無記名霊基の英霊達   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

11 / 13
一年近く放置していた上にバレンタイン1月遅れの投稿です。すいません。
もう全体的に行き詰まりののろのろ執筆ですが、楽しんで読んでいただければ幸いです。


【バレンタイン礼装】バイエルンのバーサーカー

 2月14日――バレンタインデー。

 いつもお世話になっているサーヴァントたちに様々な想いを込めたチョコを贈り合う、カルデアの恒例行事。

 

――……渡せばわかってくれるはず。 ←

――……気持ちは通じるはず。

 

「フォフォウ……」

 こちらを見つめるフォウ君もなんとなく不安げに感じた。

 当然だ。今からチョコを贈る相手は気難しい……というか、普段から会話が通じるかすら怪しいし、こちらの意図も理解しているかもわからない。会話が全て絶叫だけのバーサーカーたちの方がよっぽど話が通じるかもというレベルだ。

 ――加えて、

 

――ココアパウダーて……。 ←

――ギリチョコの圏内?

 

 食堂に保管されていたココアパウダーが入った小瓶。食事が水と小麦粉という、胃の中でパン生地をこねてるような彼にどんなものを送ればいいかキッチン英霊に相談した末にこんなものを用意したわけだけど、常人にこんなもの贈ったらその人との関係性を考えてしまうものだ。……まぁ彼が食べれるものを考慮した結果だ。受け取ってもらえなくてもしかたないか。

 

        ☆

 

 カルデア中に広がる甘い香り。どこそこで賑わう喧噪。

 浮き立った雰囲気の今日のカルデアは、鋭敏な感覚を持つ彼にとって耐えがたいだろう。であれば、彼はきっとひと気が無く静かな場所を好むだろう。

 そう考えてカルデアにある当てはまりそうな場所を探した。

 そして、

「……」

 案の定、彼以外誰もいない、人が来なさそうな倉庫で一人遊びをしている彼をみつけた。暗い部屋でぼんやりとした白い髪がピコピコ動いてるのはちょっとした怪談になりそうだ。

「フォーウ!」

「……4j(ROSS)?」

 鳴き声を上げたフォウ君に反応してガスマスクに包まれた顔をこちらに向けた。

 フォウ君を確認すると手に持ってた6本足の首なしペガサスをけしかけたりしていた(フォウ君は嫌そうに飛び跳ねてる)。

 水槽の魚を見るような、なんとなく何時間も眺めていられる一幕。

 けど今日は彼に用事があって探してきたんだ。本日のメインイベントを消化しよう。

 

――カスパー! ハッピーバレンタイン! ←

 

 ココアパウダーを押し付けるとカスパーは戸惑ったように首を傾げた。

 渡されたココアパウダーの瓶を不思議そうにマスクの鼻先に押し当て、それがカルデア中に広がっている匂いだと分かったらしい。カスパーは威嚇するように小さく唸った。

 サーヴァント嫌いなカスパーだ。恐らくカルデア中に広がるチョコの匂いをサーヴァントと紐づけてしまったから、チョコに警戒心を抱いてるのかもしれない。

 

――フォウ君。 ←

 

「フォウ? フォウフォウ」

 一旦カスパーからココアパウダーを預かって手に粉を振った。そしてそのまま手に広がった茶色い粉をカスパーに見せるように舐め取った。子供とかに見たこともない食べ物をあげるのと同じ、まず自分が食べて見せて食べれるものと認識させてあげることが重要だ。ついでにフォウ君にも舐めさせてあげた。……そういえばこいつにチョコをあげてよかったんだろうか?

 

 そうやってカスパーの反応を窺っていると、若干警戒心がほぐれた様子でココアパウダーの瓶を奪う。

 が、ココアパウダーがなんなのかを理解したというところで興味を失ったらしく、小瓶をポケットにしまってまた6本足の首なしペガサスをフォウ君にけしかける遊びに戻るのだった(フォウ君は迷惑そうに飛び跳ねてる)。

 ともかくカスパーへの用事は終わった。まだ他のサーヴァントにもチョコを渡さなければならないから倉庫から去ろうとしたけど、カスパーが裾をつかんで引き留めてくる。目を向ければ部屋に置いてあっただろう何らかの故障した機材の一部をこちらに差し出す彼の姿。

 これは、遊んでくれという意思表示なのだろうか?

 たぶんカスパーは今日一日この部屋に閉じこもっているつもりだろう。積極的に他のサーヴァントに関わるつもりがない彼にとって今日はとっても退屈な一日になる。サーヴァントの中でも幼い思考を持つ狂戦士(バーサーカー)。そんな彼――カスパー・ハウザーの心中を完全に察することはとても困難だけど、もし自分がそういった時に遊んでくれる人が来たらとても嬉しいはずだ。

 

 少しの時間、彼に付き合ってあげようか。そう思い、壊れた機材を手に取った。

 

       ☆

 

「なるほど。先輩をお見かけしないと思ったらカスパーさんところへ行っていたんですね」

 マイルームでマシュとくつろぐ時間こそ至高だ。

 一日中チョコを配りまわり受け取りまくった結果出来上がったプレゼント山脈の整理を手伝ってもらってるけどマシュと一緒に作業するからだろうか、めちゃくちゃ捗って山はあと一つ残すだけとなった。

「今年もたくさんいただきましたね。食べられる贈り物は先輩の摂取カロリーと消費期限から計算して日にちごとに分けておきました。食べ過ぎて明日の朝食が入らなくなってしまいます」

 別に今夜中に食べきるつもりはない。

「食べられない贈り物はひとまず飾れそうなところに置いてはいますが……これでは床に置くしかなくなりますね。踏んでしまって先輩の足に穴が開いてしまっては大変です。ダヴィンチちゃんに棚を申請しておきますね」

 

 そう言ってよくできた後輩はマイルームから出ようとし、ふとそう言えばと足を止めた。

「カスパーさんからはどんなものをいただいたのですか?」

 そうマシュに訪ねられて今更ながら自分も思い出した。でもその程度だ。カスパーから返礼をせしめようとは思ってなかったし、カスパーも今日がそういう日だということは思い至ってないだろう。

 まぁ、久しぶりに一緒に遊べたし満足したからいいや。

「カスパーさん、今年がバレンタインデビューですから仕方ないですね。来年は私もカスパーさんのサポートして先輩がより充実した一日を送れるように努めますので期待してください!」

 ふんすっ、とガッツポーズをするマシュ。マシュにとってカスパーって年下の男の子みたいな感じらしく、何かと世話を焼きたがるんだ。彼女の微笑ましい成長につい頬が緩んでしまう。

「ではどのような棚が相応しいかダヴィンチちゃんと相談したうえで選んできますので後ほど――あ」

 今度こそマイルームからでようとしたマシュがまた足を止めた。

 そちらを見るとマシュの前に誰かが佇んでいる。

「カスパーさん? いつからそこに……」

 

 マイルームの前に立っていた人物、カスパーはマシュの質問に答えず、無言でマシュに何かを押し付けた。

 いつもながらの突然の行動に目を白黒させるマシュを尻目に、カスパーは膝が固まった独特な歩き方でこちらに近づいてくる。

「……」

 

――……。←

 

 しばし見つめ合う。

 ガスマスクに覆われた素顔がどんな表情をしてるかわからないけど、自分に用事があるのは明白だ。その用事というのがどういったことなのか、今までの流れからなんとなく察することができるけど、どこまでもマイペースな彼が切り出してくるのを待っておく。

 やがて、カスパーは、

jrq(maître)

 ふい、とそっぽを向いて、ポケットから何かを取り出して押し付けるように渡してきた。

「3:@.。……3lt@s(danke)

 カスパーはそれで用事は終わりと言わんばかりにさっさと立ち去ってしまった。

 けどそんな彼の姿は、まるで気恥ずかしくなって逃げだす少年のような微笑ましさを感じた。

 

 マシュが寄って声をかけてくる。

「お礼なのでしょうか? 私ももらってしまいましたが」

 

――日頃のも含めた、かなぁ。 ←

――遠慮せずにもらっとこ。

 

「そうですね。後でお礼ひゃっ!」

 

――うわっ!? ←

 

 突如、マシュが後ずさった。

 何事かと彼女に目を向けようとした自分もマシュと同じく、身をこわばらせ思わず手に持っていたものを放り投げてしまった。

 手にしてたのはもちろんカスパーからの贈り物。

 

 なんか、ぴちぴち動いた。

 

 放り投げたモノを改めて観察する。薄いピンクがかった6枚の三角形の布状の物体は放って宙を舞い、ひらひらと床に落ちていく。そして床の上でまたぴちぴちとうごめいていた。一方、マシュはまだ手に持ったまま呆然としていた。マシュがもらったものは床に落ちたのと違い、グラデーションっぽい青色でちょうちょ結びのリボンのようなもので、マシュがお椀を持つように手に乗せていると蝶のように動いて宙を舞い、力尽きるようにまたマシュの手に戻っていく。それらが単体でぴちぴちひらひら動くさまはちょっと引いた。……けどこの謎物体、何処かで?

 

 と、とにかくよくわからないけど回収しておこう。ダヴィンチちゃんに見せて危険性が無いか調べてもらわないと。

 落ちたひらひらとマシュの青リボンを空のペットボトルに押し込んで封印すると、

 

「すいませんマスターさん! カスパー君こっちに来てませんかっ!?」

「イリヤさん? そんなに慌ててどうなさったのですか?」

「ええとカスパー君が襲ってきてじゃなくて私と美遊でもなくてルビーとサファイアが大変なんです!」

――まぁ落ち着いて。←

――とりあえず水をどうぞ。

 

 肩で息をして入室したイリヤちゃんにとりあえずペットボトルを手渡す。混乱状態のイリヤちゃんは言われるがままペットボトルの半分ほどを飲み干し、一息ついて事情を説明する。

「実はさっき廊下でカスパー君に追い回されちゃって、あんまり近づいちゃいけないってママに言われてたんですけど、結局戦うことになったんです」

 そんなことが……。後できつく言っておかないと。

「カスパーさんと……お怪我はありませんか?」

「ちょうど美遊とクロも居て、どこかから銃弾が飛んできたからみんな無事で追い返したんですけど、カスパー君、何故かルビーとサファイアを持ってっちゃったんです! それでカルデア中探しまわって見つかった時にはもう――」

 

『イーリーヤー!! あのガスマスクこっちに居たぁーっ!! 捕まえるの手伝ってー!!』

 

「ほんと!? わかったちょっと待ってて! 失礼しますマスターさん! お水ありがとうございました!」

 そう言ってイリヤちゃんは駆け出すように部屋から出て行った。

 一方、マシュと共に呆然とイリヤちゃんを見送ったあと、自然と2人顔を見合わせ、視線は例のペットボトルに移る。カスパーが捕らえ、イリヤちゃんたちが取り返そうとする二対の羽根はさっきと変わらずひらひらと力なく舞っていた。

 

――後で返してあげよっか。 ←

 

「そうですね」




カスパー'sコレクションNumber4 かるであにでたむしのはね

カスパー・ハウザーからのお返し。

この世界はわからないものだらけ。
面白いものや珍しいものもあれば嫌なものやイライラするものもある。
今日マスターにもらったものは見たことがないものだ。最近辺りから匂うものと同じ匂いがするけど食べれるらしい。
なんでこんなものをくれたんだろう……? はっ、最近まっくろくろの近くからこの匂いがするけど、これはマスターがまっくろくろから奪ってきてそれを俺に献上してきたのだろうか?
だとすればマスターも大変な苦労をしたはず。きっといつも一緒にいるおへそも手伝ったのだろう。ならば2人をねぎらわなければ。
そうだ。最近見かける珍しい虫を捕まえよう。きっと喜ぶはずだ。


そんな厚意から起こった悲劇。

なんとなく並行世界からパワーを送られてる気がするが、取られた本人たちは非常に困ってるためもらったらなるべく早く返してあげよう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。