共生体持ち八幡のエルドライブ生活   作:ぺるクマ!

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SEASON① エルドライブでの日常
同志


 

 

ー八幡の家ー

 

「えっ!ハチくん部活に入るの!」

 

「はい。早速明日から」

 

エルドライブから帰って時間も時間だったので夕食を作り、ミミおばさんと食事を取っている時にエルドライブに入ったことを伝えた。一応エルドライブのことは単なる部活と誤魔化したが。

 

「まさか……まさかあのハチくんが部活に入るなんて……おばさん嬉しいわ!」

 

ミミおばさんは俺が部活に入ると聞いてこの調子である。まぁこれまでずっとぼっちで友達も居なかったから、そのことを心配してたおばさんにとっては余程嬉しいことなのだろう。さっきからニコニコしながら、俺が作ったコロッケ食べまくってる。これじゃあ俺の分がなくなるかもしれん。

 

『ミミ、喜んでるな。良かったな八幡。』

 

「うっせーぞ、ドルー。」

 

ちなみに俺の中に住み着いていたこいつに【ドルー】と名前をつけた。こいつがなんちゃらドゥルーブリットとか自分で言ってたし新しく名前を考えるのも面倒だから『ドゥルー』から取って【ドルー】にした。何か安直かと思ったら、こいつはすごく喜んでたな……俺の体から飛び出した程……

 

「ん?どうしたの?また独り言?」

 

「い、いや。」

 

「それにしても気になるわね。何で今まで帰宅部1本だったハチくんが急に部活に入ろうと思ったなんて。」

 

「いやー……色々あってね。」

 

そう、色々………

 

 

 

〜回想〜

 

 

 

 

ーエルドライブ太陽系方面署ー

 

「よう八幡、お疲れさん。これでお前もエルドライブの一員だ。」

 

現場から帰って来たら、レイン署長がそう言ってきた。そう、試験受かったんだな……どうしよう。

何度も言うが、俺は警察をやるつもりはない。あの試験で幼い頃から聞こえてた声の正体が地球外生命体で宇宙人と渡り合える能力を持っていたと分かっても、社畜になりたくない。俺はこの貴重な高校生活をミミおばさんを手伝いながらダラダラと過ごしたいんだ。

どう断ろうかと考えていると、

 

「あ〜言っておくが、辞めたいなら辞めても良いぞ。」

 

は?何だと?辞めても良いだと?

 

「マジですか?」

 

「あぁマジだ。」

 

何か署長の顔がニヤけているのは気のせいだろうか?

すると、

 

「署長、持ってきましたよ。」

 

さっきまで居なかった其方が何やら大量の書類を持ってやってきた。

 

「おー、ご苦労さん美鈴。ほう、これがそうか。」

 

署長はニヤけた顔を保ちながら、其方から書類を一枚取って目を通した。そして、其方はその書類を近くに居た他の署員にも配り始めた。何だ?

 

「何々、【青春とは嘘であり悪である】」

 

は?それって

 

「【青春を謳歌する者の中には本物を

 

「オイィィィィィィ!」

 

丸眼鏡のツッコミ少年のような奇声を上げ咄嗟に署長から書類をひったくり破り捨てた。

 

「おいおい、何するんだよ八幡。」

 

「署長、それ俺が書いた作文じゃねーか!」

 

「そうだ。さっき美鈴に頼んでお前の学校から取ってきてもらった。」

 

なんだと……

 

「いや〜、まさかこんなことを書いていたとな。そりゃ先生も心配になるわなぁ。」

 

「余計なお世話です。」

 

「あ〜それと、今美鈴が持ってる書類は全部さっきの作文をコピーしたものだ。全部で100部はあるぞ。」

 

は?……

 

「……おい其方、その書類を寄越せ。今すぐライターで燃やしてやる。」

 

「無駄ですよ。文章はすでにデータ化して保存しましたから。」

 

其方が澄ました顔でそう言ったが、微妙に口角が上がってるのを俺は見逃さなかった。

 

「………」

 

「さて八幡よ、お前がどうしてもエルドライブを辞めたいなら辞めても良い。但し、代償としてこの作文をエルドライブの署員全員にばら撒くぞ。」

 

「………」

 

「まぁお前がエルドライブに入るなら、そんなことはしないがな。」

 

すでに何人かに渡っているだろ。さっきから感じる哀れむものをみるような視線が痛い……

 

「……でも俺は部活に強制入部

 

「その点は大丈夫だ。さっきお前の担任の記憶は消したからな。」

 

「は?」

 

「エルドライブでは、他惑星の者が他の惑星に影響を与えてはいけないっていう概念から被害者のその日の記憶を消すんだよ。今回巻き込まれたのってお前の担任だったんだろ?今日お前に助けられたことや部活に強制入部させたことは忘れてるから安心しろ。」

 

「いや、流石に俺の作文が無くなってたら不審に思うんじゃ。」

 

「代わりの作文をすり替えておいたから問題ない。こんな暗い文章じゃなくマトモなやつにしたから呼び出されることはないな。」

 

「………」

 

「まぁ、流石に俺も鬼じゃない。お前がエルドライブに入ってくれるなら、それなりの特典をやる。」

 

「……特典?」

 

「ああ。当然働くんだから給料は出る。だが、八幡にはプラスαでこれをやろう。」

 

そう言うとレイン署長は懐から何かを出した。あれは………

 

「MAXコーヒー!!」

 

何ということでしょう。俺の大好きなMAXコーヒーじゃないですか。

 

「お前これ好きなんだろ?実は俺もだ。」

 

「マジですか!」

 

まさか、こんな所に同志がいたなんて思わなかった。

 

「ああ、初めて飲んだ時の感動が忘れられなくてな。みんなにも広めようと思ったんだが……拒絶された。」

 

「実は俺もなんですよ。何で世間はこれを拒絶するんでしょう?」

 

「みんなこの甘さの良い所が分からないだけだろ?」

 

「ですよね〜。残念ですね、この甘さが分からないなんて。」

 

「だよな。」

 

「「ハハハハハハ!!」」

 

この時、周りは俺と署長を可哀想なものを見る目で見ていた。納得いかん。この後、俺はこの条件ならエルドライブに入りますと言ってしまったのであった。

 

 

 

 

〜回想終了〜

 

 

今思えば乗せられたよな、署長に。

 

『八幡は甘いものに弱いよな。』

 

確かにそうかもしれない。だが、MAXコーヒーの件はともかく、あの作文をばら撒かれるのは嫌だったからなぁ。

 

ちなみに、俺は捜査2課という部署に配属された。メンバーはチップスと其方。其方は明らかに嫌そうな顔をしてたが……つか、人数少なくね。チップスに聞くと他の課も人数不足で、むしろ俺が2課に入って良かったと言っていた。大変なんだな、エルドライブ。

 

あの後、俺は身体検査でイサク教授という紫色のぽっちゃりした宇宙人の部屋に連れていかれたり、其方に必要最低限の場所を案内してもらった。イサク教授からはドルーのことつまり《モニタリアン》のことは聞いた。未だに信じられんな。其方は、俺に終始目を合わせなかったが色々教えてくれた。

そして、案内が終わって署長の所に行くと警察バッジを渡された。制服は時間がかかるから待ってくれと言われたがどうでもいい。帰ろうとしたら

 

「そうそう八幡、お前は明日から早速仕事をやってもらうから放課後学校の屋上に来いよ。」

 

と署長に言われた。

やだなぁ。でも、行かなきゃMAXコーヒー貰えないから行くけどさ。

てか、何でうちの高校の屋上?

 

 

 

ー翌日 総武高校 2年F組ー

 

何とかHRまで終わったなぁ。俺は今荷物をまとめて屋上へ向かっている最中だ。

 

『平塚先生はいつも通りだったな。』

 

「ああ、やっぱり昨日の記憶は抹消されるようだったな。」

 

今日何回か顔を合わせたが軽く挨拶する程度で終わった。本当に署長の言った通りだった。エルドライブ恐るべし。

 

『それより八幡、今日は初任務だ!楽しみだな!』

 

「そう思ってんのはお前だけだ。俺にとっちゃ面倒いことこの上ない。」

 

そんな会話(独り言)している間に屋上に着いていた。扉を開けるとそこには……

 

「遅かったですね。」

 

「八幡!遅刻ッチュよ!」

 

総武高校の制服を着ている其方とチップスがいた。

 

「おい其方、お前その格好」

 

「御察しの通り、私は遺憾ながら貴方の観察をしていたのでこの学校に転校していました。ちなみに一年C組に所属しています。」

 

遺憾って……まぁね

 

「お前って気が強いから案外俺と同じ」

 

「ぼっちではありません。少なくとも貴方より友達はいますよ。」

 

「………」

 

『ぼっち仲間が出来なくてざんねんだったな八幡』

 

「うお!いきなり出てくんなドルー!」

 

落ち込んでるとドルーがいきなり腹の方から出てきた。びっくりするからいきなり出てくるのはやめてほしい。

 

〈おう、全員揃ったな〉

 

ん?レイン署長の声?

 

「警察バッジからですよ。バッジは署への連絡機能があるってことを知らなかったんですか?」

 

其方は呆れた顔で言う。

 

「うっせ。ド忘れしてだけだ。」

 

本当は知らなかったのにそう嘘をつきつつ警察バッジを取り出す。

 

「で、署長。何で今日俺たちをここに集めたんだ?任務の説明なら署でも。」

 

〈そういう訳にはいかない。今お前たちがいる所こそが今回の現場だからな。〉

 

……今なんて言った?学校が現場だと?

 

「どういうことですか?」

 

〈まず任務の内容を説明する。今回の任務はその学校に潜伏しているであろう犯罪グループを捕まえることだ。〉

 

また、面倒いことになりそうだ。

 

 

続く




次回から始まる事件では、奉仕部メンバーも絡みます。

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