どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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今回の話は難産でした
ちゃんと書けてたら良いのだが



蒼天すでに死す、黄天まさに歌うべし

『蒼天已死 黃天當立 歲在甲子 天下大吉』

(蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉ならん。)

 

これは有名な黄巾党のキャッチフレーズ、というかスローガンのようなものだ。

 

簡潔に説明すると、漢王朝は既に死んでいるから、俺達黄巾の者(太平道信者)が今こそ立つべきだ。今年は甲子の年(干支の最初の年)だから、天下は平安に治まるだろう。ってな感じだ。

 

んな訳あるかとツッコミ所満載だが、この言葉が意外にも民衆の心を打つもんで、この言葉が世に出回り始めてから、黄巾党はその勢力を拡大させたのだ。

当然この世界でも。

 

一見良い事を言ってる風で、ただ反乱を促すだけのこの言葉が、何故こんなにも人心を得られたのかと言うと、徳を失った人物を倒して徳のある人が天下を取るのは、天帝(神様)の意思に叶う事であるという革命思想が一般常識だからだ。

 

……そんなんだから反乱ばっか起こるんだよなぁ。

 

だから意外にも、本当に意外にも、黄巾党の指導者というのは、荒れた世を憂いてそれを正さんとする熱血漢だったりする。

波才だってその言葉で立ち上がった者の一人だ。

 

だが全ての人がその様に性根が善人と言う訳ではない。

この混乱に乗じて悪さを企む阿呆は当然居る訳で、黄巾党に属する者の大半はただの賊みたいなもんだ。

実際に街や邑から物資や食料を奪っているし。

 

だから理想と現実が食い違うだろう黄巾党指導者には多少同情するなぁ、なんて思った。

いやまぁ過去に俺の寝不足を誘発した事は赦さんが。

 

特に発端になった張角なんて、絶対こんな事になるなんて思ってなかっただろう、可哀想に。

 

……そう、思っていた。

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「……は?……いやいや、……ごめん、もう一回言って?」

 

「はい。黄巾党発足者であるとされている張角とは、過去襄陽に訪れた事のある旅芸人、数え役満姉妹の長女である可能性が高いです。」

 

太賢良師が旅芸人?

……ギャグかな?

 

「おいおい地理、それは流石に冗談でも突拍子が無さ過ぎるぞ。……最近になってようやく首謀者の名前がわかったからと言って、それは流石に笑えないわ。」

 

いやまぁ俺は最初から黄巾党発足者が張角なのは知ってた訳ですが。

何故か黄巾党の奴等は異常に口が堅いから、最近まで全く知られてなかったんだよなぁ。

 

「いえ、冗談ではなく大真面目です。数え役満姉妹、彼女等の名前はそれぞれ、長女を張角、次女を張宝、三女を張梁と言います。しかし彼女等は基本真名で活動をしているので、その事を知っている者は少ないかと。」

 

……おいマジか。

妹に張宝と張梁が居るんなら本物だろうな。

 

「私も最初は同性同名かとも思ったのですが、……大賢良師、もとい天公将軍と称される張角の側には地公将軍と人公将軍がいるなんて話を聞いて、もしや彼女等の真名が由来しているのではないかと思い___」

 

「本物である可能性が高いと思った訳か。」

 

……マジでどうなってるんだこの世界は。

頭が痛いぞ畜生。

最早頭が痛いってか、頭痛が痛いって感じだぞ。

頭おかしくなるわ!

 

旅芸人がどうしたらそうなるんだ。

張角だって絶対こんな事になるなんて思ってなかっただろう、ド阿呆!

 

「……とりあえず、華琳さんに報告だな。」

 

テンションだだ下がりするわ。

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「……頭が痛いわ。」

 

ですよねー。

 

「黄巾党首魁である張角の正体が、ただの旅芸人である可能性が高いなんて……。朝廷に報告しても、誰も信じないでしょうね。……寧ろ頭のおかしい人物として疑われそうだわ。」

 

そりゃそうだろうな。

こんなん黄巾党を追いつつ、数え役満姉妹とやらの情報にも精通してないと絶対にわからんわ。

 

「……とにかく、今はあくまで可能性の段階、確実な情報を得るまでは口外しないでちょうだい。」

 

まぁ時間の問題な気もするが、その方が良いのだろうな。

 

と、思ったのが数日前。

 

黄巾党の情報収集をしていた凪が、大手柄な事に黄巾本隊と思われる大隊の居場所を探り当てた。

そしてそこを偵察してみると、大きな舞台で歌う三人の芸人を中心に黄巾党の奴等が渦巻いていたらしい。

 

はいビンゴー。

大賢良師張角、もとい数え役満姉妹で確定だ。

 

その報告を聞いた華琳さんも、どことなく複雑そうな表情をしていた。

でもまぁ一応黄巾で、討伐対象な事には変わりないから、俺達は全軍を挙げて本隊討伐へと乗り出した。

 

……やっぱりテンションは上がらない。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「天和ちゃんを守れー!!!」

 

「「「うおぉぉぉお!!!」」」

 

「地和ちゃんを死守するんだー!!!」

 

「「「ほわっ!ほわっ!ほわっ!!!」」」

 

「人和ちゃん逃げるんだー!!!」

 

「「「ほわぁぁぁあ!!!」」」

 

……俺は今、窮鼠猫を噛むと言う言葉を体感している。

 

ここにいる黄巾党の奴等は決して強くないのに、異常な士気の高さと粘り強さで、俺達に予想以上の苦戦を強いて来る。

……いつの時代もアイドルファンって怖いわぁ。

 

「おーい、邪魔すんなー、邪魔しなかったら殺さないから。……多分。」

 

「蒼夜殿!やる気を出して真面目に戦って下さい!」

 

いやだって、相手がアイドルとそのファンだもの。

どうやる気を出せと?

 

「貴様等!邪魔をするなぁ!!!」

 

春蘭さん元気だなー。

……ちょっとは頑張るか。

 

「……よし、んじゃ、死にたい奴から前に出て貰おうか!」

 

そうして俺が真面目に戦い始めてから二刻後、凪、沙和、真桜の三羽烏が張三姉妹の捕縛に成功して、戦闘は終了した。

 

そして陣幕にて幹部連中と張三姉妹はついに面会を果たした。

……正直興味ねぇ。

 

「……はぁ。……貴女達が、張三姉妹ね?」

 

「は、はい。」

 

三人は顔を青ざめ、プルプルと震えている。

可哀想だが同情出来ないと言うか、いや、同情するが自業自得と言うべきなのだろうか。

 

「何故こんな事態になったのからしら?」

 

「そ、それは___」

 

「地和姉さんが歌の途中で、天下を取るわよなんて言うから!」

 

「わ、私!?私が悪いの!?天和姉さんも人和もノリノリだったじゃない!大体、歌と踊りで天下を取るって意味に取るでしょ普通!」

 

「喧嘩しちゃ駄目ー!うぅ、曹 孟徳様ぁ、私が責任取りますから二人は助けて上げて下さい。」

 

「て、天和姉さん!だ、駄目そんなの!」

 

「わ、私。……私が実際には皆を動かしてたから、斬るなら私にして下さい!」

 

……アホくさ。

 

「華琳さん___」

 

「何かしら?」

 

「こいつら、俺達が追ってる張角じゃありませんわ。」

 

発端はこいつらなんだろうけどな。

 

「……と、言うと?」

 

「俺達が追ってるのは、大賢良師張角。こいつは数え役満姉妹長女の張角。……別人です。」

 

「え?え?……張角は私だけど?」

 

わからんかな?

 

「じゃあ聞くがな?……この文言を発したのはお前等か?」

 

俺はそう言って、張三姉妹に黄巾党のスローガンの文章を見せる。

 

「……えっと、……お姉ちゃん馬鹿だから難しい字は読めない。」

 

「あっ、最近黄巾党の奴等が使ってる文章。」

 

「……私達の誰も、こんな文章書いてません。」

 

だろうな。

 

「早い話、これを書いて世にばらまき、人を集めて朝廷に反乱を促している人物を俺達は張角としている。……実際の所、この乱の発端はお前等なのかも知れないが、お前達の名前を利用して乱を起こしている指導者を討伐するのが、本来の俺達の目的だ。」

 

「……ふむ、成る程。」

 

「華琳さん、例えここでこいつらを斬った所でこの乱は終わりませんよ。結局、そのまま後継者を自称する奴が現れて、反乱は続きます。……別に斬るのを反対するつもりは全くありませんが、どうせ青州へと反乱鎮圧に向かう事になるでしょうね。」

 

だからアホ臭いしどうでも良い。

 

「……そうね。……張三姉妹、貴女達が朝廷に歯向かうつもりがない事は理解したが、この大きな混乱を起こした罪は重い。よって、罰として我が領地にて軍役を課すとする。」

 

ほぅ、華琳さんにしては大分良心的な罰だなぁ。

 

「ぐ、軍役……。」

 

「うぅ、絶対死んじゃう。」

 

「そんな……。」

 

あぁ勘違いしてるな?

 

「軍役と言っても、兵の慰安や招集が主よ。……つまり、私の領地の中でなら今まで通り歌ってくれて構わないわ。」

 

「「「あ、あ、ありがとうございます!」」」

 

良かったねぇ。

それにしても、あんなに民衆を熱狂させるとは、こいつらの歌どんだけ凄いのかね?

 




「お前等ここで捕まって運が良いな?」

「……どこがよ。」

「お前等も青州目指してたんだろ?考えてみろ、お前等が青州に入ってたら、お飾りとして利用されるか最悪殺されてるぞ。偽物からしたら、本物は邪魔でしかないんだから。」

「「「っ!」」」

実は死にかけてた張三姉妹でした。







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