本日は2回投稿です
久しぶりに登場させる事が出来て良かった
華雄等官軍の撤退を見送った俺は、気持ちを切り替えて春蘭さんが突撃して行った戦場を見る。
……どうにもキナ臭いな。
さっきまで官軍相手に押せ押せムードで勝勢だった黄巾党が、いやにあっさりと退却している。
さっきまで勝ってた奴等があんなにも潔く引くものかね?普通はもっと粘るだろ。
いくら春蘭さんの突撃が強いとは言っても、これは少し怪しいんじゃないか?
……何が狙いだ?
釣りか?……いや、ここらは拓けているんだ。兵を伏せる場所がない。
退却する方向に地の利が得られる場所でもあるのか?……それもないな、ここに来る時に地理の地図で確認したが、ここから先には林しかない。
だとしたら林の中で乱戦になる事を期待しているのか?……まぁ確かにそうなったら数が多いあちらに多少の利はあるかもしれんな。
うちは一万しか兵を率いてないから、単純に計算したら一人辺り二人を相手にしないといけない。
しかしそれは俺達を舐め過ぎだ。
まともに訓練もした事ない奴等が、うちの厳しい調練に耐えて来た兵を相手に二人程度で勝てるとは思えん。
大体さっきまで官軍と戦っていたのだから、兵もある程度は損失してるだろうし、疲労も蓄積されてるだろ。
……俺の考え過ぎかもな、純粋に春蘭さんが強いんだろう。きっと。
……待て、いやいや、慢心するな俺。
確かにただの乱戦ならどうという事はないが、一部隊ずつへの多人数奇襲ならどうだ?
通常、こういった視界の悪い場所での索敵は五人一組で行うのが常套手段だ。
その一部隊を二、三十人で囲んで即効で殺し、応援が駆けつける前にまた逃げる。
そんなゲリラ的な戦法を使われたら少しばかり犠牲が出過ぎるんじゃないか?
奴等にそれが出来るか出来ないかは問題じゃない。
そうする事を出来る可能性があるのが問題だ。
……訂正しよう。奴等には地の利がある。
今回の敵将は頭が回る奴かもしれんな。
俺達が林に入るのを躊躇うだろう、という人の心理を読み取る事に長けているのだとしたら、相当厄介だ。
けどまぁ大丈夫だろう。
春蘭さんにも季衣にもこの林に入るなとは言ってある。
もし熱くなってたとしても地理がきっと止めてくれるだろう。
この林からは豫州の扱いだからな。
賊が豫州に入る前に方をつけたかったんだがなぁ。この調子だと林の中まで逃げ込まれそうだ。
……ん?豫州?
……あっ、しまった。やられた。
俺は勘違いをしてしまった。
敵将は人の心理を読み取るやからじゃない。
戦況と情勢を読み取るのに長けているタイプだ。
俺達曹操陣営が袁家と仲が悪いってのは割と有名な話だ。
正確には華琳さんと袁紹が、だが。
その繋がりで華琳さんは袁術の事も快く思っていない。
その情勢を敵は知っているんだ。
豫州は袁術が治める領土だ。
俺達が州境に兵をやるのも恐らくは警戒するだろう。
黄巾党の賊が居るからってのも、言い訳にはならない。
もし間違って州境を侵して軍隊を進軍させたら、袁術軍に攻撃されてもおかしくはない。
……そしてこの状況から見て、恐らくは居るのだろう、林の向こう側に袁術軍が。
……ちっ、曹操軍と袁術軍の二軍が敵に利用されてる。
今回の敵将、間違いなく天才の類いだ。
ここまで翻弄されるのは流石に予想外だぞ。
俺は急ぎ春蘭さん達に合流すべく、馬を走らせた。
─────
春蘭さん達に合流し、敵の策略を説明した俺は、春蘭さん達の黄巾党への追撃を林の手前で止めさせた。
「本当に居るのか?林の向こう側に袁術軍が。」
「確実に居ます。俺達が追撃を止めたというのに、敵が攻勢に出ない時点で間違いはありません。」
今でも敵の数は俺達の軍よりも多い。
なら一旦落ち着いたこの状況で軍を建て直し、俺達に攻勢に出るのが定石だ。
なによりこいつらには官軍を退けたという自信もあるだろう。攻撃しない理由はない筈なんだ。
だから攻撃しないという事は、何か狙いがあると見てしかるべきだ。
恐らく敵将の狙いは俺達を林の中に入れ、袁術軍と俺達がぶつかった時のどさくさに紛れて悠々と逃げ出す事だろう。
「しかしだな、ろくに討伐も出来ずにこのまま黙って見逃す訳にもいかんのではないか?」
春蘭さんが言う事にも一理ある。
けどまぁそれは問題ない。
「大丈夫ですよ。こちら側には俺達が、向こう側には袁術軍が居る筈です。……黄巾党の奴等が逃げ出す場所は殆どありません。」
……しかし時間を掛けすぎると林のどこかから逃げられるかも知れない。
多少は急がないといけないだろう。
「今から袁術軍に向けて使者を送ります。こちらの事情を説明し、黄巾党に対しての協力を要請しましょう。」
「うむ。……断られた場合はどうするのだ?」
……正直、どうしようもない。
「……その場合は打つ手がありません。こちらから豫州に入ればどうなるかわかりませんから、待つ以外に取れる手段がありません。」
「……歯痒いな。林の中にサッと入って、サクッと討伐して、ササッと出れば良いのではないか?」
統治権の問題があるんですがそれは。
……まぁ春蘭さんに政治を理解しろと言うのは無理か。
「難しい話は置いときましょう。早い話、勝手に豫州に入ったら華琳さんから凄く怒られると思って下さい。」
「わかった、絶対に入らん!」
……いや、下手したら豫州方面に敵を逃がした時点で華琳さんには怒られるかもしれん。
まぁ今回は敵が一枚上手だったって事で赦して貰おう。
「で?誰を使者として送るのだ?」
「それ、は……。」
どう、しようか。
……使者を送るとは言ったが、今回の使者の役割は非常に危険な任務だ。
何故なら袁術軍にたどり着く為に、黄巾党が蔓延るこの林の中を突っ切って行かなければならないのだから。
林を迂回するのは時間が掛かり過ぎるから駄目だしな。
しかも袁術軍への攻撃意思が無い事を示す為に大人数では使者を送れず、多くても十人程度で行って貰わないと行けない。
……そんな少人数が、林の中で黄巾党に囲まれでもしたら、……厳しいと言わざるを得ない。
俺が行く。……と、本来だったらそう言う。
武力に多少の自信があるという事もあるが、林の様な足場の悪い場所での機動力はそれなりに高いと自負しているからな。
それに袁術軍に黄巾党へ対する協力要請をする際の事情説明もこの中では一番上手く出来るだろう。
断られそうな時に相手を説得する抗弁もな。
……けど、行けない。
俺が使者としてこの場を離れた時に、もし敵将がまた何かしらの策を仕掛けて来た場合は誰が対抗するんだ。
春蘭さんや季衣では無理だ。
地理には、……期待感はあるが、それでもこの戦場の全体像を見て指揮するのは、まだ無理だろう。
……こんな時に軍師が居ないとはな。
……どうする。
張曼成でも今回の任務は流石に厳しいだろうな。
「私が行きます。……行かせて下さい、蒼夜殿。」
「……地理。」
危険だ。
ちょっとした死地だぞ。
そんな場所に地理を向かわせるってのか?
……やっぱり俺が___
「私にお任せを。賊程度切り伏せて進みます。」
「……っ!……はぁ、わかった。頼んだ地理。」
絶対に譲らん頑固な眼をしやがってこの野郎。
死んだら承知しないぞ、ばーか。
「曼成、悪い。地理の護衛を頼めるか?」
「はっ!護衛隊の名に誓って必ずお守りします!」
ふっ、そういや護衛隊では地理大人気だったな。
俺は現在のこちらの状況を記した書簡を地理に預け、地理と張曼成と選りすぐりの護衛隊員八名を使者として送り出した。
─────
俺の心配は杞憂だったらしく、地理達は無事半刻後に戻って来た。
おっ、相手方の使者を連れて来たって事は協力関係成立したん___
「おいっす~♪」
ん?
「久しいな蒼夜。」
んんっ!?
いや、いやいや待て待て!
「何で居るのお前等!?」
袁術軍かと思ってたら幼馴染みだったでござる。
あるあr___ねぇよ!
俺はその日、久しぶり雪蓮と冥琳に再会した。
林を抜けて孫策軍へと使者に来た地理。
「ん?……ねぇ冥琳、あれ地理じゃない?」
「む?……そうだな。何故地理がここに……。」
「雪蓮様に冥琳様!?何故こちらに!?」
過去にそんな描写書いた事ないけど、3人は知り合いの設定です。
ヒロイン候補3人が出会いましたが、別に修羅場ではありません。