どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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ゴットヴェイドォォォ!!!

華佗が姉さんを救ったその日、俺は結局直ぐに眠ってしまった。

 

どうやら俺は丸一日眠っていたらしく、冥琳が言うには、それこそ死んでる様だったとか。

 

華佗も居るのにそんな事言うの止めろよな。

 

俺が眠っているその間は冥琳と華佗が姉さんの看病をしてくれたらしい。

 

今回の一件で孫家には借りを返して貰う所か、大きな借りを作ってしまった様に思う。

 

多分俺は華佗と孫家には一生かけてもこの恩を返せないだろう。

 

 

_____

 

 

「姉さん、調子はどうだ?」

 

「うん。 もうすっかり良くなった。……ありがとう、蒼夜。」

 

まだ床の中で横になって貰っているが、姉さんはかなり回復したようだ。

 

「君のお陰で、僕は生きてるよ。」

 

……泣きそうになる事を言うのは反則だろうが。

 

「……それは冥琳、いや、……孫家と、孫家が探して来てくれた、華佗先生に言ってやれ。……俺は殆ど何も出来なかった。」

 

今回の事程、自分の無力さを知った事は無い。

 

「ふふっ。 勿論言ったよ。 そしたら、先ずは君に言ってやれってさ。」

 

「……そっか、……じゃあ、俺も。 姉さん、生きててくれてありがとう。」

 

「……うん。……僕は、本当に良い弟を持った。……あの日、君と出会えたのが僕の人生の最大の幸福なんだろうね。」

 

「逆だよ。 俺が姉さんに会えた事が本当に幸福な事なんだ。」

 

あの頃、襄陽に来る事を選択したのは、俺の人生の最大の功績だろう。

 

「お互いにそう思うなんて、僕達は幸せ者だね?……ふふっ、本当に嬉しいな。……君のご両親には申し訳無いけど、きっと僕と君は家族になる運命だったんだろうね。」

 

そんな事は無い、と俺の前世の知識は言っているが……。

きっと、そうなのだろうと俺も信じたい。

 

その後は暫くの間、久し振りに俺と姉さんは静かに家族の時間を過ごした。

 

 

_____

 

 

「華佗先生、此度は我が姉を救って頂き、誠に感謝致します。 つきましては、私は先生に何をお返ししたらよろしいでしょうか?」

 

仮に全財産と言われても、私は一向に構わん。

 

「先生は止めてくれ。 俺はそんな大層な人間じゃない、華佗で良い。」

 

貴方が大層な人間じゃなかったら、この世の大体の人はしょうもない人間って事になるぞ。

 

「それに俺は、見返りを求めて人助けをしている訳ではない。 患者がいるから医者をしているだけさ。」

 

やべぇ、この人に足を向けて寝られない。

こういう人の事を聖人って言うんだろうな。

 

「ですが、せめて何か感謝の気持ちを示したいのです。」

 

「……そう言われてもな。」

 

困らせるつもりは無いが、少なくともこのまま『ありがとう』だけで終わらせる訳にはいかない。

俺の面子にかけてな!

……これじゃ孫家と一緒じゃねぇか。

 

「……では、そうだな。 蒼夜、君は本来物書きだそうじゃないか。」

 

「はい。 僭越ながら、世に私の書いた書物を出させて頂いています。」

 

リスペクト品ばかりだけどな。

ちなみに、華佗にはとっくに俺と姉さんは真名を預けた。

 

真名を預けた時に本人が言っていたが、華佗の方はどうやら、字や真名ではなく、そのまま華佗と呼んで欲しいらしい。

 

「出来れば、君のその物を書く力を使って、薬草学の本を世に出して貰えないだろうか? 無論、俺も手伝う。」

 

それは……。

 

「……私としては、寧ろ願ってもない事ですが、……しかしそれは謝礼になるのでしょうか?」

 

華佗の知識を借りてそんな本を書けるなんて、ご褒美だろ。

 

「あぁ! 是非ともそうして欲しい!」

 

あ、熱い。

 

「俺は大陸中の、病気に苦しむ患者を治す為に旅に出る事が多いのだが、……どうしても、間に合わない時がある。……だが! もし今回の君の様に薬草の知識等で、出来るだけ生き長らえていて貰えれば、俺の救える人も増える!」

 

……本当に、この人は根っからの医者なのだろう。

華佗へのお礼の話のはずが、華佗が人を救う話に変わってしまった。

……だが、

 

「廖 元倹、確かに承りました。」

 

この話を受けない理由は無い。

 

 

_____

 

 

さて、華佗からの依頼の薬草学の本を書く前にもう一人会っておかねばならない奴がいる。

 

……まぁ、冥琳の事だけど。

 

……何か会うのが恥ずかしい。

色々と今回は醜態を見せてしまったからな。

急に叫んだり、顔中ドロドロになったのを見られてしまったり、……深く考えるのは止めよう。

 

「冥琳、今回はありがとう。 孫家には借りを返して貰う所か、大きな借りを作ってしまったな。」

 

「何を言う。 この程度借りを返した内には入らんさ。 それに、私自身も威方殿の為に何かしてやりたかったんだ。 今回の件は私の為でもある。」

 

「……だとしても、ありがとう。」

 

本当に感謝の言葉しか出ないもんだ。

 

「ふっ、気にするな。 私とお前の仲だろう?」

 

「お、おぅ。」

 

お、落ち着け、大丈夫。

純粋に仲が良いだけだ。

 

「それと、威方殿にはまだ盤戯で勝っていないからな。 あの方には私が無敗伝説に土を付けるまで死なれたら困る。」

 

「くはっ! くくっ、……冥琳って意外と執念深いのな?」

 

「笑うな。 私の目標なんだぞ?」

 

「ごめんって、……拗ねるなよ。 まぁ、近い将来冥琳なら勝てるよ。」

 

最近は惜しくなって来てたしな。

 

「さて、冥琳。 ここからはちょっと真面目な話だけど、今回の件の事、孫家に正式に感謝したい。 落ち着いたら孫家に挨拶に行こうと思う。 それを伝えておいてくれないか?」

 

孫 文台には直接礼を言わなきゃな。

 

「わかった。 だが、出来れば少し時間を置いた方が良いかもしれん。 最近この荊州近辺の豪族と不和があってな? 現在孫家は少し慌ただしい。」

 

そんな時に華佗を探して来てくれたのか、……本当に頭が上がらないな。

 

「そっか、まぁ俺は都合が良い時で良いから。」

 

「あぁ、その時は私と雪蓮で迎えにこよう。」

 

「よろしく頼むよ。」

 

 

_____

 

 

それじゃあ、約束通り薬草学の本でも書こう、……と思ったが、少し疑問があるので、俺は華佗に聞いてみた。

 

「華佗さん、薬草学の書物を書くのは良いのですが、貴方の医術は書かないのですか? 正直、貴方の医療知識を書いた方が延命措置に繋がると思うのですが……。」

 

「あぁ。 基本的な医療知識は教えても良いのだが、俺の鍼を使う医術、五斗米道(ゴットヴェイドォォォ!!!)は病巣のツボに気を送り込む治療なので、普通は出来ない。 それに五斗米道(ゴットヴェイドォォォ!!!)は一子相伝だからな。」

 

き、気? ツボ? 一子相伝?

……一体何処の世紀末暗殺拳だよ。

 

「はぁ、五斗米道(ごっとべいどう)ですか。 初めて聞きました。」

 

「違う! 五斗米道(ごっとべいどう)ではない! 五斗米道(ゴットヴェイドォォォ!!!)だ!」

 

ア、ハイ。

意外と発音に厳しいな。

 

「すいません。 それで、気とは何でしょうか?」

 

いや、勿論聞いた事はあるし、知識として知ってはいるよ?

でも正直眉唾だから信じてなかったんだよね。

 

「む? 何で君が知らないんだ? 君の気の流れから見て、君は武力のある人間だろう? なら普段から使っているはずだが。」

 

え? そうなん?

俺にいつの間にか気が?

……かめ○め波とか撃てんのかな?

今度山でやってみよ。

 

 

_____

 

 

……残念。

かめ○め波は出来ないのか。

でも、センスがある奴は気弾を撃てるらしい。

……練習しよっかな?

 

気について華佗に教えて貰って思ったのが、これどっちかっつうと具現化と特質が無い念○力に近くね?

と言う感想だった。

華佗も恐らく鍼を使って自己治癒能力の強化とかしてるのだろう。

……俺も水見式しなきゃ。

 

まぁ冗談はさておき、俺は華佗の要望通り、基本的な医療知識とそれに伴う詳しい薬草学の本を作りあげた。

その本の名前を『神農本草経』と言う。

かなり詳しく書いたので、この本の通りにきちんと処方すれば、かなり役に立つだろう。

そして、この本の著者として俺の名前を、監修として華佗の名前を書いた。

 

今までと違い、前世の知識は殆んど介入していないので、ある意味この本こそが俺の真の処女本と言える。

 

……個人的に言わせて貰えば、今まで出したどの本よりも一番良い出来だと、確信を持って言える。

 

まぁ、世間がどう評価するかは知らんがな。

 

「では、出来上がったこの本を複製して世間に売り出しますね?」

 

「あぁ! 医者の俺から見てもこの本は素晴らしい! 是非よろしく頼む!」

 

とりあえず、冥琳と曹操には沢山送って近場にばらまいて貰おう。

 




神農本草経は後漢時代に実際に存在する薬学の本です。
著者が不明になっていますので、この世界では主人公と華佗が作り上げた医療系統の薬草学の本として、出版されました。







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