私が見せるもの・・・他言無用でお願い。

きっとこれを見れば・・・あなたも理解する。」

 

チトセは真剣な目で虎千代を見た。

 

   ***

 

洞窟内。

良介と焔は魔物のところへと向かっていた。

 

「よくクエストに出てるんだってな。

イヤでも噂を聞く。

なんか理由でもあんのか?

魔物と戦いたい理由。」

 

「俺はお前が戦う理由の方が気になるけどな。」

 

「アタシの理由がなんだっていいだろ。

・・・戦えるくらいの力がいる。

1人でタイコンデロガを倒せるくらいの力だ。

だから精鋭部隊から離れたりしねぇ。

しがみついてでもやってやる。

入学したときはさっぱりだったんだ。

6年かかってここまで強くなった・・・だから卒業まで、まだ伸びる。

卒業までにまだ強くなれる。」

 

すると、2人の目の前に魔物が現れた。

 

「まずはコイツだ。

請けたからにはきっちり燃やしてやる。

あんたは見ときな。

クエストの雑魚くらい、どうってことねぇよ。」

 

「そこまで言うのなら、高みの見物と行こうか。

安心しろ、やばくなったら助けてやるよ。」

 

「そんな必要はねぇ!」

 

焔は魔物に向かって行くと、魔物の攻撃をギリギリで躱し、死角に回り込むと火の魔法を撃った。

 

「くらえ!」

 

魔物は霧散した。

 

「やるな。」

 

良介が焔のところに来たが、焔は振り向きもせずに進んでいった。

 

「ほら、次行くぞ。」

 

「やれやれ、少しくらい愛想よくしたっていいのによ。」

 

良介は焔の後をついて行った。

 

   ***

 

結希の研究室。

心と結希が何か調べていた。

 

「傷の魔物、とはなんでしょうか。

確かに入手したデータには、左目に傷のある魔物がいました。

しかし魔物に傷がつくこと自体は・・・不思議なことではありません。」

 

「そう。

ミスティックは霧の集合体だけれど・・・実体化している状態で傷を負うと、消えるまでにそれなりの時間がかかるわ。

その変わり、それが傷だろうと欠損だろうと、完全に修復されるけれど。」

 

「人間と戦ったことのある魔物は数多い。

傷を負って逃げ出した魔物もいる。

その傷の魔物とは、なにか特別なのですか?」

 

「CMLでは【スカー】と呼ばれていたわ。

この魔物の特徴は、必ず左目に傷があること。」

 

「必ず・・・?

あっ・・・」

 

心は何かに気がついた。

 

「そう。

これらのデータは適当に集められたわけではないわ。

実体化の時点で、最初から、左目に傷がついている・・・と思われる魔物。

それを集めているの。」

 

「魔物が生まれながらに傷を持つこと・・・それもやはり、珍しくない・・・魔物は失敗作・・・この世のものを真似て、失敗した不完全な形をとります。」

 

「不完全ゆえに、彼らは形に縛られないの。

では、なぜわざわざ左目に傷がついているのかしら。

ただの傷じゃない。

世界のいろんな場所で左目に傷がついた魔物・・・それが年間数匹、生まれている。」

 

「なるほど。

魔物がどのようなプロセスで生まれるかわかりませんが・・・傷の位置がランダムだとしたら、ちょうど左目につく確率は・・・相当低いですね。

しかも左目ということは、視力を持つように生まれたのに・・・わざわざ傷を作ることで、それを潰している。

意味不明です。」

 

「霧はもしかしたら記憶を持っているのかもしれない。

霧が払われて粒子となった状態でも、その記憶が保持され・・・次の魔物が形作られるとしたら、魔物が年々強くなる理由もわかる。」

 

「魔物は学習している・・・ですね?」

 

「そう。

同じ位置に傷がある魔物群は、その仮説を証明するかもしれない。

しかも素直に考えればありえない、自分を不利にする特徴をわざわざ選ぶ・・・だからスカーは特別なのよ。

外見にとらわれないはずの魔物に見られる、不思議な共通点。

ただ・・・それが来栖さんとも関係しているなんて皮肉ね。」

 

2人は傷の魔物についてさらに調べることにした。

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