まぁ恋姫なら赦されるよね?
青州黄巾党の討伐が終わり、陳留に戻って来て数日。
今回の戦における論功行賞が行われた。
まぁそれなりに頑張った俺は、第一功とは言わずとも、それと変わらない程の報奨を貰う事になった。
しかしまぁ地位も金も宝物もいらない俺に、何をくれてやろうかと華琳さんも頭を悩ませている。
何だったら休みをくれと言ってみたが、華琳さんには『長期休暇をあげるくらいなら法外な金品の方がマシ』と言われてしまった。
……何でも、俺が抜けた穴を埋めるのが予想以上に大変らしい。
一人が抜けたくらいで回らなくなる組織体系は根本から見直した方が良いと思うのだが……。
まぁ粗方良くなったとは言え、それでも人材は足りないからな。
それはうちに限らず、どこもかしこもなのだが。
多分袁家の家臣団がうちに来てようやく残業無しの週休二日制度になる感じじゃないかな?
……まぁこの時代に週休二日とかあり得ない話なのだが。
それに組織は大きくなったら、なったで、派閥とか出来て大変だしなぁ。
今でこそうちにはそんなもの無いが、余裕が出来たら多分無意識に出来るだろう。
あり得そうなのが、夏候派と荀派。後俺も祭り上げられて廖派とかも出来るかも。
考えたくはないが、如何せん華琳さんからの信頼度トップ3だし、俺が引き入れた集団の多さがそうさせる可能性がある。
姉さん、霊里、地理、張曼成、波才、護衛隊の面子に、清流派エリート文官、そして波才が連れて来た元黄巾連中。
……自分で考えといて何だが、組織を乗っ取れる力がある気がして来たわ。
勿論乗っ取る気なんざ更々無いし、俺は誰とでも仲良くやれてる方だから、派閥争いとか関係無いと思いたいがな。
……しかしまぁ、将来的に考えたら文若さんと春蘭さんはマジで洒落になってない気がするんだ。
あの二人の仲の悪さは、今は微笑ましいレベルで済んでるが、派閥が出来る様な事があれば多分笑えなくなるだろう。
今でさえ下の方にまで影響して来ているから、組織が大きくなれば悲惨になるのが目に見えている。
春蘭さんは軍部のトップだし、俺よりも古くからこの陣営に仕えている古参の兵士なんかからは絶大な信頼を寄せられている。
文若さんは女性文官から支持を得ていて、既に派閥的な物が出来てると言っても良い。
そしてその古参の兵と女性文官が、二人の様にちょっとした口論になる事はしばしばある。
まぁ全然問題が無いと言い切れるレベルだから、まだ良いが、早目に解決するにこした事はないだろう。
……っと、何故か俺の報奨の考えから、少し思考がずれてしまった。
いや、華琳さんにこの事を相談するのを報奨にするか?
……ないわー。
華琳さんを余計困らせるだけだ。
でもまぁ方針は悪くないかもしれん。
どうせ欲しい物なんざ無いのだし、二人を仲良くさせる“何か”を報奨とする様にしよう。
─────
……思った以上に難しいかもしれない。
二人は、何と言うか、……まるでタイプが真逆だった。
いや、当たり前の話なのだが。
何か共通の趣味でもないだろうかと少し探りを入れてみたが、アウトドアとインドア、体育会系と文系、きのことたけのこ。
共通点は華琳さん至上主義と女性という点だけだった。
何か二人して一緒に遊べる何かがないかと考えたんだが、ここまで共通点がないとまるで思い浮かばん。
これもう華琳さんが二人同時に抱いた方が良いんじゃね?って思うレベル。
……うん、ないな。
余計拗れそうだわ。
でもこれ右見ながら左見れって言うレベルの問題なんだよなぁ。
春蘭さんは武、要は身体を動かすスポーツ系統が好きで、文若さんは文、要は頭を使って理論的思考で物事を考えるのが好き。
この二つを満たすものなんて……。
……。
……あった。
戦略型スポーツ、アメフトが。
あるマンガの影響で、とにかく戦略性が重要なイメージがある。
パワー、スピード、タクティクス、三位一体で事を進めるスポーツだ。
正しく、
とは言え、春蘭さんをただ参加させたら無双ゲーになっちゃうから、そこはちょっと考えないといけないだろうな。
それにアメフトはルールが複雑で、俺も細かい部分は流石に曖昧だ。
でもまぁこの方針で考えるなら、俺の報奨はアメフト競技が出来る様な大きな土地だな。
早速華琳さんに交渉しに行こう。
読んでて良かった、アイシールド21。
─────
華琳さんに相談した結果、容易に、とは行かなかったが、なんとか土地をもぎ取る事が出来た。
まぁ一重に俺の今までの功績と言う事もあるが、俺が現在街の再開発を霊里と担当しているから、というのもある。
まぁ折角アメフト競技場、と言うかスポーツ競技場を作るのだから、観客も入る様にそれなりに規模は大きくしたい。
この時代は娯楽が少ないので、多分人気は出るだろうと思うが、更に観客を盛り上げる為にトトカルチョ、要はどっちが勝つか賭けをして貰おうかとも考えている。
まぁ競技場を作っている時に、競馬も出来そうだと思ったから思い付いたんだけどね。
ってかまぁ、普段はそっちがメインになるかも。
流石に破産しない様に賭け金に上限はつけるが、上がりは俺と国で折半なので、俺はまたもやウハウハになるだろう。
……何で金を使おうと思って、金を増やすシステム考えてるんだろう。
いやまぁそれは置いといて、俺は競技場が出来るまでの間に、選手になるだろう既存の兵士達に今のうちにルールをきちんと説明しておいた。
選手として参加したら賃金を出す約束をし、更に勝利チームには軽くボーナスを出す事を約束したら、皆凄いやる気を出した。
まぁアメフトは軽く調練染みた事にもなるので悪くはないだろう。
ただ、ルールを理解させるのに一番苦労したのは案の定春蘭さんだった。
けど一度軽く体験して貰い、ルールを理解してからは飲み込みも早かった。
……まぁ、選手として参加させるつもりはないのだが。
俺の理想としては、文若さんが作戦を考えて、春蘭さんが監督し、古参の兵が参加して、最後は勝利してハイタッチみたいなのが見たい。
まぁそれには、相手が強敵じゃないといけない訳だから、俺が護衛隊でも率いて相手しようかと思っている。
俺ガイルでも集団を団結させる明確な存在は共通の敵って言ってたしね。
二人には盛大に挑発でもするかね。
─────
「今日初めて試合をする訳ですけど、……ホント、観客が見ても面白いと思える様に、ちゃんと“試合”にして下さいね?」
「……勝つのが当たり前かの様な口振りね。」
「そりゃもう。寧ろ勝てると思ってるんですか?」
「なんだと!?」
「はっはっはっ、お二人が連携をちゃんと取れないうちは俺に勝つなんざ、とてもとても……。」
「くっ!言ってくれるわね。……勝つわよ春蘭!」
「当然だ!こいつのニヤケ面を打ち崩すぞ桂花!」
チョレー。
予想以上に上手く行って笑いそうだわ。
まぁこれで大筋目的は達成した訳だが、ここで俺があっさり負けても二人の関係は長続きしないだろう。
ここはきっちり勝ちに行って、また二人には俺にリベンジして貰おう。
……とか思ってたんだけど。
「右だ!そこから抜けろ!」
……春蘭さんが予想外の手に出やがった。
競技場内に入りはしないものの、馬に乗って周りをぐるぐるしながら指揮をしていた。
そんな事したら駄目なんてルール言ってないけども、やるか普通!?
これのせいで現場での判断能力に地味に差が出る。
しかも文若さんの作戦をちゃんと遂行してるんだろう、予想以上に戦略的だ。
しかし二人は初心者、俺も初心者だが、アイシールド21の知識がある以上俺に有利だった。
俺はなんとかギリギリ勝つ事が出来た。
そして一週間後、___
「私も混ぜなさいよ。」
文若さんと春蘭さんの後ろから覇王が登場した。
しかも秋蘭さんと姉さんを味方に、選手は最高練度を誇る親衛隊だ。
おい、なんだそのガチ面子。
「くっ、……し、将兵の差が、戦力の決定的な差ではないという事を教えてやる!」
そう強がってみたが、普通に負けた。
やっぱり赤い人のセリフはフラグなんだろうか。
「流石です華琳様!」
「華琳様が率いて負けるなんてあり得ません!」
……二人は華琳さんを中心に纏まっていた。
違う、そうじゃない。
俺の目的はそうじゃないのだ……。
古代中国でアメフトやら競馬やらで賭けなんてあり得んのは重々承知ですので、ツッコミは無しで(笑)
来週くらいからは本編やりたいと思います