無記名霊基の英霊達   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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白亜宮殿のセイバー
囚われの王妃


 ――目を覚ますと、そこは牢屋だった。

 どうしてここに居るのか自分でもわからない。カルデアで魔術トレーニングを行なって疲れてしまい、マシュにマイルームのまで連れて行ってもらってベッドに放り込まれた所までは覚えているのだが……?

 そこのところどう思うかね後輩くん?

「すいません。私にもさっぱり……」

 デミ・サーヴァント状態のマシュは俯きながらそう言った。

「フォウ!」

「あら? どうしたの? まぁ、こんな所にもお花は咲くのね」

 最初は夢かと考えたが、この空間の感触がただの夢とは思えなかった。まるで魔術的な結界に囚われてるようで、何もしなかったらずっとここに囚われてしまいそうな錯覚に陥る。

「それにしてもあなたを見てると……こう、力を込めてむにむにしたいですわね? どうしてかしら?」

「フォウ!? フォゥゥ……」

 牢を区切る柵は魔術の込められてない普通の鉄(多分)。マシュの力ならすぐに出れるだろうか。そう聞くとマシュは盾を奮ってあっという間に鉄柵を破壊した。

 ……と言うことはこの牢屋自体に魔術的要素は無いってことか……。

「フォウ、フォーウ!」

「きゃっ、そんな所に入らないで! もう、ハレンチな子!」

 

 ――そろそろ話しに入ってきてくれませんかね王妃? ←

 ――フォウ君、今どこに入ったんだい?

 

「そうです。恐らくですが、ここは『ギネヴィア』さんの夢ではありませんか?」

 マシュがフォウと戯れていた少女に尋ねると、少女はおもむろに目を向ける。

 彼女の髪は濃い金色。財宝や金貨のような無性に手に入れたい、と思わせる魔性を漂わせており、細かい宝石のついたサークレットが髪を纏めている。白を基調としたドレスにも宝石や金の金具が取り付けられ、いかにも王族の一員だとわかる。……が、誰もが見惚れるような端麗な(かんばせ)には彼女が居た時代には無い眼鏡が掛かっていた。

 彼女の真名はギネヴィア。

 かのアーサー王の妻であり、アーサー王伝説の終焉を引き起こした王妃だ。

 

 マシュの問いに、ギネヴィアはふふっ、と微笑む。

「いかにも。ここは私わたくしの見る夢の中ですわ。と言うことは、私とマスターの繋がりはより深くなったという証なのでしょうか?」

 そう言ってまたフォウ君を持ち上げたり降ろしたりして遊びだした。

「確かにマスターがサーヴァントの夢を見ると言うことはありますが……何故私たちは牢屋に居るのですか?」

「私もよくわかりませんが、多分攫われたのではなくて?」

 と、さらっととんでもない事を言っちゃう王妃様。

「さ、攫われた?」

「ええ、ここは騎士マリアガンスの城の地下牢ですわ。一度来たことがありますもの」

「……何でそんなにリラックス出来るんでしょうか」

 その悠長な様子にマシュは困惑しながら問いかけた。対してギネヴィアは、

「攫われる事に慣れてますもの」

 あっけらかんと自慢にもなりそうにない事を言ってのけて自分たちを唖然とさせるのであった。

 

――とりあえずここから出よう ←

 

「そうですね。ここがギネヴィアさんの知る城なら待っていても問題ないですが、簡単に出れるなら出た方が良いかもしれません」

 牢屋は狭苦しくて気が滅入るしね。

 それにギネヴィア曰く、ここの警備は『生前ならともかくサーヴァントなら簡単に突破できる程度ですわ』との事だ。

「ギネヴィアさんもそれで良いですか?」

「……夢とはいえ生前通り助けに来てくれるとは限りませんし……よろしくてよ」

 彼女はゆるりと立ち上がり、背伸びをした後マシュが破壊した鉄柵を潜っていく。何処までもマイペースな彼女に思わずため息を吐いてしまうのだった。

 

     ◆

 

「あれは、この城の警備兵みたいですね」

 地下から階段で上がってようやく一階まで来た所で自分たち以外の人間を見かけた。

 重厚な鎧をまとい辺りを警戒している彼らはいかにも中世の騎士としか表現できない佇まいだ。

「結構人が多いですわね」

「そうでしょうか? ひとまず様子を見て進みましょう」

 そうして注意して出口を探しながら進んでいる。と、不意に、

「しかしまあ、私の夢とはいえ、そんなにも(マリアガンス)は私を求めたいのでしょうか。この身はすでにアーサーのもの。……主君の王妃を誘拐するなど、領地はく奪も生ぬるい所業ですのに」

 呆れるような口調で言う。

「私自身そういった事はまだわかりませんが、この間読んだ小説で身分違いの恋というのがありました。手が届かない、けれどすべてを投げ打ってでも傍に居たい。命を懸けた愛なんて、私は素敵だと思います」

「掠奪愛というものですの? ……やっぱり理解できませんわ。そんなことしても殿方も姫君も不幸になると言うのに」

 

 

「――っ! 後ろが騒がしくなってきました。牢を抜けたことがバレたようです!」

 ざわざわとした喧騒が後ろから響く。遠くに居る兵士も何事か起こった事を察したようだ。

「ふぅん。ここは強行突破がよろしいかと」

「わかりました。マスターもそれで良いですか?」

 

――峰打ちでよろしく! ←

――いのちはだいじに。

 

「戦闘開始です!」

 マシュは自身の身長ほどもある盾を構え。

 ギネヴィアは左手を上げ前を見据え。

 二人は警備兵の元へ駆け抜けた。

 

     ◆

 

 

「はぁ!」

 迫りくる槍の一刺しを盾で受け止めたのち、穂先を盾の表面を滑らせて一気に敵の懐に入り込み、強烈な一撃を与える。グワン! という轟音と共に敵は壁際まで吹っ飛ばされて動かなくなった。……死んでないよね?

 一人が倒れ、なおマシュは次の相手に向かって行く。左右から同時にくる攻撃を盾を器用に使って防ぎ、カウンターで反撃する。その繰り返しで人数は結構減った。

 

 マシュの離れた所でギネヴィアは指を振る。指揮者のように、周りを敵に囲まれた状態で、だ。

「ハイ、ワン、ツー!」

 だが、彼女に兵士の攻撃は届くことは無い。

 彼女が軽く手を振ると周囲に10の武器が現れて、それぞれが独立して攻撃と防御を行なっている。

 英雄王のような射出ではなく、舞踏会で舞うように。剣と槍が敵を打ち倒していく。

 

「一気に畳みかけます!」

「承りましたわ」

 ここでマシュに『瞬間強化』をかける。直後、マシュを囲っていた兵士の壁が崩れ落ちるのが見えた。

 マシュは敵の息があるかを確認したらすぐにギネヴィアの元へ駆け寄ろうとし、やめた。ギネヴィアの方も決着が着くようだ。

「アグラヴェイン! オザンナ! テンポを上げて!」

 斬撃と刺突の鋭いコンビネーションが次々と敵の意識を奪っていき、たった今最後の一人が地に伏したところだ。

 ふぅ、と一息つくと剣や槍は粒子となって消えていく

 

「疲れました……ケイのお茶が飲みたい気分ですわぁ」

 相変わらず悠長な事を言うギネヴィア。

 だが、ここは出口ではなく、まだ終わりではないのだ。

「ゆっくりしている場合じゃありません! まだ後ろから追ってきています!」

 

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