どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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書ける時に書いて、ストックしないですぐに投稿していくスタイル。

暫くはこんな感じで投稿していきます。


格好つけるのは男の性

……現在、馬上である。

 

「これより、賊を殲滅する! 相手は百人程度だ! 一気に飲み干すぞ! 儂に続けぇ!!!」

 

オォー!!!

 

……そして、戦場である。

 

ど う し て こ う な っ た

 

 

_____

 

 

-飲み会当日-

 

「ほんじゃ、俺は明日直ぐに襄陽に帰ってから、資産纏めてまた持って来るわ。」

 

「あぁ、すまん。」

 

冥琳さん、こういう時は謝罪じゃなくてお礼ですぜ?

 

「多分一週間は掛かると思うけど、大丈夫だよな?」

 

ここでタイムオーバーになったら洒落にならんからな。

 

「あぁ、その間に私は賊の情報を纏めておく。 明命、居るか?」

 

何やら冥琳がドアの方に誰かを呼んだら、直ぐに可愛い女の子が目の前に現れた。

 

「はい! 何でしょう、冥琳様?」

 

……oh.ninja

え? マジで?

 

……忍者は存在した。

しかもくの一で。

 

……一体この世界はどうなっているんだ。

 

「明命、直ぐにこの呉郡の賊の情報を集めてくれ。 早ければ、一週間後には討伐の兵を出す。」

 

「はい! わかりました!」

 

くの一はそう答えると煙の様に消えて行った。

 

……孫家の人材は恐ろしいな、本物の忍者が居るじゃねぇか。

 

「今のは孫家が誇る有能な諜報だ。 いずれきちんと紹介しよう。」

 

「お、おぅ。」

 

……普通、諜報って知られちゃ駄目だよね?

それを何でわざわざ俺に。

……深く考えるのは止めよう。

 

「ふむ。 では儂は出兵までに調練でもし、兵を纏めておこう。」

 

「頼みます祭殿。 雪蓮、お前も今回は働いて貰うぞ。 調練もそうだが、今ある仕事も速やかに終わらせる。」

 

「まぁ、仕方がないか。 蒼夜に免じて今回は暫く働くわ。」

 

……君は孫家の代表でしょ?

毎日働けよ。

 

「でもさぁ、そんな都合よく賊なんているかしら? 自慢じゃないけど、母様が賊なんて殲滅してたからこの呉郡は平和そのものだったのよ?」

 

「ふむ、確かにの。 これで賊がおらんかったら前提から台無しじゃな。」

 

ところがどっこい。

 

「現れる可能性は高いっすよ?」

 

「同感だな。」

 

「「何で(何故じゃ)?」」

 

「その孫 文台が凄かったからだよ。」

 

「つまり文台様が亡くなった今、抑圧されていた奴らが再び現れるという事だ。」

 

そゆこと。

 

孫堅は消えた!

ヒャッハー!

 

って事だ。

 

「ふーん。……何かムカつくわね。 賊が出たら私も行くわ。 母様が居なくなっても、私が居るってのを教えてやるわ!」

 

「最初からその予定だ。」

 

「寧ろお前の名前を売る為の作戦だからな。 派手に暴れて来い。」

 

もう心配無い、何故って? 私が来た!

 

みたいなのが良いね!

 

「成る程の。 ならば儂の出番は無さそうじゃの?」

 

んな訳無い。

 

「逆ですよ、祭殿。 雪蓮は初陣ではないとは言え、きちんと軍を率いた事はありません。 その為、祭殿の力が必要です。」

 

そこまでは知らんかったけど、わざわざ経験豊富な有能な将軍を外すメリットが無い。

まぁ、牙門旗は雪蓮だけだろうけど。

 

「なら、私は暴れるだけね? 簡単じゃない!」

 

「あぁ、だがきちんと作戦は立てる予定だ。 下手に突っ込むなよ、雪蓮?」

 

「大丈夫、大丈夫。 冥琳は心配症ねぇ。 まっかせときなさーい!」

 

……雪蓮は楽しそうだけど、何だこの不安は。

 

まぁ賊討伐は俺には関係ないか。

頑張れ、冥琳。

 

 

_____

 

 

-一週間後-

 

「おいっす。 資産纏めて来た。 これで足りるか、計算してみてくれ。」

 

予定通り資産を纏めて建業に再び訪れたら、今回は門番に止められる事も無く、速やかに客間に通された。

 

前回居た門番は俺が客間に通される様な人物だと知って、今回は非常に態度が良かった。

それがちょっぴり面白かった。

 

そこで客間に通された後は五分と掛からず冥琳が現れたので、荷馬車に大量に積んである資産の目録を冥琳に渡した。

 

「……充分だ。 と言うより、よくもまぁこれ程溜め込んだものだ。 この目録に書いてある分と、孫家が売ったお前の名君論の売り上げだけで県令の地位を買えそうな程だ。 実質、孫家はお前の資産に助けられたな。」

 

おぉ、マジか。

俺ってそんな金持ちだったのかよ。

 

俺の資産で半分に届けば良いなくらいの気持ちだったんだが。

もし足りない場合は書物喫茶店を売るつもりだったし。

 

「なら良かった。 それなら雪蓮が呉郡の県令に成った後も少しは余裕が出るな。」

 

「そんな訳あるか。 それでもギリギリだ。」

 

マジかよ。

孫家って貧乏なの?

 

「まぁ良いや、それで? 賊の方は何か情報あった?」

 

「あぁ予想通り、ちらほらと賊は出始めている様だ。」

 

「ならさくっと討伐して、後は周本家次第だな。」

 

俺の役目は終わりかな?

 

「あぁ、……と言いたいが、少し誤算もある。 中央とのやり取りは問題無いが、実は賊が予想以上に多い。」

 

「? まさか千はいないだろ? 仮に千だとしても問題ある数じゃないだろうし、何が問題なんだ?」

 

「確かに数の問題ではない。 数自体は数百程度だが、……問題はそれが別地域で多発している事だ。」

 

うげぇ、めんどくせぇ。

 

「どちらもあまりやりたくない手だが、軍を割って同時に対処するか、一度で全て殲滅して回るかをしなくてはならん。」

 

「んー、……だったら、一度で殲滅して回る方が良いだろ。 祭さんみたいにまともに軍を率いる事の出来る人物って他に居る? 仮に居たとしても建業に守備を残さなきゃいけないし、ここで軍を割るのは悪手だと思うんだけど?」

 

「同意見だ。 かと言って一気に呉郡を回るのが良い訳ではないが、……まぁそこは仕方あるまい。」

 

うわぁ、軍師って大変そう。

 

「俺は何も出来んけど、頑張れよ冥琳。」

 

「ん?」

 

「え?」

 

……。

 

「あ、いや、すまない。 てっきり最後まで面倒を見てくれるのかと思っていた。 本来ならお前には関係ない事だものな、本当にすまん。」

 

冥琳は本当に申し訳無さそうにしているけど、……そんな風に言われちゃったらさぁ。

 

「馬鹿野郎! お前俺に出来る事があるなら言えよお前!」

 

……そう言うしか無いんだよなぁ。

つい、格好をつけてそう言ってしまった俺を責める事は誰も出来ない筈だ。

 

 

_____

 

 

それで気づけばあら不思議、軍に同行している俺がいる。

 

……なんだよそれ、青春ラブコメでも間違っているのかよ。

……間違っていそうな気がしてきた。

 

「……考えてみりゃ、これ俺の初陣だわ。」

 

俺がそうぼそっと溢してしまったら、その言葉に隣に居た冥琳が反応した。

 

「ん? そう言えばそうなるのか。 悪いな、孫家のゴタゴタに巻き込む形で初陣を飾ってしまって。」

 

別にそれは良いんだ。

俺が自ら巻き込まれた訳だし。

 

「なぁ、思うんだけど俺って何枠だよ? 軍師? 武将? って言うかそもそも客将的な感じか?」

 

別に雪蓮に仕えている訳でもないし、そんな感じだよね?

 

「ふむ、まぁ客将じゃないか? 後、お前は軍師でも将でもどちらも出来そうだからな、戦況を見て好きに動いてくれ。」

 

何で疑問系なんだよ。

ってか好きに動けって、信頼されてるなぁ。

 

そんな事を考えてたらもうそろそろ開戦しそうな雰囲気だ。

さっき祭さんが檄を飛ばしていたし、敵も見えて来た。

 

今更だが本当にどうしよう?

 

俺は大陸産まれの大陸育ちだ。

人殺しに大きい忌諱感がある訳ではない。

……人が死んで腐って蛆が沸いてるのだって何度か見た事もある。

 

と言うか動物狩って食ってるんだ、動物とは言え殺しはしている。

自分が生きる為に相手を殺すと考えりゃ割りきれる部分もある。

 

だが前世の知識もあるからな、常識的に考えりゃ人殺しは駄目とも思う。

 

なんとも優柔不断な考えだが、中々に困ったもんだ。

 

……まぁいずれは通る道だったんだ。

予定が少し早まっただけと考えよう。

 

今からぶつかるであろう賊と孫家の軍を見ながら、俺は静かに人殺しの覚悟を決めていた。

 




次回も連休中に投稿したいです。

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