どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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無駄な戦闘描写はカット、カット、カァットー!!!
苦手なんです、赦して下さい。



たまにははっちゃけないとね?

今回の邑防衛戦の事後処理も無事終え、凪、真桜、沙和の3人も華琳さんに正式に仕える事が決まった。

曹操陣営にようこそ!アットホームな職場が貴方達を歓迎します!

 

本当に大歓迎だ。

アットホームな雰囲気なのは嘘じゃないし、ブラックじゃないとは言ってないから大丈夫だよね!

 

しかしまぁ将官がこれだけ揃ってきていると言うのに、文官、あるいは軍師が若干少ない気がする。

普通逆なんだけどなぁ。

組織を強固に作り上げるには、戦線の後方支援がきちんと出来て、本拠地の経済なんかを盛り上げる役割の文官タイプの人材の方が沢山欲しいんだけど。

高祖に仕えた蕭何みたいなタイプね。

 

袁紹陣営とかそうなんだよなぁ。有能文官が大量に居過ぎて突出して個人が有名にならないという。

強いて言うなら田豊と沮授の名前をたまに聞く位か。

史実での有名所とかも考えたら、あちらさんの陣営は本当に羨ましいわ。

 

あっ、だけど、史実では袁紹の軍師の一人だった許攸さんは何故かうちの本屋で筆頭店員(バイトリーダー)してたわ。

確か姉さんの教え子の一人で、一番弟子を自称するちとプライドが高い感じの人だった。

けどまぁ普通に良い人だったし、その能力はまぁまぁ高かったから、ここに来る時スカウトしとけば良かったかもしれん。

 

如何せん、今となってはうちは前線で戦うタイプの将官の方が圧倒的に多くなってるからな。

 

俺も秋蘭さんも、文官の仕事も出来るってだけで、本質は将官だし、純粋な文官タイプは文若さんと姉さんと霊里だけ。

 

……ちょっと不味いな。

陣営が大きくなれば大きくなる程、政務関連の仕事の手が足りなくなる未来しか見えない。

 

姉さんのお陰で下級中級の文官は足りて来たけど、今度は華琳さん直々の命令を遂行するような上級文官が足りなくなって来た。

今はまだ良いが、これより先を目指すなら後二、三人は文若さんクラスの上級文官が欲しい所だ。

 

……以前襄陽で会った、戯志才さんとかうちに来ねぇかなぁ。

あるいは水鏡女学院の幼女達をごっそりうちに……。

 

……ないわ。成人男性が幼女を多量にスカウトするとか完全に事案ですわ。

でもまぁこの世界ではどうなるかわからないから、諸葛亮と龐統には声を掛けるくらいならしても良かったかもしれぬ。

 

はわわ!あわわ!ってそこら中から聞こえて来て、職場が更にアットホームになってたかもな。

まぁ諸葛亮が曹操陣営に居たら違和感しかねぇけど。

 

俺がそんな風に先の未来を危惧していたら、賊の本隊の居城である砦に到着した。

 

「さて、張曼成の報告では万に近い数が集まっているとの話だけど、どうも官軍が賊討伐に乗り出しているらしいから、奴等は既に撤退模様のようね。」

 

華琳さんが言う通り、黄巾党の奴等は砦の放棄を決めているらしく、物資の運び出しをしている最中だった。

多分俺達にもまだ気付いていない。

明日到着してたら取り逃がしてたかもしれんな。

 

「わざわざ策を労して時間を掛ける必要もないでしょう。全軍突撃して一気に砦を落とすわよ。」

 

まぁ確かに。砦を落とす攻城戦みたいな感じだけど、実際は敗走する軍への追撃戦にみたいなもんだから、春蘭さん突っ込ますだけで充分か。

 

「華琳様、砦を落とした後について、一つ提案がございます。」

 

「何かしら?」

 

「戦闘終了の際に、全部隊に軍旗を立てさせて欲しいと思います。」

 

ふむ。成る程。

 

「この砦を落としたのが我々だと示す為ね?」

 

「はい。官軍の狙いもおそらくはここでしょう。ならば敵を一掃した砦に曹旗が翻っていれば……。」

 

「ふふっ、良いわね。その案───「ちょいお待ちを。」」

 

と、俺が華琳さんのゴーサインを途中で止めたので、文若さんから凄く睨まれた。

いや、ごめんって。

 

「……私の策に何か文句でもあるのかしら?」

 

「いや、策に文句はありませんよ?寧ろ流石と思う程良い考えだと思います。」

 

よっ、流石荀彧、名軍師!

だから睨むのは止めよう!

 

「文若さんの策は、曹 孟徳の名を喧伝するにはとても良い策だと思います。……けど、軍旗って凄い金がかかるから勿体無いと思うんですよね。」

 

いや、マジで。

あれ一本作るのに結構な金がかかるのだ。

戦乱においても簡単には破れないような質の良い頑丈な糸を使ったり、目立つ様に金糸や銀糸を使ったりするからね。

 

「はぁ!?勿体無い!?宣伝をするのに金をかけるなんて常識じゃない!ここは名を喧伝するのに金をかける場面よ!」

 

「いやいや、そうではなくてですね。……金をかけずに喧伝する方法があると言ってるのですよ。」

 

やるななんて一言も言ってないぞ。

 

「要は、華琳さんがこの砦を落としたと派手に示せれば良い訳じゃないですか?……そういう事なら俺にお任せを。元来、俺は戦場なんぞよりこういった分野の方が得意なんですから。」

 

「っ!」

 

俺がニヤリと笑ってそう言ったら、文若さんが驚いた表情で俺を見る。

いやね、俺ってば本当はただの物書きだぞ?

まぁ廖化だから武将だろ、って言われたら言い返せないが。

 

「それに帰り道で軍旗がないとか、街に凱旋する時に淡白になるから、あんまやらない方が良いと思うんですよね。」

 

市民にショボイって思われるぞ。

 

「クククッ、面白い、蒼夜貴方に一任しましょう。派手に私の名前を喧伝してちょうだい。……桂花も、良いわね?」

 

「了解。」

 

「……はっ。」

 

いや、なんか俺が功績横取りしたみたいで悪いね?

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「走れ、走れー。」

 

戦闘終了後、俺は護衛隊を縦に並べて一直線に走らせている。

 

黄巾党?

あぁ、あいつらは春蘭さんが突撃したら、簡単に部隊が崩壊して叫んで逃げて行ったよ。

一刻もかからずに殲滅完了したわ。

 

だから今は約束通り、華琳さんの名前を喧伝する為の準備中だ。

 

何故護衛隊を走らせているかと言うと、地面に字を書く為だ。

 

護衛隊が大盾を地面に擦らせて走ると、少しずつ地面が削れて、五百人が通り過ぎる頃には膝した位まで地面が窪むのだ。

 

元々は騎馬部隊を相手にする時の為に考えた方法だ。

大盾の部隊はどうしても騎馬には弱いからな。

だったら馬が走れない様にしてやろうと思って考えた訳だ。

通常ならジグザグに走らせて、地面を荒らす為のものだが、俺が槍で地面に下書きした所を走らせると文字の道が誕生する。

 

後は窪みの部分に油を軽く引いて、燃料と一緒に燃やせば、あら不思議、地面が焦げて黒々としたデカイ“曹”の文字の出来上がり、って訳だ。

 

幅百メートルくらいはあるだろう曹の文字を見た皆の反応は、それはそれは俺にとって痛快なものだった。

 

「あははははっ!これは私にも予想出来なかったわ!流石ね蒼夜!」

 

「っ、す、凄いっ!」

 

「おぉ、驚いた。これには官軍もさぞかし驚くだろうよ。」

 

「うむ!華琳様の文字を大地にでかでかと書くとは、やるな蒼夜!」

 

「うわぁ!蒼夜様凄いです!」

 

「こんなもの、初めて見たっ!」

 

「なはははっ!アホや!どない発想なっとんねん!」

 

「とんでもないのー!」

 

「これはっ!……ふふっ、この地の地図に曹の文字も付け加えましょうか。」

 

「はぁ。……一体僕はどこで育て方を間違えてしまったんだろうか。」

 

ふはははは!

どうだ、凄いだろう?面白いだろう?

久しぶりにはっちゃけた気がするぜ!

 

姉さんは何も育て方失敗してないから気にすんな!

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

後日談

 

曹 孟徳、大地に名を刻む。

という噂があちこちから聞こえて来て、実際に文字を刻んだあの砦は一種の観光地として大分栄えた。

 

華琳さんは大満足の笑顔で俺に休みという名の報酬をくれたのだった。

 





史実では許攸ではなく、許汜が楊慮の生徒だったそうです。
ですが、この世界では後々の為に許攸が筆頭店員になりました。

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