どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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二話連続で更新だぁー!

今回は王平についての回です。


真面目系おバカは可愛いと思う

整った顔、キツめの目付き、パッツンのボブヘアーに、中々ボインな美しさのとれた肢体。

 

俺は美女と言っても差し支えのない王平に、

 

「……雇え、……とはどういう事かな?」

 

そう問うた。

 

いや、王平を雇うのが嫌な訳じゃない。

寧ろ王平程の有能な人物を雇うのは大歓迎だ。

 

末期の蜀において、王平はかなり有能な将軍と言えるだろう。

特にその名を轟かせたのは、かの有名な街亭の戦いだ。

 

その戦い、簡潔に説明するなら、北伐をしようとする諸葛亮が馬謖という、馬良のまあまあ優秀な弟に街亭という場所を守護する様に命令する事から始まる。

 

しかし馬謖は諸葛亮の命令通りに街亭の通路を守護せず、その近くの山の上に陣取り敵を迎え討とうとする。

 

それを諌めるのが王平だ。

 

王平は何度も馬謖を諌め、通路を守る様に進言するが、それを馬謖は聞き入れず二人は反発する。

 

結局王平は僅か千の兵を率いて街亭の通路を守護し、馬謖は山の上に陣取る。

 

そして馬謖は敵の魏軍に水を絶たれ窮地に立ち、王平は敵の読み違えも有り、通路を守り通す。

 

だが、結局は馬謖の失態のせいで蜀軍は撤退するはめになり、諸葛亮は馬謖を失態の罪で切らなければならなくなる。

 

所謂、泣いて馬謖を切る、だ。

 

だが王平は僅か千の手勢で敵軍を押し留めていた事から諸葛亮に褒められ、名を高める結果になった。

 

……その王平が、何故護衛隊に雇えなんて言うのか?

有り難いが、何を考えているんだ?

 

「私は幼少の頃より最近まで、大陸の様々な場所を巡って来ました」

 

へぇ、そうなんだ。

 

「そして各地の地図を私は書き記しました」

 

……は?

 

「その地図、……私の記録は大いに役立つと思われます」

 

…………。

 

……。

 

……何を、言ってるんだこいつ?

 

「お、おい!? 大犯罪じゃねぇか!?」

 

この時代、いや、この世界でも勝手に地図を書いたり所有したりするのは死罪並の罪だぞ!?

こいつ頭大丈夫か!?

 

「ですが、必要な事です。 この時代、これから先はこの様な情報は武器になります」

 

そうだけども!?

 

「この地図、貴方の元で役立てる気はありませんか? これからの護衛業において非常に役立つと思われますし、何より私は腕が立ちます」

 

……こいつ、馬鹿だ。

 

真面目に考える頭もあるのに、とんでもない事しでかす阿呆だ。

 

……こんな奴、俺の他にもいたのか。

 

罪だろうが何だろうが、必要な事なら何でもするという馬鹿が居るのか。

 

「……だが、何故、俺の護衛隊なんだ? そんな情報があるなら、どこにだって仕官出来るだろう?」

 

大陸の詳しい地図なんて、何処の陣営でも欲しい情報だぞ。

 

「貴方が、……“守護鬼”が民を守る者だからです」

 

……ごめん、どゆこと?

 

「私は、この幼き時より記した地図を平和の為に、大陸の安寧の為に使いたいと思ってました」

 

うん、まぁ、解らんでも無い。

 

「そこで耳にしたのが“守護鬼”の噂です。 何でも“守護鬼”はその名の通り、民を守護する者だと聞きました。……事実、漢中に帰って来た商人に話を聞くと、非常に穏やかで安心感を与える人物だと言います」

 

おい!?

そんな事言ったのあの人達!?

 

「私はその様な人物にこそ、地図を託せますし、仕えようと思っております」

 

……おいおいおいおい!

買い被りだよ!?

華琳さん並みに俺の事買い被っているよ!?

 

「お願い致します、貴方はこれより大陸に必要となる方でしょう。 どうぞ私を役立てて頂けませんか?」

 

……どないしよ。

 

王平を雇うのは構わんのだが、かなり誤解を受けてるんだけど?

 

ってか、大陸の地図かぁ。

 

……欲しいな。

 

いや、でもなぁ、犯罪だしなぁ。

 

……でも、地図。

 

いや、だがしかし……。

 

「……よ、喜んで迎えます」

 

……地図の価値には勝てなかった。

 

俺がどう評価されようが、これは重要な物だ。

……大陸の地図なんて、下手な孫子の兵法よりも重要だからな。

 

「真に感謝致します。 我が真名地理(ちり)、これより我が真名を貴方へと預けさせて頂きます」

 

うぉい!

急に預けんじゃねぇ!

 

「……そんな、真名まで預けて良いのか?」

 

「構いません。 自身の願いを託す者には預ける物です」

 

……ヤバい。

いつの間にか願いを託されちゃった。

 

軽はずみに言うんじゃ無かった。

 

「お、おぅ。……俺は、蒼夜。 これからは真名で呼んでくれ」

 

「はい、蒼夜殿。 これからよろしくお願いします」

 

……よろしくされてしまった。

 

……マジかぁ。

 

……いや、まぁ仕方ない。

開き直ろう。

 

「聞け、お前ら! これより俺達の新たな仲間に王 子均が加わった! 彼女は俺達に非常に大きな利益をもたらした! 彼女の参入を歓迎する者は杯をかかげよ!」

 

俺がそう言うと、皆杯をかかげ、王平の参入を歓迎した。

 

「ならば! 王 子均の参入を祝い、……乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

……乗りの良い連中で良かったぜ。

 

「感謝致します、蒼夜殿」

 

うん、まぁ、こうなったらやけだ。

どんと来いって奴だ。

 

「それで、地理。 君にはこれから俺の近くで働いて貰うが大丈夫かな?」

 

いくら地理が、……王平が優秀だからと言って、急に護衛隊の長に置く訳にはいかない。

 

彼等は一ヶ月もの間、俺の厳しい調練に耐えて一致団結した連中だ。

今更急に張曼成から地理に長を変える訳にはいかない。

 

そんなん、いきなり地方の会社に本社から幹部が来て、今日から君達と一緒に働くからよろしく!

って言うのと、なんら変わらんからな。

ブーイング必至だ。

 

かと言って、この馬鹿だが優秀な奴を一隊員にする訳にもいかん。

 

「……副官、の様な物ですか?」

 

「まぁ似た様なもんだな。……俺の本業を手伝ったり、護衛隊を面倒みたりって感じか? まぁ書類仕事がほんの少しあるくらいだな」

 

まぁ霊里とか姉さんが居るから何も難しく無いけど。

 

「なっ!? しょ、書類仕事、ですか?」

 

あ、れ?

 

「ど、どうかしたのか?」

 

「いや、あの、その、……わ、私は、その、文字が……」

 

……マジか。

地図を書くくらいだからそんなん余裕だと思っていたぞ。

 

確か、史実でも王平は文字があまり書けなかったんだっけ?

 

いや、だからってそれは酷い。

 

「……おい、何で大陸の未来を憂いてる奴が文字を書けないんだよ」

 

「そ、その、自分の名前さえ書ければ、後は武力を活かしその道に集中すべきかと思いまして……」

 

……お前は何処の項羽だ?

 

「……はぁ、良いか地理。 文字だけに限らず、学門ってのは『人が人である所以を学ぶもの』なんだ。……故に学べ」

 

吉田松陰がそう言っていた。

……そしてそれは真実だ。

 

「人が人である所以を学ぶもの……」

 

「そう、理性ある人として、大陸の未来を憂う者として、君はまず勉強しなさい」

 

……何で地頭は良いのに、そんな所は阿呆なんだよ。

 

「……了解しました。 王 子均、勉学に励ませて頂きます」

 

「ん、頼む。 君に仕事を頼むのは、その後からだ」

 

……実際、史実の王平は文字を読み書き出来ないのに文官から褒められる程、地頭は良かった筈だ。

これから学べば、かなり優秀になる……と思う。

 

「……それで、早速だけど、大陸の地図を見せてくれるか?」

 

……この為に雇ったと言っても過言では無い。

 

「はっ、どうぞ」

 

地理がポケットから巻物を取り出し、それを俺に渡してくれた。

 

俺はそれを丁寧に開き、地図を見る。

 

「……こりゃすげぇな。 随分丁寧に記してあるじゃないか」

 

そこに記されてあるのは、まず全体図。

それから各州。

そして各郡をこと細かに記してあった。

 

……これ、華琳さんや冥琳が見たら、千金積んでも買う、……いや、万金積んでも地理ごと買うな。

 

……やっべぇ。

これ良い拾い物した所じゃないぞ?

見る人が見たら、天下の足掛かりになるレベルだぞ。

 

「ってか、絵上手っ!」

 

地理の絵は、かなり綺麗と言って良い。

……何で字は駄目で絵は上手いんだよ。

 

「ありがとうございます。 私は昔から絵が得意で、最初は風景画を書いていた事から地図を書こうと思い至ったのです」

 

「そ、そうか」

 

……非常に、……非常に、不謹慎だが、……この絵で俺の小説のイラストレーターをしてくれないだろうか?

……絶対売り上げが上がると思うんだよね。

 

俺はこの時、そんな馬鹿な事を考えていた。

 




真名について
この作品では王平は地理に詳しい事から、解りやすく“ちり”に致しました。
適当な理由で申し訳無い。

地理に詳しい理由
王平は漢中に詳しい事から曹操に郷導使に任命されたとされていましたので、そこから取り大陸の地理に詳しい設定に致しました。

おバカな理由
作中でもあります様に、王平は文字を読み書き出来なかったそうです。
ですので、この作品では地頭の良いおバカとして扱います。







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