原作の流れを使っているので割りと早く投稿出来ましたら。
大きな動きは無いですが、また早い内に投稿出来ると思います。
華琳さんの治めるこの陳留に賊が出現した。
どうやら発生源は隣郡らしく、そこそこの規模の賊らしいという事しか解っていない。
しかし、いくら隣の郡とは言え、俺達にも被害を出す賊を放っておく訳にもいかず、俺達は賊の討伐へと出陣する事が決まった。
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……あぁ、忙しい。
やっぱ軍を動かすとなればアホの様に仕事が出てくる。
武器の準備に、糧食の準備、薬も必要だし、防具を配る必要もある。
とにかく孫家での時もそうだったが、戦をする時は戦っている時よりも、その前とその後の方が大変なんだ。
「春蘭、装備品と兵の確認は?」
「はっ! 全て滞りなく済んでおります!」
……ほんと、この人軍務だけはちゃんとやるのよね。
「華琳様、糧食の最終点検の帳簿にございます」
秋蘭さんがそう言って、華琳さんに書類の束を渡す。
……これが済んだらそろそろ出陣かな?
「ありがとう秋蘭」
…………。
「……」
……。
……不味い、華琳さんが凄い不機嫌になっている。
もしかして監督官が何かやらかしたか?
全く、この空気をどうしてくれるんだ。
「……秋蘭、この監督官というのは何者かしら?」
「はい、先日文官の募集をかけた時に志願してきた新人です。 仕事の手際が良いのと、撈殿からの許可を経て、今回の食料調達を任せてみたのですが、……問題がありましたか?」
「ここに呼びなさい。 大至急よ。……蒼夜は撈を呼んで来なさい」
……マジで何があった。
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「急に呼び出して何かあったのかい?」
「……今、秋蘭に呼び出させている者が現れたら説明するわ」
俺が姉さんを呼びに行き、戻って来ても、まだ秋蘭さんは現れていなかった。
そのせいか、華琳さんの機嫌はすこぶる悪い。
……これ以上遅れたら有無を言わさず処刑されるんじゃねぇの?
俺はここに霊里が居なくて良かったな、等と思いながら重い空気に耐えていた。
「華琳様、連れて参りました」
戻って来た秋蘭さんが連れて来た人物は、あまり背の大きくない、か細い女の子だった。
……そして、何故かネコミミフード。
……ほんと、この世界のファッションどうなってんの?
「お前が食料の調達を?」
「はい。 必要十分な量は用意したつもりですが、……何か問題でもありましたでしょうか?」
「必要十分ねぇ、……貴女は指定した数字も読めないのかしら?……半分しか準備出来ていないじゃない!」
おい、マジかよ。
……半分ってあんた、……ギリギリ行けるか?
……いやだとしても余裕を持って行動するのが当然だしな。
……これは擁護出来ない。
「撈、貴女が育てたコイツは多大な失敗を犯したわ。……しかも今回は貴女がコイツの監督官への許可を出したのでしょう?……この責任、貴女にも波及するわよ?」
ちょっ!?
ま、不味い!
姉さんにまで責任が行くのはどうにかしなきゃ!
「うーん、……この子は一番優秀で僕が教える事なんて殆ど無かったくらいなんだけどね。……良かったら一度話を聞いてみては貰えないかい? それで納得いかなかったら僕の見る目が無かったって事だ。 大人しく罰を受け入れるよ」
「……ふむ、よろしい。……そこのお前、このまま出撃したら、糧食不足で行き倒れるであろうこの状況の申し分はあるか?」
……マジで頼むぞ?
少しでも理があれば、俺も全力で援護してやる。
「はっ。……糧食がこの量でも行き倒れない理由は三つあります」
「……説明なさい。 納得のいく理由なら許してあげても良いでしょう」
……正直こいつがどうなろうと知った事じゃねぇが、姉さんにまで迷惑がかかるなら何としても擁護してやる。
「……ご納得頂けなければ、それは私の不能が致す所。 この場で我が首、刎ねて頂いても結構にございます」
「……二言は無いぞ?」
……なんだ、こいつの態度?
もうコイツの首刎ねて終わりにしません?
今から食料集めりゃ一刻くらいで十分集まりますよ?
……だから姉さんの責任を無しにですね……。
「はっ。……では説明させて頂きます。 まず一つ目、曹 孟徳様は慎重なお方故に必ずご自分の目で糧食の最終確認をなさいます。 そこで問題があれば、こうして責任者を呼ぶ筈。……行き倒れにはなりません」
ばっ!?
アホかコイツ!?
「馬鹿にしているのか!? 春蘭!」
「はっ!」
「ちょっ、華琳さん、残りの理由を聞いてからでも良いと思いますが?」
「蒼夜の言う通りかと。……それに華琳様、先程の約束もございます」
俺と秋蘭さんは何とか華琳さんを宥め、春蘭さんに剣を引かせる。
「……そうね。 で、次は何?」
……ほんと、もう擁護出来る内容でお願いします。
あんたが無能の烙印を押されたら姉さんにまで罪が波及するんだ、……マジで勘弁して。
「次に二つ目、糧食が少なければ身軽になり、輸送部隊の行軍速度も上がります。 よって、討伐行全体にかかる時間は、大幅に短縮出来るでしょう」
……んなアホな。
「? なぁ秋蘭……」
「どうした姉者、珍しくそんな難しい顔をして」
「行軍速度が早くなっても、移動する時間が短くなるだけではないのか? 討伐にかかる時間までは半分にならない……よな?」
「ならないぞ」
全く持ってその通り。
春蘭さんでも気付く間抜け理論も良い所じゃねぇか。
「良かった、私の頭が悪くなったのかと思ったぞ」
いや、それは元から良くない。
……だがそんな事も言ってられん。
何とか擁護しないと。
「理論的にはあながち間違っていませんよ、華琳さん? 強行軍で移動して、発見と同時に即討伐すりゃ糧食もギリギリ足りますよ?」
問題はそのサーチ&デストロイをいかに素早くどの様にするかだけどな。
「っ!……ふんっ!」
……何かこいつ、今凄い嫌そうな顔しなかった?
おい、誰の為に擁護してると思ってるんだよ。
……うん、姉さんの為だった。
「……そうね。……撈はどう思う?」
「ふふっ、確かに理論的には可能だね。……何なら今回は僕が軍師として出陣しようか? 賊の討伐くらいならどうにでもなると思うよ?」
「んなっ!?」
……?
……おい、こいつ、もしかして……。
「そうね、それも考えておきましょう。……では三つ目の理由を聞かせなさい」
「……はっ。 三つ目、ですが……くっ! わ、私の提案する作戦を採れば、戦闘時間は更に短くなります! よって、この量で十分だと判断致しました。……曹 孟徳様! どうかこの荀 文若めを軍師としてお使い下さい! 必ずや勝利に導く軍師として働いてみせます!」
……そーゆー事かよ、全く。
…………。
……。
荀 文若?
! 荀彧か!
こりゃ間違っても殺させる訳にはいかん!
超有能人材じゃねぇか!
「……荀 文若、貴女の真名は?」
「桂花にございます」
「桂花、貴女、……この私を試したわね?」
……あー、こりゃ不味いか?
どないしよ、荀彧を助ける方法なんかないか?
「はい」
「な! 貴様、何をいけしゃあしゃあと!……華琳様、この様な無礼な輩、即刻首を刎ねてしまいましょう!」
や、止めろ馬鹿!
「貴女は黙っていなさい! 私の運命を決めていいのは、孟徳様だけよ!」
「ぐっ! 貴様ぁ!」
あんたも煽るの止めなさいよ!
「春蘭さん、ここは華琳さんの決断を待ちましょう。……一旦落ち着いて下さい」
「ぐぬぬっ!」
「桂花、軍師としての経験は?」
「ここに来るまでは、南皮で軍師をしておりました」
南皮っつったら袁紹の本拠地か。
袁家で重宝されなかったのか?
「ふんっ、どうせあれの事だから、軍師の言葉等は聞き入れはしなかったのでしょう? それに嫌気が差して、この辺りまで流れて来たのかしら?」
……前から思っていたけど、華琳さんと袁紹の関係ってなんなんだろ?
良く知ってるっぽいけど。
「……まさか。 聞かぬ相手に説く事は、軍師の腕の見せ所。 ましてや仕える主が天を取る器であるならば、その為に己が力を振るうことに、何を惜しみ、何を躊躇いましょう?」
「……ならばその力、私の為に振るう事は惜しまないと?」
「一目見た瞬間、私の全てを捧げるお方だと確信致しました。 もしご不要とあらば、この荀 文若、生きてこの場を去る気はありませぬ。 遠慮なくこの場で斬り捨てて下さい!」
……大分頭がぶっ飛んでやがる。
やる事が大胆過ぎるだろ。
「……華琳さん、今、俺の意見を言っても?」
「……聞きましょう」
「……覇王たるもの自身に仕官して来る人材に対して、寛容で慈悲深くなくてはなりません。……冷酷で厳しい面は、敵や無能者に対してだけで充分です」
例え荀彧でなくてもそうだ。
まだ弱い陣営の俺達が仕官する相手に対してちょっとの事で処罰してはいけない。
「……ふっ、くくく……よろしい。 桂花、私を試す度胸とその知謀、気に入ったわ。 貴女の才、私が天下を取る為に存分に使わせて貰う事にする。 良いわね?」
「はっ!」
「ならば、先ずはこの討伐行を成功させてみせなさい。 糧食は半分で良いと言ったのだから、……もし不足したならその失態、身をもって償って貰うわよ?」
「御意!」
……あ~、良かった。
これで一件落着かな?
……しかしこれまたキャラの濃ゆい人物が陣営に入ったな。
ネコミミ様との絡みは次回となります。