-三年後 蒼夜 八歳-
最近、あほみたいにお金が懐に溜まっていく。
まぁ俺の本が売れてるおかげだが。
しかしこれ使わないと経済的に意味が無いじゃん?
そこで俺は考えた訳だ。
漫画喫茶を作ろう、と。
正確には漫画が無いので、書物喫茶だが。
前世の知識は自重する予定じゃなかったか?だって?
そんなもんとっくに諦めたわ。
最早後戻り出来ない段階まで来てたらしく、小説は最低でも半年に一度は刊行しなくてはならなくなったし、少しでも遅くなったら脅しのファンレターまで来たからな。
ファンって何だろう(遠い目)
まぁそんな事よりも、これでようやく俺が今まで書き貯めた凄い量の竹簡も役に立つし、お金も建物を作る所から始めると沢山消費出来る。
うん。経済に貢献してる俺。偉い。
「姉さん、ちょっと良いか?」
「…。」
何か凄く嫌そうだな。
「忙しいなら後でも良いけど?」
「…別に大丈夫だけどさ。」
?
「君の“ちょっと”は、全然ちょっとじゃないからね。」
…心当たりが有りすぎる。
申し訳無い。
「…いや、うん。まぁ、そうだね。」
「今回もそうなんだろう?」
「…はい。」
ほんますんまそん。
「…はあぁぁ。…それで、今回は何?もう僕も覚悟出来たよ。」
そんなこれ見よがしに溜め息吐かなくても良くない?
いやまぁ、俺が悪いんだけどね?
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カクガクシカジカシカクイムーブ
「…と、言う感じで、書物の読める喫茶店を作ろうと思う。」
「…悪くない発想だね。」
だろ?
「それで?土地は何処を考えてるんだい?」
「出来れば姉さんの書屋の近くが理想的だね。お互いにお店の宣伝も出来るし、協力も出来るでしょ?」
「確かにね。じゃあその方向性で話を決めて行こうか。」
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-数ヵ月後-
ついに俺の城(店)が完成した。
ヒャッホーイ!俺の城だぁー!
八歳で自分の店持ちだぜ!
将来性半端無いだろ俺!
ヘイヘーイ!ヘイヘイヘイヘーイ!
イカンな、テンションが上がり過ぎた。
でもしょうがないね。自分の店だからね。(ニヤニヤ)
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ふぅ。ようやく落ち着いて来たな。
さてと、先ずは内装を整えないと。
カウンター作って、本棚置いて、個室は少なめで良いか。オープン席を多めに作って、グループ席も作って、後は奥に遊戯室作ったら出来上がりと。
遊戯室には頭を使う象棋や囲碁などのボードゲームを置いて、仲間うちや見知らぬ人とも対戦してもらおう。
そのうち前世の知識を活用して、将棋やチェス、麻雀もおこう。
飲み物と軽食、後お菓子のメニューは手が汚れない物を適当に選んで料理人でも雇うか。
俺が作っても良いけど、一日中料理はしたくないからな。
料金設定は普通のネカフェに倣って時間制でOK。
店員を雇って指導をしたら、一月後には開店出来るな。
ふっ。己の才能が恐ろしいぜ。
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-数週間後-
という事で俺の理想の書物喫茶が完成したので、早速姉さんに体験して貰った。
「如何でしょうか?」
「凄く快適で良いね。特に個室が良い。椅子も疲れにくい高級品だし、あんな風に独りの世界になったら、集中して時間を忘れちゃうよ。」
そうでしょう。そうでしょう。
こだわりましたよ?
その変わり個室の料金は割高だけどね。
「飲み物も軽食も美味しかったし、書物の種類は僕の店と同等には有るし、料金も居すぎなければ安く済むから良いね。」
「それは良かった。…って事は、これで行ける?」
「良いんじゃないかな?僕もまた利用させて貰うよ。」
よし、最終チェックしたら来週にでもオープンしよう。
「…あ!そうだ、遊戯室はどうだった?」
「いや、僕一人でどう遊戯しろと?」
そりゃそうだ。
「じゃあ今から俺とやろうぜ。」
考えてみりゃ、姉さんには囲碁や象棋のルールを教えて貰っただけで一度も対戦した事無かったな。
「…まぁ君が良いなら、良いんだけどね。」
「何か不味い事あんの?」
「いやぁ、…僕と盤戯をする人はみんなつまらないって言うんだよね。」
おいそれって…。
「それでもやるかい?」
…やったろうじゃねぇか!
師匠を超えるのが弟子の務めだ!
俺は負けない!
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…姉さんには勝てなかったよ。
「…つ、強すぎる。」
おかしいぞこれ。
普通強くても中盤くらいから形勢が傾き始めるもんだが、姉さんの場合は中盤にはもう勝負がついている。
しかもそれに気がつかない。と言うよりも、終わってみて初めて、あれもしかしてあの時点で詰んでた?って状態になる。
しかも象棋、囲碁問わずだ。
これはつまらないって言われる理由もわかるな。
「あー。…ごめんね?」
「謝んなよ。余計に惨めになるわ。」
まぁ、目も当てられない程ボコボコにされたから、謝る気持ちもわからんでもないが。
だが、しかーし!
俺には将棋がある!
チェスは駒を作るのが大変で間に合わなかったが、将棋は直ぐに作れたからな。
これのルールを説明して、改めて勝負だ。
勿論わかってる。どうせ一・二局指したら俺を超えて行くんでしょ?
だがそれでも勝ったという事実が欲しいものさ。
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カクガクシカジカシカクイムーブ
ホウホウフムフム
「と言う訳で、象棋を改良して作ったこの将棋で勝負しようぜ?」
「…ふむ。…最大の特徴は取った駒を再使用出来る所か。…大部意味合いが変わってくるなぁ。」
説明しただけなのに、なんか敗北フラグが立った気がするんですが?
「よし、やってみようか。」
ビビるな、やったれ!
退けば老いるぞ…臆せば死ぬぞ!
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なん…だと…。
予想してたとは言え、まさか初回から負けるとは。
おい、将棋は穴熊が強いって言った奴誰だよ。
一方的にやられたんですが?
「これ面白いね。元々象棋は得意だけど、これの方が僕に合ってるかも。」
…才能って恐い。
でも姉さんがここまで強いのは嬉しい誤算だな。
これなら特別対局の目処が立つ。
「…姉さん、ちょっと協力してくれないか?」
「うわ、また出た、“ちょっと”。」
「まぁそう言わずに。姉さんにも悪い話じゃないよ?」
「はぁ。良いよ。言ってみな?」
「うん。週に一度、有料で希望者を募って姉さんと特別対局して貰う。何で対局するかは自由。そこで希望者が姉さんに勝った場合は一月の間お店の利用を無料にする。…この話を受けてくれるなら、…面倒だけど、今回は早めに俺の新刊を出すよ。」
「乗った!」
よしきた。
「けどそれは僕が負け混んだら不味くないかい?」
「あぁ、それは無いから大丈夫でしょ。」
「凄い信頼されてるなぁ。」
まぁな。俺の見立てが正かったら司馬徽でもどっこいじゃねぇかな?
ま、黒字は確定だろうな。
「じゃあ来週に店を開くから、姉さんの出番は来月位からお願いしようかな?」
「了解。…君も約束を守ってくれよ?」
お、おぅ。
ストック貯めといて良かったぁ。
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-オープン当初-
ほむほむ。
物珍しさからそこそこ客入りは良いな。
まずはこいつらを常連に仕立てあげよう。
…ケケケ、骨の髄までしゃぶったるわぁー!
(うわぁ。蒼夜が凄く悪い顔してる。)
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-一ヶ月後-
《挑戦者求む。当店の遊戯室に有る盤戯で荊州の“棋聖”楊 威方に勝った方には当店のご利用が一ヶ月間無料になります。》
「…“棋聖”って何だい?」
「姉さんは強いからね。わかりやすく称号をつけてみたんだよ。」
「それにしても、流石に大袈裟じゃないかい?」
良いんだよ。この時代は誇大広告は犯罪じゃねぇからな。
大体そんな事言ったら、あっちこっちに最強の将軍が居るじゃねぇか。
最強は呂布だろ!
そこは流石に揺るがんだろ。揺るがないよね?
「ま、サクッとボコボコにでもしてやりなよ。」
「了解。頑張ってみるよ。」
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-数週間後-
俺の店も軌道に乗って、売上も黒字の右肩上がりだぜ。
何時の時代でも漫喫(書物喫茶)は需要があるなぁ。
ふっ。笑いが止まらん。
「…ねぇ。…最近、皆僕の事を棋聖様って呼ぶんだけど。…どうしてくれるの?」
知らんがな。
あんたが対戦相手を完膚なきまでにボッコボコにしてるからだろ。
俺のターン!して相手のライフがゼロになってもまだ痛めつけてるからねこの人。
最早“棋聖”じゃなくて“遊○王”名乗った方が良いんじゃない?
「まぁ、光栄な事だと思って受け入れれば?」
「光栄ではあるんだけどさぁ。僕の店にまで来て、『一手御指南お願いします。』とか言う奴も居るんだよねぇ。」
それは迷惑だな。
「じゃあそんな事したら俺の店に出禁の仕組みにしとくよ。」
「うん。よろしく。」
しかしこの姉、未だ無敗である。
損になるけど姉さんに勝てる奴を見てみたいな。
またまたやらして頂きましたぁ!(ジョセフ風)
廖化の暴走が留まる事を知りませんね。
若干ですが、想定よりずれてきてます。
ちなみに、冒頭の方にあった脅しのファンレターですが、出した人物は恋姫キャラです。
一人いますよね?ロリ軍師以外にまだファンレターを送ってない軍師キャラ。