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学園の校門前、明鈴がいた。
「あー、ユーウツなのだ・・・」
「何が憂鬱なんだ?」
そこに誠がやってきた。
「あ、食糧難が深刻になりつつあるとか?」
誠はからかい半分で言った。
「ご飯はたくさんあるのだ。
万姫のことアル。」
「ワンヂェン?」
「バンキアル。」
「バンキ・・・ああ、周 万姫か。
始祖十家の。」
「その万姫アル。」
「そういえば、前も思ったんだが、なんで明鈴が周 万姫のこと知ってるんだ?」
「師姉アル。
えっと・・・同じ老師の弟子だったのだ。」
「そうなのか・・・で、なんで憂鬱なんだ?」
誠は話を戻した。
「万姫が、北海道に攻め込むなって言ってくるアル。」
「北海道って・・・奪還計画のことか。
まぁ、あの辺は関係してくるから敏感にもなるか。」
「だからってボクたちに言われてもどうにもならないのだ。」
「まぁ、確かにな。」
「小蓮も意地になって返信するから、あんまりボクの相手してくれないし・・・」
「その2人、仲悪いのか?」
「ケンカするほど仲がいいアル。」
「そうか・・・で、北海道は周辺諸国との協議が必要だろうからな。
これから議論が本格化するんじゃないか?」
「ボクたちも正直迷ってるアル。
北海道の霧が大陸に移動しちゃったら・・・同朋たちが危険になっちゃうのだ。」
「どうにかして霧を消すことができればいいんだがな・・・うまくいかないもんだな。」
誠はため息をついた。
***
噴水前、さらが龍季を探していた。
「たつきさん、どこに行ったんでしょう?」
ノエルがさらに話しかけてきた。
「訓練じゃない?
がんばってるんでしょ?」
「今日は午前中にしたって言ってましたけど・・・シロー、なにか知りませんか?」
さらはシローに話しかけた。
すると、そこに秋穂が話に混ざってきた。
「ねぇねぇ、この前の話なんだけど・・・シローが大きくなって、さらちゃんを守ってくれたって本当なの?」
「そうですよぉ!
とってもかっこよかったんですぅ。
良介さんが魔物に吹き飛ばされてしまって・・・もうだめっ!
って思ったら、急にシローが光って・・・こんなにおっきくなって、魔物をたおしてくれたんですぅ!」
さらは嬉しそうに話した。
「それで、またちっちゃく・・・へぇ~・・・」
「あとでししどさんに聞いたんですけど、わんちゃんも魔力があるんです!
もしかしたら、魔法を使った最初の人間以外のほにゅうるいかもって。」
「へぇ~!
シローも魔法使いに覚醒したのかもしれないんだ!
それってすごいじゃん!
シローもいっしょに授業受けなきゃね!」
「はいぃ!
シロー、とっても凄いんですよぉ!」
その頃、風紀委員室。
風子のところに龍季がやってきた。
「こんにちは、朝比奈さん。」
「説教ならさっさとしろ。
やることがあんだよ。」
「フフ・・・アンタさん、最近は品行方正になってきているよーで。
ケンカやってないとか・・・まぁ、サボりはまだありますが・・・放電も少しずつ減ってきているよーですね。
問題ありませんよ。」
「じゃあなんのために呼び出したんだよ。
俺はテメーとダベる気はねーからな。」
「仲月 さらのことに関して、でもですか?」
「どういうことだよ。」
龍季は不思議そうな顔をした。
「少し前に、彼女の飼い犬、シローに不審な点があったのをご存知ですか?」
「ああ・・・前の選抜戦の後だろ。
良介とクエストに出たときの。」
「やはりきーてましたか。
あのシローが、なんと成長したと。」
「さらには悪ぃけど、んなわけねぇさ。
事実、シローは今もちいせぇ。」
「ところがですね。
デバイスに記録されている戦闘情報では違うんですよ。
それで、アンタさんなら気づいてると思いまして。
デバイスはクエストの際、常時周りの情報を収集しています。
とくに戦闘中。
誰がどのような動きをしたのかよくわかる。
確かにシローの体積が変わり、魔物もシローが倒したことになっています。」
「デバイスが壊れてたんだろ。」
龍季は適当に答えた。
「パーティ全員のものが同時に壊れていたといーますか?
真面目に聞いてください。
アンタさんも薄々気づいているでしょう。
ウチは6年、アンタさんは5年、学園にいますが・・・仲月さんはすでに10年。
その間、シローは一切成長していません。
すでに老犬。
彼女が生まれる前からいたとすると、12年以上です。
彼女がなぜペットを許可されているかわかりますか?」
「幼いころに家族と引き離されたさらに必要だったからだ。」
「そう。
ですが、それだけとは限りませんよね。」
「なにが言いてぇんだ!
さっさと言えっつの!」
「結構。
では、これは宍戸 結希から聞いた、限りなく信憑性の高い情報です。
仲月 さらの飼い犬、シローの正体は・・・霧の魔物です。」
「ちげぇよ。
アイツはただの犬だ。
霧の魔物は人間を襲う。
アイツはさらを襲ったことなんか1度もねぇ。
俺より安全なんだぜ。
それくらい、テメーもわかってるだろ。」
「モンスター。」
風子の言葉を聞いて、龍季の表情が変わった。
「どうやら心当たりがおありのようで。
そりゃそーです。
犬好きのアンタさんなら、シローが不審なことに気付いてたはずです。
調べようともしたでしょう。
そしてたどり着いたのがモンスター。
ネット上でゲートなどと同じように、まことしやかに流れていた噂・・・人類に敵対しない魔物。
それがシローです。」
「黙れっ!
それ以上シローをバカにするとぶん殴るぞ!」
「バカにしてなんかいやしません。
ウチは警戒してるんですよ、朝比奈 龍季。
宍戸 結希から、モンスターは実在していることを聞きました。
しかしですね。
シローが今、無害だからと言って・・・いつ凶暴になるか、わからねーんですよ。」
「んなことがあると思ってんのかよ。」
「思ってますよ。
風紀委員は常に最悪の事態を想定するんです。
そして想定していた最悪の事態より深刻な事態・・・ってのが起こり得るんですよ。
朝比奈 龍季。
アンタさんを呼んだのは協力してもらうためです。
学園の安全を最優先にするなら、シローは討伐・・・そうでなくとも、魔導兵器開発局の管理下に置く必要があります。
ですが、宍戸 結希が止めている。
なら自分らで管理するしかないでしょう。
アンタさんが保証してください。
シローが魔物の本能を発露した場合・・・速やかに討伐すると。」
龍季は黙っていた。
***
良介とシャルロットは次の魔物のところへと向かっていた。
「わたくしの聖歌も戦い方も、果ては信条も全て宗教に依るものです。
特に魔法使いはその観念が薄いので、奇異に映るかもしれませんね。
かつて魔法が初めて現れた時、それは神の奇蹟でした。」
「だが、研究が進むにつれ、奇蹟は科学に内包されていき、信仰心もなくなっていった。
まぁ、日本が特に顕著だな。」
「ですが私は・・・果て無き戦いに耐えるための拠り所として、宗教は必要だと考えています。
布教に勤めているのもそのためですね。
神のもとへ。
これがあるだけで、わたくしたち使徒は戦えます。
命を捧げることができます。
もし心がおれそうになったときは・・・いつでもお待ちしていますよ。」
2人が話していると次の魔物が現れた。
「次は私が相手をしましょう。
良介さん、魔力をお願いします。」
「ああ、わかった。」
良介はシャルロットに魔力を渡した。
「魔物よ・・・消えなさい!」
シャルロットは光の魔法をかけた拳銃で魔物を撃つと、魔物は消滅した。
「次で最後だな。」
「はい、最後まで気を抜かずにいきましょう。」
2人は次の魔物の所へと向かった。
***
学園長室、犬川 寧々(いぬかわ ねね)が暇そうに座っていた。
「みんな、なんの会議やってるんだろ・・・ネネ、のけものヤダなー。」
すると、ドアからノックする音が聞こえてきた。
「はーい。
どなたー?」
ドアが開くと誠が部屋に入ってきた。
「よう、俺に何の用だ?」
寧々はポカンとしていた。
「どなた?」
「誠だよ、新海 誠!
デバイスで呼んできただろうが!」
「まこと・・・あー、呼んだよ!
ネネが呼んだの!
ごめんね。
忘れちゃってた。」
「な、なんて奴だ・・・まぁ、いいか。
それで、俺を呼んだ理由は?」
「あのね、ネネが呼んだ理由はね!
転校生がくるからなの!」
「転校生?
まぁ、別に珍しくもないけど・・・なんで俺なんだ?」
「えっとねー。
知ってる人だから。
ホントはあさひなちゃんも呼んだんだけど、お返事ないの。
だから後で言っておいてね。」
寧々の話を聞いて誠は頭を掻いた。
「俺と龍季の共通の知り合い?
いたか?」
「えー。
いるよぉ!
だってそう書いてあったもん!
ほら、これ!
夏に汐浜ファンタジーランドで・・・」
寧々は数枚ほどの報告書を取り出した。
「汐ファン?」
「そだよ。
そこでね、魔物に襲われた子がいたでしょ?」
誠は少し黙って思い出そうとした。
「もしかして・・・俺が庇って助けた子か?
けど、あの子は一般人だったはずだぞ。」
「じゅうしょうでぜんち2ヶ月だったんだけどね。
途中で魔法使いに覚醒して、入院が延びちゃったんだって。
それで、来月から学園に転校してくるの。」
「ま、マジかよ・・・」
誠は驚いていた。
***
精鋭部隊控室、エレンとメアリーがいた。
2人は報告書に目を通していた。
「これはどういうことだ。
傷の魔物・・・スカーフェイスが出たのはいい。
なぜ来栖と良介が指名されている。」
「アタイが聞きてーよ。
執行部の連中、なんのつもりだ。
2人だけで勝てるってマジで思ってんのか。」
「そもそも、なぜ来栖には指名のクエストが多いんだ?
魔物に恨みがある人間なんか、特別でもないだろうに。」
「良介と相性がいいんだ。
それは聞いてるだろ?」
「魔力の受け渡しが他よりスムーズなことが、そこまで特別とは思えん。」
「理由は知らねーが、執行部は妙に来栖にご執心だ。
なんかあるのは間違いねぇ。
登録票が閲覧不可だしな。」
「登録票?
魔法使いに覚醒した時に提出される、アレか?」
「そのアレだ。
つーかこの学園、閲覧不可の生徒多いな。
良介もそうだしよ。」
「登録票が閲覧不可・・・それが本当なら・・・」
すると、近くのドアが開くと焔が入ってきた。
「盛山研究所。」
「あぁ?」
「来栖・・・」
「登録票に書いてあった、アタシの出生地だよ。
たぶん閲覧不可の理由だ。」
「盛山研究所・・・聞いたことがないな。」
「アタイも知らねーな。
お前、科学者の娘だったのか?」
「んなわけねーだろ。
どの県かも書かれてねぇんだぞ」
「調べて見たのか?」
「いや。
別に復讐には関係ねぇだろ。
終わったら調べるつもりだったよ。」
「おい、テメー、クエスト発令見たのかよ。」
「ああ。
アタシと良介が指名されてるヤツだろ
さっき請けた。」
「1人でやるつもりかよ。」
「悪いか。」
「チッ!
救えねぇヤツだ!
おい!
アタイはもう知らねーぞ!
愛想が尽きたぜ!
これももう必要ねぇな!
エレン、シュレッダーかけとけ!」
「自分でやれ。」
メアリーは数枚のプリントを持って出ていった。
エレンは焔の方を向いた。
「来栖。
1人でやれるか。」
「やる。」
「私が聞いているのは可能かどうかだ。
イエス、ノーで答えろ。」
「やるじゃダメなのかよ。」
「傷の魔物について、メアリーから聞いているはずだ。
にも関わらずイエスと答えないのは・・・いや、いい。
もうお前は精鋭部隊ではない。」
「なんだって?」
「お前は軍人ではなかった。
それだけのこと。だ
干渉して悪かったな。
最後に仕事を頼む。
その書類をシュレッダーにかけておけ。
幸運を祈る。
できれば生きて帰れ。」
エレンは部屋から出ていった。
焔は書類に目を通した。
「傷の魔物との・・・戦い方シミュレーション・・・なんだこれ・・・アタシが、1人で戦う場合の、何通りも・・・なんでだよ。
なんで生きて帰れとか言うんだよ!
関係ねぇだろ!
なんで・・・アタシに・・・そんなに・・・ワケわかんねぇんだよ!」
焔は書類を破り捨てた。
***
良介とシャルロットは川沿いを歩いていた。
「日が陰ってきましたね。
夜は魔物の時間といいます。
黒い霧は闇に親しい。
急いで終わらせましょう。
まだ本体が残っています。
しかし心配はいりませんよ。
神の御力はあらゆる闇を照らしだします。
わたくしが神と共にある限り・・・そのわたくしがあなた様と共にある限り・・・勝利は約束されています。
魔力もあなたのおかげで有り余っていますから。
魔物を燃やし尽くすには十分すぎる程に。
フフフ。」
「そ、そうか・・・」
シャルロットの笑みを見て、良介は少し引いた。
「これが終わったら、あなた様をご招待しましょう。
信徒でなくとも、共に戦ったかたを慰撫するのは使徒の役目。
教会が不安ならば、歓談部の部室でも結構ですよ。」
「そうだな・・・魔物を倒した後に返事をするよ。」
すると、目の前に魔物が現れた。
「これなら、どうだ!」
良介は光の拘束魔法で魔物を拘束した。
「魔物よ、滅しなさい!」
シャルロットは銃で魔物を撃ち抜いた
***
2人は魔物が霧散したのを確認した。
「さあ、戻りましょうか。
執行部と教司会へ報告しましょう。」
「教司会にも報告するんだな。」
「ああ、先ほど申し上げた通り、わたくしは教司会の使徒。
正確には学園生ではないのです。
ですから、学園の戦闘行為は・・・教司会への報告義務があるのですよ。
先に執行部の検閲が入るので、やましいことはございません。
わたくしがどの程度、学園に貢献したかを監査するだけです。」
「なんか、裏で色々ありそうだな。」
「もちろん、裏では政治的な取引があるのでしょう。
いかにもの知らずのわたくしにも、それはわかります。
ですがわたくしとは関係はありません。
神に仕える使徒として・・・魔物と戦い、学園のみなさんと協力する。
それがわたくしの全てです・・・信じていただけるなら、またお願いします。
共に神の敵を打ち倒しましょう。」
「・・・ああ、そうだな。」
良介は少し頭を掻いていた。
***
学園に戻ってきた2人は歓談部の部室に来ていた。
「というわけで、お疲れ様でした。
あなた様に、神のご加護のあらんことを・・・」
2人は椅子に座り、一息ついた。
「良介様。
魔法使いには無宗教の方が多いのはご存じですね?
「ああ、神の奇跡だとされてた魔法が、科学の発展で解明されて、科学的な事象だと認識されてるからだな。」
「全容は解明されていませんが、そう遠いことではないでしょう。
それでもわたくしたちヴィアンネの使徒は、これを神からの贈り物と・・・魔物という悪魔を滅ぼすための奇蹟だと認識しています。
とても大事なことなのですよ。」
「まあ、科学的に見れば魔法使いは、突然変異体だからな。
普通の人間じゃない。
その事実に耐えられない奴もいるみたいだしな。」
「そういう人たちに心の安寧を与えるために、宗教は役にたちます。
特に思春期の少年少女には、必要といってよいでしょう。
わたくしの宗教でなくともよいのです。
心から信じられる・・・友人などでも構いません。
信じるということが大切なのです。
人々を守るという拠り所。
神からの贈り物だという拠り所。
できるなら、その拠り所を理解してあげてください。」
「そうだな・・・でも過度な信頼は選民意識を招くことになるな。
ライ魔法師団のような奴らみたいにな。
モンマスの悲劇・・・だったかな。」
すると、シャルロットの表情が変わった。
「わたくしがここに派遣された理由は、たった1人の少女のためです。」
「・・・誰のためだ?」
「来栖 焔・・・そのことが知られないよう、ずっと避けてきましたが。
理由をお話することはできません。
教司会から固く止められています。
ただし、これだけはお伝えしたいのです。
彼女の境遇は、家族を殺されたというような・・・それだけでは、到底語り尽くせないことなのだと。」
「語り尽くせない?」
「盛山研究所。
この名前はおそらく、宍戸博士も知らないはず。
誰にも言わないでください。
良介様だからお伝えしました。
彼女にどうか、人らしい生を。」
「人らしい・・・生・・・」
良介はただ事ではないことだとすぐに悟った。
歓談部の部室を出た良介はなんとなくで訓練所にやってきた。
「やっぱりいたか・・・」
そこに焔がいた。
「アンタ・・・戻ってきてたのか。」
「ああ・・・」
2人の間に少し沈黙が続いた。
「これまでのこと、悪かった。」
「何言ってるんだ・・・それより、請けたのか?」
「ああ、クエスト、請けた。
精鋭部隊はやめた。
てかやめさせられた。
アンタも一応請けてくれ。
クエストは最低2人だからな。
アンタが請けてくれないと、仇討ちができねぇ。」
「・・・わかった。」
「デバイスで請けてくれれば、後は出発点にいてくれればいい。
そしたら、アタシが勝手に戦いに行く。
それだけだ。
悪いな。最後の最後まで自分勝手で。
1人で、やらせてくれ。」
「・・・俺も魔物に家族を殺された身だ。
お前の気持ちは痛いほどに分かる。
好きにするといいさ。」
そう言うと、良介は焔に背を向けた。
「・・・ただし、俺が絶対にお前を死なせないけどな。」
良介は呟くように言った。
「・・・?
何か言ったか?」
「いや、何も。」
良介は訓練所の出入り口の方へ歩いていった。
人物紹介
犬川 寧々(いぬかわ ねね)10歳
逝去した前学園長の、米寿の祝いに生まれた娘。
可愛がられて育ったのでワガママ。
遺言により後を継ぐが、同時に魔法使いへ覚醒したため学園生も兼ねることになった。
まだ幼いが、学園長としての能力ははたして・・・?