数年ぶりの今更投稿。
完結させたいという意欲だけは、未だに一応はあります。
一週間に一度投稿出来たらと考えています。
黄巾党討伐を終え陳留へと帰還し、程々に落ち着いたある日の事。
我らが曹操陣営の幹部は慰労という事で華琳さん直々の主催で小ぢんまりとした酒宴を開く事になった。
旨い酒が飲める機会が多い事は決して悪い事ではない。
黄巾党討伐直後の祭りの様な大宴会も久方振りに雪蓮や冥琳と飲めて非常に楽しかったが、こういった仲間内でのワイワイ飲みも、なんだったらしんみりとした独り飲みも大好きだ。
……ただのアル中じゃねぇか。
いやでもこれは俺に旨い酒を教えた祭さんが悪いよ、祭さんが。
まぁいずれにしろ、主催はあの味にクソうるせぇ華琳さんが開くのだから確実に旨い酒が出ると思うとテンションが上がる!
ふっ、流石は曹 孟徳だ。
部下の人心掌握にも如才がないな。
華琳さんの部下で良かった!
_____
始まった酒宴は最高に気分が良かった。
華琳さん厳選の高級酒にお手製の料理、派手過ぎない雰囲気の良い上品な部屋で気心しれたメンバーとの飲食は酒の味を更に良くする。
俺の隣に座っている地理と談笑しながら一杯更に一杯と高級酒が勿体無いからチビチビと味わい、わずかな酔いを感じた時に思わず自分の本音がぼそりと声になってしまった。
「…いつか大陸中を飲み歩いて、それを纏めた旅行記とか書きたいなぁ」
夢があるよなぁ。
現状ではどうにもならんが、うちの華琳さんならいずれ叶えてくれるはず!
なんて思っていたらどうやら俺の呟きは周りに聞かれていたらしく、一斉に皆からツッコミを入れられてしまった。
「そんな物よりもこの前の立身出世物の続きをさっさと書きなさいよ!」
「私も桂花様の意見に賛成なのです。可能ならばもっと国家経済の裏話が濃厚だと嬉しいのです。」
いやあれ一つ書くだけで凄く疲れるから勘弁して。
「ふむ、…まぁその旅行記も多少は興味深くあるが、私としても桂花達の意見の方に心が傾くな。___いや、久しぶりに推理物もありだな」
あれもそんな簡単じゃねぇんだよなぁ。
「…蒼夜、そもそも仮に大陸が平和で飲み歩くなんて事が出来たとしても___」
やめて華琳さん、言わなくて良いです。
聞きたくな___
「私が簡単に貴方から仕事をなくして長期休暇なんてさせる訳ないじゃない?」
はいクソ陣営!!!
どうしてそんな酷いことするの?
今とってもお酒が不味くなった!
僕もう華琳さんの部下辞めたいです!
おそらくはチベスナじみた顔をしているだろう俺は必死に “ブラック企業” “辞表” “書き方” で脳内エンジンの検索にかけた。
「まぁそれは軽い冗談として…大陸中の飲み歩きなんて、私が大陸統一を成した上できちんと政治が安定してからようやく地方巡業という方便で周って貰うくらいしか思いつかないわね。……私も行こうかしら」
本当に軽い冗談なんですよね?
生涯ブラックはマジ勘弁だぞ。
最後の方はあんまり聞こえなかったけど、やっぱそれ嘘とかなしだぞ?
「蒼夜の
置いとかないで姉さん!
弟の未来もっと心配しよう?
下手したら貴女の弟は過労死かストレス性胃炎の胃潰瘍で死ぬぞ?
もしかしたら華陀さんでも治せないかもよ?
「桂花ちゃんは勿論、霊里や秋蘭ちゃんも蒼夜の書物の中ではあの立身出世物の書物が一番好きなのかい?」
三人は姉さんの問に是と答えた。
まぁあの小説は霊里の要望を聞き入れつつ華琳さんがモデルの主人公だからね。
そりゃまぁこの三人は好きだろうよ。
「そういう撈殿は蒼夜のどの書物が一番好みなのです?」
「う〜ん…そ〜だなぁ…まぁなんだかんだ、やっぱり最初の戦記物が一番好きかな?___あれは衝撃的だったからねぇ」
思い出補正って奴じゃね?
自分で振り返っても初期の文章力とか構成力には想う所あるぞ?
「とってもわかるのー!」
うるさっ!
急に大声出すんじゃないよ沙和!
「あの恋愛には夢があるの! 女の子の夢が詰まってるの! 蒼夜様はもっとあんな書物を書くべきなの!」
え、えぇ〜…って姉さん、こっそり頷いてわかるって顔すんな。
作者である俺がわからないんだよ。
「あ〜…まぁ沙和だけやなく、凪もいっちゃん好きやんな? あの戦記物が」
「なっ!? わ、私も一番好きで何が悪い!?」
「いや悪いなんて誰も言うてないやん?…ただまぁ、沙和に劣らず凪も乙女やんなぁ?」
真桜が凪をニヤニヤしながらからかう様にそう言う。
ほほぅ?
あの堅物の楽進先輩が実は乙女と?
成る程、実に興味深い。
「そういうお前はどうなんだ真桜!?」
「ん? ウチ? ウチは普通やよ?___神農本草経」
「「「「「えっ?」」」」」
その言葉を聞いた全員が驚いた声を出す。
「いやいや、皆さん普通に考えて下さいよ。 全てを網羅したが如きのあの薬草本は半端じゃありませんて!」
真桜、お前はホンマようわかっとる!
皆が確かに凄いけど物語と辞典を比べるのってどうなん?
的な表情をしてる中、俺は無言で酒を取って席から立ち上がり真桜の所に行き真桜の杯に酒を注いだ。
真桜が、いや皆が俺の行動にポカンとしたけど俺は真桜の顔を見て一つ仰々しく頷いて自分の席に戻った。
「あ、ありがとうございます蒼夜様。…その、ウチからしたらいろんな開発とかにも役立つ薬草本が一番好きってだけの、理由なんやが___」
「それで良い」
それが良い。
自分の書物が誰かの、何かの役に立つ事の実に嬉しい事よ。
俺が現世知識でリスペクトした他の娯楽的な書物よりも余程価値がある。
俺の行動に一つの結論が出そうなその瞬間、我等が曹操陣営で一番空気の読めない人物が、大声で自らの主張を叫ぶ。
「全く貴様等、一番の名作書物は孟徳新書だろうが! 何故それがわからん!」
………。
……。
…。
いや、名作よ?
本当に良い書物だし俺も絶賛するよ?
…でもそれ………俺の書いた物じゃないんよ。
君の大好きな華琳さんが書いた戦術書なんよ。
…いや、だからこそか。
戦術書を理解する頭は残念ながら春蘭さんにはないからね。
華琳さんが書いたって事実が、春蘭さんには名作なんだろうな。
「…春蘭___」
「はいっ! 華琳様!」
褒められるのは今か今かとワクワク顔で春蘭さんが華琳さんの言葉を待つ。
「暫くあそこで季衣と飲み食いしてなさい」
華琳さんは春蘭さんにドサッと飲食物を手渡し、追払う様に部屋の隅へと誘導する。
春蘭さんはともかく季衣までは可哀想………いやそうでもないか。
今の話題では飯食ってるか暇を持て余してボケっとしてるかのどっちかだったしな。
「…でもまぁ実際の所孟徳新書は名作ですよね。 華琳さん今度は政治学とか帝王学はどうです?」
華琳さん監修なら俺も喜んで手伝うぞ。
劉備に教えていた頃の状況を考えると皆も興味あるだろうし、文若さんとか姉さん巻き込んだらそこそこ良いのが出来そう。
「そうね…でもその手の書物は既に傑作が存在するから、そこまで熱がわかないわ」
ん?
そんな書物あっt___おい、まさか___
「名君論は傑作よね。 私はこれが一番の名作だと思うわよ?」
ヤメロメロメロヤメロメロ!
やめてくれ華琳さん。
その話題は俺に効く。
やめてくれ。
「ヘェーソウナンデスネー。 デモサクシャフメイナンダ、フシギダナー」
………だから俺には関係ない。
皆してこっち見るのはやめようか!
多分それの作者は呉郡あたりにいる周ナンタラさんか、もしくは陸ウンタラさんだぞ!
華琳さんめ、俺はこれの話題が嫌いなのを知っているのにわざとこういう事するんだから。
今もニヤついて俺の反応を楽しんでいるドSめ。
無理やりにでも話題を変えないと。
「そ、そういえば地理はどの書物が好きなんだ?」
「美少女戦士物です」
………。
……。
…。
春蘭さんの時とは別種の変な空気が流れる。
「美少女戦士物が一番好きですが何か?」
私は何も悪い事なんて言ってませんよと言わんばかりに堂々とした態度で地理は語る。
「良いではありませんか勧善懲悪。 現実では悪を倒しても全員幸せにはなりませんし、そもそも敵が悪でない事だって、自身に正義が謳えない事だってあり、そもそも敵が存在せずとも状況が悪くなる事だってあります。…ですがあの書の中の世界では明確な敵がいて、敵を倒せば皆が幸せになります。 わかりやすくて実に良い」
お、おぅ、成る程そういう見方もあるのか。
作者である俺の方がわかってなかったわ。
皆も、ふむ成る程と新たな視点を教えてくれた地理に感心していると___
「それに…国に潜む巨悪を人知れず討つ。…凄く格好良い」
地理は立ち上がりいつもの鉄面皮のまま、キレッキレの動きでビシッとお仕置きポーズを構える。
………もぅホントこのおバカ。
俺はそんなお前が大好きだ!
地理の行動に皆でひとしきり笑った後、俺は地理の為に美少女戦士物の続巻を決めた。
無事刊行された美少女戦士物は、地理と隠れた少数のファンの間で量産され、各地のファンにも無事届けられたそうです。
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次話より反董卓連合軍編
次話投稿予定日、10日の月曜予定です。