ジュラの森
マルセイユ
オールドストリート
ホワイトチャペル
ハイドパーク
東の村
王城
晩鐘廟
ボゥン!! と、ベイカー街の一画のビルが爆発した。
狭い通路であったため、行き場の無い爆風が一気に出口へ噴きだした。通路のフローリングや奥に放置されていた荷物は外へ放り出され、向かいの建物の窓ガラスへ突っ込んでいった。それが爆風のすさまじさを物語っていた。幸いなことは住人が既に避難していたことか。
「なるほど」
男が呟く。
「なるほどなるほどなるほど?
ニタニタ。
ニヤニヤ。
せせら笑い。
表面上の顔に刻むそれは心の奥底から湧き出てるような
自分の傍にいる男の狂気に飲まれかけながらも、立て続けに起きる出来事に混濁した意識の尾を掴むことに成功した。
――さっきまで居たビルから煙が立ち込める光景を、道路から見ていた。
後ろに吹っ飛ばされたと思ったら何かを砕く音がして、気づいたら
目まぐるしく変わる場面に後輩が紫眼を回して口を開く。
「は、あ――? 一体どうやって……? ビルの中に居たはずじゃ……?」
「この星の公転を私に移しただけのことだ。知っているだろう? 私の宝具を」
しゅるり、と細い糸がモリアーティの手に集まり、象牙のグリップからシャフトが生えていき、一本のステッキに成っていった。
さも当たり前のことのように語るモリアーティだが、『宝具を使った』事実を聞いて背筋が凍った。
彼の宝具は倫敦指鋲図という、対星宝具。
モリアーティ曰く、惑星の自転や公転を操る宝具らしいが、その内容は耳を疑うものだった。
そもそもこの宝具は物理現象なんだ。概念現象とか魔力攻撃とかそんなんじゃなく、実際に自転や公転に作用する物理数学式。発動すれば冗談ではなく星が滅ぶ、なんてオレTUEEEEな厨ニ生が考えたようなトンデモ宝具。
今回行なったのも恐らくワープではなく公転に沿った直線移動。何か障害物があった場合、防ぐ間も無くミンチに成っていた。マシュが後ろに居たからクッション代わりになって壁を突き破っても無事でいられたんだ。
「無駄な魔力を使ってしまったな。今後を考えると残量魔力に再計算が必要か――」
――おいこら。 ←
――勝手に使ったことに対して何かないのか?
勝手に星を破壊する宝具を使ったんだ。何で未だこうして無事なのかよくわからないからじっくり説明してもらおうじゃないか。
「問題ないさ。カルデアの変換魔力と周囲の
「先輩、もうそろそろ令呪で制限させた方がいいんじゃないでしょうか」
マシュの批難する声に大きく賛同する。初速無し秒速30㎞/sなんて空気抵抗で擦り切れる速さなんだぞ。
契約してるサーヴァントに令呪縛りはしたくないんだけど一度検討する必要があるかも。
「結果的には爆風に巻き込まれずに済んだ。一先ずはそれで良いだろう。しかしここから離れた方がいいな。爆弾を仕掛けてきたということは、我々に対して攻撃の意思があると言うことだ。君たちの調子はどうだね?」
「……それも一理あります。先輩はどうですか?」
マシュに促されて小さく頷いた。ちょっと頭がフラフラするだけでそれ以外に異常はない。でも通信機からノイズみたいなのがずっとなってるんだけど……。
「爆風の影響で故障したのかもしれませんね。自動修復機能が付いてるので復旧まで待ちましょう。それまでは何処かで身を隠します」
そうだ。何でホームズがあんなことをしてくるのかわからない限り、ここでジッとしてるわけにはいかない。
と、何処かで物音がした。
またホムンクルスか? そう思っていると、モリアーティが飛び出し式の隠しピストルを上に向けて前に出て、マシュが背中を守るように盾を持って身構える。
その直後に。
ビルの窓ガラスが一斉に割れ、雨あられのごとくガラスが襲い掛かった。
咄嗟にマシュが庇うように覆いかぶさった。
マシュの顔がすぐ近くにあるとわかった瞬間に、ガラスの割れる音が鼓膜を裂くかのように響いた。
盛大な不協和音に顔をしかめ、眼前の現象に頭が混乱する。一体何が起きてるのかわからない。
魔術、なのだろうか。自分たちがここに来ることを見越して、誰かが仕掛けた罠なのか――。
「ははははははははははははははははははははっ」
空回りする思考の中で、モリアーティは笑いながら空砲を撃つ。
紳士らしいとは言えない少年のような笑い声は苛烈な発砲音でかき消される。一体この状況の何が彼の琴線に触れたんだ?
しばらくするとガラスの雨は収まった。雨に打たれてたモリアーティが一見無傷な所を見ると、魔力を込めてない普通の攻撃だったのだろう。
恐らく
それでもなお、トチ狂ったようにモリアーティは空砲を止めなかった。
「ははははははは……。5時の方向からでかいのが来るぞミス・キリエライト!」
ハッとマシュが盾をどかして振り向いた。
見えた光景はまた奇妙なもの。
ごく普通に照らしていたアーク灯が折り曲げたポールコーンのようにしなっている。
まるで振り下ろすために力を溜めるように。
それは実現した。
ドガガンっっっ!! と。
アーク灯は電球が割れるのを躊躇わずに地面に激突した。
当たらなかったのはマシュが盾を霊体化させ、咄嗟に担いで避けたからだ。
ガラスが少ない場所にそっと下ろしてくれたマシュはすぐに盾を実体化させる。まだだ。街灯の他に電柱がある!
「またガラスが降って来る可能性があります。マスター! すぐに避難しましょう!」
そう言ってるうちにまた電柱がマシュに鉄鎚を振り下ろした!
マシュはそれを真正面から受けた。とてつもない衝撃音が全身を震わせる。衝撃で手とかが痺れてもおかしくないけど、マシュは鉄槌を真上に打ち返し、飛んで逆に盾を電柱に向かって振り下ろした。
その攻防にほっと一息吐き、直感的に後ろを振り向く。
向かい側にもアーク灯があるのを忘れていた――!
既に溜めを終えて振り下ろそうとするアーク灯だが、一発の発砲音により動きを止めた。
何処かからの狙撃でアーク灯が撃ち抜かれ、しなった形のまま止まったのだ。たぶんアーク灯の火に魔術がかけられていたのだろうか? そして何故かモリアーティが居なくなっている……! いつの間に逃げたんだあいつ!?
が、考える暇すらなかった。
足元から細かい砂粉が動くようなシャラシャラという擦過音が聞こえた。
それは粉々になったガラス。それが動いているということは――いやな想像が浮かぶ。
――こっちだ! ←
とにかくここから離れることが先決だった。なるべく電柱などから離れていて屋根があるだろう場所。屋内が良いだろう。
マシュに呼びかけて前へ。途端に、
シャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリンッ!! と。
一種の幻想のような音が足元を駆ける。
割れたガラスは指先についた程度の大きさでも皮膚を切り裂く。あんなガラスの大蛇に触れようものならスプラッタなモノがロンドンの街中に二つ転がるだろう。
走る――。
階段を駆けて焦げ目がついた木箱を乗り越えて、バキバキにめくれ上がったフローリングを踏み抜かないように気を付けてとにかく走る。
目指すのは最奥の部屋。爆発の起点でありながら開口部は形を残し、戸がぶらぶらと所在なげに揺れている。
罠が仕掛けられた場所にもう一度来るなんて正気じゃないと思う。
が、一度張られた罠の上からまた罠を張る、なんてことはそうそう無いはずだ。それにあれだけの爆発があったんだ。あったとしても一緒に吹き飛ばされてる。
「マスター!!」
扉の前の4、5mの床が抜けていた。
構わない。走幅跳の要領で力強く跳び込んだ。
宙を浮遊し4、3、と扉に近づくにつれて徐々に視界が降りていく。が、トン、と後輩の後押しで一気に飛距離が伸びる。
2、1――。
ダムっ!!という床が軋む音。
威力を殺しきれずにゴロゴロと転がる。人とは地力が違うマシュは受け身を取って立て直し、すぐさま扉を閉めた。
◆
部屋には既にモリアーティの姿があった。
「物語の終焉を決定付けるファクターとしての概念宝具、といったところか。探偵の死を持って終わる物語のためのデウス・エクス・マキナとして、探偵を抹消するために
いつもと変わらない穏やかでうさん臭い紳士の声。杖を持たない手で顎を擦る動作はもう見慣れてきた。
今居る空間はモリアーティの言い分を照らすと多分あのビル、221番地Bの部屋なのだろう。結果的に入る事が出来たんだ。
けど想像していたのとは全く違う。
窓が無くて全体的に真っ暗。だけど木のフローリングにはうっすらと埃が付いていて、近くにあった台を見ると埃はなおさら目立った。焦げ臭いのはさっきの爆発で巻き上げられた埃が燃えてるからだろう。これは人が来るものの全く手入れをしていない証拠だ。
それに気づいて不審に思い、モリアーティに明かりを頼むと照明弾を撃ってくれた。
照らされたのはいくつもの木箱。広さは8m四方で、学校の理科準備室のようにずらっと並んだ棚にはファイルや何かしらの薬品、また木箱が積まれ、壁一面にはロンドンの地図、人物や風景の写真、殴り書きされたメモがおびただしく貼られている。
ここがホームズの住居というのは嘘だ。
ここには生活感が無い。まるっきり倉庫じゃないか。
「……」
「痕跡を残さないよう気を遣っているが、なるほど。
自問自答して勝手に納得する姿は違和感だらけだ。
彼はジェームズ・モリアーティ。
彼はシャーロック・ホームズの敵役。
彼はホームズとの死闘の末、ライヘンバッハの滝で命を落とした。
なぜ彼は
「モリアーティ教授」
マシュが口を開く。
その声には警戒の色が含まれていた。
「率直に聞きます。
マシュが言っていた親しみやすさ。それがどういうものなのかはよくわからないけど、今回の旅を通してなんとなく違和感がある事は理解した。
「小説ではミスター・ホームズの下宿先を突き止め、ここで対話したと。でしたらこの場所を知ってることは説明が付きます。ですが知られたとして、こんな隠れ家のような住居を造ったホームズさんが何もせずここで佇んでいるのでしょうか? よりにもよって宿敵であり天敵であるあなたにです。実際に何があったのかわかりませんが、かつてここで住んでいたとしても、もうここにホームズさんは居ません」
滔々と、真実を語る探偵のようにマシュは言葉を並べる。
「『シャーロック・ホームズの探偵事務所へ行く』とロンドンに着いてあなたは言いました。『トライヘルメスを改ざんした犯人に会いに行く』とアトラス院であなたは言いました。私達はホームズさんが原因だと思っていましたが、そもそもホームズさんは表の世界を歩く人間です、いえ、魔術に心得があったとしても、エジプトの錬金術をマスターしていないと思われます」
トライヘルメスに接触したのはホームズとモリアーティ。改ざんした可能性があるのはホームズと思っていた。けどマシュの言い分が合ってるなら、その可能性は低くくなる。
だとしたら……この騒動の元凶は――
「教えてくださいモリアーティ教授。あなたは一体何をしようとしてるのですか?」
ここまで連れてきて何を企んでいる? とマシュはそう断言した。
持っている盾を力強く握りしめて、何が起こっても良いように備えてる。完全にモリアーティに疑念をを抱いていた。
話してほしいと思った。だってモリアーティの
モリアーティの返答は芝居じみた4発の拍手だった。
「全く持って君の推理は正しい」
張り付けた笑顔、ではない。
何が嬉しいのか、何が琴線に触れたのか。
穏やかな紳士の嘲り顔は鳴りを潜め、獰猛とも見える笑顔をこちらに向けていた。
「勘違いはしないでくれ。別に君たちをダマそうとしたつもりはない。だがシャーロック・ホームズについての推理は見事だ。かはっ、そうだね、モリアーティが探偵のマネなんてするもんじゃないな」
「……やっぱり違うんですね」
「ああそうさ。『緋色の研究』で世間に知られるようになった彼に会ったこともないし、そうだ、ロンドンにも居なかったハズだ」
「……そうですか」
モリアーティの話を聞いて、マシュの語調が落ち込んでるのを聞き逃さなかった。
――それじゃあ別の英霊? ←
「そうとも言えるしそうとも言えない。君と同じだよミス・キリエライト」
? どういう意味だろう。引き合いに出されたマシュも首を傾げた。
「我々の世代で一世風靡したのがシャーロック・ホームズシリーズの推理小説だった。当時革新的で魅力的だった名推理に誰もが惹き込まれた。
時々出てくる『我々』という単語が気になった。マシュは納得した表情をしてる。
「それは……とんでもなく……」
「無意味だろう?
照明弾が力尽き、光源の無い闇が帳のようにモリアーティの顔を隠していく。
「わたしは無意味とは思いません。教授たちも何かを産み出そうとして、実際にこうして造り上げてしまったんですから」
「お褒めに預かり光栄に思う。だが、その居るはずのない偶像を追い求めたくだらない連中の果てがこの私だ。彼が為したことを模倣した功績で『座』に居るかもわからない犯罪者の殻を被った、ただの錬金術師。それがジェームズ・モリアーティを名乗るこの私の正体」
モリアーティは自らを嘲るように口元を引くつかせた。
推理ドラマとかでトリックを見破られた犯人は口が軽くなるようなシーンは実際に起こりうるようで、モリアーティの口調は軽かった。隠す必要が無くなったから開放感を感じてるからかもしれない。
……それじゃあもう一つの本題。
今回自分たちを襲ったのは誰の手引きだったのか。
既にモリアーティが手引きしたとは思ってなかった。だってあの爆発やガラスや電灯の襲撃について何か知ってるようだったし、カルデアのサーヴァントという枠組みが気に入らないから抹殺を考えた、という自作自演にしては遠回り過ぎる。
「先輩の言う通りです。アトラス院から続いた一連の出来事には関連がある……これはもう事件ですね」
後輩が色々荒ぶっているけど、言い分は的を得ているためあえて何も言わない。
トライヘルメスという財宝に目がくらみ、そこから自ら深い所へのこのこ追いかけて――その果てに報酬は無く、大口を開けた魔物が居るだけだった。人類最後のマスター殺人事件になる所だったのだ。
「――では今一度、今回の事件の概要を考えてみよう。今回の事件の一番の難点は、証拠が多すぎるということだ」
明かりが無くなり、もうシルエットでしか人を判別できない。モリアーティの表情は窺えなかった。
「トライヘルメスを改竄したことで我々はロンドンへ誘い込まれた。では何故誘い込む必要があったのか? それはわかるかね? ああ、ここでは
モリアーティの問いに思慮を巡らせる。前にロード・エルメロイから聞いたことがあるけど、『魔術が絡む事件において
ただ、『
そのことを前もって言ってるのだからそこに答えがあるんだろう。
あの爆発やガラスは明らかにマスターである自分やマシュに向けられたものだった。それで犯人はどう得をするのだろう?
魔術王が差し向けた刺客? ――違う。魔術王はこちらに興味を持ってない。まだ見ぬ特異点に聖杯を送り込むだけで、すでに修復した特異点をどうこうするような奴じゃないハズだ。
はぐれサーヴァントによる無差別な攻撃? ――これは近いと思うが違う。攻撃はあったけどすべてピンポイントで行われていた。それに第6特異点から第4特異点まで単独で移動なんて出来るのだろうか?
ではカルデアに居るサーヴァントを狙って? ――恐らくこれだ。マスターを失えば契約したサーヴァントに大きな打撃を与えるはず。ライバルだったり犬猿の仲だったりなサーヴァント同士で戦うことはよくあるけど、それでも一筋縄ではいかない。単純にサーヴァントの抹消を考えたらマスターを狙うのが効果的だ。
誰を狙って? ……これは言うまでもない。
「モリアーティ教授?」
一連の事件で最初から最後まで共に居るサーヴァント。関係が無いハズが無い。
けどここで疑問が発生した。
トライヘルメスの改竄だ。あれが出来るのは今の所モリアーティだけ。彼ともう一人、ホームズには改竄なんて出来ない。
そんな思考を読み取ったのか予想してたのか、モリアーティが答えた。
「君たちは言ったね。彼がトライヘルメスを使ったと。だがそれは違う。もう一人居たのだろう。君たち二人、ベディヴィエール卿、ミス・サンゾー、ミスター・トータ、そして敬愛なるシャーロック・ホームズ。そこにもう一人、居たのだよ」
芝居がかった口調に拍車がかかる。声に合わせてシルエットがオペラ俳優のように一言一行する。
「それからもう一つ。トライヘルメスから送られたデータがあっただろう?」
「はい。全て私たちの旅の記録でしたが」
第1特異点から、ジュラの森のマルタ戦、地中海の港町マルセイユでのゾンビ狩り。
第4特異点から、オールドストリートでのオートマタとの戦い、ホワイトチャペルのジャック・ザ・リッパーの襲撃、ハイドパークでは魔本を焚書していた。
第6特異点から、東の村で山の翁と大英雄と対決場面、晩鐘廟で操られた静謐のハサンを救った事、そして王城の獅子王との決戦。
思い返すと色んな感情が織り交ぜになる記憶だ。
「もう一度言おう。この事件は片手間に考えられたような
スッ、と手が空を彷徨うと、突如通信機が作動してホログラムが宙に浮かぶ。
「特異点の地名をそれぞれのイニシャルを並び替えれば言わずともわかるだろう。このメッセージは明らかに私に向けて送られたものだ。だから私はここまで来たかったのだよ。ふざけるな、と言いにね」
第1特異点から、
第4特異点から、
第6特異点から、
特異点ごとで並び替えると、WHO ARE――
――……マイケル・ジャク――!? ←
――……ジェームズ・モリアーティ?
「逆だよキミ。自慢じゃないがステップで足を交差させるだけで足をもつれさせる自信がある」
「
その通りだ、とモリアーティが肯定する。
自分たちからしたら目の前の紳士がそうだが、この問いを投げかけた相手はその答えを求めてないはずだ。
これまでの行動を鑑みるに、この人物像は誰かに似ている。自分がわかってる問題を人に試すようなことをして、人目を忍ぶくせに敵対者には自己顕示する証拠を残すようなやり方。
「奴は太陽だ。彼を中心に犯罪者は惑星のように回る。居るだけで悪意は植物のように育ちゆく。それでいて厄介なことに彼は自らの手で他人の『悪』を行使することができるのだよ。蹂躙という言葉なぞ生温い、凌辱後の搾りカスすら利用するその悪意。並大抵の人間では天上で見下ろす彼に手を届かせることは出来ない。唯一、天から堕ろしたのはシャーロック・ホームズだた一人さ」
マシュも、自分も、出題者が誰なのかがわかった。
トライヘルメスを改ざん出来たのも説明が付く。アトラス院の錬金術というのは詰まるところ、膨大な計算処理によって行われる奇跡なのだから。錬金術師でなくても
ヨーロッパの数学界に定説を残すほどの論文を書いた数学教授であり、シャーロック・ホームズと相対する犯罪者であった人物。
――ジェームズ・モリアーティ。 ←
◆
気づけばそこに居た。
モリアーティと対角、自分たちの背後からサーヴァントの気配が立ち上がった。
その瞬間に室内の燭台が火を灯した。
まだ薄暗いものの、部屋全体のディテールがわかる程度の視界を確保できた。
モリアーティはこちらを睨みつけながら佇んでいる。いや、あの敵愾心に満ちた目が向いてる先は自分たちの後ろだ。
「紹介しよう。彼が君たちを襲った犯人だ」
振り向いた先に居た人物は――言葉を失う。
英国紳士然とした雰囲気、黒い髪をオールバックにして、コートとケープを合わせたようなダークブラウンのインバネスコートを纏ってる。柔和な笑みを浮かべるその人はかつて特異点攻略の折に色々と助けてくれた。
要するにシャーロック・ホームズその人だった。
「ミスター・ホーム、ズ? え、でも何で……」
わけがわからない。
シャーロック・ホームズがロンドンに居るのは良いとして、かつてアトラス院で手を貸してくれた彼が命を狙ってくる理由がわからない。それに一連の事件の犯人は本物のジェームズ・モリアーティではなかったのか。
困惑しきった様子を見て、モリアーティがくつくつと笑い声を漏らした。
「君たちには彼に見えるのか。私には黒い影が佇んでいるようにしか見えないのだが……。信じられないだろうが、彼がモリアーティ教授だよミス・キリエライト」
「初めまして、カルデアのマスター。わざわざロンドンまで呼び出してすまないと思っているよ」
ホームズの姿で。ホームズの声で。ホームズの所作で。しかしあの時の彼とは決定的に違うと感じる。
表情が無いのだ。
普通、喋る時は口元が動くハズなのに、腹話術のように微笑みの表情が動かない。
自然と足が引いてしまうほどにそれが不気味だった。
「
しかしどうしたらよいものか?
どういうわけだか二人のモリアーティに挟まれてしまったのだが……。ウチの方は味方だと信じたい。
マシュはいきなり現れた方に盾を向けて、いつでも引き寄せられるように片方の手で魔術協会の制服の端を掴んでいる。
マシュが口火を切った。
「あなたが今回の事件を引き起こした犯人だとして、何故このようなことを? やはりこちらのモリアーティ教授があなたを偽ったからですか?」
改めて、至極当然な質問。
ホームズ姿は表情を変えず、
「君たちカルデアは魔術王の人理焼却を防ごうとしているだろう? それを妨害するためだよ」
「――……」
――――――――――――――――――。
ホームズの容姿で、あまりにも当然というような口ぶりでに語った内容に、一瞬思考が停止してしまった。
こいつはいわゆる『オルタ』のような状態なのだろう。でも、シャーロック・ホームズという人物はこんなことを言ってのけてしまうのだろうか?
「『それ』は『彼』とは違うのだよ。ある意味の願望器であり、たった一人の探偵の願望から生まれた英霊だ。彼に人間的な思考を求めない方が良い。
勝手に他人の悪意を読み取って最適解を打ち出す自動機。それが小説上のモリアーティ教授なのだ」
モリアーティがそう解説した。相変わらず口端を引きつらせながら睥睨している。
「ともあれ、
「何を言っている」
ガクンと、雰囲気が変わった。
あっちの『モリアーティ』が無表情になった。
「私は複製を認めない。贋作を認めない。模造を、模倣を、偽装を、捏造を、詭弁を、外連を、
それこそ壊れた機械のように同じことを繰り返す。
頭を掻き乱し、苦痛に悶えるように体をねじくらせ、それでもなお表情は変わらない。
その異様な気配に思わず圧された。
「世界を維持を放棄した錬金術師。君たちは悪性/英雄の死を溜飲すべきだった。君たちは物語/英雄を存続させるべきではなかった。君たちは本物/英雄を求めるべきではなかった。終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった。ワタシは君たちの矛盾を認めない。ワタシは終演。君たちの物語は終わらせる。終わらせる。終わるべきだ」
ギシィッ!! と空間が鳴った。
辺りに散らばる文具が、配置された家具が、六方を隔てる部屋全体が、全てが自分に向かって這いよってくるような気がする。
ようやく理解した。あれは、
物語を終わらせるファクターとして、あらゆる事象を捻じ曲げて強制終了させる概念。それがこの『ジェームズ・モリアーティ』という英霊なのか。
「――それは、違います」
そう、マシュが呟いた。
歪に体をくねらせた『モリアーティ』はぐりん! と顔だけマシュに向けた。
「……半英霊の少女、君も同罪だ。全ては終わる。君の創作に対する愛は無意味だ……いや、その愛こそが、その思想があの模倣英霊を産み出した。故にここで」
「無意味ではないです」
あらゆる声が重なって聞こえる『モリアーティ』の言葉を、マシュは即座に否定する。
本の中の登場人物からの拒絶の言葉に、マシュは曇りない意志を持った瞳で睨み返した。
「綺麗に終わるからその物語が美しいという理屈はわかります。けど、それだけでは無いはずです」
「――」
「この部屋だって、あなたの言う創作に対する愛情によって出来たものです。美しかったものを後世に残したい、そんな情熱が私には伝わってきました。物語が美しく終わっても、登場人物のその後を考えたり物語を深く考察することは自由なんです。……続くことが間違いだとしても、それは多くの人に愛された証拠なんです」
その言葉があの『モリアーティ』に届くかは知らない。
けど腹をくくるには十分だった。
マシュは認めなかった。
物語の終わりなんてそう決められるものじゃない。千差万別、美しくも醜くも、スパッと潔く終わるのもダラダラ続くのもそれはそれで『あり』なのだ。要はその物語が皆に愛されたかが問題なのだから。
その小説のファンだから、マシュは物語を続けさせたい思いを認めない『モリアーティ』を認めない。
そして、
――いつまでへこんでいるんだモリアーティ!! ←
次に声を掛けるのはカルデアで召喚した方のモリアーティだ。
当の本人は後ろでずっと佇んでいた。で、今はキョトンとしながら首を傾げている。
「……へこんでる? この私が?」
ああ、そうだ! 今そのことでかなり頭にキている。
ずっと憧れていた人にお前を認めないだとか言われたら誰だって落ち込む。英霊のたまり場のカルデアじゃよくあることだ。
けど! 目の前でマスターが危機に陥ってる時にへこんでるサーヴァントが居るか!
「――ああ、そうだね」
黒い糸が纏まるようにマシュの隣に現れたモリアーティは、いつも通りの笑みをさらに深く刻んでいた。
「私が召喚に応じた理由を見失っていた。私の計画にはクライアントたる君が必要不可欠。目的を前にして過程をおろそかにしてしまった」
モリアーティは嗤う。
「まずはあなたに非礼を詫びよう。確かに我々は完璧だったものに傷をつけた。
深々と紳士的なお辞儀をするモリアーティ。しかし、その態度は言葉と真逆だ。
「しかし礼を述べる。あなたの存在のおかげで我々の計画は大いに前進した」
「――何?」
「――ジェームズ・モリアーティはシャーロック・ホームズの幻覚によって生まれたとしたら、ホームズが居ることでモリアーティは存在を確立することになる。逆説的に、モリアーティが居ればホームズの存在を証明できるのではないか」
『モリアーティ』が始めて表情を変えた。
奇妙でなんという単語で処理できるかわからない表情だったが、こちらにプラスになる感情じゃないだろう。
「在らざる存在を想像し証明することこそ我々の得手なのだ。ただ愛していた。その感情だけで架空を現実に再現せしめる理由としては十分だ」
それが彼がモリアーティになった理由なのか。
ただのファンだから。
作品を愛したから自分も作品の一部に成りたいと思ったから。
行き過ぎた
「――――――――――――――――――――――――。
――――――――――――――――――――――――。
――――――――――――――――――――――――。
―――――――――――――――――――――――おまエタちは狂ッている」
「ああそうだね。自覚しているつもりだよ。しかし、改めてあなたを前にして思ったことがある。あなたはモリアーティ足り得ない。犯罪のコンサルタントを名乗るのなら、人の感情を深く理解していなければならない。犯罪は人の感情によって起こされるものだからね。従って、機械的に物語を終わらせてファンの願いを何故と言ってのけるあなたを我々は『ジェームズ・モリアーティ』とは認めない」
再び空間が軋んだ。
空気が圧縮し、物体は重力を逆らって。あの『モリアーティ』を中心に世界が塗り変わり始める。
死角からの被害に遭わないよう、マシュの背中に張り付いて周囲を観察する。
視界の情報はあまりあてになりそうにない。部屋全体が歪み捻じ曲がってるから真っ直ぐに進んでもいつの間にか天井を歩いていた、ということになりそうだ。
「ここぞとばかりに煽ってどうするんですか」
「ファンの言葉を鵜呑みにして当たり散らすのは作家としていけないことだと、読者からのささやかなアドバイスのつもりだったのだが有難迷惑だったかね?」
「確信犯ですね。犯罪者のくせに」
そんな中、マシュの苦言にもモリアーティは飄々とした様子でそう嘯いていた。
二人の息の合った(?)掛け合いを聞いて思わず半笑い。先ほどのピリピリとした空気を二人の間から感じない。いつも通りの仲がいいとも悪いとも言えない、後輩と教授が揃った時の独特な雰囲気。
彼の告白でわかった。性質的にも人格的にも反りが合わなそうな二人が何故あんなに楽しそうにしていたのか。
要は彼もファンだっただけの話。多くを語らずとも、自然と通じ合ってしまっただけ。
空気を裂いて飛んできたペーパーナイフを刺さる寸前にマシュが掴む。
いけない。今命狙われてるんだった。
「――っと、このままでは先輩が潰されてカーペットされちゃいます。どうしますか?」
もちろんあの『モリアーティ』を倒してここから出よう。虎の絨毯みたいになるのは嫌だし。
『モリアーティ』は変わらずここが私の定位置だ! と言わんばかりにそこに佇んでいるけど、あれはもう本体じゃない。あれを倒してもこの現象は止まらないだろう。それに相手は幻影のようなものらしいし、マシュが物理的に叩いても効かなそうだ。
そういうわけだから、何か案はありませんかね教授?
「当然あるさ。『もしモリアーティに邂逅した場合の対処』は計算済みだ。まぁそれには――」
ちらっちらっ、とこれ見よがしに流し目を送ってくる英国紳士に思わず嘆息した。
たしかに言ったけども。勝手に使うなとは言ったけども。嫌味に感じるからやめてくれません?
手ぐしで髪を解いて、一言。
――やっちゃって。 ←
――宝具開帳、許可します!
モリアーティはニヤリと嗤った。
「承った。我が頭脳を持って証明しよう。――ミス・キリエライト、君の想い人に巻き添えを食らいたくなければしっかり守りたまえ」
「っ! はい!」
モリアーティから遮るように、マシュが盾を構えた瞬間、
いつの間にか盾とマシュの間に、突起の付いた円柱状のものが現れた。
「あ、――」
何なのかを理解した瞬間に、
◆
――音が鼓膜に刺さると共に動き出す。
――フラッシュバンの効果は精々5,6秒、その間に術式を完成させるのは容易い。
鋭利な刃物が身体の左側の関節を貫通した。
――妨害さえなければだが。
――これが完成すれば、偽典ではあるものの、固有結界を展開した相手にとって猛毒となる。
――それがわかってるからこその、この妨害。
――膝が崩れ、片足で支えるが痛覚の悲鳴が集中力を乱してくる。これは『狂化』を持っても思考にノイズが入ってしまう。
手にしていた象牙のステッキがほどけた。
棒が布へ。布が糸へ。繊維をエーテライトで構築した杖は見る間に姿を変えていく。
表面に数式が書かれた糸がロンドンの街の図を頭上に描く。
――唐突に、魔力の上昇を感じた。
――自分の内包魔力ではない。外部から送られたものだ。
――『霊子譲渡』。サーヴァントの内包魔力やマスターからの供給魔力。これらとは別の、物質の情報を書き換え魔力に似た性質を持つ霊子に変換する術式。変換する物質は主に魂であるため、霊子を送られたサーヴァントとマスターは一時的にだが『繋がって』しまう。
――この宝具は騎士王の聖剣と同じく数多の制限が存在する。全てを語るには時間がないが、最も大事な要素は魔力。
――ただの
――善良なマスターからの魔力なんてカップの底に沈殿する茶のカスっ葉程度しかない。
嫌な音がした。
穴を開け、叩き割り、掻きまわす音。
視界が赤くなって、釘辺りで脳天を撃ち抜かれたらしいことを悟った。
銃弾の弾道に沿って体が傾く。
視界があらぬ方へ向く。
――だがおかげで宝具を発動する程度の余力が出来た。
――式は完成した。
――ほんの少しの合間に考えたのはわずかに与えられた魔力のこと。
――意識がマヒしてるはずなのに、あの一瞬で魔術を完成させた?
――予測してあらかじめ発動させていた?
――嘲笑。揶揄。冷笑。愚弄。嗤笑。嘲謔。久方ぶりにそれ以外の笑みが自然と浮かんだ。
「君がやってきた事だ。その脳細胞を使わせてもらおう。……精々発狂しないように気を付けるがいい」
そう言って、真上に向けて照明弾を撃ちあげた。
「この謎を、亡きアーサー・コナン・ドイルに捧ぐ」
それは街全体に描かれた巨大術式。
ロンドンで起きた未解決犯罪の地図。
――発動するのは対星宝具。
――その前段階の固有結界専用の対界宝具。
――その宝具を五感で感じてしまった者は壊れてしまう。その者の世界が破壊される。
――だから後ろの二人を眠らせた。だからカルデアのモニターを遮断した。
「「
異変は足元から起こった。
照明弾で照らされた、術式の影。
それがゆらゆらと揺らめく。
何処かから聞こえる太鼓と
――『モリアーティ』は舞台装置だ。感情を理解しないように、感情を持たない機械だ。
――『モリアーティ』は感情を持つべきだった。この光景を見た時瞬間に逃げることができるから。
時間が巻き戻るようにモリアーティは起き上がる。
儀式は完了した。
けれど不満足な心持ちだ。
その視線は頭上のロンドンの地図にある。
――早く発動した分、魔力が少なすぎた。
――残念ながら召喚できたのは
手が一本出ていた。
月のクレーターのようにボツボツしていて、出来の悪いエロ同人誌の触手のような手がちょっとだけ倫敦の地図から出ていた。
それだけだった。
星が壊れた。
「もし彼に戻るのなら伝えてくれ」
存在ごと壊される感覚に苛まれながら『モリアーティ』が聞いたのは憎たらしいあの男の声。
「ライヘンバッハの滝であなたを待つ。そして我らの決着を持ってあなたを証明する、と」
◆
「おはよう諸君。つかの間の夢から覚めた気分はどうだね」
目が覚めた時には外に居た。
おかしい。時間を確認しても1分も経ってないハズなのに、いつの間にかビルとビルの間にぽっかりと空いた空き地のような場所で倒れていた。
困惑してる時に、薄い印象を抱かせながらも胡散臭い紳士がそんな社交辞令を投げかけてきた。
――最悪な気分です。 ←
――て、け、り、り?
うん。それに加えて『霊子譲渡』したときに何か悪いものを感じた所為か、脳髄がすり合わすような不快感を感じてる。
「あの『モリアーティ教授』は倒したのですか? モリアーティ教授」
まだ頭がはっきりしていない様子でマシュはそうモリアーティに尋ねた。
「答えはNoだよミス・キリエライト。完全に破壊する前に逃げられた。――まだ私をそう呼ぶのかね」
と、モリアーティは目を瞬かせた。そんな彼の動揺に思わず笑みが零れる。
おかしな言い方だが、カルデアのモリアーティは彼なのだ。
あの舞台装置でも、本物の犯罪の皇帝でもなく、アトラス院出身のどこかおかしいなんちゃって英国紳士がカルデアのサーヴァントとして人理救済に協力している。今さら他のモリアーティは考えられないのだ。
モリアーティは気恥ずかしそうに息を吐くだけだった。
マシュの手を取って立ち上がる。
ちょっとした思い付きがこんな大事になるとは思わなかった。疲労困憊、とはこういうこと。
カルデアとの通信は途絶えたままだし、もう少しロンドンに留まらなくてはいけないんだけど――
「――っ、そこをどいてくれ」
モリアーティが唐突に声を上げた。
何事かと思ってその場から飛び跳ねると、英国紳士はこれまでにないほど敏捷に地面に伏せた。
スーツが汚れるのもいとわず、モリアーティは一心不乱に地面を探る。
次第に砂が払われていき、
「これって……!」
それは1.5m平面の鉄板に取っ手がついた扉だった。
年季が入っており、恐らくこの扉の上に後から建物が立ったと推測できる。
だが、それだけのものじゃない。それだけでマシュが驚嘆の声を上げて、モリアーティの笑みがさらに深くなることは無い。
扉にはシンボルが彫刻されていた。
パイプを持った紳士の横顔のシルエットが。
「このまま見ないフリをしてカルデアに戻るか、好奇心に任せて前に進むか……諸君はどうするかね?」
模倣犯のサーヴァント
真名:ジェームズ・モリアーティ〔シャーロキアン〕
身長:168cm / 体重:63kg
出典:シャーロック・ホームズシリーズ(史実)
地域:ロンドン
属性:混沌・悪 カテゴリ:地
性別:男性
カルデアにて犯罪と小説の布教に勤しむ老紳士。
ステータス:筋力E 耐久E 敏捷B++ 魔力B+ 幸運E 宝具?
保有スキル
犯罪教唆:犯罪計画や必要な道具を提供するスキル。幸運が1ランク下がる代わりにE~Bランクの気配遮断、情報隠蔽のスキルを得ることができる。ゲーム的に「味方単体にスター発生率アップ&敵単体の強化解除&精神弱体耐性大ダウン【デメリット】」という効果のスキル。
カリスマ(悪):軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。悪・混沌属性に対し絶大な効果を得る。ゲーム的に「味方全体の攻撃力をアップ&自身を除く味方全体の〔悪〕の攻撃力をアップ」という効果のスキル。
犯罪皇:情報抹消、諜報、抑制などを含めた隠蔽技術。日常に溶け込みながらも誰からも怪しまれず、犯罪社会を裏から操っていたモリアーティの固有スキル。このスキルを保有するモリアーティは、自らスキルを解除しない限りサーヴァントでさえも目の前に居ながらモリアーティをサーヴァントだと気づけない。
架空数学:本来存在しない事象や物的証拠、人的証拠を計算し、存在を在るものとして証明する固有スキル。このスキルを持つモリアーティは、小説の単語一つから推理し、そのものの解釈を捻じ曲げて本来『無い』はずの神性の存在を在るものとして証明させた。「ありもしないものを存在させることこそが私の真骨頂さ」
狂化:別名『狂愛』。『狂化』に比べランクはかなり低いが、好きな物事に対して集中力が格段にアップする。
宝具:
ランク:?
種別:対星宝具 / 対界宝具
レンジ:1000 / ?
最大補足:現70億人 / ?
由来:ジェームズ・モリアーティが発表した論文、または数式。それをこのモリアーティが独自解釈して解析した終末論。
計算上、条件を満たした時、文字通り惑星を壊す数式。
小説の一文にだけ登場した謎の論文で、その解釈は多岐に渡る。一例を出すと、世界中の人間が全員犯罪者になった場合、地球を爆砕して無数の小惑星にしてしまう、世界を滅ぼす「終局的犯罪」について書かれた論文。また他にもかつて火星と木星の間にあった惑星がある神性によって粉々に砕け、現在のアステロイドベルトを形成させたという仮説の提唱など。そのため、この宝具は条件、過程を変えると様々な効果を生み出す宝具となる。しかしいずれの方法でも地球が破壊されるという結果は変わらない上、これらの結果は魔術を使って物理的な現象を起こしているため、霊体にはさほど効かない。
このモリアーティは『覚醒式』と『円環式』という二つの過程でこの宝具を使い分けており、またカルデアの供給魔力だけでは発動できないため、宝具を限定的に発動させて星の表面を剥がすに留めている。
ゲーム的に「敵全体に強力な〔地上の物体〕特攻攻撃&〔死霊またはサーヴァント〕攻撃無効【デメリット】」
絆マテリアル
推理小説、シャーロック・ホームズシリーズに登場する頭脳犯。
ロンドンの犯罪社会を影から操り、幾多の犯罪を迷宮入りにしたと言われる。表向きは大学の数学教授であり、また軍事学校の教師でもあった彼の人脈は多岐に渡り、そのあらゆる伝手を用いて犯罪者に情報や武器、犯罪計画を提供した。シャーロック・ホームズをもってして「命を懸けて倒さなければならない相手」と言わしめた。――が?
ロンドン史上最悪の犯罪者と言われるモリアーティだが、彼を犯罪者と認識していたのはホームズただ一人であった。とあるスコットランドヤードの警部が彼と直接対面した際、彼の紳士的な態度に疑惑を向ける所か逆にホームズに疑われて気の毒に思われたほど。
――モリアーティというキャラクターは現実世界にも小説の世界にも存在しない。
小説で彼の話が出たのは2度だけ。しかもホームズの回想でどういう為人かを説明されただけで実際に登場してはいないため、現実でも架空でも存在しない英霊である。(ワトソン氏の手記であるため仕方のないことかもしれないが)
現実にモデルと言われる人物は多数居るが、サーヴァントとして召喚されるのは阿片中毒に陥ったシャーロック・ホームズの幻覚か、小説の後の年代の人物である。
このモリアーティは全くの偽物である。
アトラス院の錬金術師であった彼はイギリスに渡った際、書店で購入した書籍にドハマりし、アトラス院の意向をも無視して小説に人生を捧げた。後に彼の同士となる団体に協力し、自身がモリアーティになり小説の世界を現実に持ってこようと計画した。その後第二次世界大戦の最中にアトラス院が放った刺客により命を落としたと伝えられる
本来、カルデアの召喚システムでは星を滅亡させようとするサーヴァントは召喚されないのだが、彼の願いは「シャーロック・ホームズを現実に存在させること」であり、星の破壊はその目的の過程に過ぎないため召喚することができたとか。サーヴァントとして召喚されたのは自身が召喚された時の抑止力としてホームズが召喚されることを見越した行動。
宝具
※指鋲図とは探偵とかが事件の関係者や関わりのあるものをピンとヒモで表現する相関図的なアレです。何て言うのかわからなかったので造った造語です。