虎眼転生-異世界行っても無双する-   作:バニング体位

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幕間『前略衛府龍神様(ぜんりゃくえふのりゅうじんさま)

 

 前略

 衛府の龍神様江。

 

 当節、島原は原城における覇府が尖兵“鬼哭隊”との血戦、一応の落着の由、一筆計上仕る。

 復々、我らが棲まう竜宮船喪失の件、龍神様御既知なれど、改めて御概説申し上げ候。

 

 異なる国に生まれ、異なる肌色を持ち、異なる神をおろがむ者らが、血を流すことなく命ふるわせ、生命(いのち)謳歌せし楽土、竜宮船。

 然し、鬼哭隊襲撃の折り竜宮轟沈の憂き目に至り、我ら鬼族、まつろわぬ民は、皆流浪の身となりし候。

 

 幾年の後、四郎時貞なる救世の化身と邂逅、“でうす”なる宗門に共感せずも、その身分なきものを踏みにじる“悍ましき営み”に終止符を打つ思想に共鳴するに至れり。

 種まきを終えたばかりの田畑を踏みにじられ、裁判なしに男が処刑され、奴隷として女が連れ去られる。

 

 元和偃武、未だ日ノ本に浸透せず。

 而、そのような人の世の残酷が一切無い世にするべく、我ら天草救世軍の尖兵と相成りまして候。

 

 然るに、覇府の苛烈なる圧殺は日毎激しさを増し、終には島原の古城に追いやられし由。

 鬼の忍法、信玄公由来巨具足“舞六剣”、南蛮由来の最新火器にて悪戦するも、覇府十万の兵力、各大名家の拡充具足巨具足の群れ、そして神州無敵率いる鬼哭隊はげに手強き相手。

 幾度の合戦を経て、唯古城に籠もるに至れり。

 城内、矢玉兵糧尽き果て、寄り添うまつろわぬ者共、皆草木を喰らい命を繋ぐ有様。

 

 地獄暫く続くも、突として“異界帰り”の現人の鬼現る。

 我ら鬼族と鬼哭隊の“七番勝負”の段取り、華麗に整えたり。

 如何様に伝手を辿りしか、禁裏より立会人を招致する始末。

 

 立会人烏丸少将曰く、勝てば大赦、負ければ族滅。

 尚、烏丸少将の胸の内覗くと、此度の勝負、倒幕の一助とせんとする腹積もりなれど、利害一致の為、当方これに関知せず。

 

 簡潔明瞭の布陣整えたる現人鬼の御美事なる手腕、“異界”にて培ったとの由、我ら一同首をかしげるばかり。

 ともあれ、死合場と成った原城内、鼠一匹に至るまで尽く退去せしめ、唯一残るは見届け人を買って出た四郎時貞含む郎党数名のみ。

 

 かくして、七忍対魔剣豪による七番勝負、いざ開幕にて候。

 以下、死合の仔細報告申し上げ候。

 

 

 第一番

 零鬼カクゴ 対 伊東一刀斎景久

 

 一番槍務める零鬼、真田幸村が隠し姫伊織姫の気愛受け気合十分。

 万端にて一刀流開祖、伊東一刀斎と死合う。

 零鬼、得意手の忍法多種使用するも、一刀斎、中条流奥義“妙剣”“絶妙剣”“真剣”“金翅鳥王剣”“独妙剣”の五剣にて零鬼完封す。

 然し、真田家秘蔵大鉈を大斧に変えし零鬼、一刀斎が秘剣漸く破る。

 直後、一刀斎独自の秘剣“瓶割”発動。

 気合一閃、厚鉄切断と併せ、零鬼左腕切断。

 魔剣技による切断、鬼の回復力持ってしても修復能わず。

 すわ零鬼死亡と思われた時、零鬼渾身の“因果”発動。

 右腕を犠牲に一刀斎秘剣“瓶割”破る。

 胴体貫かれし一刀斎、切れ間から納豆の如く(はらわた)垂らし、呪詛吐きながら絶息。

 零鬼、両腕喪失なれど確と大地に立つ。

 

 零鬼カクゴ生存、伊東一刀斎景久死亡。

 まずは鬼族一勝也。

 

 

 第二番

 霹鬼タケル 対 塚原卜伝高幹

 

 第二番は二魂一体の琉球鬼と卜伝流開祖の剣聖との死合。

 置き血得た老剣聖、妖魔の如き威容なるも、霹鬼意に介さず。

 然し、死合開始直後、霹鬼既に魔剣技“一之太刀”の術中に嵌りし候。

 黒曜石が如き血風刃、尽く通じず。

 真剣の仕合十九ヶ度、軍の場を踏むこと三十七ヶ度、一度も不覚を取らずの逸話、真実也。

 卜伝、幻術めいた剣技にて霹鬼翻弄し、その肉縦横に斬り刻む。

 深手負いし霹鬼、獅子眼にて漸く卜伝幻術見破る。

 捨て身の血風刃、薩摩示現流が如き威力にて、卜伝の肉体、腰部まで割断す。

 なれども、卜伝が一之太刀、既に霹鬼が生命奪いし候。

 霹鬼、先にニライカナイに行くとの言、我ら鬼族に残したり。

 

 霹鬼タケル死亡、塚原卜伝高幹死亡。

 両者相討ちにて、第二番は引き分けにて候。

 

 

 第三番

 震鬼レン 対 宮本武蔵玄信

 

 第三番、開始直後に死合場にて雷鳴が如き爆音と共に地震い発生。

 否、震鬼と武蔵のぶつかり合いにて発生した音震に候。

 震鬼の拳、無双体枷“実高”貫くも、武蔵致命に至らず。

 武蔵、“神童殺し”にて反撃。

 震鬼が拳を破砕、けだし神技なり。

 壮年武蔵、天下無双に相応しき剣境なるかな。

 忘八の意地見せる震鬼、再度“震え貫き”使用、此度こそ二天一流の体躯貫通す。

 震鬼が貫通拳、武蔵心の蔵握るも、胸の十字、突と神気注入し、震鬼腕部焼失す。

 武蔵血反吐撒き散らし、震鬼の背後取り、鬼首絞る。

 震鬼、流行り病にて亡くした女房、銀狐太夫の名を呟き安息す。

 

 震鬼レン死亡、宮本武蔵玄信生存。

 鬼哭隊の一勝也。

 

 

 第四番

 雪鬼リッカ 対 沖田総司房良

 

 素性不明剣士沖田総司曰く、逐電中の身なれど年貢の納め時との由。

 柳生列堂率いる伊賀忍軍に捕捉され、覇府探題に出頭。

 服部半蔵殺害容疑かかるも、鬼一頭成敗条件に恩赦と、飄々と語りし候。

 置き血得ずとも不老なる沖田身の上話、雪鬼深く頷くも、突と年貢米の味品評宣いし候。

 年貢という言以外聞く耳持たぬ雪鬼、我ら鬼族一の阿呆の仔(アホの娘)也。

 苦笑しそれを静聴の壬生狼、蝦夷化外者と相性抜群と見受けられ候。

 両者暫し歓談するも、不意打つ壬生狼、種子島の如き突き技披露。

 三段総て命中するも、雪鬼致命に至らず。

 雪鬼、飛州おろしにて反撃。

 沖田、俊敏なる動きにてこれを躱すも、雪鬼生命を削り凍気噴射継続。

 死合場、氷河の如き様相を呈す。

 直後、沖田吐血。

 不治の病、不老の肉体に於いても侵食止まず。

 雪鬼、腕部を独楽の如く回転させ、死合終幕図るも、沖田捨て身の突き技にて腕ごと心肺へ刃突き立てられ候。

 ゆるりと立ち上がる沖田、突としてその身紫電に包まれ、愛刀菊一文字則宗と共に死合場から消失。

 摩訶不思議なる現象に遭遇するも、技量の差思い知り、雪鬼自ら負け認むる。

 

 雪鬼リッカ生存、沖田総司房良消失。

 雪鬼降参にて、鬼哭隊二勝。

 

 

 第五番

 霧鬼ツムグ 対 坂田怪童丸金時

 

 英雄三太郎の先鋒努めしは、頼光四天王にして相模国足柄山にて山姥と赤竜との間に生まれし者、金太郎。

 竜の血活性化し、その体躯百尺を優に超える威容也。

 十勇士仇討ち燃える雷鬼諌め、霧鬼ツムグがこれを迎撃。

 人間城舞六剣最後の奉公、死合場巨体同士の相舞場と成り果て候。

 陪観せし烏丸少将以下、一時的に退避する始末なれど、四郎時貞蛮勇にて死合場留まる。

 地割れ、炎舞い、凡そ地獄の光景現出し、原城が戦闘要塞の機能喪失したりと覚えるも、やがて舞六剣の鉄身、尽く崩壊す。

 長年の酷使、太陽の整備持ってしても修復能わず。

 霧鬼、七星軍扇にて奮闘するも、金太郎の巨躯攻略不能。

 すわ霧鬼圧殺と思われし時、陣馬鬼鹿毛特攻す。

 鉄馬の献身受け、霧鬼怒涛の攻め、侵すこと火の如し。

 金太郎、口中から臓腑侵入され、その巨体大地に倒す。

 腹部より霧鬼生還。

 背中の菩薩、大蛇の如き臓物に塗れるも、ネムセなる悪態ひとつ。

 太陽、霧鬼出迎え鼻摘む也。

 

 霧鬼ツムグ生存、坂田怪童丸金時死亡

 鬼族の二勝目にて候。

 

 

 第六番

 雷鬼キョウマ 対 水江日下部首浦嶋子

 

 互いに二勝二敗一分に持ち込んだ此度の勝負、六番目と相成り候。

 浦島太郎、我ら鬼族と和解した後、遊郭竜宮にて悠々自適な日々を送るも、神州無敵に端麗人の務め果たせと迫られ、已む無く死合場へと足運びし由。

 深堀りするに、乙姫なる唯一無二の伴侶を人質に取られたとの事情あり。

 雷鬼、これを無視。

 鬼の勝利という忍務遂行すべく、真田忍法十全に駆使し戦闘開始。

 暫し闘争続けるも、互いに決め手無し。

 つと雷鬼、真田忍法“他心通”にて浦島太郎の肚の中探る。

 浦島に勝利もぎ取る気皆無なり。

 その実、既に乙姫救出は密かに行われており、その時間稼ぎを行う肚也。

 一昼夜合戦の様相を呈すも、朝日が上ると浦島、死合場崖より跳躍。

 乙姫、潜水艇にて浦島迎え、両者そのまま蓬莱へと遁走す。

 雷鬼、浦島心中察し、また竜宮譲渡の恩に報いるべく、勝ち名乗り辞退。

 

 雷鬼キョウマ生存、水江日下部首浦嶋子逃走。

 勝負水入りにつき、引き分けにて候。

 

 

 第七番

 霓鬼ハララ 対 大吉備津彦命

 

 二勝二敗二分けにていよいよ迎えた結びの一番。

 鬼哭隊大将にして英雄三太郎が真打ち、神州無敵桃太郎。

 勝敗決めしこの一戦、迎え撃つ鬼族は志摩の現人鬼。

 神州無敵の宝剣抜き払いし桃太郎卿、現人神美笑もって泰然自若と怨身。

 三柱の神獣討滅せし現人鬼、桃太郎卿と浅からぬ因縁持つも、両者それに拘る様子無し。

 序盤、桃太郎卿怒涛の攻めにて、現人鬼瞬く間に劣勢。

 然し、致命に至る斬撃、複数回受けても現人鬼倒れず。

 現人鬼身につけし宝物、“異界由来”の斬撃無効なる宝玉との由。

 こは奇々怪々なる代物受け、桃太郎卿僅かに動揺。

 然るに、現人鬼奇なる呪符と玉石取り出し、無から岩弾射出す。

 曰く、“泥沼至極の岩砲弾なり”との由、理解不能也。

 動き止めし桃太郎卿、胸部に大穴空くも、その身安泰変わらず。

 反撃の大刀勢、現人鬼回避不可。

 斬撃無効の宝玉、神州無敵の残酷剣防ぐこと能わず。

 曰く、神級をも防ぐ代物なれど、本身の桃太郎卿には紙に等しき等級也。

 現人鬼、胸部截断するも未だ生存。

 直後、渾身の渦貝発動。

 桃太郎卿、吐血するも胎内にて渦分散させ安泰。

 難攻不落の神州無敵、もはや攻略不能。

 桃太郎卿、つと懐より吉備団子取り出し、勇戦せし現人鬼を従属させんと欲す。

 現人鬼、怖気走る程美なる笑いもって応答。

 吉備団子食す。

 直後、燃ゆる口吻にて桃太郎卿と密着。

 桃太郎卿、胎内に伐斬羅侵入し、軈て神州無敵の肉体爆散す。

 現人鬼、両の脚にて立つも、その美魂黄泉へ旅立つ。

 烏丸少将、天晴なる戦いぶり受け、現人鬼の勝利を裁定する也。

 

 霓鬼ハララ散華、大吉備津彦命散体。

 

 鬼族の勝利にて、七番勝負決着にて候。

 

 

 これにて鬼族恩赦と相成り申す。

 然し、覇府の暴虐、これに極まり。

 満身創痍の我らに対し、弓槍鉄砲の雨降らせたる。

 四郎時貞以下郎党、我ら庇い尽く絶命。

 唯一生き延びたる森宗意軒なる忍びの者、四郎時貞の呪詛受け、いずれ覇府転覆を誓い逃走す。

 転生法なる忍法秘めたるも、我ら生存必死にて関知せず。

 烏丸少将、覇府暴虐に知らぬ振り、我ら一同失望するも、胸の内は義憤に燃えたる由、我ら不問にす。

 

 いよいよ年貢の納め時と相成った状況なるも、魔改造梟による爆薬特攻により、我ら亡命に成功す。

 以下、生き残り鬼族の顛末を持って、此度の七忍の物語に終着を報じ奉る。

 

 零鬼カクゴ。

 浦島太郎により潜水艇にて救助、真田幸村落胤伊織姫と共に呂宋へ渡る。

 以後消息不明なれど、両腕無くした夫に寄り添うやんちゃ妻ありとの風聞あり。

 

 雪鬼リッカ。

 同じく浦島潜水艇にて救助、皆と別れ蝦夷の地へと向かう。

 後、蝦夷の惣領が起こした寛文蝦夷蜂起に参加し、その無垢なる生涯に幕下ろす。

 

 霧鬼ツムグ。

 潜水艇にて救助後、太陽と共に故国朝鮮へと渡る。

 鬼の力封印し、只人として太陽と共に暮らすも、丙子胡乱の煽り受け疲弊せし李氏朝鮮、霧鬼らの楽土と不成。

 疫病により太陽墜ち、菩提を弔う日々を過ごす也。

 

 雷鬼キョウマ。

 零鬼らと行動暫く共にするも、此度こそ雷鳴となりて砕け散る生き様実施せんと、南蛮船に乗り広き世界を見聞す。

 鬼哭隊に代わる強者、未だ見つけられぬも、世の不可思議を目の当たりにする日々也。

 

 

 当文、南蛮国いすぱにあが支配する南海にて筆進め候。

 奇縁にて私掠船(ぷらいべてぃあ)に同乗するも、中々に愉快な乗組員らに候。

 えげれす籍の海賊船なるも、乗り込む者ら皆異なる国、異なる肌色持ち、竜宮の船を彷彿させたる様相。

 中でもだんぴあなるえげれす人、他者に偏見持たず、ただ純粋に世の探求を求めし者にて、好意に値する也。

 暫し此の美味しい冒険、共にしたく候。

 

 無念多くあれど、日ノ本の事、遠き昔と成りて候。

 異国の地で見聞きする全て、我が血震わせし冒険。

 何れこの身朽ち果てるも、その時まで精一杯生き抜く所存也。

 嘗て末席に連ねた真田衆の義、十勇士が兄弟達に生かされた身を鑑み、“生き抜く事”が我が生涯と考えたり。

 願わくば、この生涯、見守って頂きたく存じる。

 末筆ながら、龍神様には増々の健勝、切に願い申し上げ候。

 

 

 

 追伸。

 生前の現人鬼殿より承った言伝あり。

 曰く、役に立たぬ竜の勾玉、せめて異界に送られたしとの事。

 七つの竜玉、六面の世における五龍の秘宝に相当するものと確信せり。

 悪神()()に必須の為、時遡りて送られるべし。

 尚、使い道見い出せぬ鬼三頭、これにて有為なる存在になると美考す。

 

 

 草々。

 

 差出人

 黒須京馬

 

 

 

 

 

 

 

 

 




五年間、魂の躍動を魅せ続けてくれた山口貴由先生に深い感謝を。
なんか最終話なのにはらら様の存在が忘れられてるような気がしますが、それでも最高に楽しいエンタメを体験させて頂きました。
さよならは似合わない物語、永遠なれ。

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