どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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前回の捕捉

孫堅「謝罪と言う名目で、蓮華を嫁に出して、こいつをウチに取り込もうぜ!」

こんな感じです。



予期せぬ襲来

-蒼夜 十一歳-

 

さーて今日始まりますのは、姉さんによる勉強会です。

 

参加者は、俺と姉さんのお店の店員さん達。

……そして、

 

「よろしく頼みます。威方殿。」

 

「お願い致します。威方様。」

 

……冥琳と孫権さんです。

 

どうしてこうなった?

 

_____

 

 

-数日前-

 

「あのさぁ、冥琳。 前から聞きたかった事だけど、お前らってそんなに地元離れて良いのかよ?」

 

お前ら孫家で仕事無いの?

そんなに暇人なの?

 

「問題無い。 今私に振り分けられている仕事は一月の間に三日もあれば終わる様なものばかりだ。 それに雪蓮は未だ仕事らしい仕事をしていない。 故に時間は余っている。」

 

ほーん。

まぁこれでもコイツらまだ十四歳だから、そんなもんか。

最近やたら尻や胸がおっき、……ケホンケホン!

いや、何でもない。

 

「来年になれば私達も立派な成人だ。 もう好き勝手動けなくなる。……ここにもそう簡単には来れなくなるだろう。 そうなる前に文台様が好きにしておけとな。」

 

「……成る程、そりゃ迷惑な話だ。」

 

「ふっ、お前のその憎まれ口を聞くのも、後何回になるかわからんな。 残り時間はあまり長くないだろう。」

 

………。

 

「……何かやっておきたい事はあるか? 普段は俺か雪蓮の我が儘に付き合うだけだろ? たまには冥琳の我が儘にも付き合うぜ?」

 

ま、たまにはね。

 

ただ、これだけは言っておきたいが、九割方雪蓮の我が儘なんだよなぁ。

 

「ふふっ。 ありがとう。 お前のそういう人を気遣う優しい部分は好きだぞ蒼夜。」

 

「お、おぅ。」

 

お、落ち着けぇー!!!

なんて事は無い! ただ誉められただけだ!

 

……心臓バクバク言ってるんだけど!?

 

落ち着け俺、相手は冥琳だ。

あのくそったれフリーダム、雪蓮の親友の冥琳だぞ!

……あ、何か落ち着いて来た。 ありがとう雪蓮さん。 お前に怒りが湧いて来たわ。

 

「それで? 何かしたい事は無いのかよ?」

 

「む? そうだな、……そう問われると存外やりたい事が思いつかない物だ。……ふむ、私は思ってたよりもつまらない人間かもしれないな。」

 

……もう良い、もう……休め、冥琳。

 

あぁ、今まで雪蓮に振り回されて来たから自分のしたい事が見つからないなんて、……なんて可哀想な冥琳。

 

「そ、そうか、……グスッ。 何も今じゃなくても良いんだ。 やりたい事が思いついたら言ってくれ。」

 

俺が全力で叶えてやる。

 

「あ、あぁ。 それは有り難いが、……何故泣いているんだ?」

 

何故だろうね?

俺にもわからないけど、……何故か心が痛いんだ。

 

_____

 

 

そんなやり取りがあった後に冥琳が俺に頼んで来た事は、姉さんの勉強会に参加したいと言う事だった。

 

正直に言えば、そんなもんお前に必要ねーだろ、とツッコミたかったが、それが望みと言うなら好きなだけ参加したら良いと言ってやった。

無論姉さんの許可はとってある。

 

その結果が、

 

「元倹殿も、よろしくお願い致します。」

 

これだ。

 

なんで孫権?

もうこの前来たじゃん。

あの時も大変だったのよ?

すんごい質問責めにされたばかりじゃん。

まだ聞きたい事あんの?

 

「すまんな蒼夜。 威方殿の勉強会に参加をすると話をしたら、蓮華様も来たいと言い出してな。 私個人としては、どちらかと言うと雪蓮に参加して欲しかったのだが…。」

 

……冥琳って意外とロマンチストだよな。

雪蓮が参加する訳が無いだろ。

もし奴が参加したら天地がひっくり返るわ。

 

「……まぁ、冥琳の頼みだから断らんが、 仲謀様には、個人の教師とかいないのか?」

 

普通この手の権力者の娘には家庭教師が付くもんでしょ?

 

「居るには居るのだが、……なんと言うか、……文台様のご意志でな、学ぶも遊ぶも、教師を選ぶも個人の自由にさせろとな。」

 

「……あぁ、……なんっつうか、うん。 凄く雪蓮との血の繋がりを感じるな。」

 

あの親があるから雪蓮は産まれたのか。

フリーダムの上にはストフリが居たみたいな話だな。

 

「申し訳無い、元倹殿。 やはり迷惑だっただろうか?」

 

「あぁ、いえ、お気になさらず。 仲謀様の家柄的にこういう所まで来るのが珍しく思っただけですので。」

 

権力者の娘は、教師を呼び出す事は有っても、あまり塾とかには来たりはしないからね。

 

でも何で孫権はこんな堅物になったんだろ?

……やっぱ雪蓮のせいかな?

まぁ、あんな姉が居たら妹はしっかりするわな。

あー、俺の姉が姉さんで良かった。

 

「家柄だなんて、……そもそも孫家は母が一代で築いた家なので、家格はあまり高くありません。 格で言うのなら冥琳の所の周本家や、先日ご迷惑をお掛けした、穏、……陸遜の陸家の方が余程高いと思います。」

 

でも孫家はその周家や陸家を取り込んでるでしょ?

 

「おーい。 雑談はそろそろ終わって、授業を始めようか。 じゃあ折角来て貰ったんだし、仲謀さんに今日学びたい事を決めて貰おうかな?」

 

「え? あの、授業の内容は決められていないのですか?」

 

あ、そっか。

今日学びたいテーマを決めて、討論して行く水鏡スタイルの授業は初めてなのか。

 

「うん。 僕の勉強会では、何を学びたいかその都度決めて、皆で意見を出しあって学習する方針なんだ。 水鏡先生って知ってるかな? その人から教えて貰ったやり方なんだけどね?」

 

「ほぅ。 成る程、かの有名な司馬 徳操のやり方でしたか。 しかしそれは、教える側に相当な知識量が無いと成り立ちませんね。 流石は威方殿。」

 

俺命名、“歩く図書館”が俺の中の姉さんの異名だからな。

 

「あはは。 そんな大層な物でもないけどね? それで何か学びたい事でもあるかい? 分野でも構わないよ?」

 

「では、是非とも名君論に関して、元倹殿の師匠である威方様の意見が聞きたいです。」

 

……ねぇ、冥琳。

俺はその話を掘り返さないでって言ったよね?

それちゃんと孫家に伝えた?

 

 

_____

 

 

「と言う事で、僕個人としては面白いと思うし、君主としても有りな姿と言っても良いと思う。 けど、儒教的に見たらとんでもないね。 この大陸の漢と言う国からの視点で見たら、禁書になってもおかしくない本だと言えるね。」

 

ですよねー。

 

「では、この名君論は間違っているのでしょうか。」

 

「うーん、……それは何とも言えないなぁ。 極論になるけど、結局の所読み手次第なんだよね。 この本に書かれている君主を目指すのも、儒教的に考えて否定するのもどちらも別の視点から見たら間違っていない訳だからね。」

 

そう結局の所、何時の時代でも、この手の本を出したら賛否両論になるんだろうな。

 

「その本に“詳しい”私としては、決して儒教とも相容れない訳ではないと主張したいですね。」

 

完全には無理だけどな。

でもまぁ、光武帝みたいな限りなくそれに近い君主も存在するしな。

 

「うん。 儒教と名君論、両方の良い所を取っていくのが、良いあり方かもしれないね。」

 

「……成る程。 勉強になります。」

 

「あはは。 そりゃ勉強会だからね。 勉強になってくれなきゃ僕が困るよ。 っ! コホッコホッ!」

 

「姉さん?」

 

「コホッ! あぁ、ごめん。 少し、コホッ! むせたみたい。 コホッコホッ!」

 

おい、大丈夫か?

 

「水持ってこようか?」

 

「お願い。 コホッ!」

 

ったく、しゃあねーな。

 

 

_____

 

………。

 

「威方殿! 威方殿!」

 

水を運んで来た俺が見た光景は絶対にあってはならないものだった。

 

「ヒュー ヒュー」

 

……姉さんが、血を吐いて倒れていた。

 

目の前がクラクラする。

俺が今見ているこの光景はなんだろうか。

 

持ってきたはずの水はいつの間にかこぼれていて、俺の足を濡らしていた。

 

「元倹殿! しっかりして下さい! 元倹殿!」

 

孫権の声が聞こえる気がするが、何を言っているのか上手く聞こえない。

 

俺の目に映るのは、血で口回りを紅く染めて、虫の息で呼吸する最愛の姉の姿だけだった。

 




蓮華さんの襲来?
答えはシリアスさんです。







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