どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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なんとかなった今年最後の投稿です。
2話連続で出します。

……ストックもう無いぞ。


当てにならない前世

-蒼夜 十二歳-

 

孫家から連絡が来ない。

 

姉さんの一件で孫家に借りがある俺は一度感謝の挨拶をしに行こうと考えている。

その事を冥琳に頼んでいたのだが一向に連絡が来ないまま、早くも半年以上の時間がたった。

 

冥琳と雪蓮が襄陽に来なくなってからは、週に一度は冥琳から手紙が届いてたのだが、それもここ最近は届かない。

 

それどころか、俺宛てに届くファンレターも最近は少ない。

 

……なーんかキナ臭いなぁ。

 

もしや荊州近辺で戦でもあるのだうか?

冥琳が言うには、現在は孫家と荊州の豪族が緊張状態にあると前に言っていたが、それが原因だろうか?

 

けどぶっちゃけ今の孫家に喧嘩を売るとは頭が悪いとしか思えん。

孫堅はこの大陸屈指の猛者だ。

前世の知識でもかなり強い武将に入るだろう。

それに確かこの時期なら呉郡一帯を支配下に置いてると言っても過言じゃ無い程の権力者だった筈だ。

袁家には及ばないだろうが、それでも間違いなく手を出したら駄目な所の一つだろう。

 

そんな奴等に、たかが一豪族が喧嘩を売るのは自殺行為だ。

 

……俺はこの時普通に高を括っていた。

 

 

_____

 

 

江東の虎、死す。

 

この急過ぎる情報が襄陽に流れ、俺の耳に入るまでは時間がかからなかった。

 

……そんな馬鹿な。

孫堅が死ぬのは、反董卓連合が組まれた後の筈だ。

 

この時初めて自分の三国志の知識が役に立たない事を知った。

 

……わかっていた、筈なのに。

 

この世界は、あくまで近しい世界であって、歴史の通りになる世界ではないと。

 

三国志の人物やその関係性が似ているだけで、三国志とはまるで別物である事を知っている筈だった。

 

だがそれは、知った気分になっているだけだった。

 

ここで孫堅が死ぬ筈が無い。

そしたらこの先の歴史がずれる。

 

そんな、安易な考えがあった。

いや、考えもしなかった。

俺が思ったのは、孫家と争いがあるんだ、ふーん程度だ。

 

だが俺の前世の知識から知る歴史はまるで今とは無関係だった。

きっとこの先、例え三国志に似た様な事があったとしても、それも俺の知ってる事とは別の事が起こり得るのだろう。

 

……昔、勉強を姉さんに教えて貰っていた頃に姉さんに教えられた事を思いだした。

 

本物の愚か者とは、知識を持っているにも関わらず、その知識を活かせず、目の前の現実を安易に考える人物であると。

 

……まさに俺じゃないか。

 

「は、はは、はははははは。」

 

……笑えねぇ。

 

 

_____

 

 

……とりあえず情報を整理しないと。

 

これ以上愚か者である事は無い様にしないといけない。

俺は必死になって、たくさんの情報を集めた。

そして目の前の現実にある情報と俺の前世の知識を照らし合わせて、これから先を思案しよう。

 

……それから、雪蓮達に会いに行こう。

 

まずは、孫堅はどのようにして亡くなったか。

 

そこはある程度は前世の知識に近い所もあった。

そもそも、今回孫家と争っていた豪族とは蔡家だ。

その蔡家と孫家が何で争っていたかは流石に知らないが、察するに長江の利権問題が濃い線だろうか。

 

まぁそれは置いとくとして、この両者の争いに介入したのが劉表だ。

劉表はどうやら蔡家に助力を頼まれたらしく、それを承諾した形らしい。

 

……何故劉表は承諾したのか?

おそらくだが、劉表は荊州の豪族を纏める形で州牧を成してるので、きっと断れなかったのだろう。

 

だから、黄祖と呂公が万を超える兵と共に蔡家に援軍として貸し与えられた。

ここで劉表vs孫堅の形が出来る。

 

最初は孫家が次々に勝利していたが、とある戦の追撃で孫堅が伏兵にやられる。

致命傷を負った孫堅は最後の死力を振り絞り、黄祖、呂公、そして蔡瑁の首をも捕ったらしい。

なんとも勇まし過ぎる最後を遂げた。

 

では今回、孫堅の死を回避する事が出来たかどうか。

 

……俺には出来る気がしない。

俺の知識では、やはり孫堅の死は反董卓連合の後だ。

そして黄祖か呂公かはあやふやだが、結局伏兵にやられる。

 

そこで、仮に俺が前もって孫堅に会ってたとしても、何と言ったら良いのだろうか?

貴女は追撃しない方が良い、か?

それとも伏兵には気を付けろ、か?

 

……馬鹿にしてると思われるのがオチだ。

未来を知っている等と意味不明な事をカミングアウトする訳にもいかない。

孫堅の死は俺にはどうしようも無い。

 

……だがそれで俺は納得するしか無いのか?

それで雪蓮と冥琳に顔向け出来るか?

 

……出来る訳が無い。

 

もしこの世界で孫堅の死を回避する方法、可能性があったとしたら、それは俺が鍵を握っているんじゃないかと思う。

 

確かに、どうしたら良いのかはまるで検討がつかない。

……だが前世の知識を持つ俺なら可能性は低くとも、きっと死を回避する未来を作れたのではないか?

と、自問自答してしまう。

 

……雪蓮達に何と言えば良いんだ。

 

無論、貴女の親が死ぬのを知ってたとは言うつもりは無いが、どうしようも無かった、しょうがない、残念だった、等と間違っても言えない。

 

俺の大切な姉さんを救うきっかけを探して貰いながら、雪蓮の大切な親の死を、今だと知らなかったからと言って、仕方無いで済ませて良い訳が無い。

 

……それでも俺には孫堅を救えた方法が思い浮かばない。

 

……もう、俺には雪蓮と冥琳を親友と呼ぶ権利は無いかもしれない。

 

 

_____

 

 

多少自己嫌悪で落ち込んでしまったが、そうもなってられない。

……こんな俺よりも、雪蓮達の方が落ち込んでいるだろうし、これからは大変だろう。

 

そんな雪蓮達を俺は助けたい。

 

俺は孫堅の死に対して何も言える事は無いので、そんな事は無いとわかっているが、仮に雪蓮達から嫌われたとしても、俺はあいつらを助けたい。

 

だから、これからの孫家の未来を考えようと思う。

 

確か知識では孫堅の死の後は、孫家はバラバラになって、瓦解する筈だ。

そして、孫策は袁術を頼る事になる。

その後に孫堅が昔拾った玉璽と引き換えに兵を借り、将来呉の領土となる場所を一つずつ治めて行く事になるのが俺の知る知識だ。

 

……だが現実では問題が何点か有る。

 

そもそも、玉璽は孫堅が反董卓連合の時に拾う物だ。

今は無い可能性がある。

っていうか、あったら色々とヤバイ。

 

そして袁術の人柄だ。

俺の知っている袁術とこの世界の袁術との誤差がわからない。

仮に玉璽を持っていたとしても、袁術が頭のおかしな人物だった場合は、下手に渡したりなんかしたら、どうなるかわかったもんじゃない。

というか、頼る事すら不味い場合もありえる。

 

そして、最大の問題は未だ漢王朝が存続している事だろう。

今この時に兵を挙げたりしたら、反逆と思われかねない。

その場合は孫家に安寧がもたらされる所か、賊軍扱いになる。

 

かと言ってそのままにしていたら孫堅の持っていた地位は返還されて、継承する事も難しいので、孫家が瓦解する。

 

……八方塞がりな気がする。

雪蓮達には受難が続くかもしれないな。

 

だが俺はこの受難を少しでも軽くしてやりたい。

いや俺が受けた恩と、孫堅に対して何もしてやれなかった罪、……とも言えない“何か”を考えればそれでも足りないくらいだろう。

 

……どうするのが最善だろうか。

 

そもそも、これから雪蓮達はどうしたいのだろうか?

 

……どれもこれも結局は会わなきゃわからないか。

 

俺は雪蓮達に会う覚悟を決めて、襄陽を発つ事にした。

 








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