艦これ世界にいく話   作:yukiho_p

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スタート地点(二回目)


三話

「こ、こちらこそよろしくお願いする。・・・その、きみが艦娘なのか?」

 

 握手していた手を放し、彼女に尋ねる。どうにも、名乗った名前が人名ではないようだったからだ。

 

「ええ、そうだけど。そんなことを聞くなんて、私がこの鎮守府の初期艦かしら」

 

「おそらく、そうだろう」

 

「あら、随分と曖昧じゃない。ここの司令官でしょ?」

 

「俺がここに来てからあまり時間が経っていないし、この島の全部を見たわけじゃないんだ。俺たちの他にも人がいるかもしれない」

 

 俺は島を一周してからこの建物に入っただけなので、知らないことばかりなのだ。ついでに言うと艦これをプレイする前にここに来たので、艦娘や深海棲艦についても詳しくは知らない。

 

「なら、いろいろ見て回るのがいいわね。あなたはもう工廠は見たの?」

 

 こうしょう、とはなんだろう。ここはおそらく軍事施設だろうから、兵器の開発などをする工廠のことだろうか。

 

「いや、まだ見ていない。というか、工廠なんてあるのか?」

 

「必ずあるはずよ。兎に角、一度見にいきましょ」

 

 そういうと彼女は部屋から出て行ってしまった。いろいろ聞きたいこともあったが、いまは彼女のあとをついていくことにした。

 

 階段を下りると、上るときには気づかなかったが裏口がある。彼女は特に躊躇することなく、扉を開けて外に出る。俺も外に出てみると、大きな扉の鉄骨造りの建物と車のガレージくらいの大きさの小屋がある。なるほど、手前の建物の陰になっていたから見えなかったのか。

 

「おそらく、ここが工廠のようね」

 

 鉄骨造りの建物が工廠らしい。それにしても、なぜ工廠の場所がわかったのだろう。

 

「詳しいな。きみはこの島に何があるのか把握しているのか」

 

「そんなことないわ。ただ、鎮守府の施設は近いほうが便利だと思ったから。あと、私のことは天津風って呼んでくれて構わないわよ」

 

「わかった。これからはそう呼ばせてもらうよ。ところで、この重そうな扉を開ければいいのか?」

 

「ええ」

 

 実に重そうな扉だ。所々錆びついている。開けられそうにないんですけど。そう思いながら扉の前に立つと、

 

 ギィィィィィ…

 

 勝手に開いた。自動ドアとは。見かけによらず新しいな。

 中は薄暗く、奥のほうははっきり見えない。天津風が中に入っていくので俺も入ろうと足を踏み入れると、いきなり明るくなった。どうやら天井にぶら下がっている電球が灯ったらしい。見渡すといろいろなものが置いてある。パッと見、よくわからないものがほとんどだ。

 ん?

 

「なあ、天津風。あの辺りなんか、動いてないか?」

 

 なにかいる。間違いなくなにかいる。

 身構えていると、変な生き物が物陰からはい出てきた。手乗りサイズの二.五頭身。

 

「何かと思えば、妖精さんじゃない。そんな身構えなくても襲ってきたりしないわよ」

 

 妖精?これが?妖精って羽が生えててお花畑とかを飛び回っているイメージなんだけど。

 しかもその某人類が衰退した作品に出てくる妖精に近い姿の、この生き物は一匹だけではないらしい。彼方此方から出てきた。ざっと十匹はいるな。そして、俺と天津風の前に綺麗に整列する。

 

「こいつらは一応味方ってことでいいのか?」

 

「もちろんよ。妖精さんはすごいんだから。艤装の修理とか装備の開発とかいろいろやってくれるの」

 

 彼らは鎮守府にとってなくてはならないものらしい。ここは、少しくらい自己紹介でもしておこう。

 

「あー、こほん。今日からここの提督を任された者だ。こっちは天津風。俺は来たばかりなのでわからないことだらけだ。いろいろとよろしくお願いするよ」

 

 妖精たちがビシッと揃った敬礼をする。任せてくれと言っているような表情だ。なんかしらんが、とても頼もしいな。

 とりあえず、妖精たちを解散させる。気になるものも多いのでいろいろ見て回ることにした。

 

「これはなんだ?」

 

 まずは、見た目は診察台によく似ている装置だ。

 

「ちょっと待ってね」

 

 天津風はそういうと、近くにいた妖精となにかやり取りをし、

 

「これは装備の開発を行うための装置らしいわ」

 

「どうやって扱うんだ?」

 

「此処についているパネルで、使う資材の数を入力すると開発が始まるようね」

 

「資材?」

 

「燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトのことよ。艦隊を運用していくうえでなくてはならないものよ。あと、開発をするには開発資材というのもいるみたい」

 

 なるほど。つまりその資材を媒体としてガチャをするという認識でよさそうだ。

 

「ちなみに資材はどれくらい今あるんだ?」

 

 再び天津風は妖精とやり取りする。その妖精は外に走っていった。外に置いてあるのか。

 

「気になったんだけど、妖精は言葉を発していないのに、どうやって会話しているんだ?」

 

「う~ん、なんて言ったら・・・。頭で直接妖精さんの伝えたいことが理解できる、みたいな感じかしら」

 

「テレパシーみたいなものか」

 

 俺は全く何も感じないので、おそらく艦娘だけの能力なのだろう。

 そうこうしているとさっきの妖精が帰ってくる。天津風が通訳となり報告を聞く。

 

「今はどれも三百くらいあるそうよ。開発資材はないみたいだけど」

 

 多いのか少ないのかわからん。

 

「この資材は増やすことはできるのか?」

 

「現状は無理ね。油田や鉱脈なんかを自分たちで見つけるか、シーレーンを確保して供給してもらうかしないと」

 

 資材が補給ができない今は、むやみやたらと使うべきではないな。

 

「ということは、資材の供給源が確保できるまでは開発はしないほうがいいな」

 

「まずもって、開発資材がないからできないんだけど・・・」

 

「その開発資材とやらも探さないとな」

 

「開発資材は深海棲艦をたおさないと手に入れることができないわよ。あいつらの体内でしか生成されないものらしいわ」

 

 深海棲艦からしか得られないということは、天津風に出撃してもらわなければならないということか。天津風の力がどれほどなのかはわからないが、かなりのハイリスクなのは間違いないだろう。

 

「ちなみに聞くけど、この横にある装置も貴重な開発資材をつかうのか?」

 

 俺が指をさして示したのは、開発装置のよこにあるカプセル型の装置だ。人が入れそうな大きさで横にパネルがついている。外見はかなりSFチックだ。

 

「そうよ。これは艦娘の建造ドックで、開発と同じで資材と開発資材をつかうわ」

 

「なら、これを使うと天津風みたいな娘をつくれると。すごいなこれ」

 

 ただ、天津風と接していてわかったことだが、艦娘と人間の違いが判断できない。艦娘がどういった存在なのか知らないけれど、艦娘をつくるという行為は今の俺には人間をつくるのと同じに感じてしまう。少々複雑な気持ちだ。果たして、人間が人間を機械でつくりだしてしまっていいものなのだろうか。現状ではまだ使うことはできないが、使う時が来ると俺はどう思うだろう。

 

「ちなみに、開発をするよりも資材と時間が掛かるわ」

 

「・・・あまり、気が進まないな」

 

「ん?どうしたの」

 

「いや、気にしなくていいよ」

 

「?」

 

「ところで、今更なんだが明かりが点いているということは、この島でも電気が使えるのか。でも、なんでさっきいた建物には電球すら付いていなかったんだ?」

 

「それもそうね」

 

 天津風が近くにいた妖精に聞く。その妖精はついてこい、といった様子で歩いていく。

 

「ついてこいだって」

 

 当たったようだ。

 妖精について外に出る。いつの間にか外は暗くなり、空は満天の星空となっていた。とても綺麗だ。空には目もくれず、妖精はスタスタと工廠の側面にまわっていく。天津風と一緒についていくと、

 

「発電機、かしら」

 

「そうみたいだな」

 

 所々錆びついていて年期を感じる発電機が、小さな小屋の中で稼働していた。工廠の電力はこれで賄っているようだ。

 

「これで発電した電気を、むこうで使うことはできないか?」

 

 手前の建物を指しながら言うと、天津風が妖精が伝えたいことを通訳をしてる。

 

「この発電機だと工廠を稼働させるので精一杯らしいわ。電球を取り付けるとしても、一か所が限度なんだって」

 

「一か所か・・・。やっぱり入り口かな?」

 

「なにいってるの?取り付けるのなら執務室しかないわ。この鎮守府であなたがいる場所なんだから灯りくらいなくてどうするの?」

 

「わ、わかった。灯りはそこに付けよう」

 

 怒られてしまった。天津風はまったくもう、といった表情である。頼りなくてすいません。

 

「じゃあ、今日はもう暗いから、明日の夜までに電球を設置してくれるか?場所は二階の奥の部屋で頼む」

 

 妖精に伝えると敬礼をした。わかってくれたようだ。

 

「それじゃ、最後に入渠ドックを見ておきましょうか」

 

「入渠ドック?」

 

 天津風が歩きながら説明してくれるのでついていく。

 

「簡単に言えば、損傷した艦娘を修復するところかしら。ほら、ここよ」

 

 そこは工廠の横にある、車のガレージくらいの小屋だ。扉を開けると中は暗いが、月明かりのおかげでかろうじて中の様子がわかる。一言で言い表すならば、脱衣所。

 

「ここはお風呂に近いわ。でも使うのはお湯じゃなくて、資材が溶け込んだ液体だから普通の人間のあなたが利用するのは危険だわ」

 

「やはりここも資材を消費するのか」

 

「艦娘は普段から平気で入れるけど、一回一回資材を使うから資材に余裕がないときは利用しないに限るわね。入渠目的以外では使わないでおくわ」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「別にあなたのためじゃないわ。この鎮守府のためよ!」

 

「そうか」

 

 少し顔を赤らめているのがわかる。かわいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ。今日は疲れた。

 今は執務室の椅子に腰かけている。あのあと天津風に、今日はもう遅いし疲れているだろうから戻って休めと言われた。天津風は海を見たいといってここにはいない。

 それにしても、今日だけでいろいろなことがありすぎて少し混乱気味だ。ここまでくると、本当に異世界に来たと信じるしかないようだ。ならば、いったい誰が俺をここに呼んだのだろう。そして、なぜ俺なんだろう。・・・考え出すときりがない。

 兎に角、今はがむしゃらにでも前に進むしかないようだ。こうなった以上やるしかない。俺はこういう人間だ。それに、いつか元の世界に戻れる手段がわかる可能性だってある。ぐちぐち言ったところで仕方ないし、やることだっていっぱいある。

 あー、腹が減ったな。ここに来てから何も食べてなかったよ。明日はなにか、食べ物を探そう。今日はもう眠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい風・・・」

 

 心地よい夜風が髪を靡かせる。日中と違い、夜は静かだ。波の音しか聞こえてこない。

 海を見ているとどうしても思ってしまう。

 

 私は何者なのだろう

 

 もちろん、艦娘だということはわかっているし、艦娘がどういう存在なのかも理解している。でも、私がこの体になった理由がわからない。気が付くとこの世界にいて、様々な知識があり、目の前にはあの人がいた。私の全てはそこから始まったはずなのに、一つだけ記憶があるのだ。

 暗くて、冷たい海。まだやれるのに、力が出ない。自分の体が海に浸かり動かない。悲しくて、虚しくて、寂しい記憶。

 この記憶が何なのかはよくわからないし、私がここにいる理由もわからない。けれど、私は艦娘だ。今は前にしか道がないのだから前に進むしかない。私にはそれしかできない。一緒に頑張ってもらうパートナーは少し頼りないし、まだ完全に信用できるわけではないが、悪い人ではないようだ。私が支えればいい。

 ふぁ~。

 眠くなってきたし、そろそろ私も寝よう。

 

「いい風が吹いているもの。きっと大丈夫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で今ある施設は大体巡ったと思います。これから少しずつ充実していく予定。
いろりろとオリジナルな設定が多いですが、一応ゲームのシステムを私なりに解釈した結果です。その他にも、無茶なところは多いと思いますがどうか許してください。なんでも(ry
わかりにくい所などございましたら、指摘して頂けると嬉しいです。

それではよいお年を!来年もよろしくお願いします!
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