どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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連続投稿だぁ!

初めてと言っても過言では無い程、真面目な戦闘シーンです。
上手く書けてる自信はありません。


平均武力93は伊達では無い

動き出したのは当然ながら甘寧からだった。

 

「ふっ!」

 

漏れ出した声と同時にギアをいきなりMAXに入れた様に、もの凄い速さで接近して来た。

 

その速さは尋常ではなく、瞬間的な速さで言えば恐らく虎なんかよりも余程速い。

 

っていうか、今まで見てきた中で一番速ぇ!

 

俺は深く腰を落として、甘寧の攻撃を見極めんとしたが、甘寧はもうとっくに俺の間合いの中に入っていて、すかさず俺の首元へと一撃を繰り出していた。

 

「ぐぉっ!」

 

俺はなんとかその一撃を防いだが、とてもじゃないが、その攻撃を弾く余裕等無く、寧ろ俺の方が若干体勢を崩した程だ。

 

それを見た甘寧はここぞとばかりに連撃を俺に繰り出し、俺に反撃の隙を与えない様に猛攻してきた。

 

俺は最初から覚悟していたとは言え、この猛攻を完璧に防ぐ事等出来ず、徐々に小さい切り傷が増えてきはじめた。

 

だがこの猛攻にも攻撃の繋ぎ目が見えたので、俺はその僅かな繋ぎ目を狙って、おもいっきり槍を降り払った。

 

だが、その攻撃は呆気なくバックステップでかわされた。

 

無論その攻撃が反撃の糸口になる等思ってなかったが、俺の狙いは間合いの外に甘寧を出す事にあったので、概ね良しと出来た。

 

しかしこいつ、とんでもなく速いな。

 

威力なら雪蓮の方が上だが、速さに関しては甘寧の方が上だ。

 

これは待ちスタイル等言ってられないと思い、俺は自分から攻撃を仕掛ける事にした。

 

「っら!」

 

だが、俺の威力より速さを優先した突きは甘寧に届く事は無く、普通にかわされた。

 

恐らく、さっきの凪払いや今回の突きで俺の間合いはもうバレてしまっているので、俺は開き直って甘寧に連突きを放った。

 

「しっ!」

 

一回、二回、三回と俺の全速力で放つ突きを甘寧は見極め、かわし続ける。

多分、中に入るタイミングを測っているのだろう。

 

そこで俺はフェイントを入れ、突くと見せかけ、足だけ、だんっ! と地面を踏み鳴らし、逆に待ちにしてみた。

 

そしたら俺のフェイントが功を奏し、甘寧はタイミングを外され、ぐっ、と一瞬硬直した。

 

行けるか!?

 

俺はその隙を見逃さず、再び最速の突きを甘寧に放った。

 

「ぐっ!」

 

だが、そんな甘い話は無く、俺の放った突きは甘寧の剣で防がれ、決定打にはならなかった。

 

それでも、今までかわされた突きが剣での防御に変わっただけでも充分チャンスだと思った俺は、今度こそ甘寧の剣を弾いて体勢を崩させ様と、速さよりも威力を優先して突きを放った。

 

しかしそれは俺のミスだったらしく、大振りに成った隙を見逃さず、甘寧は俺の突きを素早くかわし、俺の背後に回り、俺の首元に剣をあてがった。

 

でも、甘寧もまたミスを犯した。

 

俺の武器は双頭槍だ。

背後の攻撃には対処出来る。

 

甘寧の首元にも俺のもう一つの穂先が置いてあった。

 

 

_____

 

 

「そこまで! 今回の模擬戦は引き分けとする!」

 

冥琳がそう宣言すると同時に俺と甘寧は互いに武器を引き、ほっと一段落した。

 

ウォォォ!!!

 

その瞬間に周りから凄い歓声が上がり、周りが賑わい始めた。

 

「凄げぇ! 流石お頭だ! あの守護鬼に引けをとってねぇ!」

 

「あぁ! だがあの守護鬼だって凄げぇ! 今日のお頭は今まで見てきた中で一番強かった! それでも勝てなかったんだから!」

 

その後も、おっ頭! 守っ護鬼! と謎の喝采コールを俺と甘寧は受けた。

 

……しかし個人的感想を言わせて貰うと、引き分けの気なんてしない。

 

確かにお互いの急所に武器をあてがい、引き分けとなったが、その内容には大きな隔たりがある。

 

俺は沢山の切り傷を付け、若干体勢を崩して何とか甘寧の首元に穂先をあてがったのに対して、甘寧は傷一つ無く余裕の体勢で俺に剣を突き立てた。

 

言葉にするだけでも、どちらが真の勝者かは解ると思う。

 

だから俺からしてみれば、負けの状況をなんとかギリギリ頑張って引き分けに持ち込んだって所なのだ。

 

……多分、雪蓮とか祭さんだったら俺の負けって宣言してただろうなぁ。

 

俺がそんな風に敗北感を抱いていたら、甘寧がやって来た。

 

「お見事です。 私もまだまだと痛感させられました。」

 

……嫌味? それ嫌味?

 

まぁ違うか、この人真面目そうだし。

 

「いや正直状況的には、興覇さんが勝っていると思いますよ? 今回は若干身内贔屓な判定だと思います。」

 

「いえ、あの状況でしたら剣を引くより槍で突く方が速いので、元倹殿の勝利かと。」

 

その言葉に、でも、だが、しかし、と何故か知らぬが、俺と甘寧はお互いに勝利の譲り合いをしてしまった。

 

そして結局行き着く所は引き分けになってしまい、何か不正をした様な気分になった。

 

……解せぬ。

 

 

_____

 

 

-翌日-

 

冥琳に雪蓮達を邑に連れて来て欲しいと頼まれた俺は、朝早くに邑を出て雪蓮達の元へと向かった。

 

雪蓮達と合流を果たしたのは良いが、傷だらけの俺の状態を見て不思議に思った雪蓮は、昨日何があったかしつこく聞いてきた。

 

仕方無いので、口止めされている訳でもないし、俺は正直に甘寧と模擬戦した事を教えてやった。

 

「えぇ! 蒼夜ったら模擬戦なんかしてたのぉ!?……何で私を呼ばないかなぁ?」

 

知らんがな。

冥琳に聞け。

 

「全くじゃな。 そんな面白、……ケフン。 新たな武官の見極めに儂を呼ばんなんぞ、どうかしておるぞ。」

 

えぇ、私もそう思いますよ?

普通貴女にして貰う事ですからね。

 

……だが俺は悪くない。

全ての元凶はあの腹黒眼鏡だ。

どうせ眼鏡をクイクイしながらニヤリとしているに決まっている。

 

「いやぁ、それにしても、今から会いに行く興覇さんはめっちゃ強かったっすわ。 磨けば光る所か既に光を放ち始めてる感じでしたよ?」

 

一応そういう報告も雪蓮や祭さんに言わなきゃいけないからね。

 

「へぇ。」

 

「ほぅ。」

 

俺がそう報告したら、二人の目が虎とか猛禽類とか、捕食者の目に変わっていた。

 

……本当、怖いんで止めてくんない?

 

「……それで? 結果はどうなったの?」

 

「あぁー、……一応引き分け。 個人的には負けだけど。」

 

「ふむ。 詳しく聞かせい。」

 

祭さんがそう言うので、俺は自分の感想と共に昨日の模擬戦の内容を詳しく二人に教えた。

 

「……ってな感じだからさ、引き分けの気はしないんだよね。」

 

しつこいようだが、全く納得出来ないからな。

 

「んー、……私的には引き分けで良いと思うわよ?」

 

「同感じゃな。 お主も甘いが、最後に詰めを誤った興覇という人物もまた甘い。」

 

……そんなもんか?

まぁ良いや、俺の中で負けにしておこう。

 

「それにしても、お主の主観ではその興覇という者は、策殿とも充分やりあえるのじゃろ? まだ呉の在野にそれ程の人物が居るとは思わなんだ。 これは鍛えがいがありそうじゃの。」

 

在野っつうか、江賊でしたけどね?

 

「ふふっ。 私も帰ったら模擬戦してみよ。」

 

……うわぁ。

ごめん甘寧、ご愁傷さまです。

 

俺は心の中で甘寧に謝りながら、雪蓮達と邑へと向かった。

 

 

_____

 

 

邑へ到着し、冥琳と合流を果たした後は思春さんを正式に孫家の武官として任命し、今回の賊討伐の全てを終了した。

 

「じゃあ、これからよろしくね! 思春。」

 

「は、はっ! せ、誠心誠意、は、働かさせて、い、頂く所存です!」

 

またもや緊張タイムである。

気持ちは解るが、そいつは適当大魔王だから、もっとフランクで良いんだかなぁ。

 

ちなみに思春とは、甘寧の真名である。

孫家に仕えるにあたって、孫家の幹部連中と思春さんは真名を交換した。

 

……そして俺も。

 

いや、真名を交換した事に不服がある訳ではない。

でも俺ってば、別に孫家に仕えている訳じゃないのよ?

 

勿論その事は思春さんに話した。

俺が孫家の人間じゃ無いながら手伝う理由までを簡単に説明して、敬意を払うに値しない人物である事や、真名を預ける必要の無い人物だと説明したが、それでもと乞われ交換する事になった。

 

『貴方は地位や名誉の有る無しを問わずに尊敬に値する人物です。』

 

思春さんにそう言われた時は、実は自分は凄い人物ではないのだろうかと勘違いしそうになった。

 

お世辞を使うタイプには見えないが、流石に盛って誉め過ぎだと思う。

 

けど自分に自信が出るのは仕方無いよね?

 

そう言う訳で、俺も敬意を以て思春さんと呼ばせて貰う事になった。

 




後1話、2話で孫家編を終わらせて一回閑話を挟んで、次に行きたいです。

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