やはり恋姫における桃香の扱いの難しさを改めて確認出来ました
この作品は魏ルート準拠なので、登場回数は多くありませんが、上手く、桃香を描くように努力してみます
華琳さんは本格的に劉備の事が気に入ったのか、青州へ向けて行軍してる間は、殆どの時間を彼女と語り合っていた。
いや、どちらかと言えば華琳さんによる統治者講義みたいな感じだったけども。
しかも内容は幅広く、政治政務に収まらず、儒教に対する考え方や大陸全体の情勢、中央政府の腐敗具合と多岐に渡った。
また華琳さんの話を聞く劉備が、生徒として優秀と言うか、とても素直な性格で、華琳さんの一言一言に感心して良いリアクションをしながら華琳さんを立てるもんだから、華琳さんもかなり気分良く話をしていた。
天然で華琳さんをヨイショして情報を引き出している辺り、実は外交官とか向いてるかもしれない。
……まぁ、あの性格では情報の漏洩もする可能性があるけど。
暴走して華琳さんが機密事項まで話さないか心配もした。
なんだかんだと、劉備は今は義勇軍の長。
まだ庶民でしかない。
知らなくて良い事まで知ってしまったら色々と不味いからね。
あんたらまで宦官に目をつけられたくないでしょ?
うちはもう手遅れだけど。
それにしても、華琳さんがこうも劉備を厚く持て成すものだから、義勇軍の他の面子も華琳さんに対して態度が変わって来た。
なんと言うか、警戒から敬意に変化したのだ。
と言うのも、流石に大将を二人っきりにする訳にもいかないから、毎度二人が語り合う時は護衛の様に俺や関羽なんかが近くで侍る訳だ。
まぁ秋蘭さんの場合や、たまに軍師連中も居る訳だけど、殆ど皆が華琳さんの語る持論に熱中して耳を傾ける。当然俺も。
特に酷いのが文若さんで、たまにうっとりして馬から落ちそうになる事もあった。
でもね華琳さん、貴方はどう思う?
って急に俺に話を振らないでくれ。
返答に困って、俺も自分で何を話したかあんまり覚えてないぞ。
……多分、無難な事しか言ってないと思うけど。
久しぶりにキラキラした目で他人から見られた気がする。
……一体俺は何を言ったんだ。
諸葛亮や龐統なんかも、俺が華琳さんに仕える理由が良くわかった、なんて言っていた。
まぁわからなくもない。
普段の才気溢れる華琳さんを見たら、圧倒されるだろうよ。
関羽も華琳さんに対して感謝しているようで、統治者としての得難い体験談を聞いてからは敬意を示していた。
これ歴史変わったんじゃね?
関羽が魏に来て俺の上司になるパターンないかな?
……うん。ないなぁ。
まぁ張飛だけはつまらなさそうにしていたけどな。
仕方ないから季衣を紹介して、二人には予備に隠していた燻製肉を与えておいた。
……ものの数秒で消えたのは驚いた。
結構作るの手間なんだけどなぁ、もっと味わってくれ。
そんな訳で、俺達と義勇軍はとても良い関係を結べたと思う。
……ただ、これは俺にしかわからない心配事なんだが、これ、自分の手で敵を育ててない?
いやまぁ、この世界がどうなるかわからないし、もしかしたら劉備陣営と敵対しない可能性はあるけど、……俺は前世の知識があるから、曹操と劉備はどうしても最終的には争うイメージがある。
まぁ前世の三国志知識が必ずしも役に立つ訳ではないけどな。……孫堅の例もあるし。
しかしまぁ、何と言うか、強き覇王と庶民の徳人っていう構図は、どう考えても項羽と劉邦ですよね?
……嫌な予感全開なんですが。
いやまぁ流石に劉備を劉邦になぞらえるのは違うな。
歴史に語られる劉邦はどうにも、もっと人間臭いからな。
劉備は善性が過ぎる。その点劉邦はあまり性格が良かった訳でもないし、失敗談とかも結構あるしな。
……時代的に声を大にしては言えんが。
華琳さんも項羽の様な傍若無人じゃないし、何より華琳さんは民衆から支持されてるしね。
多分俺の気にし過ぎだろう。
まぁそれに、仮に対立する結果になるとしても、それはまだ先の話で、今は味方だ。
まずは目先の目標、黄巾党の討伐だ。
─────
そうして俺達は無事に青州に到着して、黄巾党本隊が根城にしてる場所まで行軍して来た。
まぁ何度か黄巾党とぶつかる事はあったけど、うちの軍に義勇軍の関羽と張飛が加わったら、相手が可哀想になるレベルの蹂躙劇だった。
戦闘があったのに、無事と言い張れるレベルで。
……しかしこれはマジで要塞って感じだな。
話では三十万近く集まっているらしいが……。
「さて玄徳、私達はここに陣を張るけれど、ここでも協力するつもりがあるなら、近くに陣を張って欲しいと思うわ。」
「はい、度々お世話になるのは申し訳ありませんけど、隣に陣を張ろうかと。」
「よろしい。陣を張る間に私は総大将の何進大将軍に挨拶しに行くわ。貴女も来るかしら?」
「えっと、義勇軍の私なんかが行っても良いんですか?」
「えぇ、私の協力者として紹介するわ。面倒だけど、高官に顔を覚えて貰うのは悪くないわよ。」
「あ、ありがとうございます!」
好待遇過ぎない?
いやまぁ義勇軍でも、黄巾討伐に参加するならどうせ顔見せ位はあるけども。
……華琳さんは劉備をどうしたいんだ?どうなって欲しいんだ?
まさか、私を超えて行け!みたいな、本当に弟子を育ててるつもりないだろうな?
……まぁ良いや、天才の考えてる事なんざわからん。
と、そこで俺は各地から黄巾討伐へと赴いている諸侯の旗を眺める。
えーっと、まずは漢の旗の隣にある何と袁。
その向こう側は馬。馬騰かな?
公孫の旗に、奥には劉。多分劉表か劉焉か他にも候補が、って劉姓多過ぎぃ!わからん!
他にも旗が乱雑してて目的の旗が探せん。
……っと、二つ目の袁。これは袁術か。
その隣にようやく目的の旗があった。
孫の旗みーっけ。
「華琳さん、ちょっと雪蓮達に挨拶して来ますわ。」
「えぇ。一刻くらいなら自由時間という事で好きになさい。」
うぃーす。
華琳さんから許可が出たので、俺は孫家の陣地に向かって歩き始めた。
……それにしてもまぁ、黄巾討伐が三国志オールスターみたいになっちゃってるなぁ。
そら、どう頑張っても黄巾に未来はないわ。
と、孫家の陣地に着いたな。
「よう、元倹が来たって、雪蓮に伝えて来てくれ。」
「しゅっ、守護鬼様!?た、ただいま行って参ります!」
お、おぅ。
未だに守護鬼効果あるんだなぁ。ビビるわ。
「おいっす~♪」
「おいっすー。」
「そちらもようやく到着したか。」
到着したよぉ、時間掛かったけど。
義勇軍が合流したから予定より二日程遅かったけどね。
義勇軍の兵の練度が低くないって言っても、あくまで義勇軍だしね。
それに義勇軍分の糧食集めもしないといけないから、ちょっと街に寄ったりしたし。
「ってかお前ら遠いのに随分早いな?やる気満々じゃん。何、そんなに功を挙げたいの?」
「まぁな。前回は誰かさんに功績を取られたからな。」
おい、嫌味かこら?
あれはチャラになっただろうが。
「冥琳が張り切ってるのよ。ここで良い功績を挙げて、名前を売るって。」
「ん?……あぁ成る程。周りの豪族達に対する牽制か。」
「相変わらず察しが良いな。……雪蓮がいくら呉郡太守と言えど、奴等はどうしても文台様と比べるからな。彼のお方は力で皆を纏めていたので、雪蓮にもそれを求める傾向がある。これを機に、雪蓮の力も文台様に劣らない事を示さねばならんよ。」
面倒くせぇ。
呉は洛陽から遠い分、こっちの権力の効果が薄いからなぁ。
「まっ、今回は私達が功績を貰って行くわよ。張角の首どっちが速く取れるか競争する?」
……まぁ本物はうちに居るんですがね?
何度見てもあれを本物とは信じたくないわぁ。
「それにしても自信があるな?」
「まぁねぇ~♪」
ふむ、ここに来たばかりだから良くわからんが、ここまで自信があるなら、かなり高い勝算があるんだろう。
……華琳さんに孫家との協力を促しても良いかも知れんな。
「まっ、何にせよ、これが終わったら戦勝祝いだ。後で久しぶりに飲もうぜ。」
「楽しみしてるわ。」
「ふっ、慢心して足元を掬われるなよ?」
まぁ慢心はいけないことだが、この状況はどうやったら負けるんですかね?
「ところで、今回は誰を将として連れて来たの?」
「ん?祭と思春と明___」
「おいっ!雪蓮!」
「ほぅ、明命まで連れて来てるのか。……ほぅほぅ。」
何やら察した主人公でした。