童謡がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:kuri

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ここのナーサリーライムちゃんは表情少なめでお送りしております。私の趣味です。反省はしません。


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ダンジョンで初めてその子を見つけた時の事を、僕はついさっきのように思い出せる。

 

白い髪の毛を二つにまとめて左右に揺らして、そのあどけない顔色を陶磁器のような無表情で固めて、真っ黒いドレスをふわふわさせながら、何かを探すように歩いていた。

 

胸に抱いた本はとても分厚くて、彼女の幼い容姿にはとても似合わない、と初見で思わせた。けど、よく見ると絵本のような絵柄が表紙を飾っていて、大事そうに腕に抱いている姿が途端に可愛らしく見えたのは内緒だ。

 

「あ、あの!」

 

話しかける時、自分から女の子に話しかける経験の無さが裏目に出たのかちょっと声色が変になった…ああ、僕の馬鹿野郎。

 

だけど、振り返った彼女は全く顔色を変えずに僕を見上げて、小首を傾げた。その姿が可愛くて、僕はおもわず顔を赤くしてしまう。

 

これが、僕と、彼女ーーーアリスとの初めての出会いだった。

 

「…人、いたのね」

「へ?」

「ねえ、ここがどこなのか分かる?少し道に迷っちゃって」

「ええ!?」

 

僕が、ダンジョンで初めて出会った女の子は、少し不思議な女の子だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「べーるーくぅぅぅん?これは!一体!どういう事なのかなあ!?」

 

街の郊外のボロ教会に、そんな怒声が響き渡った。

 

僕の目の前で顔を真っ赤にしてーーー若干目の端に涙を堪えてーーー彼女の事を指差す神様の迫力に思わず背筋を伸ばしてしまう。

 

「か、神様。落ち着いて…」

「これが落ち着いていられるものか!ベル君が、僕のベル君が女の子をお持ち帰りしてきたんだぞ!?怒らいでか!」

 

ビシィッと指先を向ける先には、小さな神様よりも小さな彼女ーーーアリスの、人形のように無気力な無表情を浮かべた姿があった。

 

「さあ、説明してもらおうか、ベル君!」

「は、はいぃ…」

 

それから数分後。ある程度説明をしたら、神様も大分落ち着きを取り戻してくれたみたいだ。

 

「成る程ねぇ…それにしてもダンジョンで迷子だって?それに記憶も無いだなんて…」

「アリスさん、武器も何も持たずにダンジョンの中を歩いてたんです。そもそもそこがダンジョンだっていう事すら分かってなかったっていうか…」

「ふーん…ま、何はともあれ何か色々と深い事情がありそうだね…でもダンジョンにいたって事は、少なくともどこかのファミリアに所属していたんじゃないのかい?」

「あ、アリスさんはどこにも所属してないみたいですよ。それは確かでーーー」

「は?」

 

神様が目を見開いて僕の肩をつかんだ。えっ、何事?

 

「ベル君、どうしてそんな事知ってるんだい?もしかして見たのかい?女の子の素肌を見たのかい!?」

「へっ…いやいやいやいや!エイナさんに、ギルドのアドバイザーの人に見てもらったんです!」

 

僕は首をぶんぶんと振って否定する。

 

僕ら冒険者は、確かに背中に『ステイタス』と呼ばれるものを持っている。背中を見ればどのファミリアで、どの程度の強さくらいはわかる人には判るだろう。

 

でも、女の子の肌をーーーいや、それ以前に他のファミリアかもしれない子の背中を見るわけないじゃないですか!

 

エイナさんが確認したのは、彼女があまりにも怪しく見えたかららしい。ダンジョンで記憶喪失、だけならモンスターの攻撃を受けてーだったりで納得もつくものだが、武器防具を装備していない状況で、さらに戦いのたの字も知らなそうな華奢な身体に細い指先。エイナさんが敏感すぎるんじゃなく、僕が無警戒すぎるんだーーとはエイナさんから頂いた小言である。

 

そういう訳でアリスさんの同意のもと、背中を見せてもらった訳だけど…

 

「結果は言わずもがな…って訳かい」

「は、はい」

「ふーん…アリス君、だっけ?ちょっといいかな」

「…なんですか?」

 

ここに来て初めてアリスさんの声が部屋に溶け出した。小さな鈴がちりんとなったような、そんな可愛らしい声だ。

 

「初めまして、僕はヘスティア。ヘスティアファミリアの主神をやっている」

「私はアリスって言います。ヘスティア、様」

「うん、じゃあアリス君?いくつか質問いいかな?」

「はい」

「じゃあ、君はうちのファミリアに入りたいんだってベル君から聞いたけど、異存はあるかい?」

「…」

 

アリスさんは首を横に振った

 

「うんうん…じゃあ、どうしてダンジョンの中にいたのか、本当に覚えていないんだね?」

「覚えて…ません」

「…そっか」

 

神様に、人間は嘘はつけない。神様達が唯一使える神力だ。僕は少しだけドキドキしながら難しい顔をする神様の様子を伺っていた。

 

「それじゃあ最後に一つ。本当にうちで良いんだね?」

「…はい」

 

神様は難しい顔をすぐに引っ込めて、笑顔を咲かせた。

 

「うん、僕は君を歓迎しよう!アリス君!」

「か、神様!じゃあ…」

「ああ、アリス君は今日から僕の大事な子供だよ…にしてもベル君、随分と嬉しそうじゃないか…?」

「だって新しい仲間ですよ神様!」

 

僕はアリスさんの方を見て、「よろしくお願いしますね、アリスさん!」ってその手を取った。

 

「アリスでいいわよ、ベル。よろしくね」

「う、うん!アリス!」

 

こうしてアリスは仲間になった。

 

神様が物凄い顔でアリスさんの手を奪い取って、「僕も混ぜておくれよ…!」って言いながら僕の事を涙目で睨んできたけど、どうしちゃったのかな、神様…。

 

 

 

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