無記名霊基の英霊達   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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バレンタイン・デー企画第1弾!
2月現在行われているバレンタインイベントにあやかって短編を描いてみました。
……本当は去年もやろうとは考えていたもののバレンタインデーを過ぎてしまったので……。

今回書くにあたってセイバーの章を読み返したのですが、2年前に書いたものなのでFGO本編のシナリオとかけ離れた部分や本編の新しい設定が出てきて自分の中のイメージがブレてくるのを感じます……。


今回のイベントでインパクト強かったのは新シンの「ラーメンおごってくんろ」だと思う。くんろて。くんろだって。


【バレンタイン礼装】白亜宮殿のセイバー

「…………」

 

――…………。 ←

 

「……フォーウ……」

 なんとも言えない空気が流れている。

 足元に居るフォウ君ですら気まずそうな鳴き声を上げながら様子を伺っている。

 

 今日はカルデア全体が浮かれている日だ。食堂はもちろんのこと、スタッフルームに管制室など人がいる場所ではそういう『甘い』空気が漂っていて和やかな時間が流れていた。

 なのに何故このカルデアの一画が辛気くさく言葉を選びにくい雰囲気に包まれているのかというと、先ほど走ってきたらしく息を切らしてやってきたギネヴィアが持ってきた本日のメインが原因だったりする。

 

 彼女が作ってきたのはミルフィーユパイだった。

 メレンゲを挟んだ丸いパイ生地を何層も重ねたシンプルなもの。この甘酸っぱい香りはレモンを使っているのかもしれない。重なったパイのてっぺんにホイップしたクリームで飾り、半透明な丸く薄いトフィーを乗せ、軽く炙ってキャラメリゼにした彼女特製の一品だ。

 某王様に雑と切り捨てられた国の料理とは思えないほどとても美味しそうなお菓子を前にして思わずヨダレが出そうになるのを抑えると共に、素直に感想を言えない自分にもどかしさを感じてしまう。

 

 ……割れているのだ。パイの中心線に沿うように。

 円柱形の代物であるものだから、その……()()を連想してしまうワケで……。

「…………マスター」

 金貨のような髪を持つ王妃はリムをくい、と上げる仕草をして、

「これは仕様ですわ。(わたくし)らしさを全面に出した!」

 

――その個性は出して欲しくないなぁ。 ←

――その円卓ジョークはあんまり面白くない。

 

「ですわねー……」

「フォウフォウー」

 ガクリ、と項垂れる彼女につい苦笑する。

 ……所でさっきキッチンの方でどったんばったん大騒ぎがあったのを聞いたけど、一体何が起きてたの? まぁ円卓がらみだろうけど。

「初めは、この日に備えてブーディカ様とエミヤのお料理教室でご教授してもらい、円卓の(みな)には内緒で作っていましたわ。ご教授していただいた簡単な焼き菓子を作ってみたのですが……想像以上に打ち込み過ぎてしまって、スコーンを作るつもりがなぜかこのようなものにグレードアップしてしまって……」

 マジか。独学でここまで上り詰めたのか王妃さま。

「満足のいく出来栄えのものが出来たのは本当に先ほどなのです。……その、ですので今日まででご用意できたのはこれだけでして……運悪く元気なアルトリアに見咎められ、『セイバーのお菓子は全て私の物! すなわちそのお菓子は私の物です!』と奪われかけて、そこから食堂を巻き込んだ聖菓戦争が勃発した次第でございます」

 その光景が安易に想像できた。ただでさえ今日は皆が浮かれてるから、ギネヴィアに関係あろうと無かろうと彼女のミルフィーユパイを巡って争っていたんだろう。

 その結果が真っ二つ(コレ)か。

「本当にごめんなさい……。急いでいて気づかなかったとはいえ割れたものをお渡ししてしまうなんて、キャメロットの王妃としてあるまじき失態。後で作り直した上でランスロットと一緒にアルトリアからお叱りを受けに行きましょう。ええ。二人でなら怖くありませんもの。ええ。決して女性職員の方々からちやほやされていたことは気にしていなくってよ?」

 

――おっと案外自分への罰が軽めだぞ? ←

――やめろまた円卓が崩壊する。

 

 心の中でランスロットに合掌。どの道アルトリアとマシュから説教を受けることが確定していそうだ。

 

「フォウっ、フォー」

 不意に足元に居たフォウ君が肩まで駆け上がって一声。言葉はわからないけど、なんとなく急かしているような声だ。

 フォウ君の言いたい事はよくわかる。

 バレンタインで贈り物を受け取る側の対応はひとつだけ。

 それが第二次カムランを防ぐ一手でもある。

 

――結局は割れても美味しいし。 ←

――ぜひいただこう!

 

「まあ」

 さも驚いた! というようにギネヴィアは両手で口を覆った。

 割れた所で食べられないこともないし、彼女の想いが詰まったものを破棄させるわけにはいかないじゃないか。

「フォウっ、フォーウっ!」

「そうおっしゃるとは思っていましたが……やっぱり嬉しいものですわ」

 まるで『イグザクトリー!』と言っているようにフォウ君はまた一声上げ、ギネヴィアはフフっ、とたおやかに微笑む。

「ありがとうマスター。これからも共に歩みましょう」

 

      ◆

 

「あら? あなたは……。マスターに着いていかなかったのですか? ごめんなさい、今は遊べませんわ。これからアルトリアやランスロットたちの分も作らないといけませんの」

「フォウ? フォーウキュっ?」

「え? ……ああ、お菓子が出来上がった時、最初に食べていただきたいと思ったのはマスターでしたわ。アルトリアとランスロットではなくて。出来れば3つ同時に作れたらよかったのですけれど」

「フォー……」

「マスターが一番の理由は、そうですね……うまく言葉に表せられないのですが――」

「フォ?」

 

 

「ちゃんと(わたくし)を見ていただける。きっと理由はそれだけで十分だったのでしょう」




王妃特製の割れフィーユパイ
ギネヴィアからのバレンタインチョコ?
王妃お手製のミルフィーユパイ。
料理初体験のギネヴィア妃がキッチン英霊からご教授なされた焼き菓子を凝りに凝った結果別の御菓子になられた逸品。
どういう因果か丸いミルフィーユは真っ二つに砕け遊ばせたものの味は折り紙つき。

ちなみに何故形状的にもお召し難い丸いミルフィーユをチョイスなさったのかというと、
「いじわるではなくてよ? ミルフィーユにはキチンとしたお召しあがり方がありますので、マスターが四苦八苦しているところを優しく教えて差し上げて急接近しようなんて魂胆はありませんわ!」
という乙女の計算高さ(あざとさ)なんてなかったんだからねっ。
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