どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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そろそろ黄巾編もラスト近いです
黄巾編が終わったら、閑話を出しつつ、少し休憩しようかと思ってます



最初の歪み

「大将軍はどうでした?」

 

俺が孫家の陣地から戻って来たら、華琳さんと劉備も程無くしてこちらの陣地に戻って来たので、俺は華琳さんに何進の様子を聞いてみた。

 

「呆れる程に慢心していたわ。麗、___袁紹と一緒に高笑いしていたもの。」

 

「あ、あはは。」

 

呆れた顔の華琳さんに、劉備も苦笑いのみ。

劉備が人を庇わない程にダメダメだったのか。

 

「まぁ気持ちもわかりますけどね。ここに並んだ旗を見てるだけでも勝利を疑えなくなりますから。」

 

「そうね。名君名将と言われる強者が各地から集まっているものね。……けど、私達はそうも言ってられないわ。その名君名将と功争いをしなくてはならないもの。」

 

あー、やっぱりそうなったか。

 

「何進は早々に諸侯を統括するのは諦めたようね。張角の首を取った者を第一功、張宝、張梁の首を準功と定めただけで、後は自由に攻めろと言われたわ。……態々一つの軍に纏めて各々の持ち味を殺すくらいなら、各自のやり方で全力を尽くした方が効率が良いそうよ。……尤もらしい事を言っているけど、責任の放棄としか思えないわね。」

 

しかも無駄に反論し辛いしな。

まぁ何だかんだ宦官共と政争を繰り広げているんだ。

こういう言い訳染みた言葉には慣れていて上手いのかもな。

 

「そっちはどうだったかしら?雪蓮達の様子はどう?」

 

「あー、……元気でしたよ?……ってのは聞いてませんよね。」

 

「そうね。あの娘が元気なのは目に浮かぶわ。」

 

まぁね。寧ろ元気がないと心配するわ。

 

「まぁ今回の討伐にかなりの自信を持ってましたね。……恐らく高い勝算があるのかと。口振り的にも真っ先に仕掛けるでしょうね。」

 

「……ふむ。彼女達より到着するのが遅くなったのは失敗だったわね。冥琳に考える時間を与え過ぎてしまったわ。……こちらが挽回するのは間に合いそうかしら?」

 

「俺の見立てでは厳しいですね。上手くやるにしても、あいつらの策に合わせて、どさくさに紛れて功を取りに行く位しか思い付きません。」

 

明命の存在が痛過ぎる。

彼女が居るのを知れたのは良かったが、まるで対策が取れん。

 

恐らく潜入工作でもしてるだろう。

思春さんも居る事だし、その手の隠密作戦を取ってると思うが、この手の作戦は孫家の独壇場だろう。

俺達が手を出すには厳し過ぎる。

だから取れる手は、孫家が仕掛けて、黄巾党が混乱した時のどさくさを狙うしかない。

 

流石に張曼成に明命レベルの仕事をして貰うのは不可能だしなぁ。

 

孫家で一番強い将は祭さん。

でも、陸戦、水上戦、隠密作戦、個人の武勇と、どんな場面でも活躍出来る、一番頼りになるのは思春さん。

そして個人の武勇はそうでもないが、偵察、諜報、潜入工作、恐らく暗殺まで出来るだろう、一番危険なのが明命だ。

 

俺がこの三人の中から誰か一人を仲間にするなら明命を選ぶ。

基本的に俺が張曼成を使って策を完成させる様に、この手の人材は戦には必要不可欠だと思っている。

元来、将の資質のある張曼成をたかが一部隊の長に納めている理由は、将としてより諜報としての価値の方が高いと判断したからだし。

 

……そして今回は功争いする相手がよりによって、その諜報の分野で大陸トップクラスだろう明命が相手だからなぁ。

 

「……火事場泥棒の様なやり方で功を挙げたいとは思わないわね。……仕方ない、急いで軍議を開きましょう。玄徳、義勇軍の意見も聞きたいわ。将を集めてくれるかしら。」

 

「は、はい!わかりました、すぐに!」

 

流石に諸葛亮と龐統でも厳しいんじゃないかなこの状況は。

 

そして俺達は華琳さんの号令のもと、直ぐに軍議を開いた。

華琳さん、春蘭さん、秋蘭さん、文若さん、姉さん、俺、劉備、関羽、張飛、諸葛亮、龐統。

超豪華面子。

俺が場違いな気がしてきた。

ここに来てないメンバーみたいに外の警護をしてた方が良いんじゃね?

 

「さて、まだここに来て間もないのに、そうそう集まって貰って悪いわね。」

 

と、華琳さんが切り出し、今の状況を説明して行く。

皆の顔は説明を聞けば聞く程に真剣な顔つきになって行く。

 

「___と、ここまでが蒼夜が仕入れて来た情報よ。」

 

仕入れて来たって言い方止めてくんない?

まるで俺があいつらを利用したみたいじゃないか。

……まぁ客観的にはそうなるが。

 

「その、……孫家の方が高い勝算を持って仕掛けるのは理解したのですが、元倹さんは孫家の方々が使うだろう策が読めるのですか?」

 

そう諸葛亮が遠慮しがちに手を上げて俺に問うて来た。

 

「まぁ昔馴染みだからね。あいつらの戦力がどんなもんなのかを大体理解してるから、取れる手段を考えられるんだよ。」

 

「成る程。では策の概要を聞いてもよろしいですか?」

 

「俺の予想で良いなら。流石に親友を売る訳にはいかないから、どんな将が居るのかは説明してあげられないけど。……簡潔に説明するなら、恐らく孫家は黄巾党に対して潜入工作をしてるだろう。……ここからは更に予想だけど、多分内部から火を着けて混乱させると思う。」

 

冥琳だし。

火計はお手のものだろう。

 

「内部を火計……。という事は敵が門を開いて逃げ出す所を攻めるんですね?」

 

多分ね。

俺達はその混乱に乗じるしかないだろう。

それに、明命と思春さんがそのまま張角達の首を取りに行ったら俺達は間に合わんだろうな。

 

「もし俺の考えが正しかったなら、敵が門を開いた時のどさくさで俺達も門の中に入り、張角を探しに行く位しか俺は思いつかんな。」

 

文字通り、火事の場での功泥棒だ。

 

「さて、そんな火事場泥棒なやり口を私は好まないわ。……各々、何か良い案はないかしら?」

 

俺は閉口する。

皆の考えを聞こうじゃないか、と思っていたら全員閉口していた。

 

「……あんたの所の諜報に同じことさせられないの?」

 

やっとの事文若さんが口を開いたが、自分でも無理だと思っているのだろう。

あまり良い表情はしていない。

 

「曼成ですか?無理ですね。……工作員としての能力があちらとは段違いと思って下さい。」

 

「……そう。」

 

……やはり沈黙が流れる。

これはもう___

 

「……はぁ。どうやら出し抜くのは無理そうね。……仕方ない、こちらから孫家に出向き協力を申し出ましょう。」

 

「受けてくれるでしょうか?あちらからしたら利点があまりにも薄いと思うのですが……。」

 

諸葛亮の言う事は最もだ。

 

「第一功は譲るしかないわね。こちらの誰が張角の首を取っても、その功を孫家に譲る。それくらいの譲歩はしないといけないでしょう。……あちらも決して将兵が多い訳ではないわ。第一功を譲って貰えるなら、兵の消耗を抑える為にも、同盟を組むのは吝かではない筈よ。」

 

まぁここまで来て手ぶらで帰る訳にもいかんからな。

多少の妥協は必要か。

 

「どうかしら玄徳。後は貴女次第よ?」

 

「私は最初からこの乱を終わらせる為にここに来ました。必ずしも第一功が欲しい訳じゃないんです。だから、協力する事でいち早くこの乱が終わるなら、例え功無しでも賛成します。」

 

やっぱり凄く良い娘だ。

……良い娘なんだけど、諸葛亮の顔見ようぜ?

凄い複雑そうな顔してるよ。

素晴らしい徳人だけど、臣下からしたら、うーんな感じだろうな。

 

諸葛亮からしたら、ここで劉備を押し上げる為に大きな功を挙げたいのだろう。

まぁ状況的に無理だから次善策で我慢するしかないだろうが。

ってか、ここで乗らなかったらそれこそ功無しになるだろうし。

 

「ふふっ。玄徳、臣下を率いる者なら功無しでも良いなんて言ったら駄目よ?貴女に功がないと、臣下に報奨も与えられないでしょう?……臣下の為にもこういう場合は無理やりにでも功は取りに行くものよ?」

 

「えっ!?あっ!そ、そういうつもりじゃ___」

 

「貴女の気質はわかっているわ。けど、貴女は君主なのだから、率いる者として、率いられる者の気持ちも酌んで考えてあげないと駄目よ?」

 

「は、はい。」

 

劉備は軍議の場だというのに、華琳さんからまたしても講義を受けたからか、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

 

「さて、では正式に孫家に顔を出しに行きましょうか。」

 

こうして、三国志の三国が手を結ぶ事になった。

それこそ大陸に敵なしである。

 

ま、俺のせいで孫家の策が読まれたから、冥琳には凄い睨まれたけどね!

いや、ごめんて。

 




「雪蓮、お前のせいでやっぱり蒼夜に色々ばれて台無しになってしまったぞ。」

「いや私は明命の名前出しかけただけじゃない!蒼夜の察し能力がおかしいのよ!」

若干主人公の察し能力がチート染みて来てしまった。

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